本のむし子

40代主婦の読書日記ブログです。読んだ本の感想などを気ままに書いていきます。

あらすじ


「スモールワールズ」が話題となった、
一穂ミチさんの「砂嵐に星屑」について、まとめました!


この本を読んだきっかけ

「スモールワールズ」が話題になっていて、気になっていた作家さんですが、

今年新刊が出ていたことを知り、読みたいと思いました。

ちなみに「スモールワールズ」は、ずっと図書館の予約順番待ちです…。


こんな人にオススメ

  • 何となく日々の生活に疲れたり、虚しさを感じている人
  • 仕事に行き詰まってる人
  • テレビ業界に興味がある人

「砂嵐に星屑」あらすじ

出版社によるあらすじ

直木賞候補『スモールワールズ』で注目を集めた一穂ミチ。 
期待の書き下ろしは、あらゆる世代に刺さるすぎる群像劇! 
日々頑張るあなたが、きっとこの本の中にいます。

舞台はテレビ局。旬を過ぎたうえに社内不倫の“前科”で腫れ物扱いの四十代独身女性アナウンサー(「資料室の幽霊」)、娘とは冷戦状態、同期の早期退職に悩む五十代の報道デスク(「泥舟のモラトリアム」)、好きになった人がゲイで望みゼロなのに同居している二十代タイムキーパー(「嵐のランデブー」)、向上心ゼロ、非正規の現状にぬるく絶望している三十代AD(「眠れぬ夜のあなた」)……。それぞれの世代に、それぞれの悩みや壁がある。 

つらかったら頑張らなくてもいい。でも、つらくったって頑張ってみてもいい。続いていく人生は、自分のものなのだから。世代も性別もバラバラな4人を驚愕の解像度で描く、連作短編集。

出版社より引用

あらすじをもっと詳しく!

この本は、4つの章から成っています。

大阪にある「なにわテレビ」というテレビ局に勤める、

世代も性別もバラバラな4人が主人公です。

むし子
むし子

あらすじをもっと詳しく
紹介します!

