本のむし子

40代主婦の読書日記ブログです。読んだ本の感想などを気ままに書いていきます。

原作


映画が話題になっている湊かなえさんの
母性」について詳しくまとめます!


この本を読んだきっかけ

映画が上映されていて観てみたいと思ったのですが、とりあえず原作を先に読みたい派なので、読むことにしました。

こんな人にオススメ

  • 「母性」とは何か、気になる人
  • 「毒親」「毒母」などのテーマに興味がある人
  • 母親との関係に何か引っかかりがある人
  • 湊かなえさんのファンの人

「母性」あらすじ


女子高生が自宅の中庭で倒れているのが発見された。母親は言葉を詰まらせる。「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて」。世間は騒ぐ。これは事故か、自殺か。……遡ること十一年前の台風の日、彼女たちを包んだ幸福は、突如奪い去られていた。母の手記と娘の回想が交錯し、浮かび上がる真相。これは事故か、それとも――。圧倒的に新しい、「母と娘」を巡る物語(ミステリー)。

出版社より引用

この本の特徴やテーマ

「母性」とは

この本では「母性」について、

母性など本来は存在せず、女を家庭に縛り付けるために、男が勝手に作り出し、神聖化させたまやかしの性質を表わす言葉にすぎないのではないか。

そのため、社会の中で生きていくに当たり、体裁を取り繕おうとする人間は母性を意識して身につけようとし、取り繕おうとしない人間はそんな言葉の存在すら無視をする。

p52より引用

と書いてあります。

体裁を取り繕おうとするために母性を身につける、というのは少し言い過ぎかもしれませんが、生まれつき備わってるものとは言えないかもしれないですよね。

子供を産んでから母性がわいてくる人もいるし、子育てをする中で徐々に芽生える人もいるだろうし、人それぞれなのではないかと思いますね。

ただ、ルミ子の清佳に対する態度や考え方には、私はあまり母性は感じられませんでした。

以前に読んだ早見和真さんの「八月の母」でもそんなことが描かれていたなぁ、と思い出しました。

こちらも「母性」とは何かという問いについて触れた作品なので、よろしければ…。

母と娘、それぞれの想い

この本は、「母の手記」と「娘の回想」が交互に語られて進んで行きます。

同じことについて書いてるのに、母であるルミ子と娘の清佳とでは、全く異なる見方や捉え方をされているのです。

ルリ子は「愛能う限り、娘のことを大切に育ててきた」と語っていますが、清佳は母から愛されていない、と感じています。

人によって感じ方や捉え方が違うということは、どんな人間関係でも起こり得ることですが、それが親子となると、より一層深い溝となってしまうのではないでしょうか。

言葉に出さなくても相手はわかってくれるだろう、と考えがちですが、親子であっても言葉で伝えあうことはやはり大切なことなのだと思います。

印象に残ったフレーズ


愛されるためには、正しいことをしなければならない。喜ばれることをしなければならない。あなたがそこにいるだけでいい。そんな言葉はわたしの人生には登場しなかったのだから…。

p39 清佳の言葉

いわゆる「無償の愛」のことですね。子供が親から欲しいのは無償の愛ですよね。

子供の存在自体を認めて受け入れることが大切です。


食事はきちんと与えられていた。毎晩、風呂に入り、やわらかく温かい布団で寝ていた。給食費を期日に出せなかったこともない。(中略)これが親の愛だというのなら、わたしは満たされる方に分類される。しかし、中谷亨は、そういうのは愛とは呼ばない、とわたしに言った。体裁を整えているだけだ、と。

p114 清佳の言葉

清佳の彼氏である享の言葉ですが、スパッと言い切ってくれて、気持ちがいいですね。

親が衣食住を子供に提供するのなんて当たり前ですもんね。

体裁を整えるだけの親にならないように気を付けたいです。


母性を持ち合わせているにもかかわらず、誰かの娘でいたい、庇護される立場でありたい、と強く願うことにより、無意識のうちに内なる母性を排除してしまう女性もいるんです

p216 清佳の言葉

ルミ子がまさにそういうタイプです。母への想いが強すぎて、全然親離れできていないです。

親離れ子離れって大事なことですが、案外できてない人が多いのかも…。


感想(ネタバレあり)

