寺地はるなさんの
川のほとりに立つ者は」について詳しくまとめます!


この本を読んだきっかけ

寺地はるなさんの作品をいくつか読んできて、好きな作品が多かったので、この新刊も読みたいと思いました。


こんな人にオススメ

  • 「普通」や「正しさ」について考えたい人
  • 人との関わり方について考えたい人
  • 寺地はるなさんの作品が好きな人

「川のほとりに立つ者は」あらすじ


カフェの若き店長・原田清瀬は、ある日、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないと病院から連絡を受ける。松木の部屋を訪れた清瀬は、彼が隠していたノートを見つけたことで、恋人が自分に隠していた秘密を少しずつ知ることに――。「当たり前」に埋もれた声を丁寧に紡ぎ、他者と交わる痛みとその先の希望を描いた物語。

出版社より引用

この本の特徴やテーマ

「普通」や「正しさ」とは何か

寺地はるなさんの作品は、「普通」とは何なのか、ということを問いかけているものが多いように感じます。

自分の中の「普通」や「正しさ」を基準にしてしまっていないか?

その基準を人にも当てはめようとしていないか?

そんなことを問いかけてくる作品が多い印象ですが、この作品もそういった問いかけがより鋭く描かれているように感じました。


ちょっとミステリー仕立て!

この作品は、寺地はるなさんの作品には珍しく、ちょっとしたミステリー仕立ての展開となっています。

なぜ恋人とその親友は歩道橋から転落したのか、恋人が隠している真実とは何なのか、気になってどんどん読み進めたくなること間違いなしです。

寺地さん自身がミステリー風にしようと思ったのかはわかりませんが、私は「寺地さん、ミステリーっぽいのも書くんだ!」と少し興奮しましたよ(笑)

小説の中の小説も気になる!

この物語は、外国文学の『夜の底の川』という架空の小説の文章から始まります。

その小説の人物が「あなたはわたしのことを、どれだけ知っている?」と問いかける場面があり、清瀬が自分は恋人の松木について何をどれだけ知っているのだろう、と問いかける様子と重なります。

『夜の底の川』の話が頻繁に出てくるわけではないですが、この2つの小説がリンクしているところもあります。

「川のほとりに立つ者は」という本のタイトルも、この『夜の底の川』の一節に由来しています。

『夜の底の川』という作品も少し読むだけでも興味深くて、もっと読んでみたいと思うような作品でした。


心に残ったフレーズ

特に印象的だったフレーズを紹介します!

親というものはときどき平気な顔で、人前で自分の子どもを貶す。謙遜のつもりなのだろうか。自分の子どもを自分の一部みたいに思っているのかもしれない。

p83 松木の言葉

これねー、わかります…。

育児本とか読むと、子どものことを下げるようなことを言うのはダメ、って書いてありますよね。

特に子どもがそばにいる時には

家では褒めていたとしても、外で貶すようなことを言うと、子どもは「え、褒めてくれてたのに違うの?家で言ってることと違うじゃん」って思ってしまう、と。

自分のことを謙遜するのとは違うんですよね。

これは親として気を付けないといけないことだと思います。


誰もが同じことを同じようにできるわけではないのに、「ちゃんと」しているか、していないか、どうして言い切れるのか。(中略)まじめでがんばり屋。でもたまにその長所はそのまま、他人への狭量さという短所に変わってしまう。

p143 松木の言葉

これもわかりますねー。

まじめでがんばり屋の人って、相手にもそれを求めてしまうところがありますよねぇ…。

自分がこれだけ頑張ってるのに、どうしてみんなは頑張ってくれないの!とか、何でもっとちゃんとできないの!とか、つい思ってしまうんですよね…。

はい、思い当たるところバッチリありますね…すみません、自分でまじめでがんばり屋だと言いたくはないのですが、どちらかと言うとそちら側の人間です(笑)


「ほんとうの自分とか、そんな確固たるもん、誰も持ってないもん。いい部分と悪い部分がその時のコンディションによって濃くなったり薄くなったりするだけで」

p161 篠ちゃんの言葉

これはほんとに人間誰でもそうだと思います。

調子良い時は他人にも寛容になれたり、優しくなれるけど、調子悪い時は自分のことで精一杯で他人のことなんて考える余裕無くて…。

きっとみんなそんな感じで生きてますよね。

人の一面だけ見るのではなく、いろんな面を見ることが大切だと思います。

感想(ネタバレなし)

寺地はるなさんの作品は、たまーに合わないものがあるんですが、この作品はすごく好きです。

私は主人公の清瀬に少し似てるかもしれない、と思いました。

清瀬よりは凝り固まってはないと思うんですが、他人に対して度量が狭いところなんかは似てますねぇ…汗

自分の「普通」を他人にも当てはまってしまったり、求めてしまったり、良くないことなのは自覚してるんですが…。

自分の当たり前は人の当たり前ではないということをよく理解して、他人やいろいろな物事を自分の当たり前で決めつけないようにしよう、と改めて思わされる作品でした。

世の中には白か黒かハッキリしたものばかりじゃなくて、グレーのものもあるし、どちらかというとグレーのものばかりなんだろうな、とも思います。

この物語にも出てきたけど、発達障害についても、グレーゾーンの人がたくさんいるんだろうし、発達障害といっても同じような特徴の人ばかりじゃないし、どんなことでも一括りにできるわけじゃないですよね。


