本のむし子

40代主婦の読書日記ブログです。読んだ本の感想などを気ままに書いていきます。

感想


映画が話題になっている湊かなえさんの
母性」について詳しくまとめます!


この本を読んだきっかけ

映画が上映されていて観てみたいと思ったのですが、とりあえず原作を先に読みたい派なので、読むことにしました。

こんな人にオススメ

  • 「母性」とは何か、気になる人
  • 「毒親」「毒母」などのテーマに興味がある人
  • 母親との関係に何か引っかかりがある人
  • 湊かなえさんのファンの人

「母性」あらすじ


女子高生が自宅の中庭で倒れているのが発見された。母親は言葉を詰まらせる。「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて」。世間は騒ぐ。これは事故か、自殺か。……遡ること十一年前の台風の日、彼女たちを包んだ幸福は、突如奪い去られていた。母の手記と娘の回想が交錯し、浮かび上がる真相。これは事故か、それとも――。圧倒的に新しい、「母と娘」を巡る物語(ミステリー)。

出版社より引用

この本の特徴やテーマ

「母性」とは

この本では「母性」について、

母性など本来は存在せず、女を家庭に縛り付けるために、男が勝手に作り出し、神聖化させたまやかしの性質を表わす言葉にすぎないのではないか。

そのため、社会の中で生きていくに当たり、体裁を取り繕おうとする人間は母性を意識して身につけようとし、取り繕おうとしない人間はそんな言葉の存在すら無視をする。

p52より引用

と書いてあります。

体裁を取り繕おうとするために母性を身につける、というのは少し言い過ぎかもしれませんが、生まれつき備わってるものとは言えないかもしれないですよね。

子供を産んでから母性がわいてくる人もいるし、子育てをする中で徐々に芽生える人もいるだろうし、人それぞれなのではないかと思いますね。

ただ、ルミ子の清佳に対する態度や考え方には、私はあまり母性は感じられませんでした。

以前に読んだ早見和真さんの「八月の母」でもそんなことが描かれていたなぁ、と思い出しました。

こちらも「母性」とは何かという問いについて触れた作品なので、よろしければ…。

母と娘、それぞれの想い

この本は、「母の手記」と「娘の回想」が交互に語られて進んで行きます。

同じことについて書いてるのに、母であるルミ子と娘の清佳とでは、全く異なる見方や捉え方をされているのです。

ルリ子は「愛能う限り、娘のことを大切に育ててきた」と語っていますが、清佳は母から愛されていない、と感じています。

人によって感じ方や捉え方が違うということは、どんな人間関係でも起こり得ることですが、それが親子となると、より一層深い溝となってしまうのではないでしょうか。

言葉に出さなくても相手はわかってくれるだろう、と考えがちですが、親子であっても言葉で伝えあうことはやはり大切なことなのだと思います。

印象に残ったフレーズ


愛されるためには、正しいことをしなければならない。喜ばれることをしなければならない。あなたがそこにいるだけでいい。そんな言葉はわたしの人生には登場しなかったのだから…。

p39 清佳の言葉

いわゆる「無償の愛」のことですね。子供が親から欲しいのは無償の愛ですよね。

子供の存在自体を認めて受け入れることが大切です。


食事はきちんと与えられていた。毎晩、風呂に入り、やわらかく温かい布団で寝ていた。給食費を期日に出せなかったこともない。(中略)これが親の愛だというのなら、わたしは満たされる方に分類される。しかし、中谷亨は、そういうのは愛とは呼ばない、とわたしに言った。体裁を整えているだけだ、と。

p114 清佳の言葉

清佳の彼氏である享の言葉ですが、スパッと言い切ってくれて、気持ちがいいですね。

親が衣食住を子供に提供するのなんて当たり前ですもんね。

体裁を整えるだけの親にならないように気を付けたいです。


母性を持ち合わせているにもかかわらず、誰かの娘でいたい、庇護される立場でありたい、と強く願うことにより、無意識のうちに内なる母性を排除してしまう女性もいるんです

p216 清佳の言葉

ルミ子がまさにそういうタイプです。母への想いが強すぎて、全然親離れできていないです。

親離れ子離れって大事なことですが、案外できてない人が多いのかも…。


感想(ネタバレあり)

うーん、これはまた感想が難しいですね(っていつも言ってますね笑)。

最近いわゆる「毒母」関連の作品をけっこう読んできたせいか、読み終わった直後は、この本はあまり響かなかったなぁーと思ったんです。

今まで読んできたものと比べて、そんなに強烈ではなかったので。

でも、気付けばこの本のことばかり考えていて、実はけっこう響いてたのかも?と思って、感想を書くことにしました。

母の立場になって読むか、娘の立場になって読むかで、けっこう感想が変わりそうです。

私は娘でもあり、娘を持つ母でもありますが、終始娘の清佳に感情移入して読みましたね。

母のルミ子には全く共感できなかったです。

私自身、あまり母といい関係ではないから、ルミ子が彼女の母に持つ異常なまでの愛を理解できなかったのかもしれませんが…。


よく友達親子みたいに仲の良い母娘っているみたいですが、ルミ子と母のような関係なのでしょうか?

自分が子供産んでからも「ママ大好き、ママに何日も会えないとか考えられない」って言ってる女性の話を聞いたことがありますが、そういう感じなのでしょうか。

そういう母娘関係の人って、自分が娘を持った時に娘ともいい関係を築けそうでいいな、と羨ましく思っていたのですが、この本を読んで、実はそんなこともないのかも?と思いました。

母親と仲良しの娘でも、いろいろ抱えていることがあるのかもしれないんですね。

自分が娘のままでいる限り、母にはなり切れないのかもしれないですね。


 

それにしてもルミ子は少し極端過ぎるのではないか、とは思います。

子供を産むのも「母親が喜んでくれるから」という考えなのが、もう全然理解できないし、何をするにも母親が喜んでくれるように、という前提なのが、ちょっと気味悪かったです。

そりゃあ母親に褒めてもらいたい、喜んでもらいたい、と思う気持ちは、どの子にでもあると思いますよ。

でも、母親のために子供を産むとか、自分の子を育てる時にも、母が喜んでくれるように育てるとか、そんな風に考えるのでしょうか?

