こんにちは!

第168回直木賞受賞作である
千早茜さんの「しろがねの葉」について詳しくまとめます!


この本を読んだきっかけ

直木賞候補作に選ばれたのを知り、読んでみたいと思いました。

直木賞受賞が決定する前に読めなかったのが残念ですが、思ったより早く図書館から借りることができました。


こんな人にオススメ

・歴史小説・時代小説が好きな人

・強い女性が主人公の作品が好きな人

・石見銀山に興味がある人

・話題作を読みたい人

・千早茜さんの作品が好きな人


「しろがねの葉」あらすじ

第168回直木賞受賞作
男たちは命を賭して穴を穿つ。
山に、私の躰の中に――

戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山
天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と未知の鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。
しかし徳川の支配強化により喜兵衛は生気を失い、ウメは欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出されて……。
生きることの官能を描き切った新境地にして渾身の大河長篇!

出版社より引用

担当編集者さんは、この作品について、こう語っています。

しろがねの葉とは、銀の眠る場所に生えるといわれるシダの葉のこと。本作は、シルバーラッシュに沸く戦国末期の石見銀山で、この葉を見つけた孤児の少女が送った劇的な生涯を艶やかな筆致で描いた長編小説です。
 10年以上前のこと、著者の千早さんは旅行に訪れた石見銀山で「銀山の女は三人の夫を持つ」という言葉と出会いました。過酷な採掘現場で働く男たちの短命さを表現したもので、これに触れた千早さんは、愛する男が自分よりも先に死ぬと分かっている世界で、女たちはなぜ生きることができたのか。いや、私だっていつか必ず死ぬのに、なぜ生きるのだろう。そんな根源的な「生」への問いを抱くようになり、やがて、運命に抗いながらも3人の男を見送っていく魅力的なヒロイン、ウメが誕生しました。
 この小説には「性」の薫りも濃厚に漂っています。「獣が睦み合うような交歓シーンを、抑えた筆致でいっそ淡々と書いているのが逆に色っぽかった」とは「波」2022年10月号に掲載された刊行記念対談での村山由佳さんの言。死の床にありながら最期までウメを求める夫・隼人の姿は、「生」と「性」が生き物を動かす両輪であることを鮮やかに見せてくれます。先ごろ、今期の直木賞候補作にも選出されました。私たちの中にあるはずの野性や本能をも揺さぶる快作です。

出版社より引用


この本のテーマ

ウメという女性の一生

天才山師・喜兵衛(きへえ)に拾われた少女ウメは、銀山の知識と未知の鉱脈のありかを授けられ、男たちに混ざり女一人「間歩」で働きます。

夜目が利くというウメは、男たちにも負けぬ働きを見せ、重宝されるようになります。

しかし、成長するにしたがい、ウメは「間歩」に入ることを許されなくなってしまいます。

それは「女」であるがゆえのことであり、女であることによって、理不尽な仕打ちを受けることが出てくるのです。

「間歩」で働くことのできなくなったウメは、その後男たちを支える側になります。

そんなウメの人生を力強くまた艶やかに描いた作品です。

石見銀山の情景や過酷な環境

皆さん「間歩」(まぶ)という言葉はご存知でしたか?

私はこの作品で初めて知ったのですが、間歩=鉱山で鉱石を取るために掘った穴のこと、です。

明治時代以降は「坑道」と呼ばれているようですね。

この「間歩」の恐ろしい闇のような暗さや、銀山の過酷な労働環境、そこで働く男たちの過酷な人生が、とにかくありありとビシビシバシバシ伝わってくるような文章がとても印象的な作品です。

世界遺産にも登録されている「石見銀山」の風景が目に浮かぶような描写表現が、すごく味わい深いです。



印象に残ったフレーズ

印象に残ったフレーズを2つ紹介します!

女は男の庇護の許にしか無事でいられないのか。笑いがもれた。莫迦莫迦しい、好きになど生きられないではないか。

p176 ウメの言葉

男のように間歩で働き、銀掘になるのが当然だと思っていたウメですが、女として成長するうちに、それが無理なことだと理解し始めます。

男にどうしても力で劣る女は、男に守ってもらうしかないのか、葛藤します。

女だからという理由で諦めなければならないという理不尽さもわかるし、その反面、男に守ってほしいと思う狡い気持ちも、女性として共感しました。

生きる理が知りたかったからあの人についていったんでさ。どうせたった独りで死んでいくのに何故、生きるのか。

p284 ヨキの言葉

生きる理(ことわり)、という言葉が最後の方に何度か出てくるのですが、なぜだかこの言葉が頭から離れなくなりました。

独りで死んでいくとしても、人は人と関わらずには生きていけない生物ですよね。

それを教えてくれるような物語でした。



感想(ネタバレなし)

いやぁー、これは直木賞受賞も超納得の重厚で骨太な作品でした!

個人的な好みかもしれませんが、この作品と「地図と拳」が受賞したのは、めちゃくちゃ納得です!

