映画が話題になっている湊かなえさんの
母性」について詳しくまとめます!


この本を読んだきっかけ

映画が上映されていて観てみたいと思ったのですが、とりあえず原作を先に読みたい派なので、読むことにしました。

こんな人にオススメ

  • 「母性」とは何か、気になる人
  • 「毒親」「毒母」などのテーマに興味がある人
  • 母親との関係に何か引っかかりがある人
  • 湊かなえさんのファンの人

「母性」あらすじ


女子高生が自宅の中庭で倒れているのが発見された。母親は言葉を詰まらせる。「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて」。世間は騒ぐ。これは事故か、自殺か。……遡ること十一年前の台風の日、彼女たちを包んだ幸福は、突如奪い去られていた。母の手記と娘の回想が交錯し、浮かび上がる真相。これは事故か、それとも――。圧倒的に新しい、「母と娘」を巡る物語(ミステリー)。

出版社より引用

この本の特徴やテーマ

「母性」とは

この本では「母性」について、

母性など本来は存在せず、女を家庭に縛り付けるために、男が勝手に作り出し、神聖化させたまやかしの性質を表わす言葉にすぎないのではないか。

そのため、社会の中で生きていくに当たり、体裁を取り繕おうとする人間は母性を意識して身につけようとし、取り繕おうとしない人間はそんな言葉の存在すら無視をする。

p52より引用

と書いてあります。

体裁を取り繕おうとするために母性を身につける、というのは少し言い過ぎかもしれませんが、生まれつき備わってるものとは言えないかもしれないですよね。

子供を産んでから母性がわいてくる人もいるし、子育てをする中で徐々に芽生える人もいるだろうし、人それぞれなのではないかと思いますね。

ただ、ルミ子の清佳に対する態度や考え方には、私はあまり母性は感じられませんでした。

以前に読んだ早見和真さんの「八月の母」でもそんなことが描かれていたなぁ、と思い出しました。

こちらも「母性」とは何かという問いについて触れた作品なので、よろしければ…。

母と娘、それぞれの想い

この本は、「母の手記」と「娘の回想」が交互に語られて進んで行きます。

同じことについて書いてるのに、母であるルミ子と娘の清佳とでは、全く異なる見方や捉え方をされているのです。

ルリ子は「愛能う限り、娘のことを大切に育ててきた」と語っていますが、清佳は母から愛されていない、と感じています。

人によって感じ方や捉え方が違うということは、どんな人間関係でも起こり得ることですが、それが親子となると、より一層深い溝となってしまうのではないでしょうか。

言葉に出さなくても相手はわかってくれるだろう、と考えがちですが、親子であっても言葉で伝えあうことはやはり大切なことなのだと思います。

印象に残ったフレーズ


愛されるためには、正しいことをしなければならない。喜ばれることをしなければならない。あなたがそこにいるだけでいい。そんな言葉はわたしの人生には登場しなかったのだから…。

p39 清佳の言葉

いわゆる「無償の愛」のことですね。子供が親から欲しいのは無償の愛ですよね。

子供の存在自体を認めて受け入れることが大切です。


食事はきちんと与えられていた。毎晩、風呂に入り、やわらかく温かい布団で寝ていた。給食費を期日に出せなかったこともない。(中略)これが親の愛だというのなら、わたしは満たされる方に分類される。しかし、中谷亨は、そういうのは愛とは呼ばない、とわたしに言った。体裁を整えているだけだ、と。

p114 清佳の言葉

清佳の彼氏である享の言葉ですが、スパッと言い切ってくれて、気持ちがいいですね。

親が衣食住を子供に提供するのなんて当たり前ですもんね。

体裁を整えるだけの親にならないように気を付けたいです。


母性を持ち合わせているにもかかわらず、誰かの娘でいたい、庇護される立場でありたい、と強く願うことにより、無意識のうちに内なる母性を排除してしまう女性もいるんです

p216 清佳の言葉

ルミ子がまさにそういうタイプです。母への想いが強すぎて、全然親離れできていないです。

親離れ子離れって大事なことですが、案外できてない人が多いのかも…。


感想(ネタバレあり)

うーん、これはまた感想が難しいですね(っていつも言ってますね笑)。

最近いわゆる「毒母」関連の作品をけっこう読んできたせいか、読み終わった直後は、この本はあまり響かなかったなぁーと思ったんです。

今まで読んできたものと比べて、そんなに強烈ではなかったので。

でも、気付けばこの本のことばかり考えていて、実はけっこう響いてたのかも?と思って、感想を書くことにしました。

母の立場になって読むか、娘の立場になって読むかで、けっこう感想が変わりそうです。

私は娘でもあり、娘を持つ母でもありますが、終始娘の清佳に感情移入して読みましたね。

母のルミ子には全く共感できなかったです。

私自身、あまり母といい関係ではないから、ルミ子が彼女の母に持つ異常なまでの愛を理解できなかったのかもしれませんが…。


よく友達親子みたいに仲の良い母娘っているみたいですが、ルミ子と母のような関係なのでしょうか?