田所の実家で褒められた時も、「母から受け継いだものを認めてくれた」と感じて喜んでるんですよね。

「自分」というものが、ルミ子にはないのだろうか?と思いました。

やたら自意識過剰なところがあるので、肯定されて生きてきたのはわかりますが。

「母親に愛されている自分」しかないんですよね。

そういう意味では、ルミ子の母親も歪んだ愛情でルミ子を育てたのかな、と感じました。

たぶん、親の思うようにしていれば褒められる、という条件付きの愛情だったのではないでしょうか。

親の思う子供になるように、ルミ子は育てられたのかもしれません。

そもそも結婚相手も親が後押ししたからという理由で決めたし、ルリ子は反発できずにいたのか、そもそも反発するということすらも感じないように育てられたのか…。

「母が望むような子になろうと努力していたのに、どうして、娘は私の気持ちを汲み取ろうとしないのだろう」という文章がルミ子の手記にあるので、きっとそうなんでしょう。


 

清佳はただ母から愛されたかっただけでしょうね。

その気持ちは痛いほど伝わってきました。

することなすこと母には伝わらず、空回りになってしまうわけですが…、母ならもう少し娘の気持ちを汲み取ってあげてほしかった。

私自身がルミ子だったら汲み取れるのかって考えてしまいましたが、たぶんルミ子ほどひどくはないと思いますね…。

少なくとも自分の思うように娘を育てようとは思わないし、娘に自分の気持ちを汲み取ってもらおうとは思わずに、ちゃんと言葉で伝えようとするとは思います。


 

それから、何であまり響かなかったと感じたのか、って考えたんですが、終わり方が納得いかなかったせいもあると思うんです。

清佳が自殺してからかなりの年月が経っているのはわかるんですが、そんなにうまくいかないでしょ…と。

私が清佳なら、母のことも父のことも許せないだろうし、りっちゃんのお店になんか行かないだろうし、ましてや父が不倫してた家になんか住まないだろうし。

そういえば、この父親も最低ですね。

生い立ちに事情があるとはいえ、感想にするほどでもないくらい、最低です。

見て見ぬフリをして、不倫してるとか、もう意味わからないです。

そんな父親、母親が許したからと言って、許せないですよね。

話を戻しますが、長い年月の間に、ルミ子と清佳の間にどういう時間が流れたのかわかりませんが、そう簡単に母と娘の関係って修復できるもんでしょうか。

清佳がルミ子のことを許したのかな。

ただ、清佳が出産したら、またどうなるか…が問題になってくると思いますね。

自分が求めたものを我が子に捧げたいという想いを持って物語は終わりますが、そこからがいろいろ大変だと思います。

子供を育てる中で、きっとルミ子への想いがたくさん湧き上がってくると思います。

私もこんな風に愛されたかったとか、私もこうしてほしかったとか…恨めしく思う気持ちが出てくるのではないかと。

毒親に育てられた人はそういう悩みを抱えてる人、多いですからね。

清佳がそこを乗り越えられるか、この家族の物語はまたそこから始まると思います。

最後がハッピーエンドっぽいのが救いだという感想もけっこう見たので、私が拗らせ過ぎてるのかもしれません…。


 

それからなんと言ってもこの本で1番印象に残った言葉「愛能う限り」という言葉、皆さん知ってましたか?(笑)

私は聞いたことも使ったこともなかったですが、この本の影響で気味の悪い言葉にしか思えなくなってしまいました…。

強烈なインパクトを持つ言葉でした。


著者紹介

1973(昭和48)年、広島県生まれ。2007(平成19)年、「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。翌年、同作を収録する『告白』が「週刊文春ミステリーベスト10」で国内部門第1位に選出され、2009年には本屋大賞を受賞した。2012年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門、2016年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。2018年『贖罪』がエドガー賞候補となる。他の著書に『少女』『Nのために』『夜行観覧車』『母性』『望郷』『高校入試』『豆の上で眠る』『山女日記』『物語のおわり』『絶唱』『リバース』『ポイズンドーター・ホーリーマザー』『未来』『ブロードキャスト』、エッセイ集『山猫珈琲』などがある。


出版社より引用

たくさん気になる作品があります。


まとめ

「母性」についてや、母娘関係について、いろいろと考えさせる作品でした。

この作品がどう映像化されているのか、映画の方もすごく気になるのですが、観に行く時間もないので、いつか観る機会ができればいいなと思います。



青山美智子さんの
「赤と青とエスキース」について詳しくまとめます!


この本を読んだきっかけ

青山美智子さんの作品をいくつか読んできて、どれもすごく好きだったのと、この作品は2022年の本屋大賞で第2位ということで注目されていたので、ずっと読みたいと思っていました。

図書館で予約がいっぱい過ぎて、ようやく回ってきました…。


こんな人にオススメ

  • 絵画や美術に興味のある人
  • 心温まるヒューマンドラマが好きな人
  • 小説を読んで癒されたい人
  • 連作短編集が好きな人
  • 青山美智子さんのファンの人

「赤と青とエスキース」あらすじ


2021年本屋大賞2位『お探し物は図書室まで』の著者、新境地にして勝負作!

