本のむし子

40代主婦の読書日記ブログです。読んだ本の感想などを気ままに書いていきます。

2023年02月


真藤順丈さんの「宝島」についてまとめます!
第160回直木賞を受賞した作品です!


この本を読んだきっかけ

最近、史実を基にした小説を読むことが好きなので、そういった作品を探していた時に、この作品に興味を持ちました。

先日読んだ「熱源」のレビューを読んでいる時にも、この作品に触れているものがあったので、読んでみたいと思いました。


こんな人にオススメ

  • 青春群像劇が好きな人
  • 歴史小説が好きな人
  • 沖縄の歴史や文化に興味のある人
  • 直木賞受賞作品を読みたい人

「宝島」あらすじ

◆祝!3冠達成★第9回山田風太郎賞&160回直木賞受賞!&第5回沖縄書店大賞受賞!
◆希望を祈るな。立ち上がり、掴み取れ。愛は囁くな。大声で叫び、歌い上げろ。信じよう。
仲間との絆を、美しい海を、熱を、人間の力を。
英雄を失った島に新たな魂が立ち上がる。固い絆で結ばれた三人の幼馴染みーーグスク、レイ、ヤマコ。
生きるとは走ること、抗うこと、そして想い続けることだった。
少年少女は警官になり、教師になり、テロリストになり、同じ夢に向かった。

出版社より引用

オンちゃんとグスク、レイは、キャンプ・カデナ(嘉手納基地)から、他の地域からの助っ人と共に、物資を盗み出す計画を決行します。

しかし、その計画は失敗に終わり、逃げる途中で、オンちゃんは突如姿をくらましてしまいます。

オンちゃんはどこへ行ってしまったのかーー。

主な登場人物

◯オンちゃん…「戦果アギヤー」の英雄。(「戦果アギヤー」…アメリカ統治下時代の沖縄において、米軍基地からの窃盗行為を行う者たちを意味する言葉。「戦果を挙げる者」という意味)

◯グスク…オンちゃんの親友。

◯レイ…オンちゃんの弟。

◯ヤマコ…オンちゃんの恋人。

◯謝花ジョー…オンちゃんが関わっていたと思われる密貿易団「クブラ」のメンバー。

○国吉…レイが刑務所で出会った人物で、刑務所での処世術を授けてくれた。

○タイラ…同じくレイが刑務所で出会った人物。

○チバナ…謝花ジョーの恋人だった人物で、後にレイと親しくなる。

○アーヴィン・マーシャル…米民政府の官僚。グスクに諜報員になるように勧誘する。

○小松…マーシャルの通訳。

○ウタ…レイやヤマコに懐いているハーフの男の子。浮浪児。

○又吉世喜…「那覇派」の首領。

この本の特徴やテーマ

沖縄の戦後史がわかる!

沖縄の基地問題のニュースを見ることが多いですが、戦後の沖縄がどのような歴史を歩んできたのか、実際にはそんなに詳しく知らない人が多いのではないでしょうか。

私も恥ずかしながらその中の一人です。

この作品を読んで、沖縄について何も知らなかったな…と感じました。

この作品に出てくる人物はほぼ実在した人物であり、事件や事故なども実際に起こったものばかりです。

沖縄のヤクザは「コザ派」と「那覇派」が争っていたことや、1959年の「宮森小米軍ジェット機墜落事故1970年の「コザ暴動1971年の「レッドハット作戦など、沖縄の歴史を知っていると、物語についても理解が深まると思います。

瀬長亀次郎や屋良朝苗といった実在人物も登場します。

語り部(ユンター)の存在感!

この小説の特徴として、カッコ書きで補足的な文章が多く入る、という点があります。

例えば、

だからこそオンちゃんは事前の下見をくりかえし(本番の前につごう十回は侵入した。とてつもない強心臓だよな!)

という風に、どこからか俯瞰している人の視点で補足説明がされたり、「カフー!」や「あきさみよう!」などのような掛け声のような文章がカッコ書きで表される箇所がたくさんあります。

その語り部のカッコ書きが読みにくい、という感想もけっこう見かけましたが、私はけっこう好きでしたよ。

物語に軽快なテンポを作り出してる効果もあると感じたし、登場人物に寄り添ってるような感じもして、個人的にはよかったです。

また、その語り部が実はある登場人物だった…ということが最後に分かるので、それもちょっとしたお楽しみということで、読んでみてください。

ミステリー要素もアリ!

ミステリーという宣伝文句は見かけませんが、ちょっとしたミステリー仕立ての作品となっています。

主人公3人(グスク・レイ・ヤマコ)の英雄的存在であったオンちゃんは、どこに行ってしまったのか。

生きているのかも死んでいるのかもわからない英雄を3人は探そうとします。

そして、なぜオンちゃんは突然姿を消してしまったのか。

謝花ジョーがオンちゃんの失踪のカギを握っているとわかり、ジョーから話を聞くことができましたが、オンちゃんが「予定にない戦果」を持ち帰ったと言います。

ジョーはその言葉だけを残して、死んでしまいます。

「予定にない戦果」とはーー。彼らが辿り着いた真相はーーー。

感想

最近、「地図と拳」や「しろがねの葉」、「熱源」といった直木賞を受賞した歴史小説を読んできましたが、それらもこの作品もものすごい重厚というか、熱量がすごいというか、ズシッとくるものがありますね。

すっかりこういった歴史小説の世界にハマってきてしまいました。

この作品は歴史小説という紹介はされていないようですし、ミステリーという紹介もされていませんが、私はミステリー要素のある歴史小説という捉え方で読みました。

青春群像劇でもあるし、恋愛も絡んでくるし、いろんな要素が詰まった作品であると感じました。

沖縄の方言が多用されているので、読みにくいと感じる部分はあるかもしれませんが、すぐに慣れるかな?とは思います。

 


沖縄と言えば、日本を代表する観光地・リゾート地であり、私も2回行ったことがありますが、本当に素敵な所で何度でも行きたいなぁと思う所です。

あのゆったりとした雰囲気や、冬でもそんなに寒くない気候が魅力的で、住んでみたいと思うくらい好きな所ですが、そういう視点でしか沖縄のことをとらえていなかった自分を少し反省しました。

もちろんニュースなどで頻繁に基地問題などを見かける機会はありましたが、他人事のようにしか見ていなかった点も反省です…。

沖縄の戦後史について調べながら読みましたが、歴史について知っていたことは少なく、沖縄の人々がアメリカや日本(内地)についてどう思っていたか、あまり理解していなかったことがわかりました。

著者の真藤さんは沖縄の方ではないというのが驚きでしたが、かなり綿密にリサーチされたのではないかと思います。

沖縄の方が書いたレビューを見ると、方言や地理に違和感があったりもするようですが、沖縄の歴史や沖縄が抱える問題に目を向けさせたという点でも、意義のある作品なのではないかと思います。

この作品に書かれていることはほぼ史実通りですし、実在した人物もたくさん出てきますからね。

この作品を読んで、沖縄に対する意識が変わったというレビューもかなり見かけますし、私もそうです。

日本人として、沖縄の歴史に目を背けていてはいけないと感じました。

 

沖縄の言葉に「なんくるないさー」という言葉がありますよね。

この言葉も、沖縄の人々の陽気で楽観的な性格から生まれた言葉なのかな、って思ってたんです。

(もちろん沖縄の人がみんな陽気で楽観的ではないとは思いますが、一般的なイメージです。)

でも、実際は「それくらいのこと何ともないよ」って思い込まないといけないようなやるせないことばかりで、忘れないと前に進めないっていう状況から生まれた言葉だったのかな…って。

もしそうだとしたら、何とも切ないです…。

いろいろ沖縄のこと、誤解しているような気がします。

この作品を通じて学んだことを忘れないようにしたいですね。

 

沖縄の本土復帰の頃に生きていた人々は、やはり内地に反感を持っていたんでしょうか。

内地の人からバカにされていると感じていたのでしょうか。

本土復帰をどのようにとらえていたのでしょう。

本土の人間が沖縄のことをバカにしてるとか、私の感覚では全くないんですけど、その当時はどうだったんだろう…など、いろいろ考えてしまいました。

むしろ、安室奈美恵さんとかSPEEDとかがめちゃくちゃ流行って、憧れ的な感じもある世代なんですけど、もう少し上の世代の人たちは違うんでしょうか。

なんだか作品の感想ではなくて、沖縄に対する感想みたいになってしまいました(汗)

 

作品の話をしましょう!

