こんにちは!

朝井リョウさんの「正欲」についてまとめます!


この本を読んだきっかけ

Twitterなどで、よく見かける作家さんだったので、ずっと読みたいと思っていました。

どの本から読もうか悩みましたが、反響がすごそうな、この本を読むことに決めました。


こんな人にオススメ

  • 「多様性」という言葉について考えたい人

  • 自分の価値観や考えを広げたい人

  • 自分がマイノリティ側にいるかもしれないと思ってる人

  • 朝井リョウさんのファンの人


「正欲」紹介

あってはならない感情なんて、この世にない。
それはつまり、いてはいけない人間なんて、この世にいないということだ。

息子が不登校になった検事・啓喜。
初めての恋に気づいた女子大生・八重子。
ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。
ある人物の事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり合う。

しかしその繋がりは、"多様性を尊重する時代"にとって、
ひどく不都合なものだった――。

「自分が想像できる"多様性"だけ礼賛して、秩序整えた気になって、
そりゃ気持ちいいよな」

これは共感を呼ぶ傑作か?
目を背けたくなる問題作か?

作家生活10周年記念作品・黒版。
あなたの想像力の外側を行く、気迫の書下ろし長篇。

amazonより引用

 

著者の朝井リョウさんは、
以下のようにこの作品を紹介しています。

生き延びるために、本当に大切なものとは、何なのだろう。小説家としても一人の人間としても、明らかに大きなターニングポイントとなる作品です。

生きることと死ぬことが目の前に並んでいるとき、生きることを選ぶきっかけになり得るものをひとつでも多く見つけ出したくて、書きました。


あらすじ&登場人物紹介

この本の前半は、寺井啓喜、桐生夏月、神戸八重子、という3人の人物の視点で進みます。

・寺井啓喜…不登校になった小学生の息子を持つ検事。

・桐生夏月…地元のショッピングモールにある寝具店で働く。ある秘密を抱えている。

・神戸八重子…学園祭の実行委員を務める大学生。ある男性に恋している。

この3人は一見何の関わりもないように見えますが、啓喜の息子である泰希が、同じような不登校の友人とYouTubeで動画配信を始めるところから、少しずつ物語は繋がりを見せ始めます。

 

そして後半は、新たな2人の人物の視点が加わり、物語は進みます。

・佐々木佳道…夏月の中学の同級生であり、夏月と何らかの秘密を共有している。

・諸橋大也…八重子が思いを寄せる、ダンスサークル所属のイケメン大学生。

物語の冒頭で、ある事件のニュース記事が載っているのですが、その記事にこの2人の名前が出ているのです。

その事件と登場人物たちがどのように繋がっているのか…、徐々に見えてきます。


印象に残ったフレーズ

この本は、とにかく印象に残る場面やセリフが多かったのですが、その中でも特に印象に残ったフレーズをあげていきたいと思います。

多様性、という言葉が生んだものの一つに、おめでたさ、があると感じています。

p6 ある人物の手紙より引用

多様性を認めようと言っても、結局はマイノリティの中のマジョリティにしか当てはまらない、とこの人物は言っています。

正直、マイノリティの中に、そんなにいろんな人がいるということを理解できていなかったので、少しびっくりしました。

マイノリティの中のマイノリティの人たちは、多様性なんていう言葉、受け入れてないんだな、と気付きました。

まともって、不安なんだ。正解の中にいるって、怖いんだ。

p325 佳道の言葉

自分はまともである、多数派である、と思っていることもまた、怖いことなのかもしれません。

ずっと多数派側に居続けるということは、それもまた少数派である、ということなのかもしれません。

「はじめから選択肢奪われる辛さも、選択肢はあるのに選べない辛さも、どっちも別々の辛さだよ」

p343 八重子の言葉

みんな自分の欲望と折り合いをつけて生きてる、と八重子は言います。

それは、マジョリティでもマイノリティでも関係ないですよね。


感想

「読む前の自分には戻れないー」というキャッチコピーが載っていたのですが、これは本当にそうかもしれません。

自分の価値観とか視野がどれだけ狭くて偏ったものだったのか、そんなことを考えてしまう本でした。

サラッと感想が書ける本でないことは確かです。

個人的にはめちゃくちゃ面白かったですが、「面白かったから読んでみてー」って気軽におススメできる本でもないです。

前半部分がつまらない、という感想もチラホラ見かけたのですが、私は冒頭部分からけっこう引き込まれました。

最初からめちゃくちゃ攻めてる本だな!って興味がわきました。

冒頭に、ある人物の書いた手紙が載っているんですが、その内容がけっこう攻撃的なもので、この本はそういう感じの内容なんだろうな、って想像がつきました。

3人の登場人物の視点で物語が進むので、なかなか本質的なところが見えてこないんですが、冒頭に出てきた事件とどう繋がってくるのか予想しながら読むのも楽しかったです。

それから、視点が変わりながら物語が進んでいく形式や、視点が変わる前後で言葉をリンクさせているところが、私は好きでした。

 

