
瀬尾まいこさんの
「掬えば手には」について詳しくまとめます!
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この本を読んだきっかけ
瀬尾まいこさんの作品をいくつか読んできて、好きな作品が多かったので、この作品も読みたいと思いました。
こんな人にオススメ
- ほっこりしたい人
- 優しい気持ちになりたい人
- 人との関わり方について考えたい人
- 高校生・大学生くらいの若い人
- 瀬尾まいこさんの作品が好きな人
「掬えば手には」あらすじ
ちょっぴりつらい今日の向こうは、光と音があふれてる。
『幸福な食卓』本屋大賞受賞作『そして、バトンは渡された』に連なる、究極に優しい物語
私は、ぼくは、どうして生まれてきたんだろう?
大学生の梨木匠は平凡なことがずっと悩みだったが、中学3年のときに、エスパーのように人の心を読めるという特殊な能力に気づいた。
出版社より引用
ところが、バイト先で出会った常盤さんは、匠に心を開いてくれない。常盤さんは辛い秘密を抱えていたのだった。
だれもが涙せずにはいられない、切なく暖かい物語。
この本の特徴やテーマ
「平凡」とか「普通」って?
主人公の梨木は、自分が「平凡」であることを悩んでいます。
勉強も運動も何もかもが「普通」で特徴ゼロ、どの集団にいてもちょうどど真ん中平均値だと、自分のことを評価しています。
そんな梨木ですが、中学3年生の時に「他人の心を読める能力」があるかもしれない、と気付きます。
その能力を活かして、いろいろな人と上手く付き合い、「人たらしだ」と言われるくらい他人に好かれるのですが、新しくバイトに入ってきた常盤さんだけは、梨木に心を開いてくれないのです。
梨木には「他人の心を読める能力」なんてなくて、本当に「平凡」な人だったのでしょうか?
そもそも「平凡」とか「普通」な人って何? 特別な能力がないといけないの?
そんなことを問いかけてくる作品です。
ファンタジー要素とミステリー要素あり!
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、梨木は常盤さんに出会って少し経った頃から、ある特殊なことができるようになります。
それが、常盤さんの辛い秘密にも関わってくるのですが、ファンタジーでもあり、ほんの少しミステリーでもあります。
常盤さんの秘密は何なのか、読んでいる途中でわかる方も多いかもしれませんが、最後にどうなるのか、ぜひ読んで確かめてみてください!
心に残ったフレーズ

特に印象的だったフレーズを紹介します!
「思いつくこと何でもしてみたら?空回りでも同情でも的外れでも、なんとかしたいって気持ちは、間違いじゃないんだから」
p80 河野さんの言葉
やらずに後悔するなら、やって後悔した方がいい、ってことですよね。
梨木が常盤さんのことをなんとかしてあげたいって思う気持ちについて、友達の河野さんが言った言葉ですが、なかなか清々しいなって思いました。
でも、相手に嫌がられたり、拒絶される可能性もあるから、実際に行動するのは難しいですよね…。
名前なんてなんだっていい。そんなの記号のようなものだと言う人もいるけど、ぼくは自分の名前が重かった。誰かの思いが込もっている言葉は、どうしてもそこに意味がついてしまう。
p173 梨木の言葉
これは親の立場で読むと、複雑ですね…。
我が子たちも、自分の名前が重いと感じる日が来ないだろうか…と心配になってしまいました。
いろんな思いを込めて付けましたが…。そんな日が来ないことを願います。
感想(ネタバレなし)
瀬尾まいこさんの作品はいくつか読んだことがあり、面白くてほっこりするものが多かったので、きっとこの作品も!と期待して、2022年の締めの一冊にしました。
今までに読んだ瀬尾さんの作品で、悪人と出会ったことがないのですが、悪人が出てくる作品もあるのでしょうか?
この作品も悪い人が出てこなくて、ほっこりして温かい気持ちになりました。
私の苦手なファンタジー要素が少し入っていましたが、それでも好きだなぁと思える作品でした。
この作品を一年の終わりの作品に選んで正解でした!