ミステリー要素もあるので、最後に謎が解けるわけですが、何とも切ないというか、オンちゃん…(涙)となりました。

あまり言うとネタバレになるので、いろいろ言えませんが、最後の方はグッとくるものがありました。

途中のヤマコが働いていた学校にジェット機が墜落する場面も、涙が出ました。

フィクションとノンフィクションが上手く合わさって、読み応え抜群の作品でしたね。

辛い描写もあるけど、戦後の沖縄が置かれていた状況が伝わってくるような文章はとてもよかったです。

軽快で笑える場面もあり、しんみりする場面もあり、ハラハラドキドキする場面もあり、感情が揺さぶられました。

それから、この作品はオーディブルなどの「聴く読書」で聴いてみたいと思いました。

沖縄の方が朗読されているようなので、聴いてみたいですね。

著者紹介

1977年東京都生まれ。2008年『地図男』で、第3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞しデビュー。
同年『庵堂三兄弟の聖職』で第15回日本ホラー小説大賞、『東京ヴァンパイア・ファイナンス』で第15回電撃小説大賞銀賞、『RANK』で第3回ポプラ社小説大賞特別賞をそれぞれ受賞。
2018年に刊行した『宝島』で第9回山田風太郎賞、第160回直木三十五賞、第5回沖縄書店大賞を受賞。
著書にはほかに『畦と銃』『墓頭』『しるしなきもの』『黄昏旅団』『夜の淵をひと廻り』『われらの世紀』などがある。

出版社より引用

まとめ

真藤順丈さんの「宝島」についてまとめました!

直木賞受賞も納得の重厚な作品でした。

続編を書いている」という記事も見かけたので、これは今年あたり期待できるかもしれません!

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


4月から天海祐希さん主演でドラマが始まる
柚月裕子さんの「合理的にあり得ない」の原作について
まとめていきます!!


この本を読んだきっかけ

4月からドラマ化されると聞いて、原作を先に読みたい!と思い、慌てて借りてきました。

柚月裕子さんは好きな作家さんですが、この作品は未読でした…。

こんな人にオススメ

  • ミステリー短編集が好きな人
  • 探偵ものが好きな人
  • 男女のバディものが好きな人
  • 柚月裕子さんの作品が好きな人

「合理的にあり得ない」あらすじ

出版社によるあらすじ紹介

法より節義に報いたい。 
危うい依頼は美貌の元弁護士がケリつけます!

『孤狼の血』『慈雨』『盤上の向日葵』著者の鮮烈ミステリー!!

上水流涼子は弁護士資格を剥奪された後、頭脳明晰な貴山を助手に探偵エージェンシーを運営。
金使いが荒くなった妻に疑念を抱く夫、賭け将棋で必勝を期すヤクザ、野球賭博絡みのトラブルetc。
欲に塗れた人物たちの難題を涼子は知略と美貌を武器に解決するが……。
著者の魅力全開、極上痛快エンターテインメント

出版社より引用

上水流涼子は「かみづるりょうこ」と読みます!
珍しい苗字ですよね!


あらすじを詳しく紹介!

この小説はつの章からなっています。

あらすじをもっと詳しく見ていきましょう!!

確率的にあり得ない

〔登場人物〕
◯本藤仁志(ほんどう ひとし)…藤請建設の二代目経営者。先代と同じくらい器が大きく、社員にも秘書の大輔にも優しいが、決断力に欠けるところがある。

◯新井大輔(あらい だいすけ)…本藤の秘書。

◯高円寺裕也(こうえんじ ゆうや)…高円寺総合研究所の所長で、経営コンサルタント。

ある日、本藤は行きつけのクラブで、ママの紹介により高円寺と出会います。

高円寺には特別な力があり、未来を見通す力があるのだと言います。

それを証明してもらうため、本藤は自宅に高円寺を招きます。

そこで、高円寺は本藤の前で奇跡ともいえるその力を本当に見せます。

本藤は高円寺をすっかり信じるようになり、高額なアドバイス料を支払い、会社が重大な決断をしなければならない時に、高円寺に意見を聞くようになります。

高円寺の予言は毎回的中し、本藤は高円寺にはまり込んでいきますが、秘書の大輔は高円寺のことを信用してはいませんでした。

高円寺総合研究所を藤請建設の正式な経営コンサルティング会社とすることになり、契約料として5000万円を支払うことになったのですが…。

高円寺の未来を見通す力は本当のものなのかーー。

合理的にあり得ない

〔登場人物〕
〇神崎恭一郎(かんざき きょういちろう)…バブル期に多額の資産を手に入れた資産家。

○朱美…恭一郎の妻。

○克哉…恭一郎と朱美の息子。いじめに遭ってから引きこもっている。

神崎恭一郎は悠々自適な暮らしを送っていますが、最近妻の朱美が外出することがやけに増え、その行動に不信感を持っています。

いじめが原因で引きこもりとなってしまった息子の克也を身守る為に、朱美が外出することはこれまではほぼなかったのです。

ある時、神崎は銀行からの連絡により、朱美が神崎に内緒で多額の預金を銀行から引き出していることを知ります。

神崎は朱美を問い詰めると、朱美はある霊能力者のところに通い、幸運になれるという皿や壺などを購入する代金に使ったと言います。

神崎はその霊能力者を詐欺師だと思い、興信所に正体を突き止めるよう依頼します。

その霊能力者は綾小路緋美子という女性でした。

その霊能力者の正体は一体ーー。

彼女が朱美に近付いた真の目的とはーー。

戦術的にあり得ない

〔登場人物〕
〇日野…関東幸甚一家という暴力団の総長。将棋が趣味で、アマチュア四段クラスの実力を持つ。

〇財前…横山一家という暴力団の総長。

涼子と貴山のもとに、暴力団の総長である日野から依頼がありました。

日野は二年前から横山一家の総長・財前と将棋をするようになり、二人の実力は五分五分で拮抗していました。

ところがある時から財前の腕が見違えるほど上達し、日野は連敗してしまいます。

日野は財前が何か不正をしていると考えます。

次の勝負は一億円を賭けていて、その対局で勝負を終わりにするつもりだと言い、なんとしても勝つ方法を考えてほしい、という依頼でした。

貴山は実は東大の将棋部の主将を務めていたほどの実力者であり、勝つ方法を考えます。

果たして財前は不正を行っていたのかーー。

日野は最後の勝負に勝つことはできるのかーー。

心情的にあり得ない

〔登場人物〕
〇諌間慶介(げんま けいすけ)…海運や造船業で名の知れた諌間グループの会長。

〇久美…諌間の孫娘。大学2年生。

◯広瀬智哉(ひろせ ともや)…久美が貢いでいると思われる男。

◯丹波勝利(たんば かつとし)…組織犯罪対策課に勤める古参刑事で、薬物銃器対策係の主任。

涼子は諌間から、いなくなってしまった孫娘の久美を探し出してほしい、という依頼を受けます。

ある時期から、久美はサークル活動に費用がかかると嘘をつき、母親にお金をねだっていましたが、その金額と頻度が大きくなってきたため、父親と母親は何に使っているのか問い詰めました。

