薬丸岳さんの
刑事弁護人」について詳しくまとめます!


この本を読んだきっかけ

数年前に「天使のナイフ」を読んで以来、薬丸岳さんのファンなので、こちらも絶対読みたいと思っていました。

購入したいのですが、2000円超えなので、すみません…図書館で回ってくるの待ってました…。


こんな人にオススメ

  • 法廷ミステリーが好きな人
  • 弁護士の仕事に興味がある人
  • 社会派ミステリーが好きな人
  • 薬丸岳さんのファンの人

「刑事弁護人」あらすじ

新潮社の紹介内容はこちら

現役女刑事による残忍な殺人事件が発生。弁護士・持月凜子は同じ事務所の西と弁護にあたるが、加害者に虚偽の供述をされた挙げ句、弁護士解任を通告されてしまう。事件の背後に潜むのは、幼児への性的虐待、残忍な誘拐殺人事件、そして息子を亡くした母親の復讐心? 気鋭のミステリ作家が挑んだ現代版「罪と罰」

出版社より引用


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の紹介内容はこちら

ホストを殺した女刑事。
無実を信じて奔走する若き弁護士・持月凛子。
しかし、その証言は全て嘘だった――。

凶悪事件の犯人に、果たして弁護士は必要なのか――
気鋭のミステリー作家が「弁護士の使命と苦悩」を描き切る!
構想17年。徹底的な取材の元に炙り出す、日本の司法制度の問題とは......?

あらすじ
ある事情から刑事弁護に使命感を抱く持月凛子が当番弁護士に指名されたのは、埼玉県警の現役女性警察官・垂水涼香が起こしたホスト殺人事件。凛子は同じ事務所の西と弁護にあたるが、加害者に虚偽の供述をされた挙げ句の果て、弁護士解任を通告されてしまう。一方、西は事件の真相に辿りつつあった。
そして最後に現れた究極の存在とは……。

amazonより引用

出版社のコメント

著者の薬丸岳さんは、
「デビュー作を執筆した頃から弁護士という仕事に興味があり、いつか刑事弁護人を主人公にした小説を執筆したいと考えていました。
ただ、書くためにはかなりの知識と特筆すべきアイディアが必要です。
長い年月をかけて考える中で、『元刑事の弁護士』という設定に辿りついたとき、これなら書けると手ごたえを感じました。
何より、今までにないリーガルミステリーを書きたかったんです」 と語っています。

有罪率99.9%の刑事事件に挑む若き女弁護士は真実に辿り着けるのでしょうか――。
薬丸作品の到達点にして、新たな代表作となる一冊です。 

出版社より引用


構想17年
の作品ということで、
薬丸さんのこの作品にかける想いが強いことがわかりますね!

「刑事弁護人」とは

刑事弁護人」とは、刑事手続において被疑者や被告人を支援し、保護し、代理人となる役割の人のことです。

弁護人」と「弁護士」も意味が違うんですよ。

弁護人」とは、刑事事件において被疑者や被告人の弁護(防御活動)をする人のことなので、弁護人は刑事事件でしか登場しません。

民事事件の代理人や破産申立などの代理人となった弁護士のことは「弁護人」とは呼びません

起訴前に被疑者を守ったり、刑事事件で被告人を弁護したりする人が「弁護人」であり、「刑事弁護人」と呼ばれることもあります。

この本の特徴やテーマ

「刑事弁護人」の葛藤や使命感

主人公の凜子の父は、刑事事件ばかりを扱う、いわゆる人権派の弁護士でした。

そんな父に「世間で極悪人とされる人間を擁護することにためらいはないのか」と、凛子は訊いたことがあり、父の信念や使命感を聞かされてきました。

何のために弁護士がいるのか、弁護士がどういうことを思っているのかなど、この作品を読んで考えさせられました。

この物語の中でも、凛子と西が弁護士になった理由などが物語の途中で明らかになり、2人の刑事弁護人としての姿勢や信念も理解することができました。

実際の弁護士さんたちも、様々な理由で弁護士になった方がいて、いろいろな葛藤や苦悩があるのかな…と感じました。

加害者を弁護するということの重圧は、とても想像できません…。


2人の弁護士コンビがいい!

持月凜子は被疑者や被告人の言うことを信じるのが弁護人の務めだと思っているのに対し、西は「人は嘘をつく生き物だ」と思っており、被疑者や被告人にも「真実のみを話してください」と面と向かって言うほど、真実を追求することにこだわります。

凜子は西のそんな態度にデリカシーが欠けていると感じるが、西の真実を追求する姿勢に次第に影響を受けていきます。

凜子はこの事件が初めての刑事弁護なので、先輩である西から学ぶことも多いのですね。

最初は西がもっと偏屈でキャラが濃い人なのかと思ったので、読み終わって少し物足りなく感じましたが(笑)、このコンビがなかなかよかったので、続編も期待したいです!


