小西マサテルさんの「名探偵のままでいて」について詳しくまとめます!


この本を読んだきっかけ

『このミステリーがすごい!』大賞に選ばれた作品なので、目にすることが多く、評価も高そうだったので、読んでみようと思いました。

ちなみに、『このミステリーがすごい!』は、『このミス』と呼ばれ、1988年から『別冊宝島』(宝島社)で発行されている、ミステリー小説のブック・ランキングのことです。

2002年からは新人作家の作品を募集した『このミステリーがすごい!』大賞が創設されました。

この作品は、第21回大賞受賞作です。


こんな人にオススメ

・ミステリー短編集が好きな人

・探偵ものが好きな人

・古典ミステリーが好きな人

・『このミステリーがすごい!』大賞に注目している人


「名探偵のままでいて」あらすじ

第21回『このミステリーがすごい!』大賞 大賞受賞作

「認知症の老人」が「名探偵」たりうるのか? 孫娘の持ち込む様々な「謎」に挑む老人。日々の出来事の果てにある真相とは――?
認知症の祖父が安楽椅子探偵となり、不可能犯罪に対する名推理を披露する連作ミステリー!


<あらすじ>
かつて小学校の校長だった切れ者の祖父は、71歳となった現在、幻視や記憶障害といった症状の現れるレビー小体型認知症を患い、介護を受けながら暮らしていた。
しかし、小学校教師である孫娘の楓が、身の回りで生じた謎について話して聞かせると、祖父の知性は生き生きと働きを取り戻すのだった!

そんななか、やがて楓の人生に関わる重大な事件が……。


出版社より引用


この本の特徴

安楽椅子探偵の祖父がカッコいい!

レビー小体型認知症を患っている祖父が、安楽椅子探偵として活躍する物語ですが、「レビー小体型認知症」という認知症について初めて知りました。

レビー小体型認知症とは…

病床期から視空間認知障害、問題解決能力の低下などの「認知機能障害」のほか、現実にないものが見える「幻視」、身体の動作が遅くなる、転びやすいなどの「パーキンソン症状」、睡眠時に激しい体動や大声を出すなどの「レム睡眠行動異常症」などが特徴の病気です。

中でも「幻視」が見えるということが最大の特徴だそうで、この物語の祖父も数々の「幻視」を見ています。

ちなみに、「安楽椅子探偵」という言葉にも馴染みのない方がいるかもしれないので、一応補足説明をしますね。
 

安楽椅子探偵とは…

現場に赴くなどして自ら能動的に情報を収集することはせずに、室内にいたままで、来訪者や新聞記事などから与えられた情報のみを頼りに事件を推理する探偵、のことです。
 

この安楽椅子探偵の祖父が大活躍する物語なんですが、
めちゃくちゃカッコいいんです!

小学校の校長を務めていた聡明な男性で、長身で鼻が高く、孫の楓が「モテたんだろうな」と言っていることからも、さきっと見た目も中身も素敵な祖父なのだろうと想像できます!


古典ミステリ好きにはたまらない!

この作品は、古典ミステリのオマージュ的作品であり、たくさんの古典ミステリが出てきます

アガサ・クリスティやディクスン・カーなどの超有名作家はさすがにわかりましたが、全く知らない作家や作品名もたくさん出てきました。

私があまり古典ミステリや海外ミステリに詳しくないのもありますが…。

そういうジャンルに詳しい人が読めば、もっとこの作品を楽しめると思います!


恋愛要素もあり!

この作品は、連作ミステリ短編集ですが、楓の恋愛についても描かれているので、恋愛小説としても楽しめるものとなっています。

ミステリに恋愛要素が入るのが、好きな人もそうでない人もいるかとは思いますが、私はけっこうこの作品の恋愛要素は好きです。


感想(ネタバレなし)

私はこの作品、評判通りけっこう楽しめました。

感涙ものだという評判もチラホラ見かけていましたが、ほろっと涙が出る場面もありました。

最後は余韻がすごかったです。

6章から成る連作短編集で、長めの章があったり、短めの章があったり、いろんな話が楽しめるのですが、祖父の名探偵ぶりが本当にすごくて、めっちゃカッコよかったです!

一つの事件に対して、二つの推理をしてみせたり、その推理を「幻視」として見て、あたかも本物の場面を見ているかのように語ってみせるのですが、推理をしている時は頭がキレッキレになるんですよね。

その時の楓と祖父の間の、温かい空気感が何とも心地よく感じました。

「名探偵のままでいて」というタイトルも、楓の切な願いを表していて、読後にまたこのタイトルを見ると、じーんとしてしまいました。

最初の方は、普通のミステリ短編集だなーという感じだったのですが、段々と登場人物が増えてくるにしたがって、楓の恋愛ストーリーも絡んできて、どんどん面白くなってきた感じがしました。

楓と祖父以外の登場人物も個性があって、私は好きでした。

楓に直接関わってくる事件が起こるわけですが、その中で明らかにされることがあったり、後半はハラハラする場面あり、びっくりする場面ありで、かなり面白く読めました。

ミステリなんだけど、読後は優しい気持ちになるような温かい作品でした。

トリックに無理がある、というような口コミもチラホラ見かけましたが、私はあまりトリックにはこだわりがない派なので、全然気にならなかったです。

著者の小西マサテルさんは、作家としては新人ですが、放送作家をずっとされてる方なので、全くの新人という感じでは無いのかもしれません。

この作品、映像向けな作品という印象があり、そのうちドラマ化されそうな気もしますね。

そして、楓の恋の行方なども気になるので、続編に期待したいですね。

それにしても、著者のミステリ愛がすごいです。いろんな古典作品が出てきましたが、私は全くその方面には知識がないので残念でした。

阿津川辰海さんの作品を読んだ時に、阿津川さんのミステリ愛にびっくりしたのを思い出しました。

でも、古典ミステリとか、海外ミステリとか、どうも興味がわかないんだよなぁ…。


著者紹介

1965年生まれ。香川県高松市出身、東京都在住。明治大学在学中より放送作家として活躍。
第21回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、本作にてデビュー。
2022年現在、ラジオ番組『ナインティナインのオールナイトニッポン』『徳光和夫 とくモリ!歌謡サタデー』『笑福亭鶴光のオールナイトニッポン.TV@J:COM』『明石家さんま オールニッポン お願い!リクエスト』や単独ライブ『南原清隆のつれづれ発表会』などのメイン構成を担当。


出版社より引用


まとめ

小西マサテルさんの「名探偵のままでいて」についてまとめました。

楓と祖父のやりとりが温かくて、優しい気持ちになる作品だと思います。

今後の活躍にも期待できる作家さんではないでしょうか!
 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!