久美が本当のことを言わないため、興信所を使って、久美の身辺を調べさせます。

すると、久美は広瀬というホストあがりの男にはまり、多額のお金を貢いでいるようでした。

父親は広瀬に手切れ金を渡し、関係を終わらせますが、その後、久美は失踪してしまいます。

広瀬もまた、姿をくらませてしまいました。

実は、諌間は涼子な弁護士資格を剥奪された原因となった人物なのです。

そんな憎むべき人物からの依頼を受けることを貴山は反対しますが、涼子は依頼を受けます。

久美と広瀬を見つけることはできるのかーー。

涼子が弁護士資格を剥奪された理由は何だったのかーー。

涼子と貴山の過去も明かされるので、そこにも注目です。

心理的にあり得ない

〔登場人物〕
〇桜井由梨…父を自殺で亡くした。野球賭博に手を出して騙されたのではないかと疑っている。

〇予土屋昌文(よどや まさふみ)…野球賭博に関わっている。

桜井由梨は、父親が3年前に多額の借金を残して自殺した原因が、野球賭博で誰かに騙されたのではないかと考え、涼子に父の無念を晴らしたいと依頼してきます。

遺品の手帳には、予土屋という男の名前と電話番号が残されていました。

貴山は予土屋を騙すための計画を立てます。

貴山の立てた計画はうまくいくのかーー。

予土屋はどうなるのかーー。

この本のテーマや特徴

痛快爽快な話が5つ!

5つの章からなる短編集ですが、どれも勧善懲悪ものの話で、スカッとする内容となっています。

どんでん返しや巧妙なトリックが楽しめるようなミステリーではないですが、素直な感じのミステリーとなっています。

涼子と貴山がどう「悪」を懲らしめるのか、要注目です。

涼子と貴山のコンビがいい!

この2人のコンビがとてもいい感じで、まさにドラマ向きです!

涼子はその美貌と頭脳を活かし、「殺し」と「傷害」以外は引き受けるというスタンスで、次々と依頼をこなしていきます。

空手の黒帯を持っていて、体を張った仕事をすることもあるようです。

貴山は東大卒でIQ140という並外れた頭脳を持ち、実務能力も非常に高く、顧客の依頼に対しては彼の能力が発揮される場面が多いです。

男女のバディものが好きな人にはかなりおすすめです!


感想

これは、ドラマにぴったり!!という作品でしたねー!!

いろんな方の感想を読んでいたら、「これはドラマ化されそう」という感想がいくつもありましたが、それも納得でした!

その感想を書いた方たち、ズバリ当てましたねー、すごい!

キャストを知ってしまってから読んだので、完全に天海祐希さんと松下洸平さんのイメージで読んでしまいましたが、涼子は原作では30代となっていますね…。

天海祐希さん、御年55歳!なんですか…。かなりお若く見えるのでアリとしましょうか…。

年齢を無視すれば、天海さん、キャラ的にはピッタリだと思います。

もし天海さんと松下さんというキャストを知らずに読んだら、誰をイメージしてたかな。涼子は菜々緒さんとかどうでしょうか(笑)

他のキャストも誰がやるのか、今からちょっと予想しておこうかな。

ドラマの話はさておき、この作品は柚月裕子さんの作品を何冊か読んできた印象からすると、かなり軽いタッチで読みやすさ抜群ですね。

柚月さんといえば、けっこう重い作品が多いですからね。

こんな軽いタッチの作品も書くんだなぁ、と思いました。

ただ将棋をテーマにした話がありましたが、「盤上の向日葵」という長編作品が将棋をテーマにしていたので、そこからの知識を活かしたのかな、と思いました。

柚月さんは、長編作品を書くときにかなりそのテーマを深く研究されているイメージがあるので、知識量が半端なさそうな印象があります。

そんな印象なので、この作品はちょっと物足りなく感じてしまう人も多いかもしれませんね。

柚月さん自身はこの作品のことを「思いっきり楽しんで書きました!」とおっしゃっているので、サラッと楽しむには最高の一冊と言えると思います。

個人的に物足りなかったのが、貴山の活躍がすごすぎて、涼子の活躍があまり見られなかったのが残念だったかな、という点です。

涼子が体を張る場面も出てきましたが、基本的には貴山の頭脳に頼りすぎな感じがありました…。

日刊ゲンダイで続編が連載されていたようなので、その続編もドラマでやりそうな気がしますね。

ドラマ開始にあわせて、書籍化もするでしょうか。

刑事の丹波が続編にも登場していて、ちょっとした準主役的な役割を担っていそうなので、キャストが気になりますね〜。

これはいろいろ続報が期待できて楽しみですね!

著者紹介

1968年、岩手県生まれ。2008年、『臨床真理』で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。2013年に『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、2016年に『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)を受賞。他の著書に『最後の証人』『あしたの君へ』『慈雨』『盤上の向日葵』『検事の信義』『暴虎の牙』などがある。

出版社より引用


まとめ

柚月裕子さんの「合理的にあり得ない」について、詳しくまとめました!

2023年4月からドラマが始まるので、原作を先に読みたい!という方は、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか!

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


川越宗一さんの「熱源」についてまとめます!
第162回直木賞受賞作です!!
2022年に文庫化されました!


この本を読んだきっかけ

直木賞受賞作品でもあり、歴史小説が好きなので、前から読みたいと思っていた作品です。

アイヌ」の人々に触れた作品を以前にも読んだことがあり、もっと詳しく知りたいと思っていました。

こんな人にオススメ

  • 歴史小説が好きな人
  • 戦争を題材とした小説が好きな人
  • アイヌの文化や歴史に興味がある人
  • 直木賞受賞作品を読みたい人

「熱源」あらすじ

【第162回直木賞受賞作】

樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。
一方、ブロニスワフ・ピウスツキは、リトアニアに生まれた。ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。
日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。
文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。

樺太の厳しい風土やアイヌの風俗が鮮やかに描き出され、
国家や民族、思想を超え、人と人が共に生きる姿が示される。
金田一京助がその半生を「あいぬ物語」としてまとめた山辺安之助の生涯を軸に描かれた、
読者の心に「熱」を残さずにはおかない書き下ろし歴史大作。

