本のむし子

40代主婦の読書日記ブログです。読んだ本の感想などを気ままに書いていきます。

ヒューマンドラマ



こんにちは!

椎野直弥さんの「僕は上手にしゃべれない」について詳しくまとめます!



この本を読んだきっかけ

Twitterの読書アカウントで、いつもやり取りさせてもらってるフォロワーさんのおすすめ本です。
児童書ですが、以前にも見かけたことがあり気になっていたので、読んでみました。


こんな人におすすめ

・小学校高学年~高校生くらいの人 ・吃音について知りたい人 ・周りに吃音症の人がいる人


「僕は上手にしゃべれない」あらすじ

吃音の悩みを抱え中学生になった悠太。思い切って入部した放送部にいたのは同じクラスの女子で…。
葛藤と成長の、胸打つ青春物語。 小学校の頃から吃音に悩んできた主人公・柏崎悠太は、中学入学式の日、自己紹介のプレッシャーに耐えられず、教室から逃げ出してしまう。
なんとかしたい思いから、「誰でも上手に声が出せるようになります」という部活勧誘チラシの言葉にひかれ、放送部に入部する。
クラスメイトで同じ新入部員女子や、優しい先輩、姉など周囲の人に助けられ、途中くじけながらも少しずつ変わっていく悠太の、葛藤と成長の物語。 出版社より引用


著者の思い

著者の椎野直弥さんは、この作品について、次のような思いで書かれました!

この話を書くときに、物語として面白いのはもちろん、それ以外にも吃音を知らない人が読んだときに、吃音のことひいては吃音者の思いを理解できるものにしたいなという考えがありました。
吃音に悩んでいる人が、この人にだけは吃音を理解してほしいと思ったとき、説明に費やす多くの言葉の代わりに、この物語がなれたらという思いで書きました。
「俺(私)、この本の主人公と同じなんだ」という一言だけで、すべてを伝えられる物語にできたら。
だから必然的に、主人公は吃音者になりました。
そして彼の年齢は、僕が一番吃音について思い悩んだ時期である中学生にしました。
でもこれは、作者である僕の物語じゃありません。
他の誰でもない、吃音に悩み、立ち向かった一人の少年の本気を、物語にしたつもりです。


この本のテーマ

吃音に悩む少年の成長物語

吃音について知らない人もいるかもしれないので、少し説明します!

吃音」とは… 話す時に最初の一音に詰まってしまうなど、言葉が滑らかに出てこない発話障害の1つ。主な症状には3つあります。
  • 「ここここ、こんにちは」と言葉のはじめの音を繰り返してしまう「連発(れんぱつ)」
  • 「こーーんにちは」と音が伸びてしまう「伸発(しんぱつ)」
  • うまく言葉が出ずに間が空いてしまう「難発(なんぱつ)」
幼児期に発症する「発達性吃音」と、疾患や心的ストレスなどによって発症する「獲得性吃音」に分類され、その9割は発達性吃音であるそうです。
日本には吃音症の人が、約120万人(100人に1人)いると言われています。
主人公の柏崎悠太は吃音に悩む中学一年生です。
あらすじ紹介にもあるように、中学入学式の日、自己紹介のプレッシャーに耐えられず、教室から逃げ出してしまうのですが、「上手に声が出せるようになる」という放送部のチラシを見て入部を決意します。
悠太がどのような成長を見せるのか、ぜひぜひ読んでみて下さい!


感想(ネタバレなし)

一応児童書なんですけどね、大人にもすごくおすすめです! もう涙腺崩壊しましたよ、私。
後半はずっと泣きっぱなしで涙が止まらなくて、泣き疲れて頭が痛くなるほどでした。
吃音のことをよく知らないっていう人たちに、ぜひたくさん読んでほしいな、って本当に思います。
私もよく知っているわけではなかったけど、吃音については知っていましたし、世間的にもみんな知ってるんだろうなって思ってたんですが、吃音への理解はまだまだされていないのでしょうか。
中学の時のクラスメイトにも吃音症の子がいましたけど、誰もからかったりしてなかったし、もちろんいじめもなかったので、中学生くらいになればみんな理解していると思ってたのですが…。
でも、私ももしかしたらそのクラスメイトの子がいたから、吃音について知ったのかもしれないな…なんて思いました。

有名人だと、田中角栄さんとかアメリカ大統領のバイデンさんとかも吃音だって有名ですよね。
私は観ていませんが、「英国王のスピーチ」という映画も、吃音症の英国王の話だったりします。
もっと吃音のことが世の中でも理解されたらいいですよね。  

この物語の悠太のように、学校でからかわれたり、いじめにあったりという辛い学校生活を送っている人がたくさんいます。
また、社会でも、就職活動の面接で上手く話せないからという理由で落とされたり、接客業をやってみたいのにあきらめなければならない人も多いようです。
そして、吃音症といっても、話をさえぎらずに最後まで聞いてほしい人、途中で助け舟を出してほしい人、いろんな考え方があるようです。
「ゆっくり話してね」や「落ち着いてね」などと言うことが逆効果になるそうですね…。
そして、吃音症だからといって、話すことが大好きっていう方もたくさんいるんですよね。
この作品を読んで、吃音について調べたり、吃音症の方のインタビューなどを読んだりしましたが、皆さんおっしゃられていることは、吃音についてもっと知ってほしい、吃音の苦しみを知ってほしい、ということだと感じました。

自殺を考えるほど苦しんでいる人が多い、ということは、私も知りませんでした。
著者の椎野さんも言っていますが、子供時代、特に中学生くらいの子にとっては、毎日の学校生活が辛いというのは、本当に悩むだろうな、と思います。
この物語を読んで、もし吃音を持つ人と接することがあったら、どう接したらいいんだろうか、ということについて考えました。
吃音について変に理解してる風にするのは良くないだろうし、かと言って気付かない風にするのもおかしいだろうし、もう普通に接して普通に会話するのが一番いいのかなって、私は思ったんですが、どうでしょうか…。
吃音症ではない人と話す時もそうですけど、相手の話をよく聞くことって、当たり前のようで実はできてなかったりしますよね。
途中でさえぎってしまったり、変なタイミングで相槌を打ってしまったり、とか。 私なんてせっかちなので、「聞く力」みたいなのが足りてないかもしれないんですけど(汗)、そういうせっかちな人とはしゃべりにくいだろうなと思うので、今後気をつけていかなきゃいけないですね。
吃音に限らず、いろんな個性を持った人が認められる時代になってきたと思うので、どんな個性であっても、まずは理解しようとすることが大切なのかなと思います。