 メルボルンの若手画家が描いた1枚の「絵画(エスキース)」。

 日本へ渡って30数年、その絵画は「ふたり」の間に奇跡を紡いでいく――。

 2度読み必至! 仕掛けに満ちた傑作連作短篇。

 
●プロローグ
●一章 金魚とカワセミ メルボルンに留学中の女子大生・レイは、現地に住む日系人・ブーと恋に落ちる。彼らは「期間限定の恋人」として付き合い始めるが……。
●二章 東京タワーとアーツ・センター 30歳の額職人・空知は、淡々と仕事をこなす毎日に迷いを感じていた。そんなとき、「エスキース」というタイトルの絵画に出会い……。
●三章 トマトジュースとバタフライピー 漫画家タカシマの、かつてのアシスタント・砂川が、「ウルトラ・マンガ大賞」を受賞した。雑誌の対談企画のため、二人は久しぶりに顔を合わせるが……。
●四章 赤鬼と青鬼 パニック障害が発症し休暇をとることになった51歳の茜。そんなとき、元恋人の蒼から連絡がきて……。
●エピローグ 水彩画の大家であるジャック・ジャクソンの元に、20代の頃に描き、手放したある絵画が戻ってきて……。


出版社より引用

「エスキース」とは

エスキース」と聞いて意味がわかる人は、きっと美術関係に詳しい人ですね(笑)

恥ずかしながら、私は全く知りませんでした…。

「エスキース」とはフランス語で「下絵」のことだそうで、本番を描く前に、構図を取るデッサンみたいなものだそうです。

ジャック・ジャクソンという登場人物は「エスキース」のことをこう言っています。

「本番じゃないから、誰に見せるわけでもないし何度描き直したっていい。自由なところがすごくいい」

p33 ジャックの言葉

この本の特徴やテーマ

各章に主な登場人物が2人ずつ出てくる

第1章は、メルボルンが舞台となっており、留学中のレイと現地に住む日系人のブーが主人公となっています。

第2章は、「アルブル工房」という額縁工房が舞台で、そこで働く空知と、工房の経営者である村崎のやり取りがメインとなっています。

第3章は、漫画家のタカシマ剣と、アシスタントとして働いていた砂川凌がメインとなっています。

第4章は、輸入雑貨店「リリアル」で働く茜と、元恋人の蒼の物語となっています。


各章に「」と「」と「エスキース」が出てくる

各章には、赤と青のものがそれぞれ出てくるのですが、それが各章のタイトルになっています。

第1章では、「金魚」と「カワスミ

第2章では、「東京タワー」と「アーツ・センター

第3章では、「トマトジュース」と「バタフライピー

第4章では、「赤鬼」と「青鬼

といった風に、赤と青のものが、物語の中で対比されて出てきます。

また、全ての章に「エスキース」も登場します。

どんな場面でどう出てくるのか説明してしまうとつまらないので、気になる方はぜひ読んでみてください!

ちなみにバタフライピーというのは、青い色をしたハーブティーのことです。

エイジングケアが期待できるハーブティーですが、インスタ映えすることでも人気のようです。


心に残ったフレーズ

青山美智子さんの作品は、心に残るフレーズが多いです。

今作もたくさんありましたが、その中からいくつか紹介します!

「よく恋に落ちるって言い方するけど、私はあれ、来るんだと思うね(中略)来るのは彼じゃないんだよ。恋なの。不可抗力に、彼じゃなくて恋に振り回されるのよ」

p39 ユリの言葉

これ、なかなか面白い発想ですよね。

不可抗力に来るから、世の中恋愛の揉め事が耐えないのかもしれませんね(笑)


「額装は高名な画家や美術館だけのものじゃない。ごく普通の一般家庭で、もっと日常的に楽しめるはずなんだ。子どもの描いた絵でも好きな人からもらったポストカードでも、気持ちいいなと素直に思えるものがいつもそばにあるって、すごく豊かなことだよ。」

p92 村崎の言葉

確かに絵でも写真でも額に入れるだけで、なんだか高級感が出るし、特別なものっていう感じがしますよね。

私も一生懸命組み立てたジグソーパズルを、どの額に入れようかな〜って悩んだことがありますが、額にセットするだけでめちゃくちゃ嬉しかった記憶があります。

このセリフにはなんだか納得しました。


「よく、人生は一度しかないから思いっきり生きよう、って言うじゃない。私はあれ、なかなか怖いことだと思うのよね。一度しかないって考えたら、思いっきりなんてやれないわよ(中略)人生は何度でもあるって、そう思うの。どこからでも、どんなふうにでも、新しく始めることができるって。」

p197 オーナーの言葉

これも納得ですね。人生なかなか思いっきり生きるの、難しいですよねー。

新しく始めるのもなかなか難しいですけど、不可能ではないですよね。

歳をとるごとに何事も難しいと感じてしまいがちですが、新しくチャレンジすることも忘れないようにしたいです。


感想

青山美智子さんの作品は、全ての章にどこかつながりがあって、最後にどんなつながりがあるのかわかる、という特徴があるものが多いのですが、今作もまた最後のエピローグで「わぁー、そうだったの!」という驚きと喜びがありました。

ただ実は、そのつながりについてネタバレしている感想を事前に読んでしまったため、少し感動が薄れてしまいました…。

たまにネタバレフィルターかけてない方がいて、読んでしまうことがあるんですよね…。

それか、ネタバレだと思ってなくて、フィルターかけてないのか…。


 

少し感動が薄れてしまったのは事実ですが、今までに読んできた青山美智子さんの他の作品と比べても、ちょっと物足りなかったかな…という気もしました。

私は美術とか絵画とかに興味がなく、美術センスも皆無なので、そのせいもあるかもしれません。

絵画に興味があったり、美術館に行くのが好きだったりする方は、もしかしたらもっと感動できるのかな…なんて思いました。

絵画が好きな方って、一枚の絵にどんな想いが込められてるのかとか、その絵にどんな背景があるのかとか、どうやっていろんな人のところを渡り歩いてきたのかとか想像したりするのでしょうか。