出版社より引用

登場人物

  • ヤヨマネクフ(山辺安之助)…主人公。樺太出身のアイヌ。幼少時に樺太から北海道の対雁(現在の江別市)に移住する。
  • シシラトカ(花守信吉)…樺太出身のアイヌで、ヤヨマネクフの幼なじみ。
  • 千徳太郎治…和人の父とアイヌの母を持つ。ヤヨマネクフとシシラトカの幼なじみ。
  • キサラスイ…対雁村一番の美人で、五弦琴(トンコリ)の名手。
  • チコビロー…対雁村を治める、アイヌの頭領。
  • バフンケ…樺太・アイ村の頭領。数カ所の漁場を経営する。
  • イペカラ…バフンケの養女。五弦琴を弾くことを好む。
  • チュフサンマ…バフンケの姪。流行病で夫と子どもを亡くした。
  • ブロニスワフ・ピウスツキ…もう一人の主人公。ポーランド人。ロシア皇帝暗殺を謀った罪で樺太(サハリン)へ流刑になる。
  • アレクサンドル・ウリヤノフ…ブロニスワフの大学の先輩。学生運動の首謀者。
  • レフ・シュテルンベルグ…テロ組織「人民の意志」の残党で、樺太に住む民俗学者。
  • ヴァツワフ・コヴァルスキ…ロシア地理学協会の会員。アイヌの民族調査のため北海道を訪れる。
  • ユゼフ・ピウスツキ…ブロニスワフの弟。兄の罪の連帯責任でシベリアに流される。
  • 金田一京助…アイヌ文化を研究する東京帝大の学生。1913年にヤヨマネクフの話をまとめた「あいぬ物語」を刊行する。
  • 白瀬矗(のぶ)…陸軍中尉であり、世界初の南極点到達を目指す探検家。

この本の特徴やテーマ

明治維新後の「アイヌ」や「樺太」のことがわかる

ロシア人や和人(日本人)に「未開人」と差別され、いずれ滅びゆく運命にあると決めつけられていたアイヌの人々の文化や歴史について、この作品ではたくさんのことを知ることができます。

イオマンテ」と呼ばれる、ヒグマを神に捧げるという儀礼のことは知っていましたが、アイヌの女性が結婚後に口の周りに入れ墨を入れることは知りませんでした。

また、「トンコリ」という琴のことも初めて知りましたが、この作品の中で、重要な役割を持っています。

また、日本とロシアとの間で領土を争った「樺太(サハリン)」の歴史についても、知ることができます。

日本の領地になったり、ロシアの領地になったり、北緯50度線より南だけ日本になったり…と、樺太に住む人々はその歴史に翻弄されてきました。

樺太って、あまり大きい島であるイメージはなかったのですが、北海道よりわずかに小さいくらいの大きい島らしいです。

樺太には「アイヌ」の他にも、「ギリヤーク=ニグブン」や「オロッコ=ウィルタ」と呼ばれる民族も多く住んでいたようです。


2人の主人公、ヤヨマネクフとブロニスワフの故郷への想い

この物語は、アイヌのヤヨマネクフと、ポーランド人のブロニスワフという2人を主人公としています

ヤヨマネクフは大日本帝国に、ブロニスワフはロシア帝国に、むりやり故郷を奪われてしまいます。

奪われたのは土地だけではなく、言葉も奪われてしまいます。

ヤヨマネクフは「八夜招(ヤヨマネク)」、ブロニスワフはロシア風に「ピルスドスキー」と、名前も変えられてしまいます。

その2人の主人公が、「故郷」についてどのような想いを持っているのか、何を大切に生きていこうとするのか、その熱い想いを感じ取ることができます。

登場人物はほとんど実在の人物!!

実話を基にしていることは知っていたのですが、この物語に出てくる登場人物のほとんどが実在した人物なんです!

ポーランドの歴史について、ほとんど知識がなかったのもありますが、ブロニスワフたちは架空の人物じゃないの?と思って読んでました…。

それが、ブロニスワフもピウスツキもウリヤノフも、みんな実在人物なんですね。

ウリヤノフの兄は、ロシア革命を指導したウラジミール・レーニンだそうです。

もちろん、ヤヨマネクフを始めとするアイヌの登場人物も、ほぼ実在人物です。

物語にも出てきますが、ヤヨマネクフとシシラトカは、白瀬矗の南極探検隊に参加しています。

アイヌ語を研究した金田一京助を始め、大隈重信や二葉亭四迷などの著名人も出てきて、壮大な物語となっています。

印象に残ったフレーズ

印象に残ったフレーズを2つ紹介します!

「我々には、彼らの知性を論ずる前にできることがあります。豊かな者は与え、知る者は教える。共に生きる。絶望の時には支え合う。(中略)少なくとも、私は支えられました。生きるための熱を分けてもらった」

p163 ブロニスワフの言葉

ブロニスワフは、サハリンに流されてきた当初、生きる気力を失っていました。

それがギリヤークやアイヌの人々と接するうちに、彼らから支えられるようになっていきます。

作品タイトルが「熱源」というだけあって、物語の中にも「熱」という言葉が何度か出てきます。

ブロニスワフやヤヨマネクフの「生きるための熱の源」は何だったのでしょうか。

ぜひ、読んで確かめてみて下さい。

「"次"とか"また"とか"まさか"ってのは、生きてる限り、あるもんさ」

p425 イペカラの言葉

物語の最後の最後の方で語られる言葉ですが、最後の場面というのもあって、じーんときてしまいました。

アイヌの女性のたくましさも感じられる言葉でした。

生きてさえいれば、何が起こるかわからないですよね。


他にもたくさん印象に残る言葉がありましたが、
ネタバレになりそうなので、やめておきます!!

感想

1ヶ月ほど前に発表された「第168回直木賞」の受賞作品2作品も歴史小説で、両方とも私は大好きな作品なのですが、この「熱源」もまた、直木賞受賞も納得の作品であると思いました。

なんでしょうねー、私、こんなに歴史小説って好きだったかなー、って思いましたよ。

はい、歴史小説大好きなんですよ、きっと、たぶん(笑)

よく考えたら、読書にハマったきっかけも浅田次郎さんの「蒼穹の昴」シリーズですもん。

ちゃんと気付いてなかったけど、歴史小説が好きなんです。はい、ようやく実感しました(笑)

ただ、戦国時代とか江戸時代とかはあまり興味がないんです…。珍しいですよね…。

武士に興味がないんでしょうかね(笑)できれば明治時代以降の話が読みたいですね。

でも、浅田次郎さんの「壬生義士伝」は読んだことがあって号泣したので、案外戦国時代とか江戸時代も好きなのかもしれない。


すみません!前置きが長くなってしまった!!

この作品もそうでしたけど、歴史小説の何が好きって、地図とか歴史とかを調べながら読むのが楽しいんですよ!

そこで私みたいな人のために、出版社さんが丁寧に地図や年表を作って解説サイトを作ってくださっているんですが、すごくありがたいです。

この「熱源」も特設サイトが作られているので、よかったら見てみてください。

小説を楽しみながら、歴史や地理の勉強もできるって、最高じゃないですか?!


 

第1章はヤヨマネクフをメインとした物語で始まり、第2章はブロニスワフをメインとした物語が展開され、この主人公2人がどう関わることになるのか、その辺りもワクワクしながら読むことができました。

著者の川越宗一さんは、北海道旅行中に白老町のアイヌ民族博物館で、ブロニスワフの胸像を見たことをきっかけに、この物語を書こうと思ったらしいのですが、アイヌの人々とポーランド人が関わっていたなんて、知りもしませんでした。

アイヌについては、他の小説でも読んだことはありましたが、ポーランドという国については、ほぼ何も知らなかったのが恥ずかしいです(世界史より日本史派でしたし…)。

ポーランドと言えば、ショパン!(ピアノやってたので…)というイメージしかなく、チラっとその歴史について知っているくらいでした…。

ポーランドは歴史的にロシアと敵対関係にあり、反ロシア感情が強いのですね。


 

