
町田そのこさんの「宙ごはん」について詳しくまとめます!
2023年本屋大賞にもノミネートされています!
「宙ごはん」は「そらごはん」と読みます!
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この本を読んだきっかけ
町田そのこさんは「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」を読んで好きになって以来、新刊を読もうと決めている作家さんです。
この作品は本屋大賞にノミネートされたのもあり、早く読みたい!と心待ちにしていました。
町田さんの作品、図書館でも大人気なんですよね。
ちなみに、町田さんの作品を読むのは5冊目です。
こんな人にオススメ
・少女の成長物語が好きな人
・料理が出てくる物語が好きな人
・家族を描いた物語が好きな人
・本屋大賞作品に興味のある人
・町田そのこさんのファンの人
「宙ごはん」あらすじ
この物語は、あなたの人生を支えてくれる
出版社より引用
宙には、育ててくれている『ママ』と産んでくれた『お母さん』がいる。
厳しいときもあるけれど愛情いっぱいで接してくれるママ・風海と、イラストレーターとして活躍し、大人らしくなさが魅力的なお母さん・花野だ。
二人の母がいるのは「さいこーにしあわせ」だった。
宙が小学校に上がるとき、夫の海外赴任に同行する風海のもとを離れ、花野と暮らし始める。
待っていたのは、ごはんも作らず子どもの世話もしない、授業参観には来ないのに恋人とデートに行く母親との生活だった。
代わりに手を差し伸べてくれたのは、商店街のビストロで働く佐伯だ。
花野の中学時代の後輩の佐伯は、毎日のごはんを用意してくれて、話し相手にもなってくれた。
ある日、花野への不満を溜め、堪えられなくなって家を飛び出した宙に、佐伯はとっておきのパンケーキを作ってくれ、レシピまで教えてくれた。
その日から、宙は教わったレシピをノートに書きとめつづけた。
全国の書店員さん大絶賛! どこまでも温かく、やさしいやさしい希望の物語。
この本のテーマや特徴
主人公「宙」と周りの人々の成長物語
この物語は、主人公である宙(そら)の保育園時代の話から始まります。
そして、小学校、中学校、高校、高校卒業後…と、宙の成長を描く物語です。
それと同時に、宙の周りの人々の成長物語でもあります。
特に、母親の花野(かの)の成長が、宙の成長と同じくらい描かれていると感じました。
その他の登場人物も問題を抱えている人が多く、宙や花野がそういった人たちと関わる中で、いろんなことに気付いたり学んだり、助け合ったりしていきます。
美味しそうな料理の描写が素敵!
この作品は5章から成っていますが、どの章にも美味しそうな料理が出てきます。
パンケーキ、ボロネーゼ、にゅうめん、きのこのポタージュ、などなど…。
ビストロで働く佐伯こと「やっちゃん」が料理を作る場面や、宙が料理をする場面がありますが、紙から料理の匂いがしてくるような美味しそうな描写が印象的です。
誰かの愛情がたっぷりこもった料理を食べたくなりますよ〜。
印象に残ったフレーズ

印象に残ったフレーズを3つ紹介します!