登場人物、みんな個性があって、みんな好きでしたが、梨木がバイトしてるオムライス店の大竹店長がナイスキャラでしたね〜。
パワハラ全開の店長なんて、一緒には絶対働きたくないですけどね。
でも、嫌な人に見せといて実はいい人、みたいなのって、架空の世界ではありがちだけど、実生活でもまぁありますもんね。
梨木は倍ほどの歳の大竹にも人たらしを活かして打ち解けたのがすごいですね。
私がパートで働いたとして、大竹店長と上手くやっていけるかな?って変な想像してしまいましたよ。
河野さんも香山もみんな若いって感じがしてよかったなぁ〜。
おばさんが読むと、みんなキラキラして眩しく感じるくらいでした(笑)
これは、ぜひ高校生・大学生(中学生でもいけるかな?)若い方に読んでもらいたいな、と思いました。
自分には何の取り柄もないとか、自分って何でこんな平凡なんだろうとか、悩んでる若者ってけっこう多いと思うんですけど、ぜひそういう方に読んでもらいたいです。
「単純明快に暗いところゼロで十代をやり過ごしているやつなんていないもんな」っていうセリフが出てくるんですけど、それはほんとそうだと思いました。
若い人の方が悩みに敏感なんですよね。
思春期前後の人が読んだら、きっとけっこう刺さると思います。
瀬尾まいこさん、映画も大ヒットした『そして、バトンは渡された』など読みましたが、今のところハズレなしです!
あまり話題にはなりませんが、個人的に『戸村飯店 青春100連発』が大好きなんですよね。
まだまだたくさん他の作品も読んでいきたいです!
著者紹介
1974年、大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒。2001年「卵の緒」で坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、翌年、単行本『卵の緒』で作家デビュー。05年『幸福な食卓』で吉川英治文学新人賞、08年『戸村飯店 青春100連発』で坪田譲治文学賞、19年『そして、バトンは渡された』で本屋大賞を受賞。『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』など著書多数。唯一無二の、爽やかで感動的な作風が愛されている。
出版社より引用
感想(ネタバレあり)
ここからは、ネタバレを含む感想を書いていきますので、未読の方は気を付けてください!!
梨木の「他人の心を読める能力」は、結局エスパーでも神様でもなくて、彼がただただ人に寄り添う能力が高い、ということだと思うのですが、もうそれは素晴らしい能力だと思いました。
彼は自分が「平凡」だと思い込んでるけど、「人たらし」と呼ばれて、どんな人とも上手く付き合えて、ってかなりの才能だと思います。
人の気持ちを読み取り過ぎるから彼女と長く付き合えないとか、大変な面もあるようですが、それは歳をとるごとに上手くできていくようになればいいな、と思いました。
人の気持ちを読んで、良い方向にしかその能力を使わないのが、また彼らしいし、もし人の気持ちが読めても、なかなかどうにかしようとは思わないですしね。
人のために動けるめちゃくちゃ温かい人で、こんな友達いたらいいなぁって思うような魅力的な主人公でした。
お節介といえばお節介ですけどね。
でも、なぜか、一番近くにいる河野さんの気持ちは読めないのが、面白いですよねー。
気付かないフリをしてるのかと思ったら、本当に気付いてなさそう(笑)
河野さん、このままでいいのかなーって心配になっちゃいました。
途中から、常盤さんから声が聞こえてくるというファンタジーな展開になりましたが、その声の持ち主、言われてみればすぐ気付きそうなのに、気付かず読みました。
気付いたっていうレビューもチラホラ見たので、まだまだ読み込みが浅かったです(笑)
常盤さん、元の明るい常盤さんに戻れそうな終わり方だったけど、秋音の存在を知って余計に悲しくなってしまわないのかな、とも思いました。
お腹にいた子が明るくて元気な子だったと分かったら、産みたかったなぁとか、そんな子を堕ろしてしまったんだ…とか、思い返してしまうこともあるかも…と思ってしまって、少し常盤さんのことが心配になりました。
それから、初回限定の「アフターデイ」という後日譚が付いてたんですが、これが大竹店長目線のストーリーでまたよかったです。
大竹店長、嫌なやつかと思ったら、案外ちゃんと人のことを見ていて、気配りもできて、なんか損してるなーと思いましたが、梨木と出会ってよかったですよね。
親子みたいな感じで、読んでいてとても微笑ましかったです。
梨木が就職しちゃったら、大竹店長めちゃくちゃ寂しがりそう。
オムライス店の社員になっちゃえばいいのに、とか思っちゃいました。
それから、この本のテーマでもある「平凡」ということについてですが、「平凡」とか「普通」の人なんていないんだよ、というメッセージを私は受け取りました。
どんな人でも誰かにとっては特別な存在だし、誰かにとって何者でもない人なんて、世の中には1人もいないんだよな、っていう。
私も誰かの特別な存在になってたらいいな、と思いました。
そして、梨木のように、人に寄り添えるような気持ちを少しでも持つようにしよう、と思います。
まとめ
安定の瀬尾ワールドで、ほっこり温かい気持ちになれる作品でした。
優しい気持ちになりたい時は、瀬尾まいこさんの作品を読もうかな、と改めて思いました。

2022年最後の投稿になります!
来年もよろしくお願いします!
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