「多様性」という言葉について、本当に考えさせられました。

「みんな違ってみんないい」みたいなことを主張される世の中って、実は相当生きにくい人がいるんじゃないでしょうか。

それって、マイノリティ側の人は、「あなたは人とは違うんだよ」って言われてるのと同じことなんじゃないかな…。

マジョリティとマイノリティを線引きしてしまってるんじゃないでしょうか。

それで、マジョリティ側の人間は勝手に安心してるところがあって、マイノリティ側の人のことを理解してますよ、って理解してる風に装っている、というか…。

誰がどういう「欲」を持っていても、その人にとってはそれが「正欲」なわけで、それを人にも理解してほしいと思うか、理解してもらう必要はないと思うかもそれぞれの自由で、マジョリティ側の人間がマイノリティ側のことを無理に理解する必要もないのかな…と思いました。

もし、マイノリティ側の人が理解してほしいって声をあげるのであれば、それはみんなが理解しようとする世の中であるべきだとは思いますが。

理解する、というよりは、受け入れる、と言った方がいいかな。

理解するのは無理でも受け入れることはできると思うので。

私もたぶんマジョリティ側の人間なので、何が正しいのかよくわからなくなってしまいました。

 

そして、マイノリティの中にもさらにマイノリティな人がたくさんいて、自分の知らない特殊な指向を持っている人がいることもわかりました。

そういう人から見れば、マイノリティの中のマジョリティの人とは、また全然立場が違うということも。

ただ、どんな「欲」を持つとしても、やっぱり犯罪に関わる可能性のあることはダメですね(って、当たり前ですが…。)

犯罪や人に迷惑をかけたりしなければ、人がどんな「欲」を持っていようが、ほんと自由ですよね。

それを理解してほしいと思った時に「繋がり」を求めてしまうのも当たり前だと思うし自由です。

「繋がり」を求めた時に絶望的な結果になってしまったのが、この本の救いがないところだと思うんですが、「繋がり」がもっと得られやすい世の中になればいいのかもしれません。

 

この本の登場人物は、性的指向がマイノリティで苦しんでいる人たちなんですが、性的指向に限らず、人それぞれいろんな悩みがあって苦しんでいます。

だから、最後の八重子の言葉には納得しました。

みんな自分のいろんな欲望に折り合いをつけて生きている、と。それは本当にそうですよね。

ただ、なぜ特殊な性的指向がそれほどマイノリティの人たちを苦しめるかと言うと、それは性欲が三代欲求の一つだから、というのもあるのではないかと思いました。

食欲と睡眠欲は、特殊な指向の人っているのか分かりませんが、あまり問題になりませんよね。

食欲と睡眠欲は、自分の中で完結しやすくて、他者に向かわないからでしょうか。

それに対し性欲は、自己完結が難しい部分もあるから、それがマイノリティだと大きな悩みや苦しみになるのかもしれない、と思いました。

 

なかなか考えがまとまらない感想になってしまいましたが、それほどいろんなことを考えさせられる本でした。

小学生の子供たちも、「多様性」や「SDGs」などについて学ぶ機会があるらしく、私もつい「今は多様性の時代だもんね」などと言ってしまうことがあるのですが、軽々しく言ってはダメなのかも、と思いました。

理解してる風なのが一番良くないのかも…と。

現代の子供や若者たちが、「多様性」という言葉のせいで、生きにくい時代にならなければいいな、と思いました。


著者紹介

 

1989年、岐阜県生まれ。小説家。2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2013年『何者』で第148回直木賞、2014年『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞を受賞。他の小説作品に『チア男子!!』『星やどりの声』『もういちど生まれる』『少女は卒業しない』『スペードの3』『武道館』『世にも奇妙な君物語』『ままならないから私とあなた』『何様』『死にがいを求めて生きているの』『どうしても生きてる』『発注いただきました!』『スター』、エッセイ集に『時をかけるゆとり』『風と共にゆとりぬ』がある。2021年、『正欲』で第34回柴田錬三郎賞受賞。


amazonより引用

気になる作品がたくさんあるので、少しずつ読んでいこうかと思います。


まとめ

今回紹介した「正欲」ですが、2023年に映画が公開される予定となっています。

主演が、稲垣吾郎さんと新垣結衣さんということで、どんな感じになるのか、楽しみです!

他にもどんな俳優さんがキャスティングされるのか、気になりますね。