〈春〉資料室の幽霊

43歳独身、主任アナウンサーの三木邑子みきゆうこの話。

邑子は東京で生まれ育ち、就職で大阪に来て10年暮らし、

東京へ異動してまた10年、そしてまた大阪に戻って来た。

邑子は、ニュース番組のデスクである先輩の中島と、彼の同期と飲みに行った時に、

邑子の不倫相手であった村雲の幽霊が、13階の資料室でたびたび出るらしい、

という噂を聞かされる。

邑子は、上司であった村雲との不倫のことで、社内で腫れ物扱いされているのだった。

その飲み会の帰り、邑子は幽霊なんて出るわけないと思いつつ、資料室へ行ってみることにする。

資料室へ入り、何も起こらないことを確かめて帰ろうとしたその時、誰かが資料室に入ってきた。

そして、その何者かが電気を消した。

その何者かは、村雲の幽霊ではなく、新人アナの笠原雪乃だった。

彼女は、宴会の途中で「映画の時間なので」と言って帰ってしまったり、

食事会で嫌いな食べ物をせっせと除けたり、と、

あまり良い印象は無い後輩であった。

雪乃も幽霊が出るという噂を聞いて、資料室へ確かめに来たのだった。

するとそこへ、本当に村雲の幽霊が現れた…。

雪乃には見えず、邑子だけにその姿は見えたのだが、

雪乃はなぜ村雲がたびたび資料室にだけ現れるのか、

何か未練があるのなら、解決して成仏させてあげようと言い出す。

その翌日から、邑子と雪乃は、資料室に行くようになる。


〈夏〉泥舟のモラトリアム

〈春〉にも出てきた報道デスクの中島の話。

ある日の朝、大きい地震により目を覚ました中島は、

電車が止まってしまったため、自宅のある西宮から、

会社のある大阪の中心地まで歩いて向かうことにする。

地元の駅で、同期の市岡と出会うが、共倒れのリスクを避けて、

二手に分かれようと提案され、長い道のりを一人で歩くことになる。

歩きながら中島は、同期が自分探しのために、定年を待たずにどんどん退職していくことを考え、

自分の人生についても考えた。

尼崎に着き、自販機で水を電子マネーで買おうと、スマホを取り出した時、

スマホが落ちて、壊れてしまった。

一生懸命歩いてるのに、スマホまで壊れてしまい、何もかもが嫌になってしまう。

一度、怒鳴ってしまったせいで、2年間もろくに口もきいていない大学生の娘のことを考え、

さらに悶々としながら歩き続けた。


〈秋〉嵐のランデブー

タイムキーパーを務める、20代の佐々結花さっさゆかの話。

ある番組の忘年会で、隣に座っていたウェザー担当の木南由朗きなみよしろうのことを好きになり、

そこから交流を深めるうちに、晴れて彼とルームシェアをすることになる。

けれども、由朗はゲイであり、結花と結ばれることはなかった。

結花は最初からそれをわかっていて、由朗とルームシェアをしているのだが、

どうやっても由朗が自分のことを好きになることはないという事実が、

結花の心を打ちのめし、由朗のことを時々傷つけたくなってしまうのだった。

また、結花は結花で、過去に秘密を抱えているのだった。


〈冬〉眠れぬ夜のあなた

非正規のADとして働く30代の堤晴一つつみはるいちの話。

同い年の池尻が進めていた「アラサー」という番組を一本作るように、

中島から任される。

プチ密着みたいな番組で、晴一は自分には向いていないと思うが、

断れるわけもなく、とりあえずやることになる。

密着するのは、並木広道なみきひろみちという芸人で、腹話術の人形を相方として、

病院を回って子供の前で芸を披露する男性だった。

初めて広道に会った時に、腹話術の人形のことを「それ」と言って、

「大切な相方なんで『それ』って言うんはやめてもらえますか」と言われたり、

会話の進行について意見を言われたりして、

やっぱり向いてない、と思ってしまう晴一だが、なんとか広道と交流していく。


この本のテーマや特徴

共感できる場面や心情がたくさん!

4人とも、年代も性別もバラバラで、抱えている問題もそれぞれですが、

登場人物の誰かしらに必ず共感できると思います。

私はアラフォー既婚女性ですが、〈夏〉の中島に一番共感しました。

悩みが一つもない人なんていないよなぁ〜って思いました。

見た感じは悩みがなさそうな人でも、きっと何かしら抱えてるんですよね。

あらゆる人にそっと寄り添ってくれるような、場面や心情で溢れている本です。


テレビ業界のことがチラッと分かる!

テレビ業界と言うと、なんとなく華やかなイメージがありますが、

この本の主人公たちは、邑子以外は、裏方の仕事をしている人たちなので、

華やかなだけではないテレビ業界のことが、少し垣間見れます。

当たり前ですけど、テレビ番組っていろんな人たちが作り上げてるんですよね。

毎日、絶えず放送されている番組というのは、

製作する人たちが、日々苦労と努力をしながら、作り上げた結晶なんだなぁ、

と改めて感じました。


心に残ったフレーズ


心折れる出来事というのは、傷の大小よりタイミングに左右されるのだろう。

p110 中島の言葉

この言葉には本当に共感します。

傷の大小ももちろん関係ないとは言えないけど、タイミングの問題って大きいですよね。

些細なことがきっかけで、何もかも投げ出したくなったり、

心の我慢が限界になってしまうことって、きっと誰にでもありますよね。

悪いことが起こった時に限って、また悪いことが重なったり、

心折れる時って、確かにタイミングに左右されることが多いです。



「正しさって、いたたまれへん気持ちになる。明るいところに引きずり出される感じがするから。
(中略)恥じるな、引け目感じるなっていう圧もひとつの暴力やろってぼくは思う。」