どちらも私好みの歴史小説です。

「地図と拳」は題材が完全に好みだったのに対して、こちらの作品は時代的にそんなに興味のある時代ではなかったのですが、それでも同じくらいおもしろかったです。

歴史小説が苦手な方はちょっと抵抗があるかもしれませんが、この作品は歴史の知識は全く必要ないので、読みにくさもほぼ無く、チャレンジしやすいのではないかと思いました。

方言も出てきますが、難しいと感じた所は全くなかったです。

石見銀山に行ったことがないのですが、行ったことのある方なら、もっとこの物語を楽しめるのかな。

石見銀山、行きたいですねー。

元々島根県自体行ったことがなくて、ずっと行きたいと思っている県なんですが、さらに行ってみたくなりました。

この物語に出てくる「仙ノ山」や「温泉津」などの地名も実在しているし、地図で確認しながら読みました。

著者の千早さんは実際に現地に足を運んだそうですよ。

 

千早茜さんの作品は初めて読みましたが、文章が素敵ですね〜。

銀の眠る場所にあるという「しろがねの葉」をウメが見つけた時の描写も、「間歩」の描写も、映像を見ているかのように文章が生き生きとしていて美しいです。

文章が動き出しそうなくらい躍動感もあって、物語全体が映像として流れてくるような感じがしました。

 

また、風景の描写だけでなく、登場人物の描写も生き生きとしてて、個性が立っててよかったです。

ウメや喜兵衛、隼人といった主要メンバーはもちろんですが、ヨキや龍のような外国の血が入った人物がいたり、出雲の阿国と思われる巫女さんが出てきたり、ウメの恋敵の女郎が出てきたり…たくさん個性的な人物が登場します。

どの人物もちゃんと役割がしっかり与えられていて、読んでいて混乱しませんでした。

 

「人はなぜ生きるのか」「性と死を書きたい」という思いで、千早茜さんはこの物語を書いたそうなのですが、ウメという一人の女性の人生を通して、そういったテーマが問いかけられています。

間歩で働く男たちは鉱山病によって、30歳くらいまでには死んでしまうという過酷な環境で働いているのですが、誰一人そこで働くことをやめようとはしません。

この物語は、ウメの人生を通して見る男たちの人生の物語でもあり、欲望のまま生きる男たちの野生的な泥臭さが匂ってくるようでもありました。

早死にするとわかっている男たちを支える、ウメを始めとする女たちの生き様もまた、哀しさの中に逞しさや力強さが感じられました。

結局、女が子供を産まないと、世の中成り立っていかないっていうことは、女の方が強いってことなのかな、とか思ってもみたり。

それなのに力では男には絶対勝てないっていうのが、私も昔から感じているこの世の理不尽なところですね(笑)

 

最後の方は、悲しくて切なくて涙が出る場面もあり、読み終わった時の余韻がすごかったです…。

読み終わってから「しろがねの葉」の絵が描かれた表紙を見ると、さらに感慨深いものがありました。

歴史小説が苦手な方も、歴史小説というよりは恋愛小説のような感覚で読めるので、ぜひ読んでみてほしいですね!



著者紹介

1979(昭和54)年、北海道生れ。立命館大学卒業。幼少期をザンビアで過ごす。
2008(平成20)年、小説すばる新人賞を受賞した『魚神(いおがみ)』でデビュ一。2009年、同作にて泉鏡花文学賞、2013年、『あとかた』で島清恋愛文学賞、2021(令和3)年、『透明な夜の香り』で渡辺淳一文学賞を受賞した。
『あとかた』と2014年の『男ともだち』はそれぞれ直木賞候補となる。


出版社より引用



感想(ネタバレあり)

この舞台となった石見銀山では、「銀山の女は三人の夫を持つ」と言う言葉がありますが、実際、ウメも生涯に3人の男を愛した人生でした。

その中でも、最初に愛した喜兵衛に対する想いはものすごく深いものであり、隼人が嫉妬するほどのものでしたが、それは男性として愛したのでしょうか?

父親代わりのような存在だったのかな、と思って読んでいたのですが、父親でも恋人でもない超越した存在だったのでしょうか。

 

ウメは初潮が来るまでは、男社会で生きていくことを望んでいましたが、それを理解してからの人生もまた過酷なものでした。

自分より先に夫も息子も死んでいってしまうことがわかっている生活なんて、辛くて仕方ないですよね…。

それでも誰もその生活から逃れようとはしないのでしょうか。

銀掘という職業や銀山への強い想いがそうさせるのでしょうか。

ウメと男たちのやり取りが印象的な物語ではありましたが、隼人をめぐる夕鶴とのちょっとした口喧嘩や、おくにやおとよなどの女たちとのやり取りも、また愛嬌があって好きでした。

ウメも隼人もモテていいなぁとか、龍とすぐ結ばれすぎじゃないの?とか、どうでもいい感想も持ってしまいましたが(笑)、最後は何とも余韻がすごくて、もっともっとウメやウメの周りの人たちの物語を読みたい気持ちになりました。

ウメはどのような最期を迎えたのでしょうか。



まとめ

千早茜さんの「しろがねの葉」についてまとめました。

直木賞受賞も納得の作品でした。

千早茜さんの他の作品を読んだことがないので、読んでみたくなりました!

最後までお読みいただき、ありがとうございました!