一緒に食べないと、意味がないんだよ。
p105 宙の言葉
宙が、なかなか一緒にごはんを食べてくれない花野に対して思う言葉ですが、一人で食べるのと、誰かと食べるのと、全然違いますよね。
しかも子供のうちはなおさらだと思います。
ひとというのは、しあわせの山を登る生き物なんだ
p200 佐伯の言葉
やっちゃん、いいこと言う~(笑)
人生の山を、いつ、どんな風に、どんな山を、誰と登っていくのか、もう数え切れない選択肢がありますよね。
たまには下ることがあっても、登っていける人生がいいですね。
『とにかく生きる』が最優先。そのあとはいろいろあるだろうけど、『笑って生きる』ができたら上等じゃないかなあとあたしは思ってる。
p346 花野の言葉
「とにかく生きる」ということを意識しなくてもいい私は、いろいろ恵まれているのかもしれない、と思いました。
だけど、「笑って生きる」は…あまりできていないかもしれない…。
無理に笑う必要はないけど、できればもっと笑って暮らしたいと思うので、まずは日々の生活への心構えを見直した方がいいかもしれないな…。
感想(ネタバレなし)
「町田そのこさん、やっぱりすごいなぁ…」っていうのが、まず読み終わって出た感想です。
以前から町田さんの作品の感想には「密度が濃い」とか「物語に引き込む力がすごい」というようなことを書いているんですが、この作品もまたまたすごかったです…。
町田さんの作品は、歪んだ母と娘の関係であったり、母親が原因で恵まれない家庭環境にいる子供の物語が多いですが、今回も母と娘の関係に焦点を当てた作品と言えるかと思います。
もちろん他の登場人物も重要な役割を担っているので、母娘関係だけがテーマというわけではありません。
この作品も重くて苦しい話ではありますが、町田さんの作品は救いがない終わり方をしないものが多いので、どこか安心感はあります。
この物語の始まりは、花野の浮世離れした感じの態度や言動に怒りを感じたりイライラして、宙がかわいそうで仕方なかったです。
どんな方向に話が進むのか、不安に思いながら読み進めましたが、これでもかってくらいに、いろんなことが起こりましたね…。
町田さん、ちょっと詰め込みすぎでしょ〜と思った部分も正直ありましたが、めちゃくちゃ引き込まれたことは確かです。
途中から涙が滲んできて、最後は涙を流しながら読みました。
母娘関係だけでなく、恋愛や友達関係も含めたいろんな要素について書かれています。
ほんとにてんこ盛りな内容なんですけど、それをうまくまとめてくるのが、町田そのこさんなんですよねー。
それにしても、宙はこんなに複雑な環境で育ったのに、めちゃくちゃいい子ですよ…。
たぶん普通だったらグレると思うんですけど、愛情を注いでくれて頼りになる大人が近くにいたから、こんなに素敵な子に育ったんだと思います。
この作品の個人的MVPは、圧倒的に、佐伯ことやっちゃんですよ!ここ大事!(笑)
というか、これ読んだ人は誰もがそう思うと思いますけどね(笑)
こんないい人います〜?人を見た目で判断しちゃいけないなーって改めて思いましたよー。
やっちゃんの存在感、すごかったです。もうほんとにほんとに大好きです。
こんな大人に出会えたら、世の中グレる人なんていないんじゃないかって思ったくらい。
そして、やっちゃんの人柄や行動力にプラスして、やっちゃんの作る料理に救われた人、どれだけいるんでしょう…。
私もやっちゃんと友達になって、料理を食べさせてもらいたい、って本気で思いました。

やっちゃんに惚れ込みすぎじゃない?
だって、この物語、やっちゃんがいないと成り立ってないし、やっちゃんがいなかったら、登場人物誰もちゃんと生きていけてないですよ、たぶん。
他の登場人物もみんなどこか問題を抱えてる人ばっかりで、最後にはもうみんな応援したくてたまらない気持ちになりました。
みんながみんなで支え合って助け合うことの素晴らしさを、ひしひしと感じました。
私はやっちゃんほどの包容力なんて全くないけど、せめて子供たちにとってはそんな存在になれたらいいなと思いました。
もし誰か頼ってくれることがあれば、ちゃんと手を差しのべたいです。
そして、毎日いやいや文句を言いながら料理をしている私ですが…、ごはんの持つ力を再認識したので、もう少し嫌がらずに料理しようかな、とか思いました…。
いやでもやっぱり料理は面倒くさい(笑)
最近は母娘関係がテーマの作品はお腹いっぱいだったので、あぁまたそれ系の作品か…と思って読み始めたんです。
でも、そんな気持ちも吹っ飛ぶくらい、この作品は響いてくるものがありました。
「52ヘルツのクジラたち」とか「星を掬う」も読みましたが、私はこの「宙ごはん」の方が好きです。
「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」が1番好きな作品でしたが、それと同じくらい好きです。
最近出た新刊「あなたはここにいなくとも」も、またまた評判が良さそうですよー。
早く読みたいです!
まだ読んでいないのに宣伝して申し訳ないですが、気になる方はぜひどうぞ!