自分たちの力の及ばぬところで運命を翻弄される人々の話でしたが、読めば読むほど、なんだか胸にじーんとくるものがあるんですよ、この作品。

最初に読み終わった時は、「そっかそんな歴史があったんだ」くらいの熱量でサラッと読み終えた気がするんですよ。

でも、歴史とかがいろいろ頭に入ってからまた読み返してみると、なんだかもう胸いっぱいになるんですよ…。

今まさに起こっているロシアとウクライナの戦争にも、この物語が通じる気がしてきて、感動とは違う涙が出てくるというか。

やっぱり歴史を知ることって本当に大切だな、と感じますし、知らなければいけないことって、たくさんありますね。

小説を通してそういう問題を投げかけてくれる作家さんにも感謝の気持ちでいっぱいです。

 

私はもちろんですが、普通に日本の本州で生まれ育った人って、この作品の登場人物みたいに、文化や言語を奪われるとか、アイデンティティを脅かされるとかそういう危機って、たぶん経験したことないと思うんですよね…。

(災害などで故郷を奪われるとか、土地を奪われるとかは別です。)

だから、この作品の登場人物たちのことを思うと、想像するしかありませんが、ものすごく悔しくて苦しくなりました。

ただそこで暮らしてる、っていうだけなのに、国家の勝手な戦争や紛争によって、突然「故郷」を奪われてしまう。

太郎治なんかは、和人とアイヌのハーフで、両親の祖国同士が戦争をしたわけで、そういう経験をしている人は世界中にいるのだろうけど、きっと胸が張り裂けるような想いなのだろうな…。

それに、先住民の人々が虐げられてきた歴史って、アイヌだけではなくて、世界中にたくさんあると思うけど、本当に傲慢なことでしかないな、と思いました。

 

この物語では、2人の主人公の「故郷」に対する想いが感じられる場面がたくさんありますが、どちらもかっこよかったですよ。2人とも強かったです。

大隈重信とこの2人がそれぞれ話す場面があり、人種や国家の優劣について意見を交換するのですが、その場面もすごく印象に残りました。

2人とも本当に素晴らしいことを言っています。

ブロニスワフは祖国ポーランドを暴力で奪い返すことを頑なに拒みましたが、そういう考えができる主導者が世界にたくさんいればいいのに…って思いました。

ちなみに、大隈重信の有名な語尾「~であるんである」がたびたび出てきて、その部分はちょっとクスっとしてしまいました。

 

最後に、北海道の白老村という所に「ウポポイ」というアイヌ文化の復興と発展のための施設が2020年にオープンされたばかりだそうです。

なかなか北海道に行く機会がないのが残念ですが、いつか行ってみたいですね~。

それと、アイヌと言えば、「ゴールデンカムイ」という漫画が人気だったりしますよね。

私は漫画はほぼ読まないので未読ですが、ゴールデンカムイファンの方もこの「熱源」を読んだりしているようで、より物語をイメージしやすいかもしれませんね。

著者紹介

 

1978年鹿児島県生まれ、大阪府出身。京都市在住。龍谷大学文学部史学科中退。
2018年『天地に燦たり』(文藝春秋)で第25回松本清張賞を受賞しデビュー。
短篇「海神の子」(「オール讀物」12月号掲載)が日本文藝家協会の選ぶ『時代小説 ザ・ベスト2019』(集英社文庫)に収録。
19年8月刊行の『熱源』(文藝春秋)で第10回山田風太郎賞候補、第9回本屋が選ぶ時代小説大賞受賞、第162回直木賞受賞。
出版社より引用

まとめ

川越宗一さんの「熱源」についてまとめました。

直木賞受賞も納得の「」のこもった壮大な作品でした!

川越さんの他の歴史小説もぜひ読んでみたいと思いました!!

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


長浦京さんの「プリンシパル」について詳しくまとめます!


この本を読んだきっかけ

『このミステリーがすごい!2023年版』でも第5位にランクインしていたり、Twitterで時々見かけたりして、注目していました。

また、戦後史に少し興味があったので、読んでみることにしました。

こんな人にオススメ

・ヤクザもの、任侠ものの話が好きな人

・強い女性が主人公の物語が好きな人

・戦後史や歴史小説が好きな人

・話題の本が読みたい人

・長浦京さんのファンの人

「プリンシパル」あらすじ

1945年、東京。大物極道である父の死により、突如、その「代行」役となることを余儀なくされた綾女。大物議員が巡らす陥穽。GHQの暗躍。覇権を目論む極道者たちの瘴気……。綾女が辿る、鮮血に彩られた謀略と闘争の遍歴は、やがて、戦後日本の闇をも呑み込む、漆黒の終局へと突き進む! 脳天撃ち抜く怒濤の犯罪巨編、堂々開幕。

出版社より引用

物語は、終戦の日、水嶽綾女(みたけあやめ)が教師をしていた疎開先の長野から帰京するところで幕が開きます。

その夜、危篤だった父・玄太は亡くなり、綾女は未だ戦地にいる兄たちの代わりに喪主を務めるように言われるが、彼女は引き受け付けるつもりはありませんでした。

しかしその夜、彼女は水嶽組が隠匿する食糧・軍需物資を狙う敵対勢力の襲撃にあい、綾女が宿としていた青池家が襲撃を受けてしまいます。

青池家の人々は、綾女を必死で匿い、綾女の幼馴染の修造とその嫁以外は拷問の末に殺されてしまいます。

綾女は青池家の惨状を目の当たりにして、激しい怒りや憎しみを感じ復讐を誓い、水嶽組の跡を継ぐことを決心するのです。


本のタイトル「プリンシパル」は、
長、支配者、社長、主役」という意味です!

本の表紙にバレリーナのような女性が載っていて、バレエ団の最高位のダンサーのことを「プリンシパル」と呼びますが、この物語は全くバレエとは関係ありません!!

本の表紙だけを見て、バレエの話かな…と思って買う人もいそう…。

この本のテーマや特徴

綾女の成長物語

青池家にされたことに対しての復讐心から、水嶽組を継ぐと決めた綾女は、命を張って水嶽商事の会長兼社長代行をやると宣言します。

結果を出せなければ命を差し出す、とも。

自分たちを襲った者には容赦のない報復措置を取り、身内に敵対勢力への内通者がいたことを知った時も容赦なく報復していきます。

その方法がまたすごいんですよね。

読んでもらえばわかりますが、なかなかにエグいです。容赦ないです。

彼女に流れた「血」のせいなのか、組を守るという目的だけではなく、彼女自身の命を守るためにそこまで残酷にならざるを得なかったのか…。

彼女は「ヒロポン」を常用していたのですが、その影響もあるんでしょうか…。


ヒロポン
は商品名で、薬名はメタンフェタミンといいます。
いわゆる覚醒剤、スピード、あるいは警察や暴力団用語でいうシャブとまったく同じドラッグです。

ヒロポンは薬局で誰でも買えたそうですね…。

戦後日本の様子がわかる!