p166 由朗の言葉

今の時代、LGBTQや多様性の時代などと言って、

人と違うことを恥じる必要はない、という風潮がありますが、

そういったことを堂々と公言したい人も、そうでない人もいるし、

恥ずかしいと感じている人も、感じていない人も、いろんな人がいると思います。

本当に難しい問題だと思います。

押し付けがましい態度を取ったりするのは、気を付けないといけないな、と思いました。


「心のケア」なんかしていらん。治りたくない、忘れたくないんです。

p282 広道の言葉

哀しい出来事や辛い出来事を経験してしまった人が、

誰しも癒されたり、治したいと思っているわけではないんですね…。

忘れないために、治したくない、という考えもあるんだなぁ、と、

気付かされました。


感想

一穂ミチさんの本は初めて読んだのですが、とても良かったです。

また、お気に入りの作家さんが増える予感です。

展開が読めそうで読めなくて、最後の方で、

「おー、そういうことだったの!」って分かるところもあって、

物語の組み立て方も、上手い!と思いました。

大阪に住んでいるので、「大阪あるある」みたいなことも、所々散りばめられていて、

クスッと笑えるところもありました。

〈夏〉の話の中に、尼崎のおっちゃんが出てくる場面があり、

弱ってる中島に声をかけて飴ちゃんをくれるんですけど、

大阪の人って、道端で困ってる人に優しいんですよね…。

私は関東出身なんですが、大阪に来てから、

困った時に、その辺のおっちゃんが声をかけてくれたり、

困った人がいると、その辺の人みんな集まって声かけたり、

という場面に何度か遭遇したことがあって、

この〈夏〉の話を読んで、そういう場面を思い出しました。

〈春〉では、邑子にも雪乃にも、どちらにも共感するところがありました。

特に邑子は、見た感じは強そうなタイプの女性かもしれないけど、

いろんな悩みを抱えていて、弱いところももちろんあって、

強そうに見える人でも、一生懸命もがきながら生きてるんだなぁ、と感じました。

雪乃も一見悩みなんてなさそうで強そうな女性だけど、

やっぱりまだまだ若くて未熟なところもあって、可愛らしいな、って思いました。

〈冬〉の晴一に共感する人も多いと思います。

最初は仕事に不安しかなくて、仕方なくやってるような感じだったけど、

だんだん前向きになっていく姿がカッコよくて、応援したくなりました。


幸せそうな人を見ると、あの人はきっと悩みなんてないんだとか、

私みたいにつまらないことで悩んだりしないんだろうなとか、

つい卑屈になったりしてしまいますが、そんなことはないんですよね。

人間誰にでも悩みや苦労があって、みんなそれに向き合いながら、

一生懸命生きているんですよね。

そんなことを改めて気付かされ、辛いのはあなただけじゃないよ、

って、励まされ勇気づけてくれるような本でした。


著者紹介

2007年デビュー。以後勢力的にBL作品を執筆。「イエスかノーか半分か」シリーズは映画化も。2021年、一般文芸初の単行本『スモールワールズ』が直木賞候補、山田風太郎賞候補に。同書収録の短編「ピクニック」で第74回日本推理作家協会賞短編部門候補になる。最新作は『パラソルでパラシュート』。


amazonより引用

BL作品を書いていた作家さんとは、知りませんでした。


まとめ

この本を読んで、「スモールワールズ」と「パラソルでパラシュート」を

ますます読みたくなりました。

人の繊細な心を描くのが、とても上手い作家さんだな、と思いました。

11/7には、「光のとこにいてね」という新刊が発売される予定だそうで、

そちらも絶対に読みたいと思います!

 

追記:「スモールワールズ」の記事を書いたので、よろしければあわせてご覧ください。

https://www.mushikoblog.com/small-worlds/

 


こんにちは、むし子です!
「祈りのカルテ 再会のセラピー」
について、まとめていきます!


この本を読んだきっかけ

前作「祈りのカルテ」を読んで、とても良かったので、続編も読みたいと思いました。

また、ドラマにはこちらの続編に登場する人物も出てくるようなので、

チェックしておかなきゃ!と思いました。

 

前作「祈りのカルテ」の記事はこちら↓↓

https://www.mushikoblog.com/inorino-carte/

こんな人にオススメ

  • 医療系のミステリーが好きな人
  • 知念実希人さんのファンの人
  • 医師を目指してる人&研修医の人
  • ミステリーも好きだけど、感動する話も好きな人

あらすじ

出版社によるあらすじ紹介


感涙必至の連作医療ミステリ!

