
まさきとしか さんの「レッドクローバー」
についてまとめます!
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この本を読んだきっかけ
まさきとしかさんは『あの日、君は何をした』と『彼女が最後に見たものは』を読んだことがあり、けっこう好みだったので、新刊も読みたいと思いました。
こんな人にオススメ
・重ためのミステリーやサスペンスが好きな人
・毒親や母娘関係について興味がある人
・まさきとしかさんのファンの人
「レッドクローバー」あらすじ
『あの日、君は何をした』『彼女が最後に見たものは』シリーズ累計40万部突破の著者、最高傑作ミステリ。 まさきとしかが……いよいよ、くる! 家族が毒殺された居間で寛ぎ ラーメンを啜っていた一人の少女。 彼女が──家族を殺したのではないか。 東京のバーベキュー場でヒ素を使った大量殺人が起こった。記者の勝木は、十数年前に北海道で起こった家族毒殺事件の、ただ一人の生き残りの少女――赤井三葉を思い出す。あの日、薄汚れたゴミ屋敷で一体何があったのか。 「ざまあみろって思ってます」 北海道灰戸町。人々の小さな怒りの炎が、やがて灰色の町を焼き尽くす――。 『あの日、君は何をした』『彼女が最後に見たものは』シリーズ累計40万部突破の著者、最高傑作ミステリ。
出版社より引用
主な登場人物
○望月ちひろ…埼玉から灰戸町に引っ越してきた少女。母方の祖母の家で2人で暮らすことになった。
○赤井三葉…ちひろが灰戸町で初めて友達になった歳上の少女。家族をヒ素で殺したと疑われていた。
その事件は彼女の名前から「レッドクローバー事件」と呼ばれている。事件から数ヶ月後、家が火事になったと同時に行方不明になる。
○丸江田逸央…「豊洲バーベキュー事件」の犯人。取り調べ中「ざまあみろって思ってます」と言って、大きく取り上げられた。
○勝木剛…「月刊東都」という硬派の総合雑誌の記者。「豊洲バーベキュー事件」と、12年前の灰戸町の「レッドクローバー事件」の関連性を追っている。
○望月久仁子…ちひろの母。
○丹沢春香…久仁子の同級生。娘の富恵を火事で失ってしまう。
14年前のちひろのパート、現在の勝木のパート、という風に、時系列が過去と現在で入れ替わりながら物語は進みます。
春香や、三葉の母親や隣人の視点で語られた章もあるので、事件のことをいろいろな人物の目から俯瞰して見ることができます。
レッドクローバー事件の犯人は三葉なのかー。
豊洲バーベキュー事件に三葉は関係しているのかー。
三葉はどこに行方をくらましたのかー。
印象に残ったフレーズ
子供を愛さない親はいても、一度も親を愛さない子供はいないんじゃないかな。だから、もし長女がほんとうに親を殺したのだとしたら、その子のほうが先に心を殺されたのよ。
p221 美和子の言葉
一度も親を愛さない子供はいない、という言葉が響きました。
本当にそれは絶対にそうですよね。
言葉の攻撃力はボディブローみたいに効くよ。
p301 不破の言葉
言葉の持つ影響力って、体を使った暴力みたいに一瞬の強い痛みではないけれど、ジワジワと心に効いてくるし、持続しますよね。
言葉の暴力を軽く見てたらいけない、と思います。
体を殺すのは一度しかできないけど、心は何度でも殺せるんだよ。
p373 ちひろの言葉
親から愛されない子供は、心を何度も殺されている、ということですよね。
心を殺すのも立派な虐待です。
感想(ネタバレなし)
この直前に読んだ本(遠田潤子さんの『イオカステの揺籃』)も、毒親や母娘関係についての本で、重苦しい話だったのですが、またしても同じようなテーマの本を読んでしまいました…。
私の中で、まさきとしかさんと遠田潤子さんは、重苦しい家族の物語を書くけど、物語の展開が巧みで一気読みさせる作家さんという位置付けにあったので、この2冊が同じタイミングで図書館から回ってきて、ちょっとびっくりしました(笑)
遠田潤子さんの本を読んだ後じゃなければ、また衝撃度や感想も変わったかもしれません…(遠田さんの本がけっこう内容が濃かったので…)。
という前置きはいいとして、本の感想です。
