直木賞候補にもなった一穂ミチさんの
「スモールワールズ」についてまとめます!
2022年の「本屋大賞」でも第3位になっています!


この本を読んだきっかけ

直木賞候補になったり、本屋大賞候補になっていたり、かなり話題になっていたので、ずっと読みたいと思っていました。

少し前にこのブログで記事を書いた「砂嵐に星屑」もすごくよかったので、

早く「スモールワールズ」も読みたいなーと思っていたところ、ようやく図書館で借りることができました!


こんな人にオススメ

  • 短編集が好きな人
  • いろんなタイプの物語が読みたい人
  • 話題の本を読みたい人

「スモールワールズ」あらすじ

全体のあらすじ

夫婦円満を装う主婦と、家庭に恵まれない少年。「秘密」を抱えて出戻ってきた姉とふたたび暮らす高校生の弟。初孫の誕生に喜ぶ祖母と娘家族。人知れず手紙を交わしつづける男と女。向き合うことができなかった父と子。大切なことを言えないまま別れてしまった先輩と後輩。誰かの悲しみに寄り添いながら、愛おしい喜怒哀楽を描き尽くす連作集。

amazonより引用

あらすじをもっと詳しく!

この本は、6つの章から成っています。

あらすじをもう少し詳しく紹介します!

ネオンテトラ

夫との関係に鬱々としていた美和は、ある夜、一人の中学生男子と出会う。水槽の中で泳ぐペットの熱帯魚と孤独な少年を重ねながら、二人の逢瀬は続けられ……。

出版社より引用

30代半ばの美和は、夫の不倫を知りながらも、夫との子供を授かるのを望んでいますが、なかなか授からず悩んでいます。

ある日、向かいのマンションで父親に怒鳴りつけられている少年を見ますが、その子は美和の姪っ子の同級生の笙一でした。

ある夜、コンビニで笙一と出会ってから、定期的にコンビニで会うようになります。

笙一は、父親に嫌われており、父親が寝るまで帰宅できずに、コンビニで時間をつぶしているのです。

二人は逢瀬を重ねますが、ある日帰宅すると、姪の有紗と笙一がいるのを目撃してしまいます…。


魔王の帰還

鉄二の平和な高校生活はある朝くずされた。泣く子も黙る恐ろしい姉ちゃんが出戻ってきたのだ。傍若無人でめちゃくちゃな姉だが、その裏には悲しい理由がありそうで……。

出版社より引用

鉄二のもとへ、結婚して家を出たはずの姉ちゃん=真央がなぜか戻ってきます。

身長188cm、何もかもが規格外で「魔王」と呼ばれていました。

ふとしたことがきっかけで、鉄二&姉ちゃんと、転校してきた同級生の菜々子の交流が始まり、3人は金魚すくい選手権に出場することになります。

鉄二も菜々子もそれぞれ事情があり、高校生活になじめていませんでしたが、金魚すくい選手権では勝ちたいと思い、練習に励みます。

ある日鉄二は、姉ちゃんが、夫の勇が署名した離婚届を何十枚も持っているのを見つけてしまいます…。

ピクニック

生後十ヵ月の女児が不慮の死を遂げた。幸せな家族に向けられる恐ろしい疑惑――赤ちゃんを殺したのは身内ではないのか。衝撃のラストが待ち受けるミステリー。

出版社より引用

瑛里子は待望の女の子が生まれ、祖母の希和子の名前から一文字とって、「未希」と名付けました。

未希が生後十ヶ月を迎えた頃、単身赴任中の夫の所へ泊まってきたらどうか、と希和子から提案され、希和子に未希を預けることにします。

するとその間に、未希が亡くなってしまいます。

死因は急性硬膜下血腫で、頭に衝撃が加わったことが原因とされ、赤ちゃんを見ていた希和子は過失致死容疑で逮捕されてしまいます。

瑛里子は希和子の無実を信じ、弁護士に相談し、無実を勝ち取りますが…。


花うた

兄を殺され、天涯孤独の身となった深雪は、一通の手紙を送ることに。宛先は、服役中の「兄を殺した加害者」本人だった。往復書簡がもたらす、罪と罰と赦しの物語。

出版社より引用

深雪は兄を殺した向井秋生に対して手紙を書き、最初の頃は怒りをぶつけていました。

秋生はそれに対し、わからない漢字などを辞書で一生懸命調べながら、深雪に返事を書きます。

そうして、二人は何度も手紙のやり取りをするようになりますが、ある時秋生が頭を強く打ち脳震盪を起こしてしまいます。

それからの秋生の手紙は、頭痛がひどいため、辞書を引く余裕がなく、ほとんどがひらがなの文になっていき、手紙で話していた内容も忘れていってしまいます…。

愛を適量

くたびれた中年教師の慎悟は、十数年ぶりに我が子と再会する。「しばらく置いてほしい」と言う子どもとの不思議な共同生活で、家族の時間を取り戻すことはできるのか。

出版社より引用

慎悟のもとに十数年ぶりにやってきた娘の佳澄は、男の姿に変わっていました。

佳澄に自炊することを勧められますが、慎悟は「適量」がわからない、と言います。

料理に関してだけでなく、学校の生徒に対しての距離感など、あらゆる「適量」がわからないのでした。

佳澄は性転換手術をしたいと明かしますが、交際していた女性に500万を貢いでしまったと言います。

慎悟は500万を佳澄に援助するのは「適量」なのか?と悩みます…。

式日

高校時代から仲の良かった後輩の父親が亡くなった。急遽参列することになった葬儀への道中、後輩と自分との間に生まれてしまった、わだかまりの正体に気付いていく……。

出版社より引用

定時制に通っていた先輩のところに、昼間通っている後輩が、辞書を取りにきたことから二人の交流は始まります。

同じ机を共有している二人は紙切れのメモで交流するうち、やがて休みの日に会うような仲になりました。

ある日、先輩は後輩からあることを告白されてから、段々と連絡を取ることが減っていきました…。

この本のテーマや特徴

いろんなタイプの物語に出会える!