研修を経て、循環器内科医となった諏訪野良太は、学会発表を終えた帰り、医学生時代の同級生である小鳥遊に遭遇する。小鳥遊が連れていた研修医・鴻ノ池に、研修のエピソードを求められた諏訪野の脳裏に蘇るのは、親身に寄り添ってきた患者たちのこと。まるで戦場のような救急部、心の傷と向き合う形成外科、かけがえのない“ある人”との出会いと別れを経験した緩和ケア科。切なくもあたたかな記憶の扉がいま開く。心震える医療ミステリ「祈りのカルテ」シリーズ、待望の新刊!

出版社より引用

あらすじを詳しく見ていきましょう!!

あらすじを詳しく紹介!

プロローグ

諏訪野は学会での発表を終えた後、

医学生時代の同級生である小鳥遊優たかなしゆうが、女性研修医を連れているのを偶然発見し、

小鳥遊と女性研修医の鴻ノ池舞と飲みに行くことになった。

鴻ノ池から研修時代の面白い経験を聞かせてほしい、と言われ、過去の記憶を思い出す。

という導入から始まり、この後に、諏訪野が研修医の時の話が3つ続きます。


救急夜噺

・患者名:秋田竜也あきたたつや(56歳、男性)

・入院診療科:救命救急部 (諏訪野の指導医:柚木慧ゆずきけい

・入院理由:路上で倒れて助けを求めているのを通行人が救急要請した

秋田は前年に一度、軽い胃腸炎で救急車を呼び、

治療後も「入院させろ!」とごねたことがあり、

その時に対応した医師の一人が諏訪野だった。

急性アルコール中毒による意識障害と思われ処置するが、突如秋田の体が痙攣し始めた。

諏訪野と指導医の柚木は、なぜ秋田が痙攣を起こしたのか、秋田が何かの病気でないかを探る。

秋田の体には、両肩から胸元にかけて龍の刺青が彫ってあり、

薬物をやっている可能性も考える。

諏訪野は秋田と話をして持病がないかを聞き出そうとするが、

秋田は、とにかく入院させろと、やけにまた入院にこだわる様子。

薬物を使用していないか確かめるために、なんとか尿検査を受けることには同意してもらうが、

尿検査をした後、またしても秋田が気を失ってしまう。

秋田はなぜ入院にこだわるのか、そしてなぜ気を失ったのか、真相は。


割れた鏡

・患者名:月村空良つきむらそら(25歳、女性)

・入院診療科:形成外科 (諏訪野の指導医:三上翔馬みかみしょうま

・入院理由:あご辺りのフェイスラインを細くする美容形成手術を受けたいと希望している

空良は連ドラに出演経験もある女優だが、大きな美容手術を7回、

ボトックスやヒアルロン酸注入などを合わせると、数え切れないほどの処置を受けている。

前のクリニックで、これ以上の手術は難しいと言われ、紹介されてきた。

三上がその手術はリスクが大きいことや、もしリスクを取って手術に成功しても、

美しくなるかは分からない、ということを説明するが、彼女は手術しろと主張を曲げない。

三上は、彼女が「重度の醜形恐怖症」であると言う。

自分の顔が醜いという想いに囚われる精神症状であり、

その患者は何度も美容形成手術を繰り返す人が多いと言う。

空良と、芸能事務所の社長である国松に、なんとか手術をしてほしいと頼まれ、

精神科の診療を受けることを条件として、三上は手術を受けたのだった。

空良には双子ユニットとしてデビューした妹の海未うみがいるが、

空良が過去に起こしたスキャンダルなどが原因となり、

二人の仲は修復できないほど悪くなってしまっていた。

ある日、海未が空良を訪ねてきたところに諏訪野は遭遇し、

海未も手術をやめてほしいと思っていることを知る。

空良がそこまで顔を変えることにこだわる理由は何なのか。


二十五年目の再会

・患者名:広瀬秀太ひろせしゅうた(男性)

・入院診療科:緩和ケア科 (諏訪野の指導医 窪啓太郎)

・入院理由:悪性中皮腫(肺を包む胸膜から生じた癌)