うーん、これはまた感想が難しいですね(っていつも言ってますね笑)。

最近いわゆる「毒母」関連の作品をけっこう読んできたせいか、読み終わった直後は、この本はあまり響かなかったなぁーと思ったんです。

今まで読んできたものと比べて、そんなに強烈ではなかったので。

でも、気付けばこの本のことばかり考えていて、実はけっこう響いてたのかも?と思って、感想を書くことにしました。

母の立場になって読むか、娘の立場になって読むかで、けっこう感想が変わりそうです。

私は娘でもあり、娘を持つ母でもありますが、終始娘の清佳に感情移入して読みましたね。

母のルミ子には全く共感できなかったです。

私自身、あまり母といい関係ではないから、ルミ子が彼女の母に持つ異常なまでの愛を理解できなかったのかもしれませんが…。


よく友達親子みたいに仲の良い母娘っているみたいですが、ルミ子と母のような関係なのでしょうか?

自分が子供産んでからも「ママ大好き、ママに何日も会えないとか考えられない」って言ってる女性の話を聞いたことがありますが、そういう感じなのでしょうか。

そういう母娘関係の人って、自分が娘を持った時に娘ともいい関係を築けそうでいいな、と羨ましく思っていたのですが、この本を読んで、実はそんなこともないのかも?と思いました。

母親と仲良しの娘でも、いろいろ抱えていることがあるのかもしれないんですね。

自分が娘のままでいる限り、母にはなり切れないのかもしれないですね。


 

それにしてもルミ子は少し極端過ぎるのではないか、とは思います。

子供を産むのも「母親が喜んでくれるから」という考えなのが、もう全然理解できないし、何をするにも母親が喜んでくれるように、という前提なのが、ちょっと気味悪かったです。

そりゃあ母親に褒めてもらいたい、喜んでもらいたい、と思う気持ちは、どの子にでもあると思いますよ。

でも、母親のために子供を産むとか、自分の子を育てる時にも、母が喜んでくれるように育てるとか、そんな風に考えるのでしょうか?

田所の実家で褒められた時も、「母から受け継いだものを認めてくれた」と感じて喜んでるんですよね。

「自分」というものが、ルミ子にはないのだろうか?と思いました。

やたら自意識過剰なところがあるので、肯定されて生きてきたのはわかりますが。

「母親に愛されている自分」しかないんですよね。

そういう意味では、ルミ子の母親も歪んだ愛情でルミ子を育てたのかな、と感じました。

たぶん、親の思うようにしていれば褒められる、という条件付きの愛情だったのではないでしょうか。

親の思う子供になるように、ルミ子は育てられたのかもしれません。

そもそも結婚相手も親が後押ししたからという理由で決めたし、ルリ子は反発できずにいたのか、そもそも反発するということすらも感じないように育てられたのか…。

「母が望むような子になろうと努力していたのに、どうして、娘は私の気持ちを汲み取ろうとしないのだろう」という文章がルミ子の手記にあるので、きっとそうなんでしょう。


 

清佳はただ母から愛されたかっただけでしょうね。

その気持ちは痛いほど伝わってきました。

することなすこと母には伝わらず、空回りになってしまうわけですが…、母ならもう少し娘の気持ちを汲み取ってあげてほしかった。

私自身がルミ子だったら汲み取れるのかって考えてしまいましたが、たぶんルミ子ほどひどくはないと思いますね…。

少なくとも自分の思うように娘を育てようとは思わないし、娘に自分の気持ちを汲み取ってもらおうとは思わずに、ちゃんと言葉で伝えようとするとは思います。


 