そして、この物語でも主人公の悠太が感じていることですが、どんな人でもそれぞれの悩みを抱えていて、自分だけが辛いんだというわけではないことですね。
悠太を支えてくれている周りの人にもそれぞれ悩みがあって、みんなが支え合って思い合っている姿が素敵でした。
そうやって支えて理解してくれる人が周りにいるなら、どんどん甘えて助けてもらったらいいんじゃないかなぁって思いました。
悠太と周りの人たちの間で、いろんな勘違いや誤解があったけど、理解しようとしてくれる人に対してなら、ぶつかってもいいから、本音を言ったり思ったことを正直に言ったりしてもいいんじゃないかな、と思います。
周りに信頼できる人がいなかったら、困難に立ち向かって行く勇気も得られなかったかもしれないし、悠太は理解してくれる家族や友達・先輩に出会って、世界が変わって、本当によかった。
吃音がテーマではあるけど、何か悩みを抱えている子供たちにも、ぜひ読んでほしい作品だと思いました。


吃音がテーマのおすすめ作品

この作品を読む前に、吃音がテーマの物語を読んだことがありました。
たぶん、知っている方も多いかとは思いますが、すごく心に残る作品だったので、紹介させて下さい。
重松清さんの「きよしこ」と「青い鳥」という作品です。

重松清さんの作品は有名なものがたくさんありますが、この2冊は吃音がテーマになっています。

重松さん自身も吃音症であり、吃音がなければ作家にはなっていなかっただろう、とおっしゃっています。
「きよしこ」は自伝的な作品であり、「青い鳥」は吃音症の先生の話ですが、どちらも吃音を抱える人に圧倒的に支持されている作品だと思います。
重松さんは教師になりたかったけど、吃音があるために諦めたそうで、「青い鳥」の主人公である村内先生は、重松さんのヒーロー的存在として書かれたそうです。
「きよしこ」もよかったのですが、「青い鳥」は号泣してすごく記憶に残る作品だったので、今回の椎野さんの作品を読んで、また再読したいなと思いました。
もし読んだことがなければ、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。


著者紹介

1984年(昭和59年)、北海道北見市生まれ。
札幌市の大学を卒業後、仕事のかたわら小説の執筆を続け、第四回ポプラ社小説新人賞に応募。
最終選考に選ばれた応募作「僕は普通にしゃべれない」を改稿した本作でデビュー。 amazonより引用


まとめ

椎野直弥さんの「僕は上手にしゃべれない」についてまとめました。
吃音について知っている人も、知らない人も、子供でも大人でも、あらゆる人に読んでほしいと思える作品でした。
 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!




宇野碧さんの「レペゼン母」について詳しくまとめます!

この本を読んだきっかけ

Twitterで見かけて、「何?めっちゃ面白そう!!」と思ったのがきっかけです。 ラップするおかん、興味がわかないわけないですよね(笑)

こんな人にオススメ

世界の母親全員!! ヒップホップラップが好きな人 母と息子の話が好きな人 親子の関係について考えたい人 ・本を読んで、笑ったり泣いたりしたい人

「レペゼン母」あらすじ

マイクを握れ、わが子と戦え! 山間の町で穏やかに暮らす深見明子。
女手一つで育て上げた一人息子の雄大は、二度の離婚に借金まみれ。
そんな時、偶然にも雄大がラップバトルの大会に出場することを知った明子。
「きっとこれが、人生最後のチャンスだ」
明子はマイクを握り立ち上がる――! 『晴れ、時々くらげを呼ぶ』『檸檬先生』などで最注目の新人賞から、今年も文芸界のニュースターが誕生!
第16回小説現代長編新人賞受賞作。 出版社より引用

「レペゼン」とは、英語のrepresentに由来していて、
代表する、象徴する」を意味するヒップホップ用語です。
つまり、「レペゼン母」は「母代表」という意味ですね!

この本のテーマ

『ラップ✖️おかん』という斬新な設定!!

もう読む前から、ワクワクしませんか?この設定! 関西のおかんがラップするって、どんなのよ?ですよね。
皆さん、ヒップホップとラップの違い、わかりますか?
この本を読んで、ヒップホップとラップの違いについて、ちょっと調べてみました。
「ヒップホップ」は、1960年代後半から1970年代にアメリカのニューヨークブロンクス区で発生した黒人ストリート文化を指す語です。
そのヒップホップ文化から生まれた音楽を「ヒップホップミュージック」と言います
「ラップ」 とは、ブラックミュージックにおける歌唱法の一つで、メロディよりもリズムを重視した歌唱法です。
「ヒップホップミュージック」に合わせて「ラップ」が行われます
日本では、「ヒップホップ」と「ラップ」が同じ意味で使われている気がしますが、厳密にはこのような違いがあるようです。
ラップバトルは、即興のラップで相手をディスり合う、つまり罵倒し合う大会です。
そして、この作品では、ヒップホップやラップに関するうんちくなども聞けて、勉強になることもありました。

ラップに乗せた母と息子の想い

明子と息子の雄大のラップバトルが実現するのかは、この本を読んで確かめていただきたいのですが、明子と雄大それぞれのラップをしっかり堪能することができます。
あらすじの補足をすると、雄大は2回の離婚歴があり、3年前に失踪しています。
失踪している息子がラップバトルに出ることを知ったからといって、明子が私も出るって急に出ることを決めたわけではありません。
それまでにいろんな経緯があって、最終的に、息子が出るラップバトルに自分も出る決意をするのです。
その辺の経緯や事情をわかって2人のラップを聞くと、より感動します。
もちろん、この2人以外の出場者のラップもたくさん聞けて、個性があっていいですよ。

印象に残ったフレーズ

印象に残ったフレーズを2つ紹介します!

「こんなに金と時間と労力がかかって、別になんも得するわけちゃう。これが一部の物好きがやる趣味とかやなくて、多くの人が当たり前みたいな顔でやってることなんてな」 p54 明子の言葉
明子が子育てについて語る言葉ですが、もうほんとに共感しかない…。
なんも得するわけちゃう、っていうのは言い過ぎかもしれないけど、ほんとその通りです。
だから、子育てって、この世で1番大変だし尊い仕事だと思うんですよね。 本当に大変!(笑)
「親ってすごく鈍感な生き物だよ。自分の言動が子供にどんなに消えないインパクトを与えるか、わかろうとしない」 p171 沙羅の言葉
これは親の立場で読んでると、ドキッとする言葉ですね。
自分も子供だったくせに、親になるとどうして子供を傷つけるような言動をしてしまうんでしょうね…。 難しいですよね…。

感想(ネタバレなし)

いやぁー、もう胸熱すぎる!!何これ〜面白すぎる〜!! 読み始めて割とすぐから面白かったけど、最高に面白いー!

予想以上、期待以上!!

Twitterでもベタ褒めの興奮ツイートをしてしまいました(笑) 
全母に読んでほしい!って。
そしたら、今までの読了ツイートで1番反響が大きかったです。
私のツイートを見て、本を買ったっていうフォロワーさんや、さっそく図書館で借りたってフォロワーさんが何人かいて。
やっぱりこの設定が最強なんでしょう!おかん×ラップ、というパワーワードが!  
第16回小説現代長編新人賞受賞作、とあるように、この作品で宇野碧さんはデビューされたんですよ。
これ、本当に新人なの?と思いました。
ずっと執筆活動はしてたのかもしれないですけど、新人とは思えない貫禄があるように感じました。
いや、それって、おかんの貫禄がすごいからか?(笑)
本のタイトル、「レペゼンおかん」でもよかったんちゃう?と思っちゃいました(笑)
「母」より「おかん」の方が、なんかワクワクしません?

