川越宗一さんの「熱源」についてまとめます!
第162回直木賞受賞作です!!
2022年に文庫化されました!


この本を読んだきっかけ

直木賞受賞作品でもあり、歴史小説が好きなので、前から読みたいと思っていた作品です。

アイヌ」の人々に触れた作品を以前にも読んだことがあり、もっと詳しく知りたいと思っていました。

こんな人にオススメ

  • 歴史小説が好きな人
  • 戦争を題材とした小説が好きな人
  • アイヌの文化や歴史に興味がある人
  • 直木賞受賞作品を読みたい人

「熱源」あらすじ

【第162回直木賞受賞作】

樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。
一方、ブロニスワフ・ピウスツキは、リトアニアに生まれた。ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。
日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。
文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。

樺太の厳しい風土やアイヌの風俗が鮮やかに描き出され、
国家や民族、思想を超え、人と人が共に生きる姿が示される。
金田一京助がその半生を「あいぬ物語」としてまとめた山辺安之助の生涯を軸に描かれた、
読者の心に「熱」を残さずにはおかない書き下ろし歴史大作。

出版社より引用

登場人物

  • ヤヨマネクフ(山辺安之助)…主人公。樺太出身のアイヌ。幼少時に樺太から北海道の対雁(現在の江別市)に移住する。
  • シシラトカ(花守信吉)…樺太出身のアイヌで、ヤヨマネクフの幼なじみ。
  • 千徳太郎治…和人の父とアイヌの母を持つ。ヤヨマネクフとシシラトカの幼なじみ。
  • キサラスイ…対雁村一番の美人で、五弦琴(トンコリ)の名手。
  • チコビロー…対雁村を治める、アイヌの頭領。
  • バフンケ…樺太・アイ村の頭領。数カ所の漁場を経営する。
  • イペカラ…バフンケの養女。五弦琴を弾くことを好む。
  • チュフサンマ…バフンケの姪。流行病で夫と子どもを亡くした。
  • ブロニスワフ・ピウスツキ…もう一人の主人公。ポーランド人。ロシア皇帝暗殺を謀った罪で樺太(サハリン)へ流刑になる。
  • アレクサンドル・ウリヤノフ…ブロニスワフの大学の先輩。学生運動の首謀者。
  • レフ・シュテルンベルグ…テロ組織「人民の意志」の残党で、樺太に住む民俗学者。
  • ヴァツワフ・コヴァルスキ…ロシア地理学協会の会員。アイヌの民族調査のため北海道を訪れる。
  • ユゼフ・ピウスツキ…ブロニスワフの弟。兄の罪の連帯責任でシベリアに流される。
  • 金田一京助…アイヌ文化を研究する東京帝大の学生。1913年にヤヨマネクフの話をまとめた「あいぬ物語」を刊行する。
  • 白瀬矗(のぶ)…陸軍中尉であり、世界初の南極点到達を目指す探検家。

この本の特徴やテーマ

明治維新後の「アイヌ」や「樺太」のことがわかる

ロシア人や和人(日本人)に「未開人」と差別され、いずれ滅びゆく運命にあると決めつけられていたアイヌの人々の文化や歴史について、この作品ではたくさんのことを知ることができます。

イオマンテ」と呼ばれる、ヒグマを神に捧げるという儀礼のことは知っていましたが、アイヌの女性が結婚後に口の周りに入れ墨を入れることは知りませんでした。

また、「トンコリ」という琴のことも初めて知りましたが、この作品の中で、重要な役割を持っています。

また、日本とロシアとの間で領土を争った「樺太(サハリン)」の歴史についても、知ることができます。

日本の領地になったり、ロシアの領地になったり、北緯50度線より南だけ日本になったり…と、樺太に住む人々はその歴史に翻弄されてきました。

樺太って、あまり大きい島であるイメージはなかったのですが、北海道よりわずかに小さいくらいの大きい島らしいです。

樺太には「アイヌ」の他にも、「ギリヤーク=ニグブン」や「オロッコ=ウィルタ」と呼ばれる民族も多く住んでいたようです。


2人の主人公、ヤヨマネクフとブロニスワフの故郷への想い

この物語は、アイヌのヤヨマネクフと、ポーランド人のブロニスワフという2人を主人公としています

ヤヨマネクフは大日本帝国に、ブロニスワフはロシア帝国に、むりやり故郷を奪われてしまいます。

奪われたのは土地だけではなく、言葉も奪われてしまいます。

ヤヨマネクフは「八夜招(ヤヨマネク)」、ブロニスワフはロシア風に「ピルスドスキー」と、名前も変えられてしまいます。

その2人の主人公が、「故郷」についてどのような想いを持っているのか、何を大切に生きていこうとするのか、その熱い想いを感じ取ることができます。

登場人物はほとんど実在の人物!!