広瀬は元々救急部の常連で、たびたび救急外来を受診しており、

諏訪野を見かけては、「良太先生」と話し掛けてくるのだった。

「体には気を付けるんだぞ」などと、諏訪野の体調を気遣うようなことをいつも言ってくれる。

広瀬に残された時間は、あと2〜3週間しかない。

広瀬には小さい頃からずっと会っていないという子供がおり、

諏訪野は最後になんとか二人を会わせたいと考える。

けれども、広瀬は実は自分が25年前に強盗の罪で逮捕され、

7年の懲役を食らった犯罪者だと諏訪野に告白する。

そのため、子供と会うのは気が進まないようだった。

ただ、その強盗の犯罪は、本当は冤罪であると広瀬は言う。

諏訪野は、広瀬が冤罪であったことをなんとか突きとめようとする。

果たして、広瀬は本当に冤罪なのか、そして自分の子供と会うことはできるのか…。


この本の注目すべき点!

知念さんの他作品の人物が登場する!

私は「祈りのカルテ」シリーズしか読んでいないのですが、

この本には、「天久鷹央シリーズ」に出てくる小鳥遊や鴻ノ池が、

エピローグとプロローグ、章と章の間(幕間)に登場します。

また、刑事の桜井公康も第3章に登場します。

さらには第2章で、「改貌屋 天才美容外科医・柊貴之の事件カルテ」の柊の名前も登場します。

知念さんのファンの方は、盛り上がるのではないでしょうか。

また、諏訪野が他の本に登場することもあるみたいなので、

いろんなリンクを探すのも楽しそうですね。

そういえば、前に読んだ「ひとつむぎの手」に、諏訪野が出てきたことを思い出しました。


心に残ったフレーズ

「救急医の使命は、ここに運び込まれた患者の命を全身全霊で繫ぎとめること。

それ以外のことに余計な労力は使わず、力をためておく。

ここは戦場、…命が交錯する場所だから。」

P33 救急医 柚木の言葉

「命が交錯する場所」という表現が、深いですよね。

毎日、戦場のような場所で、人の命を救う仕事をしている医師の皆さんは、

改めてすごいなぁ、と思いました。

医師の皆さんだけでなく、看護師の皆さんや、医療に携わる人たちを本当に尊敬します。


「『死』を迎える瞬間は、誕生の瞬間と同じくらいに、その人物にとって厳粛で、最も大切な時間だ。

その瞬間をもって、人生は完成する。」

p164 緩和ケア科 窪の言葉

この窪先生の言葉も、すごく深いなぁ、と思いました。

誕生した瞬間と同じくらい死の瞬間が大切か…。

誕生の瞬間は自分ではあまり意識がないけど、死は意識がある状態から向かって行くから、

ある意味、誕生よりも大切な瞬間かもしれない、と感じました。

もちろん、誕生しなければ死もないわけで、どちらが大切だとは言えないですが…。


感想

今回も前作に引き続き、諏訪野先生、大活躍でした!

第3章では警察も顔負けの活躍っぷりで、もう探偵として活動できるんじゃないか、

と思うくらいでした(笑)

続編ということで、諏訪野先生が初期臨床研修を終えてからの話かと想像していたのですが、

この本もまだ初期研修を受けている頃の話でした。

ただプロローグで、何年後かの諏訪野が出てきて、学会で発表したという記述があったので、

医師として着々とキャリアを積んでいるのだろうな、と想像することができました。

また続編として、初期研修を終えた後の話も読みたいと思いました。

「祈りのカルテ」シリーズ、これからもどんどん展開してほしいですね。

第3章は緩和ケア科の話でしたが、とても興味深かったです。

もし将来、自分がガンにかかったとしたら、緩和ケア科のお世話になりたい、と思いました。

また、大切な人がかかった時にも、選択肢として考えたい、とも思いました。


著者紹介

1978年、沖縄県生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。内科医。2004年から医師として勤務。11年、第4回島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、12年、『誰がための刃 レゾンデートル』(のちに『レゾンデートル』と改題し文庫化)で作家デビュー。15年、『仮面病棟』が啓文堂書店文庫大賞を受賞。18年より『崩れる脳を抱きしめて』『ひとつむぎの手』『ムゲンのi』『硝子の塔の殺人』で本屋大賞にノミネート。他の主なシリーズ・作品に「天久鷹央」シリーズ、「神酒クリニック」シリーズ、『傷痕のメッセージ』『真夜中のマリオネット』など。


出版社より引用



まとめ

10/8に始まるドラマ『祈りのカルテ〜研修医の謎解き診察記録〜』の原作について書きました。

こちらの「再会のセラピー」もドラマでは扱われるようなので、

ドラマが始まる前に読めてよかったです!