すみません、この作品読んで「バイブス上がっちゃいました!」

ヒップホップ用語を使って感想書きたくなるくらいの熱量で読み終えたので、変にテンション上がってます…。 「バイブス」=「テンション」です。  
これ、本屋大賞にノミネートされてもよかったんじゃない?と思ったんですが、新人さんがいきなりノミネートはなかなか難しいですかね…。
著者の宇野さんは、ラップバトルでは女性ラッパーが男性ラッパーから攻撃されることが多くて、どういう女性なら勝てるだろうか…と考えた時に、「関西のおかん」なら勝てるんじゃないか?と考えたそうです。
それからヒップホップ文化について調べたり、ラップバトルをたくさん聴いたりしたそうです。
私はヒップホップもラップもほぼ聴かないし、むしろ苦手ジャンルだったんですが…、この作品を読んでちょっとイメージ変わりました。
私もラップやってみたくなりました! よくダジャレ言ってるし、口が達者だから、向いてるかもしれない(笑) 「読書家おかんラッパーむし子」なんてどうでしょう?(冗談です…笑)
ラップバトルって即興でうまいこと言わないといけないんですよね。かなり難しそう。
基本的にディスるみたいなので、ディスらないラップバトルがあれば聴きたいかもしれない。
梅農園で働く沙羅の影響でラップを始めることになった明子ですが、めちゃくちゃラップのセンスがあって、すごかったです!キレッキレ!
現実的に考えて、64歳でこんなにラップができるおかんっているんでしょうか?
たぶん相当頭の回転が速い人じゃないと、無理ですね。
それでなくても女性ラッパーって少ないらしいので、明子みたいなおかんラッパーがいたら、めちゃくちゃ注目されるでしょうね。  
明子が沙羅の影響を受けて、周りの人も巻き込んで、ヒップホップにハマっていく過程も面白かったですね。
関西のノリもあるからかテンポもいいし、みんなで漫才してるような感じもあって楽しいです。
沙羅がまたいい子すぎて、明子とのやり取りが微笑ましかったです。
ラップ×おかん、っていう設定はめちゃくちゃ斬新ですけど、描かれているのは母と息子の物語で、あらゆる人に刺さる作品だと思いました。
母親の立場の人は、明子に感情移入して読むだろうけど、雄大の気持ちがわかる部分もあるし、子を持つ男性だったら雄大に感情移入するけど、親としての明子の気持ちもわかるだろうし。
全母にオススメしたいと思ったけど、これは全人類にオススメかもしれない(笑)
母と息子っていうのがまたいいですよね。最近、母と娘について書かれたものが多いですからね〜。
笑って泣いて、怒って、興奮して、テンションいやバイブスが上がる最高の作品です! ぜひぜひ皆さんも読んでみてー!

著者紹介

1983年神戸生まれ。大阪外国語大学外国語学部卒。
放浪生活を経て、現在は和歌山県在住。
2022年、本作で第16回小説現代長編新人賞を受賞しデビュー。
旅、本、食を愛する。 出版社より引用


感想(ネタバレあり)

ここからはネタバレありの感想なので、未読の方は気をつけてくださいね〜。

 
 

最後の明子と雄大のラップバトルの辺り、もう号泣でしたよ(涙)
魂と魂のぶつかり合い、って感じで、お互い一歩も引かない戦いでした。
それまで完全に明子目線で読んでたんですが、雄大の訴えることにもすごく共感して、子供目線で読んでしまいました。
子供ってやっぱり親にちゃんと見てほしいし、ちゃんと話を聞いてほしいし、誰かと比べないでほしいもんなんだなーって。
それと、一緒にご飯を食べること、それも本当に大事。
この作品の前に読んだ「宙ごはん」でも主人公が言ってました。
頭ではわかってても、日々子育てをしてると忘れがちなので、よく覚えておかないと。  
一つ大好きな場面があります。明子が主催者MCにガツンと言い返す場面です。
女性のことをいやらしい言葉や卑劣な言葉でディスるだけのラッパーについて、ガツンと説教するんですが、めちゃくちゃ気持ちよかった!
んなのディスってるんじゃなくて、ただのセクハラモラハラですからね。
実際にはそんなラッパーいないと信じたい。  
沙羅が、感動するバトルとは「対戦相手の立場に立って想像して、相手を理解することが本当の勝負だ」というようなことを言うのを聞いて、明子が雄大が生まれた時からのことを振り返るんですよね。
出産の時や、雄大が初めて言葉らしきものを発した時の描写があるんですが、ヤバかったです…。
もう、自分の出産の時とか、子供が初めて何かした時のこと思い出したら、泣いちゃいますよね。
そういう場面がちょいちょい挟まるのが、この作品は罪ですね(笑) 全母、泣くと思いますよ。え、私が涙もろいだけ?(笑)
私の場合、今小6の息子が初めてニコって笑ってくれた時のこと、今でもつい最近のことのように思い出しますね…(涙)
まだ歯が生えてない時の赤ちゃんの笑顔って、もうリアル天使ですよね。
もう一生この子を守っていこうと思いましたよ。  
雄大が迷子になって見つかった後に叱ってしまったことを悔いる場面も、めちゃくちゃ共感しました。
叱らないで、褒めてあげたり認めてあげたらよかったのに…って悔やむこと、たくさんありますよね。
子育てって、不安や心配がたくさんなんですよ。それが怒りになってしまうこともあるんですよね。 アンガーマネジメントで学びました。
そういう時は、後からでも素直にフォローしたらいいんですけど、一度傷ついた心は取り戻せないんですよね。
だけど、明子はシングルマザーで雄大を育ててきたんですよ。しかも梅農園も経営して。
めちゃくちゃ大変だったと思いますよ。私なら無理だと思いました。
明子と雄大はもう少し早くぶつかり合ってたらよかったのかもしれないですね。
ラップバトルで対決することでしか、お互いにぶつかり合えないくらいすれ違っていたのは寂しい状況だったけど、この後の2人の関係は良くなっていくといいな、と思います。
そして梅農園で一緒に働くことになるであろう雄大の子供も一緒にね。
親と子供って、どんな親子でも、多かれ少なかれ分かり合えていない部分ってあるんだろうな…。
子育ての難しさをひしひしと実感する作品でもありました。

まとめ

宇野碧さんの「レペゼン母」についてまとめました。
私の中では「名刺代わりの小説10選」に入れてもいいくらい、インパクトがあって、大好きな作品になりました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!



こんにちは!

町田そのこさんの「宙ごはん」について詳しくまとめます!
2023年本屋大賞にもノミネートされています!