心に残ったフレーズ


「真実を解き明かさなければ、その者にとって正しい判決は下されない。そして真実を隠したままでは本当の意味での贖罪や更生は望めない。」

p315 細川の言葉

弁護事務所の責任者である細川が西の考えを代弁する場面です。

被疑者や被告人が真実を隠していたら、弁護人とは信頼関係が築けないのは当然なのでしょう。


「何事も隠さずにこの場で真実を話すことこそが、あなたがその人たちにしなければならない最初の償いではないかと、私は思います。その人たちをさらに不幸にしないために…」

p456 凜子の言葉

裁判の場面では何より真実を話すことが大事だということが、この物語では何度も繰り返し述べられています。


「被疑者や被告人には弁護人以外に誰も味方はいない、と。罪を犯すまでに追い詰められた人のほとんどは、信頼を寄せられる家族や知人はいない。彼ら彼女らの話を聞いてあげられるのは弁護人しかいないのだと」

p496 凜子の言葉

凛子の父親が言った言葉です。弁護人としての覚悟が伝わってくる言葉ですね。

弁護人が必死に耳を傾ければ、罪を犯してしまった人も自分の罪に向き合おうとするのかもしれません。


感想(ネタバレなし)

元々薬丸さんのファンなので、贔屓目もあるかもしれませんが、この作品もよかったですね〜。

話の展開にすごく起伏があるわけでもなく、派手などんでん返しがあるわけもないのに、500ページ以上読むのが全く退屈ではなく読めました。

最初から一気に引き込まれて、あっという間に読めてしまいました。

終盤の裁判の場面なんかは、もう圧巻でしたね。ページをめくる手が止まらない止まらない(笑)

重いテーマなので読みにくいのかな?と思いがちですが、薬丸さんの作品はとても読みやすいです。

あまり馴染みのない用語などの説明もきちんとされており、裁判になるまでの手続きについてや、裁判員制度についても描かれており、裁判についての理解を深めることができました。

500ページは長い…というような感想もチラホラ見受けられましたが、登場人物を深く描いて、裁判の過程も丁寧に描いて、となると、これくらいの長さになるのも納得かな、と私は思いました。

西の過去などはもっと深く知りたいな、と思ったくらいです。

そして、刑事が起こした殺人事件の真相を追う中で、様々な背景が絡んでいることもわかるのですが、いろいろなテーマを盛り込んでも、くどくなくスマートに描き切っているのは、さすが薬丸さんだなと感じました。

ミステリーとしても読み応えはもちろん充分でしたが、裁判を通した人間ドラマとしてもかなり楽しむことができました。

薬丸岳さんの作品が好きな方はもちろんですが、リーガルミステリーが好きな人にも自信を持っておすすめしたいです!


著者紹介

1969年兵庫県明石市生まれ。駒澤大学高等学校卒業。2005年、『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞してデビュー。2016年『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を、2017年「黄昏」で第70回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。連続ドラマ化された刑事・夏目信人シリーズ、『友罪』『ガーディアン』『告解』など多数の作品を意欲的に発表している。


出版社より引用


感想(ネタバレあり)

ここからはネタバレありの感想を書いていきますので、まだ読んでいない方は注意してください!!

 
 
 
 

涼香の判決について、少し軽いのかな…という印象もあり、他の方のレビューを見ていてもそう書いている人が多いですが、弁護士さんが監修されているので、妥当な刑なのでしょうか。

涼香が最後まで隠そうとしていた加納の母親についてのことは、正直そんなこと隠そうとしなくても…と思ってしまいました。

葉山のことを思う気持ちについては理解できますが…。

だって、加納は、自分の子供に乱暴したかもしれないし、たくさんの幼児に性虐待していたんですよ。

その加納の母親のことなんて、普通かばおうとしますか?

私だったらとにかく加納が許せないですね。

最初から加納の音楽プレーヤーを調べて、真相を調べておけばよかったのに…と思います。

涼香が警察に事情を話そうと思えなかった心情もわからなくはないですが…、最初に話していれば加納を殺してしまうことにはならなかっただろう、と思いました…。

涼香は、真実を隠せば真実を知るよりは苦しまないのでは、と考えたようですが、西は「真実を知っても知らなくても、その人は苦しみ続ける」と言います。

私も西の言葉に同意します。

どうせ苦しむならちゃんと真実を知りたい、と私なら思うだろうな、と。

私自身、あまり嘘がつけないし、嘘をつかれるのも嫌いな人間だから、そう思うのかもしれませんが。

涼香の二転三転する発言に、凛子と西は振り回されたのだし、裁判のような重要な状況で嘘をつくのはどんな事情があれ、絶対にいけないことなのではないでしょうか。

被告人が真実を話してくれなければ、弁護人との信頼関係は築けないのではないか、と想像します。

最後、西が涼香をかばって負傷してしまう場面、ちょっと要らなかったかなとも思いましたが、「たとえ身内や知り合いが犠牲になっても、被疑者や被告人の言葉に耳を傾ける」という凛子の信念を描くためには必要な場面だったのかな。

涼香が最後に「私は無罪ではあっても無実ではないんです」と言った言葉も、重かったですね。

責任感が強く、人への思いやりも強い女性だから、きっと一生自分のしたことから逃れられないんだろうと思うと、辛くなりました。


それから、感動した場面がありました。

加納から性虐待を受けた匠海が裁判で証言した場面、西も検察官の桧室も「君は弱い人間じゃない」と言ったところです。

加納にされたことが原因で8年間も外に出られなくなってしまった匠海のことを、私も心から応援したい気持ちになりました。

やっぱり加納が許せませんね。

彼も兄ばかり可愛がられたり、いじめを受けたり、辛い人生だったのかもしれないけれど…。

登場人物それぞれの人生について、色々と考えさせられる作品でした。


まとめ

薬丸岳さんの作品は、読み終わった後にいろんなことを考えさせられるものが多いですが、この作品もまたいろいろと考えさせられました。

私はそういう作品が好きなので、改めて薬丸岳さん好きだなぁ、と実感しました。