それから、何であまり響かなかったと感じたのか、って考えたんですが、終わり方が納得いかなかったせいもあると思うんです。

清佳が自殺してからかなりの年月が経っているのはわかるんですが、そんなにうまくいかないでしょ…と。

私が清佳なら、母のことも父のことも許せないだろうし、りっちゃんのお店になんか行かないだろうし、ましてや父が不倫してた家になんか住まないだろうし。

そういえば、この父親も最低ですね。

生い立ちに事情があるとはいえ、感想にするほどでもないくらい、最低です。

見て見ぬフリをして、不倫してるとか、もう意味わからないです。

そんな父親、母親が許したからと言って、許せないですよね。

話を戻しますが、長い年月の間に、ルミ子と清佳の間にどういう時間が流れたのかわかりませんが、そう簡単に母と娘の関係って修復できるもんでしょうか。

清佳がルミ子のことを許したのかな。

ただ、清佳が出産したら、またどうなるか…が問題になってくると思いますね。

自分が求めたものを我が子に捧げたいという想いを持って物語は終わりますが、そこからがいろいろ大変だと思います。

子供を育てる中で、きっとルミ子への想いがたくさん湧き上がってくると思います。

私もこんな風に愛されたかったとか、私もこうしてほしかったとか…恨めしく思う気持ちが出てくるのではないかと。

毒親に育てられた人はそういう悩みを抱えてる人、多いですからね。

清佳がそこを乗り越えられるか、この家族の物語はまたそこから始まると思います。

最後がハッピーエンドっぽいのが救いだという感想もけっこう見たので、私が拗らせ過ぎてるのかもしれません…。


 

それからなんと言ってもこの本で1番印象に残った言葉「愛能う限り」という言葉、皆さん知ってましたか?(笑)

私は聞いたことも使ったこともなかったですが、この本の影響で気味の悪い言葉にしか思えなくなってしまいました…。

強烈なインパクトを持つ言葉でした。


著者紹介

1973(昭和48)年、広島県生まれ。2007(平成19)年、「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。翌年、同作を収録する『告白』が「週刊文春ミステリーベスト10」で国内部門第1位に選出され、2009年には本屋大賞を受賞した。2012年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門、2016年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。2018年『贖罪』がエドガー賞候補となる。他の著書に『少女』『Nのために』『夜行観覧車』『母性』『望郷』『高校入試』『豆の上で眠る』『山女日記』『物語のおわり』『絶唱』『リバース』『ポイズンドーター・ホーリーマザー』『未来』『ブロードキャスト』、エッセイ集『山猫珈琲』などがある。


出版社より引用

たくさん気になる作品があります。


まとめ

「母性」についてや、母娘関係について、いろいろと考えさせる作品でした。

この作品がどう映像化されているのか、映画の方もすごく気になるのですが、観に行く時間もないので、いつか観る機会ができればいいなと思います。



こんにちは、むし子です!
「祈りのカルテ 再会のセラピー」
について、まとめていきます!


この本を読んだきっかけ

前作「祈りのカルテ」を読んで、とても良かったので、続編も読みたいと思いました。

また、ドラマにはこちらの続編に登場する人物も出てくるようなので、

チェックしておかなきゃ!と思いました。

 

前作「祈りのカルテ」の記事はこちら↓↓

https://www.mushikoblog.com/inorino-carte/

こんな人にオススメ

  • 医療系のミステリーが好きな人
  • 知念実希人さんのファンの人
  • 医師を目指してる人&研修医の人
  • ミステリーも好きだけど、感動する話も好きな人

あらすじ

出版社によるあらすじ紹介


感涙必至の連作医療ミステリ!

研修を経て、循環器内科医となった諏訪野良太は、学会発表を終えた帰り、医学生時代の同級生である小鳥遊に遭遇する。小鳥遊が連れていた研修医・鴻ノ池に、研修のエピソードを求められた諏訪野の脳裏に蘇るのは、親身に寄り添ってきた患者たちのこと。まるで戦場のような救急部、心の傷と向き合う形成外科、かけがえのない“ある人”との出会いと別れを経験した緩和ケア科。切なくもあたたかな記憶の扉がいま開く。心震える医療ミステリ「祈りのカルテ」シリーズ、待望の新刊!

出版社より引用

あらすじを詳しく見ていきましょう!!

あらすじを詳しく紹介!