この本を読んだきっかけ

町田そのこさんは「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」を読んで好きになって以来、新刊を読もうと決めている作家さんです。
この作品は本屋大賞にノミネートされたのもあり、早く読みたい!と心待ちにしていました。
町田さんの作品、図書館でも大人気なんですよね。
ちなみに、町田さんの作品を読むのは5冊目です。


こんな人にオススメ

少女の成長物語が好きな人 料理が出てくる物語が好きな人
家族を描いた物語が好きな人 本屋大賞作品に興味のある人
・町田そのこさんのファンの人


「宙ごはん」あらすじ

この物語は、あなたの人生を支えてくれる
宙には、育ててくれている『ママ』と産んでくれた『お母さん』がいる。
厳しいときもあるけれど愛情いっぱいで接してくれるママ・風海と、イラストレーターとして活躍し、大人らしくなさが魅力的なお母さん・花野だ。
二人の母がいるのは「さいこーにしあわせ」だった。
宙が小学校に上がるとき、夫の海外赴任に同行する風海のもとを離れ、花野と暮らし始める。
待っていたのは、ごはんも作らず子どもの世話もしない、授業参観には来ないのに恋人とデートに行く母親との生活だった。
代わりに手を差し伸べてくれたのは、商店街のビストロで働く佐伯だ。
花野の中学時代の後輩の佐伯は、毎日のごはんを用意してくれて、話し相手にもなってくれた。
ある日、花野への不満を溜め、堪えられなくなって家を飛び出した宙に、佐伯はとっておきのパンケーキを作ってくれ、レシピまで教えてくれた。
その日から、宙は教わったレシピをノートに書きとめつづけた。
全国の書店員さん大絶賛! どこまでも温かく、やさしいやさしい希望の物語。 出版社より引用


この本のテーマや特徴

主人公「宙」と周りの人々の成長物語

この物語は、主人公である宙(そら)の保育園時代の話から始まります。 そして、小学校、中学校、高校、高校卒業後…と、宙の成長を描く物語です。 それと同時に、宙の周りの人々の成長物語でもあります。 特に、母親の花野(かの)の成長が、宙の成長と同じくらい描かれていると感じました。 その他の登場人物も問題を抱えている人が多く、宙や花野がそういった人たちと関わる中で、いろんなことに気付いたり学んだり、助け合ったりしていきます。

美味しそうな料理の描写が素敵!

この作品は5章から成っていますが、どの章にも美味しそうな料理が出てきます。 パンケーキ、ボロネーゼ、にゅうめん、きのこのポタージュ、などなど…。 ビストロで働く佐伯こと「やっちゃん」が料理を作る場面や、宙が料理をする場面がありますが、紙から料理の匂いがしてくるような美味しそうな描写が印象的です。 誰かの愛情がたっぷりこもった料理を食べたくなりますよ〜。


印象に残ったフレーズ

印象に残ったフレーズを3つ紹介します!

一緒に食べないと、意味がないんだよ。 p105 宙の言葉
宙が、なかなか一緒にごはんを食べてくれない花野に対して思う言葉ですが、一人で食べるのと、誰かと食べるのと、全然違いますよね。 しかも子供のうちはなおさらだと思います。
ひとというのは、しあわせの山を登る生き物なんだ p200 佐伯の言葉
やっちゃん、いいこと言う~(笑) 人生の山を、いつ、どんな風に、どんな山を、誰と登っていくのか、もう数え切れない選択肢がありますよね。 たまには下ることがあっても、登っていける人生がいいですね。
『とにかく生きる』が最優先。そのあとはいろいろあるだろうけど、『笑って生きる』ができたら上等じゃないかなあとあたしは思ってる。 p346 花野の言葉
「とにかく生きる」ということを意識しなくてもいい私は、いろいろ恵まれているのかもしれない、と思いました。 だけど、「笑って生きる」は…あまりできていないかもしれない…。 無理に笑う必要はないけど、できればもっと笑って暮らしたいと思うので、まずは日々の生活への心構えを見直した方がいいかもしれないな…。


感想(ネタバレなし)

町田そのこさん、やっぱりすごいなぁ…」っていうのが、まず読み終わって出た感想です。
以前から町田さんの作品の感想には「密度が濃い」とか「物語に引き込む力がすごい」というようなことを書いているんですが、この作品もまたまたすごかったです…。
町田さんの作品は、歪んだ母と娘の関係であったり、母親が原因で恵まれない家庭環境にいる子供の物語が多いですが、今回も母と娘の関係に焦点を当てた作品と言えるかと思います。
もちろん他の登場人物も重要な役割を担っているので、母娘関係だけがテーマというわけではありません。
この作品も重くて苦しい話ではありますが、町田さんの作品は救いがない終わり方をしないものが多いので、どこか安心感はあります。  

この物語の始まりは、花野の浮世離れした感じの態度や言動に怒りを感じたりイライラして、宙がかわいそうで仕方なかったです。
どんな方向に話が進むのか、不安に思いながら読み進めましたが、これでもかってくらいに、いろんなことが起こりましたね…。
町田さん、ちょっと詰め込みすぎでしょ〜と思った部分も正直ありましたが、めちゃくちゃ引き込まれたことは確かです。
途中から涙が滲んできて、最後は涙を流しながら読みました。

母娘関係だけでなく、恋愛や友達関係も含めたいろんな要素について書かれています。
ほんとにてんこ盛りな内容なんですけど、それをうまくまとめてくるのが、町田そのこさんなんですよねー。  
それにしても、宙はこんなに複雑な環境で育ったのに、めちゃくちゃいい子ですよ…。
たぶん普通だったらグレると思うんですけど、愛情を注いでくれて頼りになる大人が近くにいたから、こんなに素敵な子に育ったんだと思います。

この作品の個人的MVPは、圧倒的に、佐伯ことやっちゃんですよ!ここ大事!(笑)
というか、これ読んだ人は誰もがそう思うと思いますけどね(笑)
こんないい人います〜?人を見た目で判断しちゃいけないなーって改めて思いましたよー。
やっちゃんの存在感、すごかったです。もうほんとにほんとに大好きです。
こんな大人に出会えたら、世の中グレる人なんていないんじゃないかって思ったくらい。
そして、やっちゃんの人柄や行動力にプラスして、やっちゃんの作る料理に救われた人、どれだけいるんでしょう…。
私もやっちゃんと友達になって、料理を食べさせてもらいたい、って本気で思いました。
この物語、やっちゃんがいないと成り立ってないし、やっちゃんがいなかったら、登場人物誰もちゃんと生きていけてないですよ、たぶん。

他の登場人物もみんなどこか問題を抱えてる人ばっかりで、最後にはもうみんな応援したくてたまらない気持ちになりました。
みんながみんなで支え合って助け合うことの素晴らしさを、ひしひしと感じました。
私はやっちゃんほどの包容力なんて全くないけど、せめて子供たちにとってはそんな存在になれたらいいなと思いました。
もし誰か頼ってくれることがあれば、ちゃんと手を差しのべたいです。  
そして、毎日いやいや文句を言いながら料理をしている私ですが…、ごはんの持つ力を再認識したので、もう少し嫌がらずに料理しようかな、とか思いました…。
いやでもやっぱり料理は面倒くさい(笑)  

最近は母娘関係がテーマの作品はお腹いっぱいだったので、あぁまたそれ系の作品か…と思って読み始めたんです。
でも、そんな気持ちも吹っ飛ぶくらい、この作品は響いてくるものがありました。
「52ヘルツのクジラたち」とか「星を掬う」も読みましたが、私はこの「宙ごはん」の方が好きです。
「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」が1番好きな作品でしたが、それと同じくらい好きです。
最近出た新刊「あなたはここにいなくとも」も、またまた評判が良さそうですよー。
早く読みたいです! まだ読んでいないのに宣伝して申し訳ないですが、気になる方はぜひどうぞ!