著者の長浦京さん曰く「基本的に僕は、まさかと思うような史実や事実を元に話を作るタイプ」とのことなので、この物語はノンフィクションに近い物語なのかもしれません。

敗戦後、日本は7年間にわたりアメリカ主力の連合国軍の占領下に置かれ、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が日本政府を通じて支配する間接統治でした。

日本の警察はほぼ機能しておらず、治安を維持していたり、食糧難に喘ぐ人々を救った闇市を取り仕切っていたのがヤクザであったと言われています。

この物語では、水嶽組と旗山市太郎吉野繁実といった大物政治家やGHQとの密接な関係が書かれており、いかに大きな影響力を持っていたかがわかります。

旗山市太郎、吉野繁実とは、鳩山〇郎氏と吉〇茂氏のことであると思われますね。

また、水嶽組はギャンブルや芸能興行の世界にも幅を利かせていくのですが、その中で、綾女は美波ひかりというスター歌手と関わることになります。

美波ひかりは、美〇ひばりさんがモデルとなっています。

物語を通して、戦後日本の様子を垣間見ることのできる作品となっています。


感想(ネタバレなし)

ヤクザものといえば『セーラー服と機関銃』や『ごくせん』を思い浮かべる人が多いようですが、私はどちらも読んだことも観たこともないので、比べることはできないのですが、それよりは『ゴッドファーザー』に近いようですね。

すみません、『ゴッドファーザー』も観たことないんです(汗)あの有名な曲は思い浮かぶんですけど(笑)

それほど、こういうジャンルには興味がなくて…。

ヤクザと言って最近思い出すのは、好きな俳優さんでもある鈴木亮平さんが『孤狼の血 LEVEL2』で演じていたのを思い出しますが、好きな俳優さんが出ていても観ようとは思わないくらいの、興味のないジャンルなんです…。

別に怖いのが苦手とか、血が苦手とか、強がりを言ってるわけじゃないんですよ?ただ興味がないのです。

なので、この作品もそういうジャンルの作品だと知ってて読んだとはいえ、失敗したかな~と思ってしまったのですが、ところがどっこい!めちゃくちゃ面白かったですねー!!

あらすじに書いたのですが、最初の青池家の人たちが惨殺されてしまう場面の描写からエグイ!グロイ!ので、うわー!と思ったのですが、その後も最後までそんな感じが続くのでした。

このエグさグロさは、直木賞を受賞した『テスカトリポカ』以来でしたよ。

あちらは、メキシコの麻薬密売人の話ですが。

史実が既に劇的なので、物語部分は極力シンプルを心がけた」と著者の長浦さんはおっしゃっていますが、物語部分のエグさグロさ、すごかったですよー!?

シンプルにエグいということでしょうか(笑)何度、を見たことでしょう…。

血、血、血ーーでした。

 

最初は復讐のために仕方なく組を継ぐことにした綾女ですが、徐々に彼女に流れる「血」のせいかどんどん残忍な女性になっていくのが、哀しくも恐ろしいものがありました。

その残忍さを恐ろしいと思いつつ、少し爽快でカッコいいと思ってしまったのですが、さすがに容赦なく殺しすぎですよね。

いくら何でも…と思う場面が多かったです。

とは言え、私は強い女性が好きで、このヒロインの綾女もけっこう好きなので、この物語を楽しめたのかもしれないですけど、綾女にあまりいい印象が持てないと、この作品も楽しめないかもしれないな、と思いました。

 

政治家や芸能人は誰をモデルにしているかわかりやすいけど、この綾女や水嶽組は誰をモデルにしているか、少し調べた感じではわからないんですよね。

実在のモデルがいるんでしょうか?

物語の中では、東の水嶽組、西の竹岡組、となっていて、西の竹岡組はあの暴力団のことだろうとわかるのですが。

旗山と吉野のモデルとなった2人の大物政治家や美波ひかりのモデルとなった歌手については、少し調べてみましたが、実際にもこの物語のような感じだったのかなぁ〜と、とても興味深かったです。

政治家や芸能界とヤクザの関係は実際にもこんな感じだったのでしょうかね。というか今もですかね?

その辺りのことも学べたので、読んでよかったです。

あ、そういえば、「このミステリーがすごい」にライクインしているようですが、ミステリー的な要素はそんなになかった感じもします。

まぁ、あると言えばあるんですが、ミステリーを期待して読む作品ではないかと思います…。


著者紹介

1967年埼玉県生まれ。法政大学経営学部卒業後、出版社勤務を経て、放送作家に。
その後、闘病生活を送り、退院後に初めて書き上げた『赤刃』で2011年に第6回小説現代長編新人賞、2017年『リボルバー・リリー』で第19回大藪春彦賞を受賞する。
2019年『マーダーズ』で第73回日本推理作家協会賞候補、第2回細谷正充賞を受賞。2021年『アンダードッグス』では第164回直木賞候補、第74回日本推理作家協会賞候補となる。
他の作品に『アキレウスの背中』がある。


出版社より引用

感想(ネタバレあり)

ここからは、ネタバレを含む感想を書いていきますので、未読の方は気を付けてくださいね!!

 
 


この物語の終わり方ですが、個人的には、まぁーそうなるよねー、と納得の終わり方でした。

そんなに上手く行くはずがないですもんね。

きっと復讐されて終わるんじゃないかな…と予想していました。

ただ、兄の桂次郎は綾女を恨むような関係性じゃなかったよね?と思ったんですが、読み落としてますかね…。

その他の人物は綾女を恨んでいた人物ばかりだけど。

でも、綾女もやっぱり強いですねー。やられっぱなしではなくて、由結子にやり返すのがまた見事でした。

そして、最後の最後まで、この世への未練を残し、「生きたい」と「生」への強い想いを持っているのが、綾女らしいと思いました。

こんな凄惨な人生を送ってきてもなお、生きることに執着するのはすごいですよね。

何度も殺される覚悟をして、死んでもいいと思っていたはずなのに。

最後は誰が撃たれたんでしょう。

この先、水嶽商事はどうなっていくんでしょうか。知りたいですね。

なんとなくですが…、カリスマ的存在の綾女がいないと水嶽商事は上手く機能しないような気がしますね。

 

それから、途中まで綾女は青池家の人々の亡霊を見ていたのですが、彼らは綾女の活動を応援していたのでしょうか?

途中から見なくなったということは、綾女が充分一人でも活動できる自信みたいなものが付いたからでしょうか。

ヒロポンのせいで幻覚でも見てたのかな?とも思いましたが…。

 

また、ラスボス的存在の熊川万理江ですが、なかなか手強かったですね。

さすがの綾女もお手上げかと思いました。

最後の殺し合いの場面も凄まじかったですね。

それにしても、登場人物みんな悪者ばっかりでしたね!

一人くらい良心的な存在がいれば救われたのですが、誰もいない(笑)

美波ひかりのスター的存在感が物語を輝かせるものであったことくらいでしょうか。

長浦さんの筆力がすごいからおもしろかっただけで、こういうジャンルをおもしろいと感じるかどうかは、まだ未知数かもしれません。

ヤクザという親近感を感じにくいヒロインの物語であり、普段読まないジャンルの作品ということで、薄っぺらい感想になってしまい、申し訳ないです(汗)

まとめ

長浦京さんの「プリンシパル」についてまとめました。

ゴリゴリのヤクザものでしたが、めちゃくちゃおもしろかったです!

こういうジャンルも評価が高いものは、避けずに読んでいこうと思いました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


むし子
むし子

こんにちは、むし子です!
1月に読んだ本をまとめます!

読書メーターというアプリを使って、読んだ本を管理しているのですが、月ごとにブログにまとめることのできる機能があることに、今さら気付きました…。

めちゃくちゃ便利やん!