プロローグ

諏訪野は学会での発表を終えた後、

医学生時代の同級生である小鳥遊優たかなしゆうが、女性研修医を連れているのを偶然発見し、

小鳥遊と女性研修医の鴻ノ池舞と飲みに行くことになった。

鴻ノ池から研修時代の面白い経験を聞かせてほしい、と言われ、過去の記憶を思い出す。

という導入から始まり、この後に、諏訪野が研修医の時の話が3つ続きます。


救急夜噺

・患者名:秋田竜也あきたたつや(56歳、男性)

・入院診療科:救命救急部 (諏訪野の指導医:柚木慧ゆずきけい

・入院理由:路上で倒れて助けを求めているのを通行人が救急要請した

秋田は前年に一度、軽い胃腸炎で救急車を呼び、

治療後も「入院させろ!」とごねたことがあり、

その時に対応した医師の一人が諏訪野だった。

急性アルコール中毒による意識障害と思われ処置するが、突如秋田の体が痙攣し始めた。

諏訪野と指導医の柚木は、なぜ秋田が痙攣を起こしたのか、秋田が何かの病気でないかを探る。

秋田の体には、両肩から胸元にかけて龍の刺青が彫ってあり、

薬物をやっている可能性も考える。

諏訪野は秋田と話をして持病がないかを聞き出そうとするが、

秋田は、とにかく入院させろと、やけにまた入院にこだわる様子。

薬物を使用していないか確かめるために、なんとか尿検査を受けることには同意してもらうが、

尿検査をした後、またしても秋田が気を失ってしまう。

秋田はなぜ入院にこだわるのか、そしてなぜ気を失ったのか、真相は。


割れた鏡

・患者名:月村空良つきむらそら(25歳、女性)

・入院診療科:形成外科 (諏訪野の指導医:三上翔馬みかみしょうま

・入院理由:あご辺りのフェイスラインを細くする美容形成手術を受けたいと希望している

空良は連ドラに出演経験もある女優だが、大きな美容手術を7回、

ボトックスやヒアルロン酸注入などを合わせると、数え切れないほどの処置を受けている。

前のクリニックで、これ以上の手術は難しいと言われ、紹介されてきた。

三上がその手術はリスクが大きいことや、もしリスクを取って手術に成功しても、

美しくなるかは分からない、ということを説明するが、彼女は手術しろと主張を曲げない。

三上は、彼女が「重度の醜形恐怖症」であると言う。

自分の顔が醜いという想いに囚われる精神症状であり、

その患者は何度も美容形成手術を繰り返す人が多いと言う。

空良と、芸能事務所の社長である国松に、なんとか手術をしてほしいと頼まれ、

精神科の診療を受けることを条件として、三上は手術を受けたのだった。

空良には双子ユニットとしてデビューした妹の海未うみがいるが、

空良が過去に起こしたスキャンダルなどが原因となり、

二人の仲は修復できないほど悪くなってしまっていた。

ある日、海未が空良を訪ねてきたところに諏訪野は遭遇し、

海未も手術をやめてほしいと思っていることを知る。

空良がそこまで顔を変えることにこだわる理由は何なのか。


二十五年目の再会

・患者名:広瀬秀太ひろせしゅうた(男性)

・入院診療科:緩和ケア科 (諏訪野の指導医 窪啓太郎)

・入院理由:悪性中皮腫(肺を包む胸膜から生じた癌)

広瀬は元々救急部の常連で、たびたび救急外来を受診しており、

諏訪野を見かけては、「良太先生」と話し掛けてくるのだった。

「体には気を付けるんだぞ」などと、諏訪野の体調を気遣うようなことをいつも言ってくれる。

広瀬に残された時間は、あと2〜3週間しかない。

広瀬には小さい頃からずっと会っていないという子供がおり、

諏訪野は最後になんとか二人を会わせたいと考える。

けれども、広瀬は実は自分が25年前に強盗の罪で逮捕され、

7年の懲役を食らった犯罪者だと諏訪野に告白する。

そのため、子供と会うのは気が進まないようだった。

ただ、その強盗の犯罪は、本当は冤罪であると広瀬は言う。

諏訪野は、広瀬が冤罪であったことをなんとか突きとめようとする。

果たして、広瀬は本当に冤罪なのか、そして自分の子供と会うことはできるのか…。


この本の注目すべき点!