この本でたびたび登場した広瀬ですが、原田泰造さんが演じられるようですね。

かなり重要な役どころなので、演技に期待したいです!

ドラマが始まる前に、原作を読んでみようかな〜と思っている方、

前作の「祈りのカルテ」とあわせて、ぜひ読んでみて下さい!



10/8からドラマが始まる
知念実希人さんの「祈りのカルテ」の原作について
まとめていきます!!


この本を読んだきっかけ

今年の始めくらいに一度読んだのですが、続編を読むに当たり、再読しようと思いました。

また、ドラマ化されるとのことで、原作を読んでおきたいと思いました。

こんな人にオススメ

  • 医療系のミステリーが好きな人
  • 知念実希人さんのファンの人
  • 医師を目指してる人&研修医の人
  • ミステリーも好きだけど、感動する話も好きな人

あらすじ

出版社によるあらすじ紹介


諏訪野良太(すわのりょうた)は、純正会医科大学附属病院の研修医。初期臨床研修で、内科、外科、小児科など、様々な科を回っている。
ある夜、睡眠薬を大量にのんだ女性が救急搬送されてきた。その腕には、別れた夫の名前が火傷(やけど)で刻まれていた。
離婚して以来、睡眠薬の過剰摂取を繰り返しているというが、諏訪野は女性の態度と行動に違和感を覚える。
彼女はなぜか、毎月5日に退院できるよう入院していたのだ――(「彼女が瞳を閉じる理由」)。

初期の胃がんの内視鏡手術を拒否する老人や、循環器内科に入院した我が儘な女優など、驚くほど個性に満ちた5人の患者たちの謎を、新米医師、諏訪野良太はどう解き明かすのか。

「彼」は、人の心を聴ける医師。心震える連作医療ミステリ!


出版社より引用



むし子
むし子

あらすじをもっと詳しく見ていきましょう!!

あらすじを詳しく紹介!

彼女が瞳を閉じる理由

・患者名:山野瑠香やまのるか(26歳、女性)

・入院診療科:精神科 (諏訪野の指導医:立石聡美)

・入院理由:睡眠薬を多量に飲み救急搬送された

1〜2ヶ月に1回、短いと3週間に1回ペースで過去に20回以上、入退院を繰り返しており、

常連の救急患者さんとなっている。

タバコを押し当てたような火傷で、左腕に「あ き ら」と書いてある。

あきらとは、離婚した元夫の名前。

離婚後、自傷行為を繰り返し、睡眠薬を多量に服用し、自分で救急車を呼ぶことを繰り返すようになった。

1年目の研修医である諏訪野良太は、彼女がなぜ何度も入退院を繰り返しているのか疑問に思う。


悪性の境界線

・患者名:近藤玄三こんどうげんぞう(79歳、男性) 娘の幸子が付き添っている

・入院診療科:外科 (諏訪野の指導医:冴木真也 諏訪野の親友である冴木裕也の父)

・入院理由:早期胃がんの治療を行うため

胃がんが早期発見だったため、内視鏡的粘膜切除術という方法だけで完治するだろうとのことで、

始めは玄三も納得していたし、安心しているようだった。

ところが、玄三がスーツ姿の男性と何か話をした後に、態度が急変し、

手術は拒否すると言い出す。

なんとか説得するも今度は、内視鏡治療ではなく、開腹手術を来週中にやれ、

もし無理なら他の病院に行く、と言い出す。

諏訪野の指導医である冴木は、スーツ姿の男性が悪徳業者なのではないかと疑い、

諏訪野もその男性が何か鍵を握っていると考える。


冷めない傷痕

・患者名:守屋春香もりやはるか(女性) 5歳の娘、花南かなんがいる

・入院診療科:皮膚科 (諏訪野の指導医:桃井佐恵子)

