第168回直木三十五賞候補作に選ばれた
雫井脩介さんの「クロコダイル・ティアーズ」について
詳しくまとめます!


この本を読んだきっかけ

雫井脩介さんの本は何冊か読んだことがあり、好きな作品が多いので、

新刊が出たら読もうと決めている作家さんです。

ちなみに一番好きなのは、「火の粉」です。

こんな人にオススメ



    • 人の心理が細かく描写されているサスペンスが好きな人

    • 家族に絡んだミステリーが好きな人

    • じわじわ怖いサスペンスが好きな人

    • 雫井脩介さんのファンの人

あらすじ

「息子を殺したのは、あの子よ」

「馬鹿を言うな。俺たちは家族じゃないか」

家族小説、サスペンスの名手である雫井脩介による最新長編。

老舗の陶磁器店を営む熟年の貞彦・暁美夫婦は、近くに住む息子夫婦や孫と幸せに暮らしていた。ところが、息子が何者かによって殺害されてしまう。

犯人は、息子の妻・想代子の元交際相手。被告となった男は、裁判で「想代子から『夫殺し』を依頼された」と主張する。

息子を失った暁美は悲しみに暮れていた。遺体と対面したときに、「嘘泣き」をしていた、という周囲の声が耳に届いたこともあり、想代子を疑う。貞彦は、孫・那由太を陶磁器店の跡継ぎにという願いもあり、母親である想代子を信じたいと願うが……。

犯人のたった一言で、家族の間には疑心暗鬼の闇が広がっていく。

出版社より引用

「家族というのは、『お互いに助け合って、仲睦まじく』といった一面が取りざたされることも多いですが、そうじゃない部分もあります。ある種の運命共同体であるからこそ、こうしてほしいという願望を押しつけあったり、求めあったりして、生きづらさも生んでしまう。だからこそ、ドラマが生まれる。家族が一枚岩になれないときに生ずる『心の行き違い』は、サスペンスにしかならない」(著者インタビューより)

出版社より引用

主な登場人物

○久野貞彦(くの・さだひこ)…古都・鎌倉近くで、大正時代から続く老舗陶磁器店〔土岐屋吉平〕を営む。孫の那由太を跡継ぎに、という願いを持っている。

〇久野暁美(あきみ)…貞彦の妻。「遺体と対面した想代子が嘘泣きしていた」という実姉からの指摘や、「殺害を想代子に依頼された」という被告人の証言に、心を削られる日々を過ごす。想代子に辛くあたることも。

〇久野康平(こうへい)…貞彦と暁美の息子。陶磁器店の跡継ぎとなるはずだったが、隈本に殺されてしまう。

○久野想代子(そよこ)…陶磁器店の跡継ぎとなるはずだった夫・康平と4年前に結婚。康平が亡くなった後、義父・貞彦の勧めもあり、貞彦・暁美と同居することに。

〇久野那由太(なゆた)…康平と想代子の一人息子。

〇塚田東子(つかだはるこ)…暁美の実姉。貞彦が所有する〔土岐屋吉平〕のビルの3階でキッチン雑貨店〔クックハル〕を営んでいる。かつては、航空会社のキャビンアテンダントを務め、そこから銀座の文壇バーのホステスに転身。その後、人気エッセイストとしても活躍した。

○塚田辰也(たつや)…東子の夫。元ギタリスト。東子との不倫関係を経て再婚。楽器店などを経営するが上手くいかず、今は、〔クックハル〕のお飾り店長として日々を過ごしている。

○隈本重邦(くまもと・しげくに)…想代子の元交際相手。酔って暴力を振るうことが続き、別れることになったが、想代子に未練がある。

タイトルの意味

「クロコダイル・ティアーズ」とは、どういう意味なのでしょうか。

crocodile tearsという英語の意味を調べてみました。

昔、東ローマ帝国で語られた「クロコダイルは獲物を引き寄せるのに涙を使う」とか「獲物を食べるときに泣く」といった逸話が出所で、

14世紀ごろから英語でも用いられるようになり、シェークスピアの作品にも何度か登場しているそうです。

実際にはクロコダイルは「泣く」ことはないので、『嘘泣き』という意味があるそうです。

想代子が康平が亡くなった時に流していた涙が、嘘泣き(=crocodile tears)ではないだろうか、と暁美や東子は疑うのです。

「物語の中心人物である想代子に関する言葉を、タイトルにしたいと思っていました」と、著者の雫井脩介さんは語っています。

果たして、想代子の涙は噓泣きだったのでしょうか。

感想(ネタバレなし)