著者紹介
1980年生まれ。福岡県在住。
2016年「カメルーンの青い魚」で第15回「女による女のためのR−18文学賞」大賞を受賞。
2017年、同作を含む「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」でデビュー。
「52ヘルツのクジラたち」で2021年本屋大賞を受賞。
著書に「ぎょらん」「うつくしが丘の不幸の家」「星を掬う」「コンビニ兄弟」シリーズなどがある。
出版社より引用
感想(ネタバレあり)
ネタバレありの感想なんで、ぶっちゃけていっちゃいますよー(笑)
未読の方は気を付けてくださいね。
まず、もう、やっちゃん殺さんといてー!!ですよね…。
みんなが大好きなやっちゃん、何で死なせちゃうの…。
小説あるあるですが、ちょっと人が簡単に死にすぎなんですよ。
そんなに簡単に交通事故とか不慮の事故って起こらないですよね…(いつどこで起こるかわからないのは事実ですが)。
さっきも書きましたが、この物語、やっちゃんがいないと成り立ってないですよ。ほぼ主人公ですよ。
いやだから、やっちゃんがいなくてもみんなちゃんとやっていけるよ、ってことを最後に描きたかったのかな。
最後の場面なんかは、やっちゃんならこうするだろうな、っていうことをみんな頭で思い描いてるんですもんね。
そして、宙が「ビストロサエキ」を継ぐと決めたのも、やっちゃんを失った末の決意ですしね。
それにしても、町田そのこさんの作品は、不幸な人が多すぎで、さらにその人にもっと不幸なことが起こる、という展開が多くて、大変なんですよね。
最後は大体救いがあるから、いいんですけど…。

印象に残った場面がいくつかありました。
宙がやっちゃんに対して「わたしはカノさんほど、弱くない」と言う場面と、マリーが母親について語る場面がありましたが、小6でそんな風に考えられる?ってびっくりでした。
マリーなんて「母親を求めて接するから傷つく、家族としての責任を負ってくれてるから、私も家族としての一員としてできることをやろう」なんてことを言うんですよ。
ちょうど我が子も小6なんですけど、こんなこと絶対考えてませんよ(笑)
というより、こんなこと子供に考えさせたらいけないような気もしました。
子供は子供らしくいられるのが一番。
マリーはこの場面で退場してしまうんですけど、その後も宙の良き理解者であったらよかったのに、関係が続けばよかったのに、って思ってしまいました。
それから、高校生になった宙が、自分の読書傾向について語る場面があって、「本の中に自分の探してる答えがあるかもしれないと思ってる、から」と言うのですが、これは共感しました。
誰かの意見を聞きたいから、その意見を本の中に求めてる、というのは、私もあるかもしれません。
母親との関係性について、私もいくつかの小説からヒントをもらいました。
若い頃全く読書しなかったんですけど、もっとしておけばもう少し悩みとか減ってたのかな…。
そして、赦されるために謝罪をすることが、相手にとっては暴力になりうる、ということが語られる場面も、印象に残りました。
これは、社会派ミステリーなどでも、そういう意味のことが書かれているものがあるように思います。
「贖罪」ですよね。
謝罪をすればいいってもんじゃないし、自分が赦されたいという思いばかりでは相手には伝わらないし、それは一方的な暴力とも言えるわけです。
そんな点についても書かれていて、町田さん、めちゃくちゃ詰め込んでますよね。
もう書きたいこと、伝えたいことが、たくさんあるんだろうな。
いろいろ文句みたいな感想も書きましたが、この作品は読んでよかったと素直に思っています。
複雑な家族関係を扱った作品って暗い雰囲気になってしまいがちだけど、「ごはん」がテーマにもなっているから、明るくて楽しい雰囲気もあって。
「食べること」が本能的に嫌いな人ってめったにいないと思うので、改めて食事のありがたさも感じました。
楽しい気持ちで食卓を囲むということは、人にとっては欠かせないことなんだと。
そして、複雑な家庭環境だけど、女の子が明るく素直な子に育ったという点で、以前に読んだ「そして、バトンは渡された」という作品を少し思い出しました。
やっぱり周りの大人の影響ってほんと大きいですよね。
映画化もされたので知っている方も多いかと思いますが、一応リンク張りますねー。
まとめ
町田そのこさんの「宙ごはん」についてまとめました!
長々と感想を書いてしまい、読みにくかったかもしれません。
町田さんの作品は、重いけど得るものがあるので、今後も読んでいきたいと思います!
そして、本屋大賞ノミネート作品を全て読み終えました!
個人的ランキングや、大賞予想など、近いうちに記事を書きたいと思っていますので、また読んでいただけたら嬉しいです!

最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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