知念さんの他作品の人物が登場する!

私は「祈りのカルテ」シリーズしか読んでいないのですが、

この本には、「天久鷹央シリーズ」に出てくる小鳥遊や鴻ノ池が、

エピローグとプロローグ、章と章の間(幕間)に登場します。

また、刑事の桜井公康も第3章に登場します。

さらには第2章で、「改貌屋 天才美容外科医・柊貴之の事件カルテ」の柊の名前も登場します。

知念さんのファンの方は、盛り上がるのではないでしょうか。

また、諏訪野が他の本に登場することもあるみたいなので、

いろんなリンクを探すのも楽しそうですね。

そういえば、前に読んだ「ひとつむぎの手」に、諏訪野が出てきたことを思い出しました。


心に残ったフレーズ

「救急医の使命は、ここに運び込まれた患者の命を全身全霊で繫ぎとめること。

それ以外のことに余計な労力は使わず、力をためておく。

ここは戦場、…命が交錯する場所だから。」

P33 救急医 柚木の言葉

「命が交錯する場所」という表現が、深いですよね。

毎日、戦場のような場所で、人の命を救う仕事をしている医師の皆さんは、

改めてすごいなぁ、と思いました。

医師の皆さんだけでなく、看護師の皆さんや、医療に携わる人たちを本当に尊敬します。


「『死』を迎える瞬間は、誕生の瞬間と同じくらいに、その人物にとって厳粛で、最も大切な時間だ。

その瞬間をもって、人生は完成する。」

p164 緩和ケア科 窪の言葉

この窪先生の言葉も、すごく深いなぁ、と思いました。

誕生した瞬間と同じくらい死の瞬間が大切か…。

誕生の瞬間は自分ではあまり意識がないけど、死は意識がある状態から向かって行くから、

ある意味、誕生よりも大切な瞬間かもしれない、と感じました。

もちろん、誕生しなければ死もないわけで、どちらが大切だとは言えないですが…。


感想

今回も前作に引き続き、諏訪野先生、大活躍でした!

第3章では警察も顔負けの活躍っぷりで、もう探偵として活動できるんじゃないか、

と思うくらいでした(笑)

続編ということで、諏訪野先生が初期臨床研修を終えてからの話かと想像していたのですが、

この本もまだ初期研修を受けている頃の話でした。

ただプロローグで、何年後かの諏訪野が出てきて、学会で発表したという記述があったので、

医師として着々とキャリアを積んでいるのだろうな、と想像することができました。

また続編として、初期研修を終えた後の話も読みたいと思いました。

「祈りのカルテ」シリーズ、これからもどんどん展開してほしいですね。

第3章は緩和ケア科の話でしたが、とても興味深かったです。

もし将来、自分がガンにかかったとしたら、緩和ケア科のお世話になりたい、と思いました。

また、大切な人がかかった時にも、選択肢として考えたい、とも思いました。


著者紹介

1978年、沖縄県生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。内科医。2004年から医師として勤務。11年、第4回島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、12年、『誰がための刃 レゾンデートル』(のちに『レゾンデートル』と改題し文庫化)で作家デビュー。15年、『仮面病棟』が啓文堂書店文庫大賞を受賞。18年より『崩れる脳を抱きしめて』『ひとつむぎの手』『ムゲンのi』『硝子の塔の殺人』で本屋大賞にノミネート。他の主なシリーズ・作品に「天久鷹央」シリーズ、「神酒クリニック」シリーズ、『傷痕のメッセージ』『真夜中のマリオネット』など。


出版社より引用



まとめ

10/8に始まるドラマ『祈りのカルテ〜研修医の謎解き診察記録〜』の原作について書きました。

こちらの「再会のセラピー」もドラマでは扱われるようなので、

ドラマが始まる前に読めてよかったです!