著者紹介

1980年生まれ。福岡県在住。
2016年「カメルーンの青い魚」で第15回「女による女のためのR−18文学賞」大賞を受賞。
2017年、同作を含む「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」でデビュー。
「52ヘルツのクジラたち」で2021年本屋大賞を受賞。
著書に「ぎょらん」「うつくしが丘の不幸の家」「星を掬う」「コンビニ兄弟」シリーズなどがある。
出版社より引用



感想(ネタバレあり)

ネタバレありの感想なんで、ぶっちゃけていっちゃいますよー(笑)
未読の方は気を付けてくださいね。  

まず、もう、やっちゃん殺さんといてー!!ですよね…。
みんなが大好きなやっちゃん、何で死なせちゃうの…。
小説あるあるですが、ちょっと人が簡単に死にすぎなんですよ。
そんなに簡単に交通事故とか不慮の事故って起こらないですよね…(いつどこで起こるかわからないのは事実ですが)。

さっきも書きましたが、この物語、やっちゃんがいないと成り立ってないですよ。ほぼ主人公ですよ。
いやだから、やっちゃんがいなくてもみんなちゃんとやっていけるよ、ってことを最後に描きたかったのかな。
最後の場面なんかは、やっちゃんならこうするだろうな、っていうことをみんな頭で思い描いてるんですもんね。
そして、宙が「ビストロサエキ」を継ぐと決めたのも、やっちゃんを失った末の決意ですしね。
それにしても、町田そのこさんの作品は、不幸な人が多すぎで、さらにその人にもっと不幸なことが起こる、という展開が多くて、大変なんですよね。
最後は大体救いがあるから、いいんですけど…。

印象に残った場面がいくつかありました。

宙がやっちゃんに対して「わたしはカノさんほど、弱くない」と言う場面と、マリーが母親について語る場面がありましたが、小6でそんな風に考えられる?ってびっくりでした。
マリーなんて「母親を求めて接するから傷つく、家族としての責任を負ってくれてるから、私も家族としての一員としてできることをやろう」なんてことを言うんですよ。
ちょうど我が子も小6なんですけど、こんなこと絶対考えてませんよ(笑) というより、こんなこと子供に考えさせたらいけないような気もしました。
子供は子供らしくいられるのが一番。
マリーはこの場面で退場してしまうんですけど、その後も宙の良き理解者であったらよかったのに、関係が続けばよかったのに、って思ってしまいました。  

それから、高校生になった宙が、自分の読書傾向について語る場面があって、「本の中に自分の探してる答えがあるかもしれないと思ってる、から」と言うのですが、これは共感しました。
誰かの意見を聞きたいから、その意見を本の中に求めてる、というのは、私もあるかもしれません。
母親との関係性について、私もいくつかの小説からヒントをもらいました。
若い頃全く読書しなかったんですけど、もっとしておけばもう少し悩みとか減ってたのかな…。  

そして、赦されるために謝罪をすることが、相手にとっては暴力になりうる、ということが語られる場面も、印象に残りました。
これは、社会派ミステリーなどでも、そういう意味のことが書かれているものがあるように思います。 「贖罪」ですよね。
謝罪をすればいいってもんじゃないし、自分が赦されたいという思いばかりでは相手には伝わらないし、それは一方的な暴力とも言えるわけです。
そんな点についても書かれていて、町田さん、めちゃくちゃ詰め込んでますよね。
もう書きたいこと、伝えたいことが、たくさんあるんだろうな。

いろいろ文句みたいな感想も書きましたが、この作品は読んでよかったと素直に思っています。
複雑な家族関係を扱った作品って暗い雰囲気になってしまいがちだけど、「ごはん」がテーマにもなっているから、明るくて楽しい雰囲気もあって
「食べること」が本能的に嫌いな人ってめったにいないと思うので、改めて食事のありがたさも感じました。
楽しい気持ちで食卓を囲むということは、人にとっては欠かせないことなんだと。

そして、複雑な家庭環境だけど、女の子が明るく素直な子に育ったという点で、以前に読んだ「そして、バトンは渡された」という作品を少し思い出しました。
やっぱり周りの大人の影響ってほんと大きいですよね。


まとめ

町田そのこさんの「宙ごはん」についてまとめました!
長々と感想を書いてしまい、読みにくかったかもしれません。
町田さんの作品は、重いけど得るものがあるので、今後も読んでいきたいと思います!
そして、本屋大賞ノミネート作品を全て読み終えました!
個人的ランキングや、大賞予想など、近いうちに記事を書きたいと思っていますので、また読んでいただけたら嬉しいです!

最後までお読みいただき、ありがとうございました!




長浦京さんの「プリンシパル」について詳しくまとめます!


この本を読んだきっかけ

『このミステリーがすごい!2023年版』でも第5位にランクインしていたり、Twitterで時々見かけたりして、注目していました。

また、戦後史に少し興味があったので、読んでみることにしました。

こんな人にオススメ

・ヤクザもの、任侠ものの話が好きな人

・強い女性が主人公の物語が好きな人

・戦後史や歴史小説が好きな人

・話題の本が読みたい人

・長浦京さんのファンの人

「プリンシパル」あらすじ

1945年、東京。大物極道である父の死により、突如、その「代行」役となることを余儀なくされた綾女。大物議員が巡らす陥穽。GHQの暗躍。覇権を目論む極道者たちの瘴気……。綾女が辿る、鮮血に彩られた謀略と闘争の遍歴は、やがて、戦後日本の闇をも呑み込む、漆黒の終局へと突き進む! 脳天撃ち抜く怒濤の犯罪巨編、堂々開幕。

出版社より引用

物語は、終戦の日、水嶽綾女(みたけあやめ)が教師をしていた疎開先の長野から帰京するところで幕が開きます。

その夜、危篤だった父・玄太は亡くなり、綾女は未だ戦地にいる兄たちの代わりに喪主を務めるように言われるが、彼女は引き受け付けるつもりはありませんでした。

しかしその夜、彼女は水嶽組が隠匿する食糧・軍需物資を狙う敵対勢力の襲撃にあい、綾女が宿としていた青池家が襲撃を受けてしまいます。

青池家の人々は、綾女を必死で匿い、綾女の幼馴染の修造とその嫁以外は拷問の末に殺されてしまいます。

綾女は青池家の惨状を目の当たりにして、激しい怒りや憎しみを感じ復讐を誓い、水嶽組の跡を継ぐことを決心するのです。


本のタイトル「プリンシパル」は、
長、支配者、社長、主役」という意味です!