ただ、ネタバレありの率直な感想を書いているので、ネタバレしそうな箇所は消去して掲載したいと思います。

字数制限もあるので、ブログに書くよりもけっこうくだけた感じで書いているので、その点はご理解ください。

「この作品は合わなかった」とか「これはあまり響かなかった」などと書いてしまってるので、不快な気持ちにさせてしまったら、すみません…。

ブログを書いた作品には記事を貼ってますので、そちらもよろしければご覧ください。

1月の読書メーター
読んだ本の数:23
読んだページ数:7964

 

名探偵のいけにえ: 人民教会殺人事件名探偵のいけにえ: 人民教会殺人事件感想
これ、実際にあった事件に絡めて書いてるんですね!すごいですね。Twitterやミステリランキングなどでかなり見かけてて、ずっと気になってた作品ですが、皆さんがすごいって言う理由がわかりました。確かにすごい。多重解決推理というものを初めて読んだと思うのですが、こんなのよく思いつくなぁ〜。作家さんの頭の中、どうなってんのよ、って感じでした。最後の最後まで気が抜けない展開で一気読みでしたね。ただ、トリックが分かりにくい部分があり、頭の中が混乱する所がありました…。それと、げ○って言葉が出てきすぎ(笑)
読了日:01月02日 著者:白井 智之


事件は終わった事件は終わった感想
面白かったです!地下鉄で起きた無差別殺傷事件に居合わせてしまった人たちの話ですが、なかなか考えさせる話でした。引きこもりになってしまったり、PTSDで苦しんだり…。こういうことは実際にもたくさんあるんだろうな…。「事件は終わった」というタイトルですが、彼らにとっては、事件は終わってないんですよね…。どの章もよかったですが、最終章が1番好きです。ちょっと切ない終わり方がよかったです。ホラーっぽかったり、叙述トリックっぽかったり、いろいろ楽しめる一冊でした。
読了日:01月03日 著者:降田 天


地図と拳地図と拳感想
蒼穹の昴シリーズの大ファンなので、あんな感じかな?と期待して読みました。この作品もよかったです。歴史×SFみたいに書かれてて、孫悟空と名乗る人物が出てきたりはするけど、そんなにSF感はなくてよかった(笑)戦争がもちろんテーマではあるけど、地政学とか建築学とか、いろんな面で勉強になることがあり、哲学書っぽい感じもしました。「地図と拳」という細川の演説が一番印象に残りました。地図について考えたこともなかったので、なんだか関心してしまいました。小川哲さん「君のクイズ」もすごかったし、要注目作家さんだなー。
読了日:01月05日 著者:小川 哲

https://www.mushikoblog.com/the-map-and-the-fist/


推し、燃ゆ推し、燃ゆ感想
読み始めたらすぐ読み終わりました。こういうのが純文学っていうんですか?文章がまどろっこしくて、すごく読みにくかったですが…。これが美しい文章と言うなら、合わないのかな…。私も大学生の頃、この主人公と同じくらい「推し活」してたので、気持ちはほんとによくわかりました。人生捧げてるくらいの存在だったので。社会人になって、時間がなくなって、落ち着きましたけど。この主人公はこの後どうなるのかな。あやふやなまま終わった部分もあり、なんとなくスッキリしないですね…。家族ももう少し何か考えたら?とも思います。
読了日:01月07日 著者:宇佐見りん


逆転美人 (双葉文庫 ふ 31-03)逆転美人 (双葉文庫 ふ 31-03)感想
Twitterですごいって言ってる人がたくさんいるので、読んでみましたが、確かにいろんな意味ですごいですね!物語に対する推理が当たった所はあったのですが、それだけじゃなかったですね〜。確かに紙の本じゃないとできないですね〜。これ、書くの大変だったんじゃないのかな。個人的には「方舟」や「名探偵のいけにえ」よりも好きかもしれない。
読了日:01月08日 著者:藤崎 翔


うさぎの町の殺人うさぎの町の殺人感想
amazonレビューとかいろんな口コミを見ると、評価があまり良くないみたいですが、私は楽しく読めました。ちょっと人が死に過ぎで、さすがにこんな町ないだろ〜とは思いましたけどね。犯人も皆さんと同じく、予想はついてしまいましたが、最後のどんでん返しまでは読めませんでした。ちょっと詰め込み過ぎな印象はありますが、最初から最後まで、一気読みでした。公安って、いろんな小説で読むと、とんでもない闇組織みたいに書かれてるけど、本当にそうなんでしょうか?怖い…。
読了日:01月09日 著者:周木 律


紙の梟 ハーシュソサエティ紙の梟 ハーシュソサエティ感想
これはなかなか難しくて考えさせられる内容でしたね。「人ひとりを殺したら死刑になる世界の物語」ですが、5つの物語全て、違う視点から死刑について書かれていて、それぞれ印象深い内容でした。一番印象に残ったのは「レミングの群れ」で、田中一朗の正体は読めたのでびっくりはしませんでしたが、話としてはけっこう衝撃的な内容でした。一人の男子中学生がいじめによって自殺したことを発端に、こうも恐ろしい展開になってしまうのか…という恐怖を感じました。死刑に賛成か否定か、たぶん一生答えは出せないだろうと思う。
読了日:01月10日 著者:貫井 徳郎

https://www.mushikoblog.com/paper-owl/


贋物霊媒師 櫛備十三のうろんな除霊譚 (PHP文芸文庫)贋物霊媒師 櫛備十三のうろんな除霊譚 (PHP文芸文庫)感想
初読み作家さんで、Twitterのキャンペーンで当選した本です。サクサク読めて一気読みでした!これ、絶対続編ありますよね⁈(笑)ホラーはあんまり興味ないので心配だったんですが、ホラー色はあんまり強くなくて、どんでん返しアリのミステリーという感じで、面白かったです。予想外に感動するストーリーもあり、ホロっとするところもありました。主人公のインチキ霊媒師と助手のコンビもすごく好感が持てました。謎に包まれたことがいくつかあるので、続編があると信じて待ちたいと思います。
読了日:01月13日 著者:阿泉 来堂


汝、星のごとく汝、星のごとく感想
絶賛されてるレビューがあまりに多くて、めちゃくちゃ期待して読みましたが…私にはあまり響くものがなかったです…。私がとやかく言うことじゃないですが、あまりに身勝手な登場人物が多くて…。私の器が小さいのか、考え方が堅くて古くさいのかな。「流浪の月」とか「わたしの美しい庭」はけっこう好きだったんですけどね…。どちらかと言うと、若い世代の方向けの印象です。
読了日:01月14日 著者:凪良 ゆう


アノニマス・コールアノニマス・コール感想
薬丸作品コンプリートを目指して、未読だったこの作品を読みました。作家10周年記念作品だそうで、スリルがあって先が気になって一気読みでした。だけど、やっぱり薬丸さんはもっと社会派ミステリー的な作品の方が好きですね。読後、うーんっていろいろ考えさせられるようなテーマの作品の方が好みです。この作品は完全にエンタメ重視でした。主人公の朝倉を始め、岸谷や戸田といった登場人物はキャラが立ってて、よかったです。派手なアクションありで、ハードボイルドものとも言えますね。ドラマのマイファミリーをちょっと思い出しました(笑)
読了日:01月15日 著者:薬丸 岳


天使のナイフ (講談社文庫)天使のナイフ (講談社文庫)感想
2〜3年ぶりに再読。これを読んで薬丸さんにハマったんですが、記憶が薄れてきてるので、読みました。内容はなんとなく覚えてたけど、それでもめちゃくちゃおもしろかったです!この作品、好きですねー。薬丸さんの文章、やっぱり読みやすいなぁ。これがデビュー作だもんなぁ。あとがきの高野和明さんの書評も素敵です。ちょっと余韻に浸ってます(笑)この作品に出会えて、薬丸さんという作家さんに出会えて、よかったなぁって感慨深くもなりました…。「刑事のまなざし」シリーズも記憶が薄れてるので、そちらも少しずつ再読したいです。
読了日:01月15日 著者:薬丸 岳