自分が子供産んでからも「ママ大好き、ママに何日も会えないとか考えられない」って言ってる女性の話を聞いたことがありますが、そういう感じなのでしょうか。

そういう母娘関係の人って、自分が娘を持った時に娘ともいい関係を築けそうでいいな、と羨ましく思っていたのですが、この本を読んで、実はそんなこともないのかも?と思いました。

母親と仲良しの娘でも、いろいろ抱えていることがあるのかもしれないんですね。

自分が娘のままでいる限り、母にはなり切れないのかもしれないですね。


 

それにしてもルミ子は少し極端過ぎるのではないか、とは思います。

子供を産むのも「母親が喜んでくれるから」という考えなのが、もう全然理解できないし、何をするにも母親が喜んでくれるように、という前提なのが、ちょっと気味悪かったです。

そりゃあ母親に褒めてもらいたい、喜んでもらいたい、と思う気持ちは、どの子にでもあると思いますよ。

でも、母親のために子供を産むとか、自分の子を育てる時にも、母が喜んでくれるように育てるとか、そんな風に考えるのでしょうか?

田所の実家で褒められた時も、「母から受け継いだものを認めてくれた」と感じて喜んでるんですよね。

「自分」というものが、ルミ子にはないのだろうか?と思いました。

やたら自意識過剰なところがあるので、肯定されて生きてきたのはわかりますが。

「母親に愛されている自分」しかないんですよね。

そういう意味では、ルミ子の母親も歪んだ愛情でルミ子を育てたのかな、と感じました。

たぶん、親の思うようにしていれば褒められる、という条件付きの愛情だったのではないでしょうか。

親の思う子供になるように、ルミ子は育てられたのかもしれません。

そもそも結婚相手も親が後押ししたからという理由で決めたし、ルリ子は反発できずにいたのか、そもそも反発するということすらも感じないように育てられたのか…。

「母が望むような子になろうと努力していたのに、どうして、娘は私の気持ちを汲み取ろうとしないのだろう」という文章がルミ子の手記にあるので、きっとそうなんでしょう。


 

清佳はただ母から愛されたかっただけでしょうね。

その気持ちは痛いほど伝わってきました。

することなすこと母には伝わらず、空回りになってしまうわけですが…、母ならもう少し娘の気持ちを汲み取ってあげてほしかった。

私自身がルミ子だったら汲み取れるのかって考えてしまいましたが、たぶんルミ子ほどひどくはないと思いますね…。

少なくとも自分の思うように娘を育てようとは思わないし、娘に自分の気持ちを汲み取ってもらおうとは思わずに、ちゃんと言葉で伝えようとするとは思います。


 

それから、何であまり響かなかったと感じたのか、って考えたんですが、終わり方が納得いかなかったせいもあると思うんです。

清佳が自殺してからかなりの年月が経っているのはわかるんですが、そんなにうまくいかないでしょ…と。

私が清佳なら、母のことも父のことも許せないだろうし、りっちゃんのお店になんか行かないだろうし、ましてや父が不倫してた家になんか住まないだろうし。

そういえば、この父親も最低ですね。

生い立ちに事情があるとはいえ、感想にするほどでもないくらい、最低です。

見て見ぬフリをして、不倫してるとか、もう意味わからないです。

そんな父親、母親が許したからと言って、許せないですよね。

話を戻しますが、長い年月の間に、ルミ子と清佳の間にどういう時間が流れたのかわかりませんが、そう簡単に母と娘の関係って修復できるもんでしょうか。

清佳がルミ子のことを許したのかな。

ただ、清佳が出産したら、またどうなるか…が問題になってくると思いますね。

自分が求めたものを我が子に捧げたいという想いを持って物語は終わりますが、そこからがいろいろ大変だと思います。

子供を育てる中で、きっとルミ子への想いがたくさん湧き上がってくると思います。

私もこんな風に愛されたかったとか、私もこうしてほしかったとか…恨めしく思う気持ちが出てくるのではないかと。

毒親に育てられた人はそういう悩みを抱えてる人、多いですからね。

清佳がそこを乗り越えられるか、この家族の物語はまたそこから始まると思います。

最後がハッピーエンドっぽいのが救いだという感想もけっこう見たので、私が拗らせ過ぎてるのかもしれません…。


 

それからなんと言ってもこの本で1番印象に残った言葉「愛能う限り」という言葉、皆さん知ってましたか?(笑)

私は聞いたことも使ったこともなかったですが、この本の影響で気味の悪い言葉にしか思えなくなってしまいました…。

強烈なインパクトを持つ言葉でした。


著者紹介

1973(昭和48)年、広島県生まれ。2007(平成19)年、「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。翌年、同作を収録する『告白』が「週刊文春ミステリーベスト10」で国内部門第1位に選出され、2009年には本屋大賞を受賞した。2012年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門、2016年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。2018年『贖罪』がエドガー賞候補となる。他の著書に『少女』『Nのために』『夜行観覧車』『母性』『望郷』『高校入試』『豆の上で眠る』『山女日記』『物語のおわり』『絶唱』『リバース』『ポイズンドーター・ホーリーマザー』『未来』『ブロードキャスト』、エッセイ集『山猫珈琲』などがある。


出版社より引用

たくさん気になる作品があります。


まとめ

「母性」についてや、母娘関係について、いろいろと考えさせる作品でした。

この作品がどう映像化されているのか、映画の方もすごく気になるのですが、観に行く時間もないので、いつか観る機会ができればいいなと思います。