この本でたびたび登場した広瀬ですが、原田泰造さんが演じられるようですね。

かなり重要な役どころなので、演技に期待したいです!

ドラマが始まる前に、原作を読んでみようかな〜と思っている方、

前作の「祈りのカルテ」とあわせて、ぜひ読んでみて下さい!



10/8からドラマが始まる
知念実希人さんの「祈りのカルテ」の原作について
まとめていきます!!


この本を読んだきっかけ

今年の始めくらいに一度読んだのですが、続編を読むに当たり、再読しようと思いました。

また、ドラマ化されるとのことで、原作を読んでおきたいと思いました。

こんな人にオススメ

  • 医療系のミステリーが好きな人
  • 知念実希人さんのファンの人
  • 医師を目指してる人&研修医の人
  • ミステリーも好きだけど、感動する話も好きな人

あらすじ

出版社によるあらすじ紹介


諏訪野良太(すわのりょうた)は、純正会医科大学附属病院の研修医。初期臨床研修で、内科、外科、小児科など、様々な科を回っている。
ある夜、睡眠薬を大量にのんだ女性が救急搬送されてきた。その腕には、別れた夫の名前が火傷(やけど)で刻まれていた。
離婚して以来、睡眠薬の過剰摂取を繰り返しているというが、諏訪野は女性の態度と行動に違和感を覚える。
彼女はなぜか、毎月5日に退院できるよう入院していたのだ――(「彼女が瞳を閉じる理由」)。

初期の胃がんの内視鏡手術を拒否する老人や、循環器内科に入院した我が儘な女優など、驚くほど個性に満ちた5人の患者たちの謎を、新米医師、諏訪野良太はどう解き明かすのか。

「彼」は、人の心を聴ける医師。心震える連作医療ミステリ!


出版社より引用



むし子
むし子

あらすじをもっと詳しく見ていきましょう!!

あらすじを詳しく紹介!

彼女が瞳を閉じる理由

・患者名:山野瑠香やまのるか(26歳、女性)

・入院診療科:精神科 (諏訪野の指導医:立石聡美)

・入院理由:睡眠薬を多量に飲み救急搬送された

1〜2ヶ月に1回、短いと3週間に1回ペースで過去に20回以上、入退院を繰り返しており、

常連の救急患者さんとなっている。

タバコを押し当てたような火傷で、左腕に「あ き ら」と書いてある。

あきらとは、離婚した元夫の名前。

離婚後、自傷行為を繰り返し、睡眠薬を多量に服用し、自分で救急車を呼ぶことを繰り返すようになった。

1年目の研修医である諏訪野良太は、彼女がなぜ何度も入退院を繰り返しているのか疑問に思う。


悪性の境界線

・患者名:近藤玄三こんどうげんぞう(79歳、男性) 娘の幸子が付き添っている

・入院診療科:外科 (諏訪野の指導医:冴木真也 諏訪野の親友である冴木裕也の父)

・入院理由:早期胃がんの治療を行うため

胃がんが早期発見だったため、内視鏡的粘膜切除術という方法だけで完治するだろうとのことで、

始めは玄三も納得していたし、安心しているようだった。

ところが、玄三がスーツ姿の男性と何か話をした後に、態度が急変し、

手術は拒否すると言い出す。

なんとか説得するも今度は、内視鏡治療ではなく、開腹手術を来週中にやれ、

もし無理なら他の病院に行く、と言い出す。

諏訪野の指導医である冴木は、スーツ姿の男性が悪徳業者なのではないかと疑い、

諏訪野もその男性が何か鍵を握っていると考える。


冷めない傷痕

・患者名:守屋春香もりやはるか(女性) 5歳の娘、花南かなんがいる

・入院診療科:皮膚科 (諏訪野の指導医:桃井佐恵子)