・入院理由:右下腿の裏側に重い火傷を負ったため救急搬送された

揚げ物をしている最中に油をこぼして大火傷を負った、と春香は言っているが、

諏訪野はそれが嘘ではないかと疑う。

料理中に油がかかるなら、体の前面に太腿より上にかかるはずであるということ、

また春香が履いていたロングスカートには油がかかっていなかったことなどから、

諏訪野は嘘ではないかと思ったのだ。

また、処置中に、火傷の端に汚れのようなシミを見つけていたのも気になっていた。

そしてしばらくして、なぜか火傷がさらに広がっているのを見つける。


シンデレラの吐息

・患者名:姫井姫子ひめいひめこ(8歳、女児)

・入院診療科:小児科 (諏訪野の指導医 志村)

・入院理由:喘息発作による呼吸困難で救急搬送された

3歳頃に喘息になり、何度か入院したことがあったが、小学生になってからはあまり発作を起こさなくなっていた。

が、1年前くらいからまた発作を起こすようになり、1年で3回も入院している。

救急部で行なった血液検査の結果を見ると、服薬しているはずのテオフィリンの成分が検出されなかった。

諏訪野たちは、姫子の両親のどちらかが自己判断で薬をやめたのかと疑う。

そんな中、またしても姫子が喘息の発作を起こしてしまう。

諏訪野が姫子のベッドの側にあるゴミ箱を見ると、テオフィリンが捨てられているのが見つかる。


胸に嘘を秘めて

・患者名:四十住絵理あいずみえり[芸名:愛原絵理あいはらえり](27歳、女性)

・入院診療科:循環器内科 (諏訪野の指導医 上林)

・入院理由:特発性の拡張型心筋症

アイドルで女優の絵理は、病院のVIPルームに入院している。

彼女の病気を治すには、心臓移植をするしか方法がない。

そのため、アメリカで移植手術を受ける予定があると言う。

諏訪野が研修医として担当になってまもなく、

絵理が重病で都内病院に入院か⁈というニュースが出回ってしまう。

絵理の事務所の社長は、情報が出回ったのを利用して、

心臓移植にかかる費用のための寄付を募ろうとする。



主人公 諏訪野良太の人物像

・外見:痩せ型の長身 大学6年間柔道部に属していた

・性格:気さくで人懐っこくて気が利く 

・口グセ?:何か頼まれごとをすると「はい喜んで!」と居酒屋の店員のような返事をする

・生い立ち:物心つく前に父親は病死し、小学生の時に母親が銀行員の男性と再婚した
      義父は悪い人ではなかったが、諏訪野は家の中で常に息苦しさを感じていた
      義父に嫌われないために、常に彼の顔色を窺っていたことから、
      他人の感情に敏感になってしまった、と自己分析している

諏訪野は持ち前の性格を生かして、どの科でも上手く立ち回り、指導医たちからも気に入られる。

ただ、人の顔色を窺い過ぎたり、空気を読み過ぎる所があるので、

それが医者としては欠点にもなると、精神科医の立石から言われる。

素早い診断が求められる科よりも、

一人の患者さんに力を入れて診療に当たることのできる内科が向いてるのではないか、

と他の指導医たちからも言われる。

どの診療科に入局するか最後の最後まで悩んでいる諏訪野は、

果たしてどの科に入局することにしたのか?

ご自身で読んで確かめて下さい!


この本のテーマや特徴

研修医の日常がわかる!

医学部を卒業した人は、研修医として2年間の初期臨床研修を受けます。

諏訪野のように、内科や外科、精神科、皮膚科など、さまざまな科を回ります。

その2年が終わると、ようやく勤務医として働くことができますが、

多くの医師がその後さらに3年ほど後期臨床研修として、

進みたい診療科で専門的な知識を身に付けるようですね。

著者の知念さんは実際に医師なので、この本は実体験に基づいて書かれていると推測します。

医師を目指している人や、研修医の人は、この本を読んで参考になったり共感する所がたくさんあるのではないでしょうか。

診療科の特徴、仕事内容がわかる!