この物語の「エスキース」も、時代を経て、いろんなところに飾られ、いろんな人に見られていて、一枚の絵がこんなにドラマチックな人生を歩んでいるんだなぁ…って、最後はしんみりしました。

絵もなかなか奥深いものなのですね。

赤と青の対比がまた物語を美しく彩っていて素敵でした。

 

第3章は漫画家さんの物語なんですが、青山美智子さんは漫画家になりたかったそうですよ。

師弟愛が描かれている章ですが、「漫画家あるある」も織り込まれていて、作家としての青山さんの実体験が多く反映されているそうです。

この章の主人公2人の関係、すごくいいなと思ったし、タカシマ剣のキャラがけっこう好きでした。

第4章も好きですね。

茜の気持ちに共感しました。

 

ちょっと物足りなかったかな…なんて書きましたが、それでもやっぱり安定の青山さんですよね(笑)

青山美智子さんの作品って苦手な人いないんじゃないかって思うくらい、クセがなくて、老若男女誰でも共感できて、元気付けてもらえるものだと思ってるんですが、私のただの好みでしょうか?(笑)

人生いつからでも遅くないよ、とか、みんな悩みながら生きてるんだよ、とか、そういう前向きなメッセージを今作からも受け取りました。

人生そんな簡単なもんじゃないよ、って思う人もいるかもしれないですが、そういうメッセージを受け取れる本があるってことが、私は嬉しいです。

ちょっと気分が落ちてて明るい気持ちになりたい、っていう時には、青山美智子さんの本を手に取りたいですね。


著者紹介

1970年生まれ、愛知県出身。横浜市在住。大学卒業後、シドニーの日系新聞社で記者として勤務。2年間のオーストラリア生活ののち帰国、上京。出版社で雑誌編集者を経て執筆活動に入る。デビュー作『木曜日にはココアを』が第1回宮崎本大賞を受賞。続編『月曜日の抹茶カフェ』が第1回けんご大賞、『猫のお告げは樹の下で』が第13回天竜文学賞を受賞。(いずれも宝島社)『お探し物は図書室まで』(ポプラ社)が2021年本屋大賞2位。『赤と青とエスキース』(PHP研究所)が2022年本屋大賞2位。他の著書に『鎌倉うずまき案内所』『ただいま神様当番』(ともに宝島社)、『マイ・プレゼント』(U-kuとの共著・PHP研究所)など。


出版社より引用



まとめ

青山美智子さんの「赤と青とエスキース」について、まとめました!

この作品の表紙を描いた水彩作家のU-ku(ゆーく)さんとコラボしたショートショートがあるのですが、そちらもまた素敵なんですよ。

「青」がテーマとなった「マイ・プレゼント」は私も読みましたが、詩集のような絵本のような感じで、心が落ち着く癒しの作品でした。

いつもの青山作品とはまた違った良さがあります。

また、「赤」がテーマの「ユア・プレゼント」も12/8に発売になります。

こちらもまた読みたいです!




遠田潤子さんの「イオカステの揺籃ゆりかごについて
詳しくまとめます!


この本を読んだきっかけ

遠田潤子さんは『ドライブインまほろば』と『オブリヴィオン』を読んだことがあり、もっといろいろな作品を読みたいと思っている作家さんです。

新刊もまた好きそうなテーマだったので、読みたいと思いました。

こんな人にオススメ

 

・嫁姑問題、母娘関係などのテーマに興味がある人

・毒親、親ガチャなどのテーマに興味がある人

・遠田潤子さんの作品が好きな人

『イオカステの揺籃』あらすじ


新進気鋭の建築家・青川英樹はバラが咲き誇る家で育った。美しい母・恭子と、仕事一筋の父・誠一。週末も父が不在がちだったり、妹の玲子と母との折り合いが悪かったりもするが、至って普通の家族だった。英樹の結婚生活も順調で、今は妻の美沙が妊娠している。満ち足りた生活はこれからも続くはず、だった。ところが……。
 「男の子……?」。生まれてくる子どもの性別を伝えた途端、母の表情が変わった。その日から始まった母の異常な干渉。この家は、何かがおかしいのかもしれない――。平和だと思っていた家庭の崩壊が始まる。

読売新聞オンラインより引用

あらすじを少し追加して紹介します!

ある日英樹は、改築依頼のあった和歌山県の古民家へ行った際に、その家にある水車を見て、子供の頃のある出来事を思い出します。

水車が回っているのを見て、観覧車に母親と乗ったことを思い出したのです。

そしてそれは、2歳の弟が亡くなってしまってからあまり日が経っていない時のことで、観覧車の中で母親とオレンジジュースで乾杯したという奇妙な風景だったのです。

観覧車に乗って、オレンジジュースで乾杯したという風景の持つ意味とはー。

弟が亡くなってしまった真実とはー。

 

主な登場人物

○青川英樹…新進気鋭の建築家。

○美沙…英樹の妻。老舗タイルメーカーで外構・外壁タイルの営業をしている。

○青川誠一…英樹の父。大手ゼネコンの技術者で、ダムマニアであり、蕎麦が好き。

○青川恭子…英樹の母。自宅で、大人気の「バラの教室」を開いており、「バラ夫人」と呼ばれている。

○青川玲子…英樹の妹。撮影小物をレンタルする会社で働いている。

○羽田完…玲子の交際相手。「鍵のSOS」という鍵屋さんを個人で経営している。

○青川和宏…英樹の弟。2歳で亡くなってしまった。

 