本の表紙にバレリーナのような女性が載っていて、バレエ団の最高位のダンサーのことを「プリンシパル」と呼びますが、この物語は全くバレエとは関係ありません!!

本の表紙だけを見て、バレエの話かな…と思って買う人もいそう…。

この本のテーマや特徴

綾女の成長物語

青池家にされたことに対しての復讐心から、水嶽組を継ぐと決めた綾女は、命を張って水嶽商事の会長兼社長代行をやると宣言します。

結果を出せなければ命を差し出す、とも。

自分たちを襲った者には容赦のない報復措置を取り、身内に敵対勢力への内通者がいたことを知った時も容赦なく報復していきます。

その方法がまたすごいんですよね。

読んでもらえばわかりますが、なかなかにエグいです。容赦ないです。

彼女に流れた「血」のせいなのか、組を守るという目的だけではなく、彼女自身の命を守るためにそこまで残酷にならざるを得なかったのか…。

彼女は「ヒロポン」を常用していたのですが、その影響もあるんでしょうか…。


ヒロポン
は商品名で、薬名はメタンフェタミンといいます。
いわゆる覚醒剤、スピード、あるいは警察や暴力団用語でいうシャブとまったく同じドラッグです。

ヒロポンは薬局で誰でも買えたそうですね…。

戦後日本の様子がわかる!

著者の長浦京さん曰く「基本的に僕は、まさかと思うような史実や事実を元に話を作るタイプ」とのことなので、この物語はノンフィクションに近い物語なのかもしれません。

敗戦後、日本は7年間にわたりアメリカ主力の連合国軍の占領下に置かれ、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が日本政府を通じて支配する間接統治でした。

日本の警察はほぼ機能しておらず、治安を維持していたり、食糧難に喘ぐ人々を救った闇市を取り仕切っていたのがヤクザであったと言われています。

この物語では、水嶽組と旗山市太郎吉野繁実といった大物政治家やGHQとの密接な関係が書かれており、いかに大きな影響力を持っていたかがわかります。

旗山市太郎、吉野繁実とは、鳩山〇郎氏と吉〇茂氏のことであると思われますね。

また、水嶽組はギャンブルや芸能興行の世界にも幅を利かせていくのですが、その中で、綾女は美波ひかりというスター歌手と関わることになります。

美波ひかりは、美〇ひばりさんがモデルとなっています。

物語を通して、戦後日本の様子を垣間見ることのできる作品となっています。


感想(ネタバレなし)

ヤクザものといえば『セーラー服と機関銃』や『ごくせん』を思い浮かべる人が多いようですが、私はどちらも読んだことも観たこともないので、比べることはできないのですが、それよりは『ゴッドファーザー』に近いようですね。

すみません、『ゴッドファーザー』も観たことないんです(汗)あの有名な曲は思い浮かぶんですけど(笑)

それほど、こういうジャンルには興味がなくて…。

ヤクザと言って最近思い出すのは、好きな俳優さんでもある鈴木亮平さんが『孤狼の血 LEVEL2』で演じていたのを思い出しますが、好きな俳優さんが出ていても観ようとは思わないくらいの、興味のないジャンルなんです…。

別に怖いのが苦手とか、血が苦手とか、強がりを言ってるわけじゃないんですよ?ただ興味がないのです。

なので、この作品もそういうジャンルの作品だと知ってて読んだとはいえ、失敗したかな~と思ってしまったのですが、ところがどっこい!めちゃくちゃ面白かったですねー!!

あらすじに書いたのですが、最初の青池家の人たちが惨殺されてしまう場面の描写からエグイ!グロイ!ので、うわー!と思ったのですが、その後も最後までそんな感じが続くのでした。

このエグさグロさは、直木賞を受賞した『テスカトリポカ』以来でしたよ。

あちらは、メキシコの麻薬密売人の話ですが。

史実が既に劇的なので、物語部分は極力シンプルを心がけた」と著者の長浦さんはおっしゃっていますが、物語部分のエグさグロさ、すごかったですよー!?

シンプルにエグいということでしょうか(笑)何度、を見たことでしょう…。

血、血、血ーーでした。

 

最初は復讐のために仕方なく組を継ぐことにした綾女ですが、徐々に彼女に流れる「血」のせいかどんどん残忍な女性になっていくのが、哀しくも恐ろしいものがありました。

その残忍さを恐ろしいと思いつつ、少し爽快でカッコいいと思ってしまったのですが、さすがに容赦なく殺しすぎですよね。

いくら何でも…と思う場面が多かったです。

とは言え、私は強い女性が好きで、このヒロインの綾女もけっこう好きなので、この物語を楽しめたのかもしれないですけど、綾女にあまりいい印象が持てないと、この作品も楽しめないかもしれないな、と思いました。

 

政治家や芸能人は誰をモデルにしているかわかりやすいけど、この綾女や水嶽組は誰をモデルにしているか、少し調べた感じではわからないんですよね。

実在のモデルがいるんでしょうか?

物語の中では、東の水嶽組、西の竹岡組、となっていて、西の竹岡組はあの暴力団のことだろうとわかるのですが。

旗山と吉野のモデルとなった2人の大物政治家や美波ひかりのモデルとなった歌手については、少し調べてみましたが、実際にもこの物語のような感じだったのかなぁ〜と、とても興味深かったです。

政治家や芸能界とヤクザの関係は実際にもこんな感じだったのでしょうかね。というか今もですかね?

その辺りのことも学べたので、読んでよかったです。

あ、そういえば、「このミステリーがすごい」にライクインしているようですが、ミステリー的な要素はそんなになかった感じもします。

まぁ、あると言えばあるんですが、ミステリーを期待して読む作品ではないかと思います…。


著者紹介

1967年埼玉県生まれ。法政大学経営学部卒業後、出版社勤務を経て、放送作家に。
その後、闘病生活を送り、退院後に初めて書き上げた『赤刃』で2011年に第6回小説現代長編新人賞、2017年『リボルバー・リリー』で第19回大藪春彦賞を受賞する。
2019年『マーダーズ』で第73回日本推理作家協会賞候補、第2回細谷正充賞を受賞。2021年『アンダードッグス』では第164回直木賞候補、第74回日本推理作家協会賞候補となる。
他の作品に『アキレウスの背中』がある。


出版社より引用

感想(ネタバレあり)

ここからは、ネタバレを含む感想を書いていきますので、未読の方は気を付けてくださいね!!

 
 


この物語の終わり方ですが、個人的には、まぁーそうなるよねー、と納得の終わり方でした。

そんなに上手く行くはずがないですもんね。

きっと復讐されて終わるんじゃないかな…と予想していました。

ただ、兄の桂次郎は綾女を恨むような関係性じゃなかったよね?と思ったんですが、読み落としてますかね…。

その他の人物は綾女を恨んでいた人物ばかりだけど。

でも、綾女もやっぱり強いですねー。やられっぱなしではなくて、由結子にやり返すのがまた見事でした。

そして、最後の最後まで、この世への未練を残し、「生きたい」と「生」への強い想いを持っているのが、綾女らしいと思いました。

こんな凄惨な人生を送ってきてもなお、生きることに執着するのはすごいですよね。

何度も殺される覚悟をして、死んでもいいと思っていたはずなのに。

最後は誰が撃たれたんでしょう。

この先、水嶽商事はどうなっていくんでしょうか。知りたいですね。

なんとなくですが…、カリスマ的存在の綾女がいないと水嶽商事は上手く機能しないような気がしますね。

 

それから、途中まで綾女は青池家の人々の亡霊を見ていたのですが、彼らは綾女の活動を応援していたのでしょうか?