諏訪野が回った科にそれぞれの特色があることも興味深かったです。

例えば、皮膚科は拘束時間が短く、産休や育休も取りやすく、女性が働きやすい環境だそうです。

ただ、重度の火傷の患者さんが入院すると、

軟膏を塗って包帯を巻き直して…という処置を1日に何度もするので、かなり大変そうでした。

小児科は他の科に比べて夜に患者さんが多く来るので、当直がダントツ忙しいみたいですね。

ミステリーとしてもヒューマンドラマとしても面白い!

この本は、殺人が起こったり、凶悪犯が出てくるようなミステリーではありません。

患者さんにまつわる謎を諏訪野が解き明かしていく、というミステリーです。

諏訪野は探偵並みに大活躍するわけですが…。

その謎というのが、その患者さんと周りの人の生活や人生と関わっているので、

ヒューマンドラマとも言えると思います。

ミステリーも好きだけど、じーんと来る本も好きだという人に、ぜひオススメです!

心に残ったフレーズ

「いいか、俺たちは患者になにかを強制することはできないんだ。(中略)

こっちが示したすべての情報を理解したうえで患者が選択したことに、医者が口を出すことなんでできないんだよ。

俺たちはそんなに偉くない。」

P68 外科 冴木真也の言葉

世の中には、偉そうな医師が多いイメージですが、

俺たちはそんなに偉くない、と言える冴木先生、カッコいいなぁ、と思いました。


「小児科の仕事の半分は、親への説明みたいなところがあるからね。」

p198 小児科 志村の言葉

私も子供が2人いるので、何度となく小児科にはお世話になっていますが、

親である私の顔を見ながら、きちんと丁寧な説明をして下さる医師には安心感を覚えます。

ろくに説明もせずに薬だけ出して、はいおしまい、みたいな医師もいますが、

そういう医師の所にはまた行こうと思えません。

この志村先生のように、きちんと親へ説明しようとしてくれる医師がいいですよね。

感想

5つの物語、どれも面白かったです。

諏訪野先生、探偵でもないのに活躍し過ぎ!とツッコミを入れたくなるほどの、大活躍でした。

いくら人の懐に入るのが得意だからって、すご過ぎですよ(笑)

でも、こんなお医者さん、実際にいたらぜひ担当してほしいな、と思いました。

担当になったら、多くの人が心を開いてしまいそうな素敵な医師です。

今後の活躍も見たいので、「祈りのカルテ」シリーズをぜひ展開してほしいですね。


最終章で、臓器移植の話が出てきましたが、日本では臓器移植の件数がかなり少ないんですよね。

日本人の臓器移植への理解がなかなか深まっていないのと、

医療機関などで選択肢の提示がなかなか行われないのが原因だそうです。

また、コロナ禍でさらに臓器提供数が減っているそうです。

少し考えさせられました。

この最終章ですが、読み終わって号泣してしまいました。

ぜひドラマでもやってほしいです!(たぶんドラマも号泣)


著者紹介

1978年、沖縄県生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。内科医。2004年から医師として勤務。11年、第4回島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、12年、『誰がための刃 レゾンデートル』(のちに『レゾンデートル』と改題し文庫化)で作家デビュー。15年、『仮面病棟』が啓文堂書店文庫大賞を受賞。18年より『崩れる脳を抱きしめて』『ひとつむぎの手』『ムゲンのi』『硝子の塔の殺人』で本屋大賞にノミネート。他の主なシリーズ・作品に「天久鷹央」シリーズ、「神酒クリニック」シリーズ、『傷痕のメッセージ』『真夜中のマリオネット』など。


出版社より引用


今、ノリに乗ってる作家さんの一人ですよね。

医師の仕事を続けながら、積極的に執筆活動もされているようです。

「祈りのカルテ」以外も読もうと思うのですが、かなりの作品数があるので、

どれから手を付けていいのか悩みます…。

まだ「ひとつむぎの手」しか読んでいません…。

オススメがありましたら、教えて下さい!


まとめ

10/8に始まるドラマ『祈りのカルテ〜研修医の謎解き診察記録〜』の原作について書きました。

Kis-My-Ft2の玉森裕太さんが諏訪野先生役とのことで、

どんな風に演じてくれるのか、とても楽しみです!

玉森さんのドラマ、以前にもいくつか見てなかなか良かったので、期待しています!

原作を読んでいない方、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか!

 


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