この本のテーマについて

母親と息子、母親と娘の関係

著者の遠田潤子さんは「母親との関係に疑問を持たない息子」を書きたかったそうで、そんな息子が結婚して嫁姑問題に直面したらどうなるだろう、というのが、この物語の出発点だったそうです。

また恭子は、英樹のことをかなり溺愛しているのに対し、娘の玲子にはネグレクトに近いような接し方をしています。

誰もが母親との関係で多かれ少なかれ、何かしらの問題を抱えており、この物語では、母親と息子母親と娘の両方の関係性から、母親の問題が描かれています。

嫁姑問題

ドラマで見るような、あからさまな嫌がらせや意地悪をして嫁を困らせるのだけが、嫁姑問題ではありません。

この物語でもそうですが、姑側は本当に良いことをしてると思ってやってることが、嫁側からすると嫌悪感しか感じない、ということが多々あります。

そして、夫からすると、母親が良くしてくれてるのに何で妻は分かってくれないんだ、と思ってしまうので、そこからどんどん問題が深くなっていくわけです。

本当に仲の良い姑と嫁も中にはいるのかもしれませんが、なかなか難しいですよね…。

英樹の事務所で働くシングルマザーの橋本という女性が、何とも鋭いことを言っています。

「男の人が嫁姑問題で『上手くいってるかどうか』なんて気になったときは、もうとっくに上手くいってないんです」と。

これ、なかなか鋭い指摘ですよね。

 

感想(ネタバレなし)

バラの匂いがプワーンと本から匂ってくるんじゃないかと思うくらい、バラの存在感がすごかったです。

様々な品種の色とりどりの庭一面のバラ、バラの蕾のお茶、バラのマカロン、ローズバター、その他いろいろ…。

物語の中に出てくる「中之島のバラ園」にも行ったことがあって、バラの美しさに圧倒されたのですが、今後バラを見たらきっとこの本を思い出して、ゾゾっとしてしまいそうです(笑)

 

英樹が妻の美沙に、母親ともっと気楽に打ち解けてもらえたらと思っていたり、母親の厚意を素直に受け入れたらいいのにと思っていたりするのですが、これはもう完全に不愉快でした…。

嫁と姑、そんな簡単に打ち解けられるわけないでしょ!と心の中でツッコミまくってました。

英樹は恭子に溺愛されて育ってきたゆえに、いろんなことに鈍感なところがあるのですが、読んでいてすごくイライラしました。

私も嫁の立場なので、美沙にかなり共感するところがありました。

男性って、自分が母親からされて嬉しいことは、妻も嬉しいって喜ぶとでも思ってるんでしょうか…。

美沙のお腹の子が男の子だと知った恭子は、ベビー用品を勝手に送りつけてきたり、ベビー用品の写真を山ほどLINEで送ってきたり、おかしな行動がどんどんエスカレートしていくのですが、もうその描写がエグいエグい…。

美沙が乗り移ったかのように、私も吐き気がして、お腹の辺りが気持ち悪くなってしまいました。

恭子のことが本当に気持ち悪くて、美沙に完全に同情しました。

私ももし将来姑の立場になることがあれば、いろいろ気をつけなければいけないと思いました。

 

ただ、物語が進むうちに、恭子がなぜそこまで美沙のお腹の子に執着するのかが明らかになり、また感想が変わってきました。

ネタバレなしの感想なので、詳しくは書けませんが、恭子も辛い人生を送ってきたのだな…と。

いろいろなことが明かされて、恭子に同情してしまう自分がいました。

恭子が自分の人生を思って下した決断にはビックリしましたが、そうすることでしか自分をもう守れなかったのかな…と。

 

少し前にブログ記事を書いた早見和真さんの『八月の母』という作品も、母から娘への負の連鎖がテーマでかなり衝撃を受けましたが、この作品も同じくらい衝撃的でした。

この本は、読売新聞オンラインで連載されていたようで、遠田潤子さんは「家族の問題を圧倒的な熱量で描き出す実力派作家」と紹介されていますが、本当にそこは納得です。

以前に読んだ2作品も、家族の問題がテーマだったのですが、筆力がすごいというか、とにかく一気に引き込まれます。

重苦しい話ですが、読みたいと思う気持ちが止まらなくなります。

明るいテーマの作品もあると思うので、いろいろ読んでいきたいです。

 

著者紹介

1966年、大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。2016年、文庫化された「雪の鉄樹」が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベストテン」第1位、2017年「オブリヴィオン」が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベストテン」第1位、同年「冬雷」が第1回未来屋小説大賞を受賞。

読売新聞オンラインより引用

感想(ネタバレあり!)

ここからは、ネタバレありの感想になるので、読みたくない方は、読まないで下さいね!

ここから、ネタバレ感想↓

 

美沙が倒れてからの恭子の様子が、さらにエグくて、本当に気持ち悪かったです…。

気が狂ってるのか、正気なのか、どちらかわからないような言動がめちゃくちゃ不気味でした…。

ただ、物語の中盤から、恭子も母親からひどい虐待を受けていたことがわかり、その虐待の描写が読んでいて辛くて仕方なかったです。

何をしても「いやらしい」と言われ、何をしても「あんたにできるわけない、失敗する」と言われ、恭子は母親の「予言」に怯えながら生きてきたのが、あまりにもかわいそうでした。