・入院理由:右下腿の裏側に重い火傷を負ったため救急搬送された

揚げ物をしている最中に油をこぼして大火傷を負った、と春香は言っているが、

諏訪野はそれが嘘ではないかと疑う。

料理中に油がかかるなら、体の前面に太腿より上にかかるはずであるということ、

また春香が履いていたロングスカートには油がかかっていなかったことなどから、

諏訪野は嘘ではないかと思ったのだ。

また、処置中に、火傷の端に汚れのようなシミを見つけていたのも気になっていた。

そしてしばらくして、なぜか火傷がさらに広がっているのを見つける。


シンデレラの吐息

・患者名:姫井姫子ひめいひめこ(8歳、女児)

・入院診療科:小児科 (諏訪野の指導医 志村)

・入院理由:喘息発作による呼吸困難で救急搬送された

3歳頃に喘息になり、何度か入院したことがあったが、小学生になってからはあまり発作を起こさなくなっていた。

が、1年前くらいからまた発作を起こすようになり、1年で3回も入院している。

救急部で行なった血液検査の結果を見ると、服薬しているはずのテオフィリンの成分が検出されなかった。

諏訪野たちは、姫子の両親のどちらかが自己判断で薬をやめたのかと疑う。

そんな中、またしても姫子が喘息の発作を起こしてしまう。

諏訪野が姫子のベッドの側にあるゴミ箱を見ると、テオフィリンが捨てられているのが見つかる。


胸に嘘を秘めて

・患者名:四十住絵理あいずみえり[芸名:愛原絵理あいはらえり](27歳、女性)

・入院診療科:循環器内科 (諏訪野の指導医 上林)

・入院理由:特発性の拡張型心筋症

アイドルで女優の絵理は、病院のVIPルームに入院している。

彼女の病気を治すには、心臓移植をするしか方法がない。

そのため、アメリカで移植手術を受ける予定があると言う。

諏訪野が研修医として担当になってまもなく、

絵理が重病で都内病院に入院か⁈というニュースが出回ってしまう。

絵理の事務所の社長は、情報が出回ったのを利用して、

心臓移植にかかる費用のための寄付を募ろうとする。



主人公 諏訪野良太の人物像

・外見:痩せ型の長身 大学6年間柔道部に属していた

・性格:気さくで人懐っこくて気が利く 

・口グセ?:何か頼まれごとをすると「はい喜んで!」と居酒屋の店員のような返事をする

・生い立ち:物心つく前に父親は病死し、小学生の時に母親が銀行員の男性と再婚した
      義父は悪い人ではなかったが、諏訪野は家の中で常に息苦しさを感じていた
      義父に嫌われないために、常に彼の顔色を窺っていたことから、
      他人の感情に敏感になってしまった、と自己分析している

諏訪野は持ち前の性格を生かして、どの科でも上手く立ち回り、指導医たちからも気に入られる。

ただ、人の顔色を窺い過ぎたり、空気を読み過ぎる所があるので、

それが医者としては欠点にもなると、精神科医の立石から言われる。

素早い診断が求められる科よりも、

一人の患者さんに力を入れて診療に当たることのできる内科が向いてるのではないか、

と他の指導医たちからも言われる。

どの診療科に入局するか最後の最後まで悩んでいる諏訪野は、

果たしてどの科に入局することにしたのか?

ご自身で読んで確かめて下さい!


この本のテーマや特徴

研修医の日常がわかる!

医学部を卒業した人は、研修医として2年間の初期臨床研修を受けます。

諏訪野のように、内科や外科、精神科、皮膚科など、さまざまな科を回ります。

その2年が終わると、ようやく勤務医として働くことができますが、

多くの医師がその後さらに3年ほど後期臨床研修として、

進みたい診療科で専門的な知識を身に付けるようですね。

著者の知念さんは実際に医師なので、この本は実体験に基づいて書かれていると推測します。

医師を目指している人や、研修医の人は、この本を読んで参考になったり共感する所がたくさんあるのではないでしょうか。

診療科の特徴、仕事内容がわかる!

諏訪野が回った科にそれぞれの特色があることも興味深かったです。

例えば、皮膚科は拘束時間が短く、産休や育休も取りやすく、女性が働きやすい環境だそうです。

ただ、重度の火傷の患者さんが入院すると、

軟膏を塗って包帯を巻き直して…という処置を1日に何度もするので、かなり大変そうでした。

小児科は他の科に比べて夜に患者さんが多く来るので、当直がダントツ忙しいみたいですね。

ミステリーとしてもヒューマンドラマとしても面白い!