実話を基にしていることは知っていたのですが、この物語に出てくる登場人物のほとんどが実在した人物なんです!

ポーランドの歴史について、ほとんど知識がなかったのもありますが、ブロニスワフたちは架空の人物じゃないの?と思って読んでました…。

それが、ブロニスワフもピウスツキもウリヤノフも、みんな実在人物なんですね。

ウリヤノフの兄は、ロシア革命を指導したウラジミール・レーニンだそうです。

もちろん、ヤヨマネクフを始めとするアイヌの登場人物も、ほぼ実在人物です。

物語にも出てきますが、ヤヨマネクフとシシラトカは、白瀬矗の南極探検隊に参加しています。

アイヌ語を研究した金田一京助を始め、大隈重信や二葉亭四迷などの著名人も出てきて、壮大な物語となっています。

印象に残ったフレーズ

印象に残ったフレーズを2つ紹介します!

「我々には、彼らの知性を論ずる前にできることがあります。豊かな者は与え、知る者は教える。共に生きる。絶望の時には支え合う。(中略)少なくとも、私は支えられました。生きるための熱を分けてもらった」

p163 ブロニスワフの言葉

ブロニスワフは、サハリンに流されてきた当初、生きる気力を失っていました。

それがギリヤークやアイヌの人々と接するうちに、彼らから支えられるようになっていきます。

作品タイトルが「熱源」というだけあって、物語の中にも「熱」という言葉が何度か出てきます。

ブロニスワフやヤヨマネクフの「生きるための熱の源」は何だったのでしょうか。

ぜひ、読んで確かめてみて下さい。

「"次"とか"また"とか"まさか"ってのは、生きてる限り、あるもんさ」

p425 イペカラの言葉

物語の最後の最後の方で語られる言葉ですが、最後の場面というのもあって、じーんときてしまいました。

アイヌの女性のたくましさも感じられる言葉でした。

生きてさえいれば、何が起こるかわからないですよね。


他にもたくさん印象に残る言葉がありましたが、
ネタバレになりそうなので、やめておきます!!

感想

1ヶ月ほど前に発表された「第168回直木賞」の受賞作品2作品も歴史小説で、両方とも私は大好きな作品なのですが、この「熱源」もまた、直木賞受賞も納得の作品であると思いました。

なんでしょうねー、私、こんなに歴史小説って好きだったかなー、って思いましたよ。

はい、歴史小説大好きなんですよ、きっと、たぶん(笑)

よく考えたら、読書にハマったきっかけも浅田次郎さんの「蒼穹の昴」シリーズですもん。

ちゃんと気付いてなかったけど、歴史小説が好きなんです。はい、ようやく実感しました(笑)

ただ、戦国時代とか江戸時代とかはあまり興味がないんです…。珍しいですよね…。

武士に興味がないんでしょうかね(笑)できれば明治時代以降の話が読みたいですね。

でも、浅田次郎さんの「壬生義士伝」は読んだことがあって号泣したので、案外戦国時代とか江戸時代も好きなのかもしれない。


すみません!前置きが長くなってしまった!!

この作品もそうでしたけど、歴史小説の何が好きって、地図とか歴史とかを調べながら読むのが楽しいんですよ!

そこで私みたいな人のために、出版社さんが丁寧に地図や年表を作って解説サイトを作ってくださっているんですが、すごくありがたいです。

この「熱源」も特設サイトが作られているので、よかったら見てみてください。

小説を楽しみながら、歴史や地理の勉強もできるって、最高じゃないですか?!