そして、2人目の子供ができた時の話、これがもう…狂ってるとしか思えなかったです。

「あんたの子供は必ず一人死ぬ」と予言され、それが現実となってしまった時の恭子の気持ちを思うと、絶望でしかなかっただろうな、と思いました。

和宏が亡くなってしまったのは、英樹に責任があり、英樹のことを庇って一生罪をかぶろうとしたのは、親としてその気持ちはわかりました。

そして和宏のようにさせないために、美沙のお腹の子を必死で守ろうとした気持ちはわからなくはないですが、それは美沙にとっては狂気としか伝わりませんよね。

全て恭子の母親が元凶なのに、誰にもそれが伝わってないのが気の毒だと思ってしまったけど、もし誰か一人でも恭子の凄まじい生い立ちを知ったとしたら、何か変わっていたのかな…とも考えました。

恭子が過去について誰にも語らなかった理由はわかりませんが、私だったら誰かに言わなければ生きていけないだろうな、と思いました。

せめて夫には理解してほしいですよね。

自分の生い立ちが恥ずかしくて言いたくなかったのか、ただ言えなかったのかはわかりませんが、誠一がもっと恭子のことを気にかけてあげてたら、ここまでひどいことにはならなかったかも、と思いました。

恭子の母親を見て異常なのはわかっていたのだから。

誠一も恭子と向き合って生きて行こうと思うのが遅すぎましたね。

家庭を全く顧みなかったり、若い女性と不倫をしたりで、どうしようもない夫でした。

恭子の母親は相当狂った人でしたが、その母親もまたきっと狂った人だったのかな。

 

親に言われたことが「予言」になって、それにとらわれてしまう、という恭子の気持ち、少しわかります。

親に否定されて育つと、自分が何か失敗すると「あーやっぱり親の言った通りだった…どうせ私なんて何やってもダメなんだ…」って思ってしまうんです。

親の希望と違うことをすると、罪悪感を感じたり、親に申し訳ないって気持ちが常に優先されたりするんですよね。

玲子みたいに反発できないと、一生親の呪縛から逃れられないと思います。

 

玲子の交際相手の完もまた生い立ちが複雑であるけれど、穏やかで包容力があって、この物語の唯一の癒し的な存在でした。

事故に遭って大変なことになってしまったけど、最後には誠一と玲子と3人で楽しそうにしている描写があり、ほっとしました。

母→娘への負の連鎖をなんとか玲子で止めてほしいです。

玲子と完の二人なら、幸せになってくれるのではないか…と願います。

あと、英樹の事務所の橋本さん、彼女はこの物語の中で唯一まともというか、正論を言ってくれるので、読んでいて安心できました。

 

怖かったり、イライラしたり、気持ち悪くなったり、涙が出たり、読んでいて感情の起伏が激しいて物語でしたが、またもや「遠田ワールド」にすっかり魅せられてしまいました。

まとめ

遠田潤子さんの「イオカステの揺籃」についてまとめました!

けっこう重めの作品なので、誰にでもおすすめできる感じの作品ではないですが、遠田潤子さんの描く世界が好きな方には、おすすめできるかと思います!

 


知念実希人さんの
機械仕掛けの太陽」についてまとめます!


この本を読んだきっかけ

医師でもある知念実希人さんが、コロナ禍の医療現場について書かれたということで、読んでみたいと思いました。

発熱外来も担当していたことがあるそうなので、リアルなことが書かれているのではないかと思いました。

こんな人にオススメ

  • コロナ禍で医療従事者の方々がどんな状況にあったか、知りたい人
  • 新型コロナウイルスの変遷について知りたい人
  • 医療従事者の人
  • 知念実希人さんのファンの人

本書紹介

現役医師として新型コロナを目の当たりにしてきた人気作家が満を持して描く、コロナ禍の医療現場のリアル。

2020年初頭、マスクをして生活することを誰も想像できなかった――
これは未知のウイルスとの戦いに巻き込まれ、〝戦場〟に身を投じた3人の物語。

大学病院の勤務医で、呼吸器内科を専門とする椎名梓。彼女はシングルマザーとして、幼児を育てながら、高齢の母と同居していた。コロナ病棟の担当者として、最前線に立つことになる。

同じ病院の救急部に勤務する20代の女性看護師・硲瑠璃子は、結婚目前の彼氏と同棲中。独身であるがゆえに、コロナ病棟での勤務を命じられる。

そして、70代の開業医・長峰邦昭。町医者として、地元に密着した医療を提供し、息子にはそろそろ引退を考えるように勧められている。しかし、コロナ禍で思い掛けず、高齢で持病もある自身の感染を恐れながらも、現場に立つことを決意する。

あのとき医療の現場では何が起こっていたのか? 3人はそれぞれの立場に苦悩しながら、どのようにコロナ禍を生き抜くのか。

全人類が経験したあの未曾有の災厄の果てに見いだされる希望とは。自らも現役医師として現場に立ち続けたからこそ描き出せた感動の人間ドラマ。

※本作品の印税の一部は、新型コロナウイルスなどの感染症拡大防止への対応のため、日本赤十字社に寄付されます。

出版社より引用

 

この本の特徴

リアルな医療現場の様子がわかる!

コロナ病棟で治療の最前線にいる医師と看護師や、コロナウイルスに感染した患者と接する町医者の様子が、リアルに描かれています。

コロナ病棟で勤める医療従事者がどのような状況で治療に当たっていたのか、また、コロナに感染した患者の様子や治療について、細かく描かれています。

コロナ病棟の医療従事者は、少し前まで常に、マスクやアイシールドをはじめとするPPE(個人用防護具)を身につけて、治療に当たっていたという記述があります。

精神的な苦労はもちろんですが、身体的な苦労もかなりあったのではないでしょうか。

鬱病になりながらも、医療従事者としての使命感などから、なかなか辞めることのできない心境なども、リアルに描かれています。

 