この本は、殺人が起こったり、凶悪犯が出てくるようなミステリーではありません。

患者さんにまつわる謎を諏訪野が解き明かしていく、というミステリーです。

諏訪野は探偵並みに大活躍するわけですが…。

その謎というのが、その患者さんと周りの人の生活や人生と関わっているので、

ヒューマンドラマとも言えると思います。

ミステリーも好きだけど、じーんと来る本も好きだという人に、ぜひオススメです!

心に残ったフレーズ

「いいか、俺たちは患者になにかを強制することはできないんだ。(中略)

こっちが示したすべての情報を理解したうえで患者が選択したことに、医者が口を出すことなんでできないんだよ。

俺たちはそんなに偉くない。」

P68 外科 冴木真也の言葉

世の中には、偉そうな医師が多いイメージですが、

俺たちはそんなに偉くない、と言える冴木先生、カッコいいなぁ、と思いました。


「小児科の仕事の半分は、親への説明みたいなところがあるからね。」

p198 小児科 志村の言葉

私も子供が2人いるので、何度となく小児科にはお世話になっていますが、

親である私の顔を見ながら、きちんと丁寧な説明をして下さる医師には安心感を覚えます。

ろくに説明もせずに薬だけ出して、はいおしまい、みたいな医師もいますが、

そういう医師の所にはまた行こうと思えません。

この志村先生のように、きちんと親へ説明しようとしてくれる医師がいいですよね。

感想

5つの物語、どれも面白かったです。

諏訪野先生、探偵でもないのに活躍し過ぎ!とツッコミを入れたくなるほどの、大活躍でした。

いくら人の懐に入るのが得意だからって、すご過ぎですよ(笑)

でも、こんなお医者さん、実際にいたらぜひ担当してほしいな、と思いました。

担当になったら、多くの人が心を開いてしまいそうな素敵な医師です。

今後の活躍も見たいので、「祈りのカルテ」シリーズをぜひ展開してほしいですね。


最終章で、臓器移植の話が出てきましたが、日本では臓器移植の件数がかなり少ないんですよね。

日本人の臓器移植への理解がなかなか深まっていないのと、

医療機関などで選択肢の提示がなかなか行われないのが原因だそうです。

また、コロナ禍でさらに臓器提供数が減っているそうです。

少し考えさせられました。

この最終章ですが、読み終わって号泣してしまいました。

ぜひドラマでもやってほしいです!(たぶんドラマも号泣)


著者紹介

1978年、沖縄県生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。内科医。2004年から医師として勤務。11年、第4回島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、12年、『誰がための刃 レゾンデートル』(のちに『レゾンデートル』と改題し文庫化)で作家デビュー。15年、『仮面病棟』が啓文堂書店文庫大賞を受賞。18年より『崩れる脳を抱きしめて』『ひとつむぎの手』『ムゲンのi』『硝子の塔の殺人』で本屋大賞にノミネート。他の主なシリーズ・作品に「天久鷹央」シリーズ、「神酒クリニック」シリーズ、『傷痕のメッセージ』『真夜中のマリオネット』など。


出版社より引用


今、ノリに乗ってる作家さんの一人ですよね。

医師の仕事を続けながら、積極的に執筆活動もされているようです。

「祈りのカルテ」以外も読もうと思うのですが、かなりの作品数があるので、

どれから手を付けていいのか悩みます…。

まだ「ひとつむぎの手」しか読んでいません…。

オススメがありましたら、教えて下さい!


まとめ

10/8に始まるドラマ『祈りのカルテ〜研修医の謎解き診察記録〜』の原作について書きました。

Kis-My-Ft2の玉森裕太さんが諏訪野先生役とのことで、

どんな風に演じてくれるのか、とても楽しみです!

玉森さんのドラマ、以前にもいくつか見てなかなか良かったので、期待しています!

原作を読んでいない方、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか!

 


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