途中から見なくなったということは、綾女が充分一人でも活動できる自信みたいなものが付いたからでしょうか。

ヒロポンのせいで幻覚でも見てたのかな?とも思いましたが…。

 

また、ラスボス的存在の熊川万理江ですが、なかなか手強かったですね。

さすがの綾女もお手上げかと思いました。

最後の殺し合いの場面も凄まじかったですね。

それにしても、登場人物みんな悪者ばっかりでしたね!

一人くらい良心的な存在がいれば救われたのですが、誰もいない(笑)

美波ひかりのスター的存在感が物語を輝かせるものであったことくらいでしょうか。

長浦さんの筆力がすごいからおもしろかっただけで、こういうジャンルをおもしろいと感じるかどうかは、まだ未知数かもしれません。

ヤクザという親近感を感じにくいヒロインの物語であり、普段読まないジャンルの作品ということで、薄っぺらい感想になってしまい、申し訳ないです(汗)

まとめ

長浦京さんの「プリンシパル」についてまとめました。

ゴリゴリのヤクザものでしたが、めちゃくちゃおもしろかったです!

こういうジャンルも評価が高いものは、避けずに読んでいこうと思いました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!



2023年本屋大賞にノミネートされた
安壇美緒さんの「ラブカは静かに弓を持つ」について詳しくまとめます!


この本を読んだきっかけ

たびたびTwitterで見かける本で気になっていたのと、未来屋小説大賞を受賞したことを知って、注目していました。
また、個人的に音楽が大好きで内容的にも興味があったので、読みたいと思いました。
2023年本屋大賞のノミネートに選ばれる前に図書館で予約していたので、すぐに読むことができました。
今図書館の予約状況を見てみると、20人以上の予約が入っているようです。


こんな人にオススメ

・音楽が好きな人 ・音楽教室に通っている人 ・スパイものに興味がある人
・著作権の問題に関心がある人 ・話題の本を読みたい人


「ラブカは静かに弓を持つ」あらすじ

少年時代、チェロ教室の帰りにある事件に遭遇し、以来、深海の悪夢に苛まれながら生きてきた橘。
ある日、上司の塩坪から呼び出され、音楽教室への潜入調査を命じられる。
目的は著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。
橘は身分を偽り、チェロ講師・浅葉のもとに通い始める。
師と仲間との出会いが、奏でる歓びが、橘の凍っていた心を溶かしだすが、法廷に立つ時間が迫り…… 想像を超えた感動へ読者を誘う、心震える“スパイ×音楽”小説!
【第6回未来屋小説大賞受賞】
【第25回大藪春彦賞受賞】 出版社より引用


「ラブカ」とは

作品のタイトルを見て、「ラブカ」って何?と思った人、たぶん多いですよね。
ラブカとは、軟骨魚綱カグラザメ目ラブカ科に分類されるサメで、水深1,000m近くの深海に生息している深海魚です。
生きたままの観測が難しいため、研究がそれほど進んでいないレアなサメだそうです。
体長は最大で2mほどにもなり、その長いからだをくねくねとさせながら比較的ゆったり泳ぎます。

こんな感じのサメみたいです↓↓
私は知らなかったのですが、以前にTOKIOのメンバーが東京湾で捕獲したことがあり、話題になったようですね。
で、その「ラブカ」が一体この作品とどう関係してるのよ?という疑問については、次項で説明しますね。


この本のテーマや特徴

音楽教室へのスパイ?!

主人公の橘は全日本音楽著作権連盟で働いており、上司からミカサ音楽教室への潜入調査を命じられます。
著作権法の演奏権を侵害している証拠を集め、いずれ法廷で証人尋問に立たなければならない、という任務です。
007の映画やCIAなどの国家機密を扱うスパイを連想して読むと、ちょっとスケールが小さく感じてしまうかもしれませんが、橘はどうなってしまうのか、緊迫感のある物語にはなっていると思います。
そして実際にも、JASRACの職員が主婦としてバイオリン上級コースに潜入していた、ということがあったようです。
で、「ラブカ」がどうこの物語と関係しているかというと、橘が発表会で『戦慄(おのの)きのラブカ』という架空の映画(諜報もののスパイ映画)の劇伴を演奏するんですよ。
深海で生息するラブカ孤独なスパイのイメージをリンクしているんですね。
それと、橘の過去に秘密があり、それ以来、深海の悪夢を見ることが多い、ということにもリンクしています。


チェロという楽器の魅力

チェロという楽器、あんまり馴染みのない人も多いかもしれません。
弦楽器で一番有名なのはバイオリンですよね。
チェロはバイオリンよりも大きくて、低い音を出す楽器で、全体は約120cm、重量は3.5kgほどの楽器です。 こんな感じの楽器↓↓
人の声に近い」と言われるチェロですが、この楽器を選んだのがこの作品の良さであると思います。
物語に深みと厚みを出しているのではないかと思いました。
橘や講師の浅葉がチェロを演奏する時の描写もまた素敵でした。


「著作権」問題

この物語は、実際にあった「音楽教室vs.JASRAC」の著作権裁判をモチーフにしています。
2022年10月24日、最高裁の判決が言い渡されたばかりの問題なので、この作品が書かれた時には、まだ最高裁の判決は出ていなかったことになります。
物語の中でも主人公の橘がこの問題について少し説明する場面がありますが、争点となったのは、著作権22条の解釈の問題です。

著作権法22条(上演権及び演奏権)】とは、
「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として上演し、又は演奏する権利を専有する。」
というものです。
この条文によれば、「公衆」に対し直接見せ、または聞かせることを目的とする上演・演奏は、著作権者が「専有」するものなので、著作権者以外の者が行う場合は、著作権料を支払わなければならないことになります。
そこで、問題となるのは、音楽教室における演奏が「公衆」に対し「直接見せ又は聞かせることを目的としている」といえるかということです。

最終的な最高裁の判決の内容は、
音楽教室の先生の演奏については使用料の支払義務を負うとした半面、生徒の演奏については支払義務が生じない
というものでした。
先生の演奏は「公衆」に対するものであるとみなされたわけです。
ちょっと複雑な問題ですが、ニュースでも報道されていたので、私も気になっていた問題です。


印象に残ったフレーズ

印象に残ったフレーズを2つ紹介します!