さすが、雫井脩介さんらしく、じわじわヒタヒタと迫ってくる怖さがありました。

最後まで、どうなるのか分からず、ページをめくる手が止まりませんでした。

最初から最後まで疑心暗鬼な状態が続くので、少ししんどくもなりました…。

「火の粉」と「望み」を読んだことがあるのですが、その2作と共通している所が多く感じました。

その2作を読んだことがない方もいると思うので、多くは語れないですが、

何かきっかけがあって、家族の間に亀裂が生じ、それがどんどん悪い方向へ向かって行ってしまう、というような、家族の関係に焦点を当てた物語です。

家族が崩壊しそうになる過程が、登場人物の心理描写とともに、リアルに描かれています。

今回は「嫁姑問題」もテーマになっているのですが、その辺もリアルに感じました。

私は嫁側の人間であり、義両親ともかなり近い距離感で生活しているので、なおさら恐ろしく感じました。

嫁側の人間として、想代子に同情して読む方もいるかとは思いますが、

私には想代子がすごく不気味な存在に感じられて、姑の暁美側の気持ちになって、読んでいました。

どちら側に立って読んだ人が多いのか、気になります(笑)。

嫁と姑という立場でも違うだろうし、男性女性でも違うだろうし、年齢によっても違うと想像します。

想代子の何がそんなに不気味なのかと言われると、ハッキリとは言えないのですが、

想代子みたいなつかみどころのない人が苦手なせいかもしれません。

嫁として気を遣うのは当たり前だとは思うのですが、あまりに本心が見えないと、

暁美のように色々と疑いたくなる気持ちもよくわかります。

暁美も少し疑い過ぎだとは思いましたが、一度疑いの目で見てしまうと、もうそういう目でしか見れなくなってしまうのも分かります。

そういうのって、人間の悪い面だなぁと思います。

嫁と姑の問題も本当に難しいですよね。

将来もしお嫁さんが来ることがあれば、少しは感情を出してくれる人がいいなぁ、と思いました。

嫁と姑だけに関わらず、家族って誰よりも近い関係だから、一度不信感みたいなものが生まれると、より難しいですよね。

この本のようなことは、どこの家庭でもあり得ることなのかもしれないと思うと、恐ろしいです。

雫井さんは、このだんだん家族が壊れていく感じを描くのが、本当に上手い!と思いました。

著者紹介


1968年生まれ。愛知県出身。専修大学文学部卒業。2000年、第4回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作『栄光一途』で作家デビュー。04年に『犯人に告ぐ』がベストセラーに。同年の「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位となり、第7回大藪春彦賞も受賞した。『火の粉』『クローズド・ノート』『ビター・ブラッド』『検察側の罪人』『仮面同窓会』『望み』『引き抜き屋1 鹿子小穂の冒険』『引き抜き屋2 鹿子小穂の帰還』など映像化された作品多数。近著に『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』『犯人に告ぐ3 紅の影』『霧をはらう』など。

出版社より引用


感想(ネタバレあり!)

ここからは、ネタバレありの感想になるので、読みたくない方は、読まないで下さいね!


ここから、ネタバレ感想↓

最後、個人的にはスッキリしなかったですねー(笑)。

結局、想代子はいい嫁だったってこと?!

うーん、残念!とか言ったらダメですかね……。

想代子の化けの皮が剥がれて…みたいな展開を期待してしまった私が悪かったです…。

私が疑り深いんでしょうか。

でも、想代子は本当に何も企んでなかったんでしょうか?

全部周りが勝手に思い込んでただけなのかな…。

那由太が暁美を階段で突き飛ばしたのも、全く悪気なかったんでしょうか?

想代子が普段から暁美のことを悪く言ってて、突き飛ばすように仕向けたんじゃないの?って思ってしまいましたよ。

魔性の女というか、こういう女性って確かにいそうです。

私はあまり出会ったことはないし、関わりたくないタイプの女性ですが。

男性はこういう女性に惹かれるんでしょうか。

とにかく、想代子の一人勝ちで終わりましたね。

すごいなー、強いなー、たくましいなー、したたかだなー。

私は間違っても想代子タイプではないですね(笑)

私がこの物語の中にいたら、きっと暁美のようになっていたでしょう…。

私のように、モヤモヤした気持ちで読み終わる人も多いと思うのですが、それも雫井さんの思惑通りなのかもしれませんね(笑)

まとめ

さすが雫井脩介さん、といった本で、面白かったです!

これからも新刊が出たら読みたいし、まだ読んでいない本も読みたいと思いました。

最後まで、お付き合いありがとうございました!!