 

第1章はヤヨマネクフをメインとした物語で始まり、第2章はブロニスワフをメインとした物語が展開され、この主人公2人がどう関わることになるのか、その辺りもワクワクしながら読むことができました。

著者の川越宗一さんは、北海道旅行中に白老町のアイヌ民族博物館で、ブロニスワフの胸像を見たことをきっかけに、この物語を書こうと思ったらしいのですが、アイヌの人々とポーランド人が関わっていたなんて、知りもしませんでした。

アイヌについては、他の小説でも読んだことはありましたが、ポーランドという国については、ほぼ何も知らなかったのが恥ずかしいです(世界史より日本史派でしたし…)。

ポーランドと言えば、ショパン!(ピアノやってたので…)というイメージしかなく、チラっとその歴史について知っているくらいでした…。

ポーランドは歴史的にロシアと敵対関係にあり、反ロシア感情が強いのですね。


 

自分たちの力の及ばぬところで運命を翻弄される人々の話でしたが、読めば読むほど、なんだか胸にじーんとくるものがあるんですよ、この作品。

最初に読み終わった時は、「そっかそんな歴史があったんだ」くらいの熱量でサラッと読み終えた気がするんですよ。

でも、歴史とかがいろいろ頭に入ってからまた読み返してみると、なんだかもう胸いっぱいになるんですよ…。

今まさに起こっているロシアとウクライナの戦争にも、この物語が通じる気がしてきて、感動とは違う涙が出てくるというか。

やっぱり歴史を知ることって本当に大切だな、と感じますし、知らなければいけないことって、たくさんありますね。

小説を通してそういう問題を投げかけてくれる作家さんにも感謝の気持ちでいっぱいです。

 

私はもちろんですが、普通に日本の本州で生まれ育った人って、この作品の登場人物みたいに、文化や言語を奪われるとか、アイデンティティを脅かされるとかそういう危機って、たぶん経験したことないと思うんですよね…。

(災害などで故郷を奪われるとか、土地を奪われるとかは別です。)

だから、この作品の登場人物たちのことを思うと、想像するしかありませんが、ものすごく悔しくて苦しくなりました。

ただそこで暮らしてる、っていうだけなのに、国家の勝手な戦争や紛争によって、突然「故郷」を奪われてしまう。

太郎治なんかは、和人とアイヌのハーフで、両親の祖国同士が戦争をしたわけで、そういう経験をしている人は世界中にいるのだろうけど、きっと胸が張り裂けるような想いなのだろうな…。

それに、先住民の人々が虐げられてきた歴史って、アイヌだけではなくて、世界中にたくさんあると思うけど、本当に傲慢なことでしかないな、と思いました。

 

この物語では、2人の主人公の「故郷」に対する想いが感じられる場面がたくさんありますが、どちらもかっこよかったですよ。2人とも強かったです。

大隈重信とこの2人がそれぞれ話す場面があり、人種や国家の優劣について意見を交換するのですが、その場面もすごく印象に残りました。

2人とも本当に素晴らしいことを言っています。

ブロニスワフは祖国ポーランドを暴力で奪い返すことを頑なに拒みましたが、そういう考えができる主導者が世界にたくさんいればいいのに…って思いました。

ちなみに、大隈重信の有名な語尾「~であるんである」がたびたび出てきて、その部分はちょっとクスっとしてしまいました。

 

最後に、北海道の白老村という所に「ウポポイ」というアイヌ文化の復興と発展のための施設が2020年にオープンされたばかりだそうです。

なかなか北海道に行く機会がないのが残念ですが、いつか行ってみたいですね~。

それと、アイヌと言えば、「ゴールデンカムイ」という漫画が人気だったりしますよね。

私は漫画はほぼ読まないので未読ですが、ゴールデンカムイファンの方もこの「熱源」を読んだりしているようで、より物語をイメージしやすいかもしれませんね。

著者紹介

 

1978年鹿児島県生まれ、大阪府出身。京都市在住。龍谷大学文学部史学科中退。
2018年『天地に燦たり』(文藝春秋)で第25回松本清張賞を受賞しデビュー。
短篇「海神の子」(「オール讀物」12月号掲載)が日本文藝家協会の選ぶ『時代小説 ザ・ベスト2019』(集英社文庫)に収録。
19年8月刊行の『熱源』(文藝春秋)で第10回山田風太郎賞候補、第9回本屋が選ぶ時代小説大賞受賞、第162回直木賞受賞。
出版社より引用

まとめ

川越宗一さんの「熱源」についてまとめました。

直木賞受賞も納得の「」のこもった壮大な作品でした!

川越さんの他の歴史小説もぜひ読んでみたいと思いました!!

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!