新型コロナウイルスの変遷がわかる

コロナ禍になってもうすぐ3年になりますが、中国で新型コロナウイルスが流行り始めてから、これまでのことが、時系列を追って詳細に書かれています。

Wild strain(野生株)→α(アルファ株)→δ(デルタ株)→ο(オミクロン株)という風に、章も分かれて書かれています。

2020年の2月頃から、日本でも新型コロナウイルスのことが報道されることが増えたのはもちろん記憶していますが、それからどういうことがあったのか、意外と覚えていないこともありました。

物語の中でも日付が書かれているので、この時期は○株が流行っていたな…ということを思い出しながら読みました。

 

初期のコロナウイルスに感染すると、普通の肺炎とは違い、間質性肺炎になるということも、そんなに詳しく知りませんでした。

間質という部分に炎症が起こる肺炎らしいのですが、治癒後も呼吸機能が大きく落ちることが少なくないようです。

また、コロナウイルスだけでなく、SARSやMERSなどのことにも触れられていて、感染症についての歴史もおさらいできます。

サイトカインストームなどの医学用語も、理解しやすいようにわかりやすく書いてあります。

 

印象に残ったフレーズ

「いまは、このわけの分からないウイルスから、国民を可能な限り守るっていう義務だな。まあ、俺たちはいわば兵隊みたいなものだ。兵隊が敵から逃げるわけにはいかないだろ。」

p128 長峰の言葉


「世界中の医師、研究者、疫学者、政治家、それぞれが各々の立場でこの世界的な危機に向かっている。私たちは私たちにできることをしましょう。(中略)目の前にいる患者を全力でケアすること」

p138 椎名の言葉

「俺は最期の最期まで医者でいるって決めたんだ。そして、支えてくれた地域の人たちにできるだけの恩返しをしながら死んでいく。(中略)これ以上の奉公はないだろ。」

p212 数見の言葉

どれも医師の言葉ですが、自分が辛い状況にあっても、病気に苦しむ人たちのことを助けたいと思う姿勢に感動しました。

 

感想

この本は小説というよりは、ノンフィクションのドキュメンタリーと言ってもいいのではないでしょうか。

著者の知念さんが医師であり、発熱外来を担当していたこともあるということで、非常にリアルな内容でした。

医療従事者の方々が大変な思いをしてきていることは、もちろん理解はしているつもりだったのですが、どういうことが大変で、どういう苦労があったのか、具体的には理解できていなかったような気がします。

新型コロナウイルスと向き合う医者や看護師が、実の親や恋人と意見が合わなかったり、コロナウイルスに対する考えの温度差があったりして、3人の主人公たちが大変な思いをする場面が何度も出てきました。

そんな場面を読んで、医療従事者の方々は本当に辛い思いや悔しい思いをたくさんしてきたのではないかな、と思いました。

主人公たちの心境や境遇を思うと、何度も涙が出てくる場面がありました。

 

私自身も、実の親や義両親と考えが合わなかったり、コロナに対する考え方に温度差があったりして、ちょっとした喧嘩になったことを思い出しました。

コロナ禍で、近い人たちとの付き合いにもヒビが入ったり、揉め事になった人も多いと思います。

医療従事者の方々はなおさらそんなことが多かったのではないだろうか…と想像しました。

この本でも記述がありましたが、医療従事者の方々に対する偏見みたいなものがあったのも思い出しました。

今考えてみれば、本当にひどいことですよね。

コロナ禍で怖いのは、ウイルスではなく人だ、みたいなことを言われていましたよね。

コロナにかかったら、病状よりも、周りの人にどう思われるかがまず気になる、という人も多かったのではないでしょうか。

 

それから、個人的に1番思い出すのは、やはり子供たちに関連することです。

学校が一斉休校になったのは、なかなかの衝撃でした。

下の子供が年長さんで、卒園間際に流行り始めたので、卒園式に保護者が1人しか出席できなかったり、卒園遠足が近場にしか行けなくなったり、いろいろなことが制限されてしまいました。

なんとか小学校の入学式は行われましたが、すぐに休校になり、ちゃんと通えるようになるまでに、かなりの日数がかかりました。

なんだかもう遠い記憶になっているような気もしますが、いまだに給食中も前を向いて黙って食べていたり、運動会が短縮されたり、いろいろなことが制限されたままです。

子供たちにとって、多くの影響があったコロナ禍のことは、きっとずっと忘れられないと思います。

 

この本の中でも、シングルマザーの椎名梓と幼稚園児の息子さんのやり取りが何度も出てくるのですが、母親目線で読んでしまうと、もう切なかったですね…。

彼女は、コロナ病棟で働いているために、家にも帰らずホテル暮らしをしているのですが、彼女も息子さんもどれだけ寂しくて辛かったでしょう…。

子供たちとそんなに長い間離れ離れになるなんて、想像できません。

 

医療従事者の方々、今はどんな状況なんでしょうか…。

なかなかコロナの勢いも収まりませんが、少しは状況が良くなっているのでしょうか。

子供を産んでから、子供を連れて病院に行く機会が増え、何度か入院したこともありますが、看護師さんの優しさや温かさに触れることが何度もありました。

お医者さんより看護師さんと接する機会の方が多いですしね。

看護師さんの仕事ぶりを見て、私には看護師の仕事は絶対無理だーと、いつも思います。

コロナ禍でなくても大変な仕事なのに、コロナ禍になって、きっともっと大変になった方が多いのだと思います。

改めて、医療従事者の方々に敬意を表します。

 

著者紹介

1978年、沖縄県生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。内科医。2004年から医師として勤務。11年、第4回島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、12年、『誰がための刃 レゾンデートル』(のちに『レゾンデートル』と改題し文庫化)で作家デビュー。15年、『仮面病棟』が啓文堂書店文庫大賞を受賞。18年より『崩れる脳を抱きしめて』『ひとつむぎの手』『ムゲンのi』『硝子の塔の殺人』で本屋大賞にノミネート。他の主なシリーズ・作品に「天久鷹央」シリーズ、「神酒クリニック」シリーズ、『傷痕のメッセージ』『真夜中のマリオネット』など。

amazonより引用

まとめ

知念実希人さんの新刊「機械仕掛けの太陽」についてまとめました。

医師である知念実希人さんが、コロナ禍についてどのようなことを書かれたのか、興味がある方は、ぜひ読んでみてください。


伊藤調さんの「ミュゲ書房」についてまとめます!!