刑事のまなざし (講談社文庫)刑事のまなざし (講談社文庫)感想
7つの物語から成る連作短編集。2年前くらいに読んだのを再読しました。 薬丸岳さんのファンなので、贔屓目もあるかもしれませんが、やっぱり短編でもおもしろいですね。どの話も個性があって、社会の問題をテーマにしていて、どんでん返しもありで、読み応えがありました。そして、主人公の刑事である夏目信人がまたいいんですよね。ドラマでは椎名桔平さんが演じたんですね。私のイメージでは堺雅人さんの方が近いかな(笑)特に印象に残ったのは「ハートレス」「オムライス」「刑事のまなざし」です。続編も再読しようと思います。
読了日:01月16日 著者:薬丸 岳


教誨教誨感想
またまたこれは重い作品ですね…。良かったのですが、いろんな作品と内容的にかぶってる点が多くて、そこまで響いてこなかったかな…。これは私の読んでる本が毒親と負の連鎖に関する作品が多すぎるせいなのですが…。この作品の登場人物の言葉「約束は守ったよ、褒めて」が何かに似てると思ったら、薬丸岳さんの『罪の境界』の人物が「約束は守った、伝えてほしい」と言うところに似てるし、早見和真さんの『八月の母』『イノセント・デイズ』に似てるところがある気もしました。それから、田舎の閉塞感について書かれてる作品も多いですね…。
読了日:01月18日 著者:柚月 裕子

https://www.mushikoblog.com/kyoukai/


この世の喜びよこの世の喜びよ感想
図書館から回ってきたタイミングで、芥川賞受賞のニュース!ということで、さっそく読んでみました。前に芥川賞受賞作を読んだ時にも思ったのですが、私には純文学はまだ早いのかな…(笑)難解じゃないですか?でも、この作品が好きっていう方、けっこう見かけるから、やっぱり私の読解力が足りないんだろうな…。それか好みの問題なんでしょうか。他の芥川賞関連の作品も読んでみて、純文学を読むのを断念するか決めたいと思います…。
読了日:01月20日 著者:井戸川 射子


ジャクソンひとりジャクソンひとり感想
「この世の喜びよ」よりはなんとか理解して読むことができたし、それなりに面白さも感じました。他の方のレビューを見て気付いたのですが、タイトルは「ジャクソン5」にかけてるんでしょうかね?それはそうと…なかなか刺激の強い内容を風刺の効いた文章で表していて、けっこう好きかもしれないです。ちょっとミステリー的な要素があったからかな。ただ、最後の展開がよくわからなかったんですが…誰か解説して下さい(笑)ブラックミックスの方たちの感じていることがリアルに伝わってくるような文章は、どこか爽快で気持ちよかったです。
読了日:01月21日 著者:安堂 ホセ


ブレイクニュースブレイクニュース感想
薬丸作品にしてはイマイチ…みたいなレビューをけっこう見かけたので心配でしたが、私はけっこう好きでした!8050問題や、パパ活、ヘイトスピーチといった社会問題に焦点を当てた短編集ですが、どれも読み応えがありました。SNSの危険性も改めて感じました。野依美鈴の正体や、ブレイクニュースをやる目的なども気になりつつ、最後まで楽しめました。真柄の存在がちょっと中途半端だったかな…という感じはしましたが、全体的には満足の作品です。最後の展開が物足りないというレビューもありますが、私はこの終わり方、好きです。
読了日:01月22日 著者:薬丸 岳


しろがねの葉しろがねの葉感想
これは直木賞受賞も納得の作品ですね。良かったです。読み終わってからの余韻もすごい…。登場人物や情景が頭の中で映像化されるような文章に圧倒されました。ウメとウメと関わる男たちの過酷な人生が、文章からビシビシ伝わってくるような感じがしました。気が強くて男勝りだけど、やっぱり女らしい所もあるウメに、女性として共感もしました。読み終わって「生きる理」という言葉がなぜだか頭から離れません。
読了日:01月23日 著者:千早 茜

https://www.mushikoblog.com/shiroganeno-ha/

此の世の果ての殺人此の世の果ての殺人感想
面白いと言ってる人が多かったんですが、ちょっと期待しすぎたかな…。正義感の強い人好きだから、イサガワ先生のキャラは嫌いじゃないんだけど…ちょっと過激すぎかな…。それと私はやっぱり現実味があまり無い話が苦手なんだな…。特殊設定なら、屍人荘の殺人とかの方が好きですね…。ちょっと後半が尻すぼみだった感じがします。犯人とその動機が微妙です。それに江戸川乱歩賞をデビュー作で獲ったと言えば、大好きな薬丸岳さんの「天使のナイフ」があるけど、つい最近再読したのもあって、それと比べちゃうとな…とか思ってしまいました。
読了日:01月26日 著者:荒木 あかね


神の子 上神の子 上
読了日:01月27日 著者:薬丸 岳
神の子 下神の子 下感想
上下巻、すごい勢いで読んでしまったので、下巻だけに感想書きます。下巻が尻すぼみだっていうレビューが多いように見受けられましたが、私は最後まで楽しく読めました。先が気になって、ページを捲る手が止まりませんでした。読んでしまえば、本の分厚さも忘れるくらい。薬丸さんの作品は考えさせられるものが多いけど、これはエンタメ重視の内容でしたね。
読了日:01月27日 著者:薬丸 岳


52ヘルツのクジラたち (単行本)52ヘルツのクジラたち (単行本)感想
これは読んでよかったー。毒親とか虐待とかトランスジェンダーとか、そういった今時のテーマの作品には少し食傷気味だったのですが、この作品はそれでも感動しました…。『夜空に泳ぐ〜』も大好きな作品なので、私はたぶん町田そのこさんの書く文章が好きなんだと思います。哀しい物語ではあるけど、救いがあってよかった。でも、アンさんの話だけは哀しいですね。美晴がとにかくいい子すぎて大好きです。
読了日:01月29日 著者:町田 そのこ


うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった (光文社新書)うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった (光文社新書)感想
すぐ貧血になる体質なので、気になってたこの本を読んでみました。なんと15〜50歳女性の99%が鉄不足だそうです。そしてフェリチン値が重要だということは知ってましたが、改めてその重要性がわかりました。私もフェリチン値一桁だったんですよね。鉄剤とかサプリとか飲んで少し改善しましたが、中止するとやっぱり調子悪くて。タンパク質を摂れっていっても、あんまり肉も魚も乳製品も摂らないんですよね。いろいろ工夫しないとダメですね。それから、人体だけではなくて、地球にとっても鉄がいかに特別か、みたいな話も興味深く読みました。
読了日:01月30日 著者:藤川 徳美


ラブカは静かに弓を持つラブカは静かに弓を持つ感想
評判通り、素敵な作品でした。私自身も大手音楽教室の大人のレッスンに通っていたこともあり、どうしても自分の経験を思い出してしまって、作品を味わうというよりは、自分の思い出に浸ってしまいました(笑)なので、自分の思い出は置いといてすぐに読み返してみると、じわじわ深い味わいがある小説だなと思いました。音楽みたいに、読めば読むほど深みが出てくる感じですね。橘の与えられた仕事、これは音楽を愛する人にとっては耐えられないですね。しかも2年って長すぎますよ。講師と生徒の信頼関係についての言葉が沁みました。
読了日:01月31日 著者:安壇 美緒

https://www.mushikoblog.com/rabuka/

特にいいと思ったのは、直木賞を受賞した「地図と拳」「しろがねの葉」です!

薬丸岳さんの作品を全てコンプリートしたいと思ってるので、たくさん読みました。

「天使のナイフ」は個人的に殿堂入り作品です!

むし子
むし子

以上、1月に読んだ23冊を紹介しました!
読んでみたいな〜と思う本があれば嬉しいです!

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