6編から成る短編集ですが、どの物語もかなり個性的で、テイストが全く違います。

強いて言えば、「魔王の帰還」と「愛の適量」は少し似た爽やか路線(?)で、「ネオンテトラ」と「ピクニック」はイヤミス路線かな、という気はしますが、

1冊の本で、これだけいろんなタイプの物語に出会えるのは、けっこう珍しいのではないかと思います。

しかも、登場人物もけっこう強烈な個性がある人も多く、読んでいて飽きません。

6編のうち、少なくとも一つは好きな物語が見つかると思います。

いろいろなテイストの物語が書けて、一穂ミチさん、すごいです。

少しずつ章と章がつながっている!

ネタバレになるので、詳しくは書きませんが、各章に少しだけつながりがあります。

この章に出てきたこの人って、あの章のあの人?という感じで、そのつながりを意識しながら読むと面白いかもしれません。


印象に残ったフレーズ

特に印象に残ったフレーズを紹介します。

「理由とか原因を他人に紐づけてると人生がどんどん不自由になる」

p237 佳澄の言葉

他人が言ったことや他人の評価ばかりを気にして、自分の行動や考えを決めていたら、人生がどんどんつまらなくなるよ、っていうことでしょうか。

自分軸をしっかり持とう、というメッセージですね。

つい他人の評価や考えを気にしがちになってしまいますが、自分の考えや価値観も大切にして、好きなことをして生きたいですよね。


誰の人生だって、激動だよなあ。

p265 後輩の言葉

誰の人生も、生まれて、生きて、死んで、って、それだけで激動ですよね。


「嫌われたらそこで終わりじゃん。好かれたら始まっちゃうから、そっちのが怖いよ」

p287 後輩の言葉

うーん、なるほど、確かに。

嫌うとか嫌われる方が、いろんな感情を起こすと思ってましたけど、言われてみれば、好きになったり好きになられることから出てくる感情の方が、もっとたくさんあるかもしれないですね。

好きになるから嫌いにもなるし、好きだからこその感情ってたくさんあるし、しかも強いですね。

嫌いは負の感情だけだけど、好きは正も負もどちらもあるというか。

なかなか深いです。


感想

6編ともそれぞれ個性があって、面白い短編集だと思いました。

最初の「ネオンテトラ」が、絶妙な感じで気味悪く、ちょっと苦手かも…と思ったのですが、次の「魔王の帰還」でグッと親しみやすく感じ、「ピクニック」でまたゾゾっとして…と、前半を読み終わる頃には、一穂ミチワールドに入り込んでいる感じでした。

「ネオンテトラ」はなんでしょうか…、少し不気味ですね…。美和にあまり共感できないですね。

「魔王の帰還」はもう姉ちゃんのキャラが最高!です。

いろんな人の感想を読んでいても、これが一番好きっていう感想が多くて、それも納得です。

姉ちゃん、友達に欲しいです(笑)

ただ、私は個人的に「ピクニック」が一番好きですねー。

こういう最後にゾゾっとする話、好きなんですよ。

出だしから不穏な空気が漂ってる感じがたまらなく好きでした。

後半は、「花うた」もなかなか印象的な物語ではありますが、こういうことって現実にあるんでしょうか。

主人公のような気持ちになることってあるのか、ちょっと想像がつきません。

頭の中で、桜の花びらがヒラヒラ舞い落ちる場面がずっと思い浮かんでました。

切なくて儚い物語でした。

「愛を適量」はまたパンチのある物語でよかったです。

男性になった娘の佳澄もまたいいキャラでした。

魔王の姉ちゃんと同じような豪快な感じが私は好きです。

その豪快な感じの中に繊細な部分も見えたりして、人間らしさを感じました。

最後の「式日」はこれも何とも切ない余韻を残す物語ではあるけれど、最後にもう一捻りあってもよかったかな…という贅沢な感想を持ってしまいました。

それまでの物語と比べると、少し物足りなかったかな…と。

最後なんだからそれくらいで終わるのが正解なのかもしれませんが…。

でも、最後まで読んで、最初に戻らせようというプロットは、なかなか憎いです。

「スモールワールズ」というタイトルは、みんなネオンテトラの水槽のように小さくて狭い世界で生きてるんだよ、っていうことでしょうか。

でも、ワール"ズ"と複数形になっているということは、そういう小さい世界で生きている人たちが、みんなつながって世界を作ってるんだよ、という意味合いかな、と思いました。

この前に読んだ「砂嵐に星屑」という本と比べると、こちらの方がイヤミス的な物語もあって、一穂ミチさんっていろんなテイストの話が書ける作家さんなんだということがわかり、また注目していきたいと思いました。


著者紹介

2007年デビュー。以後勢力的にBL作品を執筆。「イエスかノーか半分か」シリーズは映画化も。2021年、一般文芸初の単行本『スモールワールズ』が直木賞候補、山田風太郎賞候補に。同書収録の短編「ピクニック」で第74回日本推理作家協会賞短編部門候補になる。


amazonより引用



まとめ

一穂ミチさんの「スモールワールズ」についてまとめましたが、読んでみて、かなり注目されている理由がわかった気がします。

新刊の「光のとこにいてね」が発売されたばかりなので、そちらもぜひ読みたいと思います!