「講師と生徒のあいだには、信頼があり、絆があり、固定された関係がある。それらは決して代替のきくものではないのだと。」 p242 三船の言葉
これは音楽を習ったことがある人なら、わかるかもしれないですね。
講師との相性みたいなもので、音楽が楽しくも楽しくなくもなりますし、講師の影響力ってすごいですよね。
だから、この人になら習いたいと思える講師との間には、自然と信頼関係のようなものも芽生えますよね。
「信頼を育てるのが時間なのだとしたら、壊れた信頼を修復させるのもまた時間なのではと思います。ただ、壊れた原因がご自身にあったのだとすれば、きちんと誠意は見せて」 p273 医師の言葉
壊れてしまった信頼関係はなかなか元に戻せないとは思いますが、誠意を見せられたら少しずつ受け入れようという気持ちも芽生えるかもしれません。
壊れるまでの信頼関係がどの程度のものであったかにもよるかもしれませんが…。


感想(ネタバレなし)

個人的に音楽が大好きなので、この作品はなかなか沁みるものがありました。
そして、この物語の「ミカサ音楽教室」のような、大手音楽教室の大人のレッスンに通っていたこともあり、いろんなことを思い出して、感傷に浸ってしまいました。
子供の頃もピアノ教室に通ったり、トランペットをクラブ活動やオーケストラで吹いていたこともありました。
(大人のレッスンに通っていたのは、ピアノでもトランペットでもないですが)
発表会のシーンとか、もう自分が出た時のことを思い出して、ソワソワしてしまいましたよ。

そして、娘もまたピアノを習っていて、発表会やコンクールに出ているので、親になってもソワソワして緊張したりしています。
そういう個人的なことをたくさん思い出してしまったわけですが、そんな為にこの本を読んだわけじゃないだろと思って、冷静になって再読しました(笑)
再読してみると、なんとも深い味わいのある作品だなぁと思いました。
音楽のようにじっくり読めば読むほどジワジワ深みが増してくる物語です。
 
橘のように実際に潜入活動をしていた人がいるらしいですが、私ならとてもじゃないけど、嫌ですね…。
絶対病んで続けられないと思いました。
それでも会社の命令に従わないということも、会社員にとってはかなり難しいですしね…。
橘は相当辛かったと思います。

橘がチェロを通して過去のトラウマから抜け出していく過程も、丁寧に描かれていて、すごく応援したくなりましたね。
そして、やらされてしまったスパイ活動への葛藤と罪悪感と良心の呵責みたいな心情も、すごく伝わってきて、読んでいる私も少し病みそうになりました。
 
チェロの音を聴きながら読んでみたりもしたのですが、チェロの音ってなぜだか落ち着くんですよね。
人の声に似ていると言われるのもわかる気がします。
穏やかな男性の声を聴いているような感じとでも言いましょうか。
この物語に出てくる架空の曲、聴いてみたくなりました。

この作品を読んで改めて、音楽って本当にいいよなぁ〜って思わずにはいられませんでした。
私も久しぶりに何か習いたいな〜って思ってしまいました。
音楽には人を癒す力があるって浅葉も言ってますけど、ほんとそうですよね。
私、音楽が無いと生きていけない人間なので、ほんとにそう思います。
橘もチェロを演奏していて、チェロの音色に心から癒されたのでしょう。
 
それから、浅葉が「曲を表現する時に一番重要なのは、イマジネーションだ」と言うところがあるのですが、娘のピアノの先生もよく「こういう風景を想像して弾いて〜」と言っているので、なるほどなぁと思いました。
私がピアノをやっていた頃はそんなこと意識してなかったような…(汗)
次に何か音楽をやる時は、イマジネーションを大切にしよう(笑)

それと、著作権問題のこともちょっと考える機会になりました。
音楽教室で講師が演奏することに対しては使用料が発生するけど、生徒の場合は発生しないとか…。
少し調べてみた感じでは、音楽教室に対する利用量の徴収については、反対派の方が多い感じでしょうか。
アーティストの方も、自由に使ってくれていい、と言っている方もいたりするようですが、ちゃんと著作権料が払われないとアーティストも厳しい場合もあるようで、難しい問題であると思いました。


著者紹介

1986年北海道生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。
2017年『天龍院亜希子の日記』で第30回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。
著書に、北海道の女子校を舞台に思春期の焦燥と成長を描いた『金木犀とメテオラ』がある。
2022年『ラブカは静かに弓を持つ』で第6回未来屋小説大賞、2023年同作で第25回大藪春彦賞を受賞。
出版社より引用


感想(ネタバレあり)

橘がスパイ活動の証拠を消去するのに成功して、裁判にも出なくてよくなって、めちゃくちゃ安心してからの〜、結局最後のレッスンの時にバレてしまい、どうするのー!!という展開! 心臓に悪かったですよっ!(笑)
証拠を消去できるのかできないのか、のシーンもかなりドキドキしました。
 
著者の安壇美緒さんは、これは「信頼と時間」がテーマの話だとおっしゃっています。
橘と浅葉の信頼関係は、一度大きく壊れてしまいましたが、終盤の展開ではその壊れた信頼関係がなんとか戻って行くのでは…という明るい兆しが見えて、ホッとしました。
あまり人と関わろうとしていなかった橘が、チェロ仲間と交流を深めて、またチェロを演奏する中で過去のトラウマを克服していく姿は、とても嬉しく感じました。
チェロ仲間もまた個性豊かで、年齢も性別も性格も全然違うメンバーだけど、好きなことが同じということで繋がってる仲間って、普通の友達とは違う安心感や特別感があっていいんですよね。
そして何より、みんなチェロを愛してることが伝わってきて、よかったですね。

アンサンブルとかいいなぁ〜楽しいだろうなぁ〜。
私も娘とピアノの連弾をしたりするんですが、もう楽しくて嬉しくて。
一人で演奏するのもいいけど、誰かと演奏をするのは、さらに楽しいんですよね。
音楽って「楽しい」って思えることがやっぱり大事ですよね。
橘もそんな仲間たちとの縁が切れなくてよかった。
終盤のヴィヴァーチェでのアンサンブル発表の場面、浅葉との再会があるのかどうかドキドキしながら読んだのと、いろんな演奏者の言葉が沁みたのとが合わさって、『カノン』の演奏が始まった場面で感極まって涙が出ました。
『カノン』はもう反則なんですよ! あの曲聴いて感動しない人ってこの世にいないんじゃない?って私は思ってるんです(笑)
この本を読み終わってカノンのチェロ四重奏を聴いてみたんですけど、やっぱり鳥肌が立ちました。
 
私の中でこの作品は、スパイ小説というよりは、完全に「音楽小説」というジャンルに区分けされました。
元々、音楽がテーマの作品をもっと読みたいと思っていたので、この作品も読めてよかったです。
本屋大賞ノミネート作品の中でも、好きな方に入るので、応援したいです!


まとめ

安壇美緒さんの「ラブカは静かに弓を持つ」についてまとめました。
2023年本屋大賞にノミネートされているので、未読の方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
本屋大賞発表は4月12日の予定です!
第6回未来屋小説大賞を受賞していて、書店員さんにも注目されているので、本屋大賞の方でもけっこう上位に食い込んでくるかもしれないですね!!
 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!




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