「多様性」という言葉がよく聞かれる時代なので、最近そういうテーマの作品もよく読みますが、どういうスタンスで他人と接したらいいのか、考えれば考えるほど、わからなくなってきました…。

他人を傷付けないように、ってことばかり気にしてたら、当たり障りのないことしか言えないし、誰とも一歩進んだ付き合いができないような気もしてしまう。

かと言って、あなたのことを理解してますよ、みたいなスタンスでいるのも良くないと思う。

人との接し方って、ほんとに難しいですね…。

こういう作品を読んでいろいろ考えてはいますが、正解はないというか…。

いろんなことを想像することが大切、ということをとにかく覚えておいたらいいのかな…。


 

清瀬も考えが堅いところはあるけど、決して気遣いや気配りができないわけではないんですよね。

物語の中でいろんな気づきを得て成長していく姿が頼もしく感じました。

寺地さんの作品って、嫌な感じで終わる作品をまだ読んだことがない気がします。

この作品も、最後はほっとするというか、ちゃんと救いがある感じで終わるので、読後感は良かったです。

それにしても、寺地さんの作品は、人間のいいところも悪いところも、強いところも弱いところも、たくさん見せてくれるから、共感したりハッとさせられたり、恥ずかしくなったり、感情を揺さぶられますね。


著者紹介

1977年、佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞し、同作でデビュー。
21年、『水を縫う』で第9回河合隼雄物語賞を受賞。
著書に『夜が暗いとはかぎらない』『どうしてわたしはあの子じゃないの』『声の在りか』『ガラスの海を渡る舟』『カレーの時間』などがある。


amazonより引用

感想(ネタバレあり)

読後感は良かったのですが、うーん、天音のことがどうしても好きじゃないし許せないと思った私は、やっぱり考え方が堅いんでしょうか…。

そこだけがモヤモヤしました…。

「あんたが男を利用せずに生きていけるのは、あんたがわたしより優れてるからじゃない、ただ運がよかっただけ」みたいなことを天音が言うんですけど、じゃあ運が悪かったら男とか他人を利用していいってこと?って、心の中で反論してしまいましたよ…。

でも、清瀬の友達の篠ちゃんは、天音の言うことが少しわかる気がするって言うし、清瀬も天音に寄り添おうとする態度を見せるんですよね。

私ならきっと天音みたいな人は許せないし拒絶してしまうだろうなぁ、と思うんです。

寄り添って拒絶されてもなお「天音さんがこれから迎える明日が、よい日であり続けますように」と願う清瀬のようにはなれそうな気がしないけど、そうした方がいいのか?それもわからないです。

好きな人や大切な人に「明日がよい日でありますように」と願うことはできるけど…。

いろいろ考えさせられる作品ですね。

他人の境遇を想像できたとしても、寄り添うことが正解なのか、寄り添おうとするのもただの傲慢じゃないのか、とかね…。


 

松木と松木の親との関係を読んで、子どもとの接し方についても、決めつけや思い込みなどには本当に気をつけないといけないな、と感じました。

学校で何か悪さしたからといってすぐに乱暴者と決めつけたり、自分の子どもの言うことを信用しなかったり、そういうことのないように、子どもの言うことや意見にちゃんと向き合いたいと思いました。


 

それから、松木といっちゃんの関係性がほんとにいいですよね。

「六年間の思い出」の文章、感動しました。

六年間いろんなことがあったと思うのに、1年生の時のいっちゃんの言葉や態度が一番印象に残っているなんて、すごいですよね。

そこからずっと関係が続いていて、お互いが尊敬し合っていて、すごくいい関係だと思いました。

それに、清瀬と篠ちゃんの関係もよかった。

天音に言わせれば、そういう友達がいるのも、全て運のおかげなのかな。

私は運だけの問題じゃないと思うんだけどなぁ。

家族は選べないけれど、いい友達を見つけていい関係を築くのは、運だけの問題じゃないと思うんですが…。

家族との関係が悪いと、いい友達関係を築きにくいというのはあるかもしれないですけどね。

 

最後に松木の意識が戻って、清瀬との仲も復活してよかったです。

2人の未来が「よい日であり続けますように」。






まとめ

これまでに読んだ寺地作品と同じように、この作品もいろいろなことを考えさせられました。

他人のこともさまざまな出来事も、一つの面だけからではなくて、いろんなことを想像していろんな面から捉えられるようになりたいですね。

今後も寺地はるなさんの作品は追い続けていきたいです!

最後までお読みいただき、ありがとうございました!