この本を読んだきっかけ

Twitterや読書メーターでよく見かけていて、多くの人が絶賛しているので、興味を持ちました。

読書メーターでは、「ミュゲ書房」の話題が広がり続け、「この本をこの方に読んでほしい」と指名するおすすめリレーキャンペーンも実施されていました。

こんな人にオススメ

  • 本ができるまでの過程に興味がある人
  • 出版社の仕事に興味がある人
  • 本屋さんが好きな人
  • 仕事につまづいている人

あらすじ

そこは、人も物語も再生する本屋さん

小説編集の仕事をビジネスと割り切れない、若手編集者の宮本章は、新人作家・広川蒼汰の作品を書籍化できず、責任を感じ退職する。ちょうどその頃、北海道で書店を経営していた祖父が亡くなり、章はその大正時代の洋館を改装した書店・ミュゲ書房をなりゆきで継ぐことに……。
失意の章は、本に関する膨大な知識を持つ高校生・永瀬桃ら、ミュゲ書房に集まる人々との出会いの中で、さらに彼のもとに持ち込まれた二つの書籍編集の仕事の中で、次第に本づくりの情熱を取り戻していく。そして彼が潰してしまった作家・広川蒼汰は――。

挫折を味わった編集者は書店主となり、そしてまた編集者として再起する。本に携わる人々と、彼らの想いを描いたお仕事エンターテインメント。

出版社より引用

この本のおすすめ

1冊の本ができあがり、販売されるまでの過程がわかる!!

主人公の宮本章が、元編集者の経歴を活かして、ミュゲ書房に関わりのある人たちと本を作る物語なのですが、その中で本を作り上げる過程がよくわかります。

本の装丁についてや、本と本屋を結ぶ配本方法について、また出版業界の裏側など、本が出版され販売されるまでのいろいろな過程が書かれています。

自動配本」という、書店に届ける本のラインナップや冊数を取次が書店の意向を反映せずに決める配本方法が普及した結果、いわゆる町の本屋さんが厳しい状況に追い込まれていることもわかります。


北海道に行った雰囲気が味わえる!!

この物語は北海道のA市が舞台になっており、その雰囲気が味わえる作品になっています。

北海道の食べ物や雪の描写などが出てくるので、北海道に行った気分になれますよ。


美味しそうな食べ物がいっぱい!!

「ミュゲ書房」では、大学生の池田という青年が、書房のキッチンで不定期にカフェをやっているのですが、池田の作るおやつや飲み物が美味しそうに描写されています。

また、絵本の中に出てくるお菓子を作ったりもするので、絵本とお菓子がリンクしているところも素敵だな、と思いました。

この本を読んでいると、きっとおやつを食べたくなりますよ〜(笑)


感想

読後、優しい気持ちになれる素敵な物語でした。

ストーリー展開も起伏があり、読んでいて穏やかな気持ちになる場面、ハラハラする場面、ワクワクする場面と、いろんな場面があり、飽きることなく読めました。

「ミュゲ書房」は、大正末期に建てられた洋館を改装した建物なんですが、その雰囲気がすごく素敵なのが伝わってくるし、そこに関わる人もいい人ばかりで、ミュゲ書房みたいな本屋さんがあったら行きたいなーって思いました。

本好き、本屋さん好きの人がまさに求めているようなところだと思います。

主人公の章の人柄がいいのは物語を通して伝わってきましたが、ミュゲ書房を始めたおじいちゃんおばあちゃんが、たぶん相当素敵なご夫婦だったんだろうな、と思いました。

おじいちゃんおばあちゃんの築いてきた人脈がなければ、章がミュゲ書房をやって行くことは無理だったんじゃないかな…。

ミュゲ書房の経営に関わっている人たちが、みんなそれぞれ個性的で魅力があり、応援したくなりました。

特に高校生の永瀬桃は、スーパー女子高生ですね。

本の知識が半端ないので、彼女に選書してほしいと思いました。

物語の中で実際にある本や絵本なども多く出てくるのですが、参考文献として巻末に一覧があるので、もし気になった本があれば読んでみるというのもいいかもしれません。

1冊の本を作り上げて売り出す苦労もわかって、やっぱり紙の本っていいよねー!!としみじみ思いました。

装丁に凝った本もけっこうありますが、それは電子書籍では味わえないですもんね。

思わずスリスリ触ってしまう手触りの本とか、絵本みたいに色使いが綺麗な本があったり、紙の本じゃないと味わえない本もありますよね。

これからも紙の本をどんどん手に取って、その1冊に関わった人たちの想いを感じながら読みたいと思いました。


著者紹介

北海道出身、東京在住。大学図書館などで業務に携わってきた。2019年5月より『ミュゲ書房』をWeb小説サイト「カクヨム」に投稿開始。本作でデビュー。本作には北海道の風景や自然、食べ物が多く登場する。


amazonより引用



まとめ

伊藤調さんの「ミュゲ書房」についてまとめましたが、本好きの間で静かに口コミが広がっている本ということで、それも納得の1冊でした!

新しい作家さんなので、今後もどのような作品を出してくれるのか、期待したいですね。

読んでくださり、ありがとうございました!!



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