はぁー、またまたこれも重苦しい物語でした。
話の内容はもちろんなんですが、舞台となっている町の雰囲気がもう半端なく重苦しいんです…。
灰戸町、暗過ぎます…。
読み始めてから読み終わるまで、終始どんよりしてます…。
田舎の閉塞感が描かれている小説って割とあると思うんですが、この小説のどんより感はけっこうすごい方だと思います。
町の中のヒエラルキーみたいなものもかなり激しくて、海側の人が山側の人を差別するとか、山側の人でも奥に行けば行くほど差別されるとか…。
そして、呪いをかけるために神社に手を合わせに行く住人たち…。
この町の雰囲気にちひろも飲まれてしまったのでしょう。
時系列が錯綜しているので、少し読みづらいと感じた部分もありましたが、いろいろな人の視点から事件の真相が徐々に見えてくる感じが、面白かったです。
「死ねばいいのに」とか「殺される前に殺す」とか、そんな言葉ばかりが出てくるのですが、読んでいてかなり頭も心も疲れてしまいました。
今の若い世代の子たちは、死ねとか殺すとか、けっこう気軽に使うイメージがあるのですが、やっぱり決して気軽に使っていい言葉ではないと思いますね。
言葉の影響力ってすごいです。
帯で桐野夏生さんが「まさかこんな展開になるとは」とコメントされていたのですが、そこは個人的にはそうでもなかったかな…と(笑)
でも、真相がわかってハイ解決、みたいな話ではなくて、真相に辿り着くまでに何層にも入り組んでる感じがして確かに衝撃はありました。
物語の終わり方も、スッキリとはいかなかったですね…。
最初から最後まで陰鬱な灰戸町の雰囲気に引っ張られて、私自身もどよーんとしてしまいましたが、物語としては面白かったです!
ただ、元気のない人にはおすすめしにくい本かな…と思います。
著者紹介
1965年生まれ。北海道札幌市在住。2007年「散る咲く巡る」で第41回北海道新聞文学賞を受賞。13年、母親の子供に対する歪んだ愛情を描いた『完璧な母親』(幻冬舎)が刊行され、話題になる。他の著書に『熊金家のひとり娘』『大人になれない』『いちばん悲しい』『祝福の子供』『屑の結晶』などがある。書き下ろし文庫『あの日、君は何をした』『彼女が最後に見たものは』が大反響。
出版社より引用
感想(ネタバレあり)
ここからは、ネタバレする感想を書きますので、まだ読んでいない方は、気をつけてくださいね!
三葉の家族を殺した真犯人は、ちひろだったわけですが、ちひろがそこまで歪んでしまったのは、母親に大切にされてないことはもちろん大きく影響したと思いますが、三葉の影響もかなり大きかったと思います。
三葉が「殺される前に殺す」みたいなことをすぐ言うせいで、そういう考えに洗脳されてしまったような感覚だったのかな…と思いました。
三葉は、殺すと簡単に口では言うものの、殺すことがいけないことだと頭では充分理解してるし、家族には大切にされていないけど、嫌いなわけではないから、本気で家族を殺そうとしてたわけではないと思うんですよね。
かなり心は荒んでいるし、かなり生意気な女の子ではあるけれど、普通に思春期の女の子っぽい部分もあるというか。
ただ、ちひろには、三葉の影響力が大き過ぎたのかな…と思います。
「殺す」「死ねばいいのに」なんて言葉をいつも聞かされて、普通の思考回路ではなくなってしまったのでしょう。
三葉と出会わなければ、ちひろは簡単に人を殺すような人にはならなかったのだろうか…、と考えてしまいました。
ちひろくらいの年頃の女の子にとって、友達の影響というのは、すごく大きいものですよね。
もちろん、三葉も家族に愛されない可哀想な子ではあったので、その辺りが救いがないですね…。
まとめ
まさきとしかさんの新刊「レッドクローバー」についてまとめました。
重苦しい家族の物語ではありましたが、一気に読ませる筆力はさすがだと思いました。
歪んだ家族関係や個性的な女性を描くのがとても上手だという印象が、さらに深くなりました。
また今後の作品にも注目していきたいと思います!
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