本のむし子

40代主婦の読書日記ブログです。読んだ本の感想などを気ままに書いていきます。

2023年01月

こんにちは!

第168回直木賞受賞作である
千早茜さんの「しろがねの葉」について詳しくまとめます!


この本を読んだきっかけ

直木賞候補作に選ばれたのを知り、読んでみたいと思いました。

直木賞受賞が決定する前に読めなかったのが残念ですが、思ったより早く図書館から借りることができました。


こんな人にオススメ

・歴史小説・時代小説が好きな人

・強い女性が主人公の作品が好きな人

・石見銀山に興味がある人

・話題作を読みたい人

・千早茜さんの作品が好きな人


「しろがねの葉」あらすじ

第168回直木賞受賞作
男たちは命を賭して穴を穿つ。
山に、私の躰の中に――

戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山
天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と未知の鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。
しかし徳川の支配強化により喜兵衛は生気を失い、ウメは欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出されて……。
生きることの官能を描き切った新境地にして渾身の大河長篇!

出版社より引用

担当編集者さんは、この作品について、こう語っています。

しろがねの葉とは、銀の眠る場所に生えるといわれるシダの葉のこと。本作は、シルバーラッシュに沸く戦国末期の石見銀山で、この葉を見つけた孤児の少女が送った劇的な生涯を艶やかな筆致で描いた長編小説です。
 10年以上前のこと、著者の千早さんは旅行に訪れた石見銀山で「銀山の女は三人の夫を持つ」という言葉と出会いました。過酷な採掘現場で働く男たちの短命さを表現したもので、これに触れた千早さんは、愛する男が自分よりも先に死ぬと分かっている世界で、女たちはなぜ生きることができたのか。いや、私だっていつか必ず死ぬのに、なぜ生きるのだろう。そんな根源的な「生」への問いを抱くようになり、やがて、運命に抗いながらも3人の男を見送っていく魅力的なヒロイン、ウメが誕生しました。
 この小説には「性」の薫りも濃厚に漂っています。「獣が睦み合うような交歓シーンを、抑えた筆致でいっそ淡々と書いているのが逆に色っぽかった」とは「波」2022年10月号に掲載された刊行記念対談での村山由佳さんの言。死の床にありながら最期までウメを求める夫・隼人の姿は、「生」と「性」が生き物を動かす両輪であることを鮮やかに見せてくれます。先ごろ、今期の直木賞候補作にも選出されました。私たちの中にあるはずの野性や本能をも揺さぶる快作です。

出版社より引用


この本のテーマ

ウメという女性の一生

天才山師・喜兵衛(きへえ)に拾われた少女ウメは、銀山の知識と未知の鉱脈のありかを授けられ、男たちに混ざり女一人「間歩」で働きます。

夜目が利くというウメは、男たちにも負けぬ働きを見せ、重宝されるようになります。

しかし、成長するにしたがい、ウメは「間歩」に入ることを許されなくなってしまいます。

それは「女」であるがゆえのことであり、女であることによって、理不尽な仕打ちを受けることが出てくるのです。

「間歩」で働くことのできなくなったウメは、その後男たちを支える側になります。

そんなウメの人生を力強くまた艶やかに描いた作品です。

石見銀山の情景や過酷な環境

皆さん「間歩」(まぶ)という言葉はご存知でしたか?

私はこの作品で初めて知ったのですが、間歩=鉱山で鉱石を取るために掘った穴のこと、です。

明治時代以降は「坑道」と呼ばれているようですね。

この「間歩」の恐ろしい闇のような暗さや、銀山の過酷な労働環境、そこで働く男たちの過酷な人生が、とにかくありありとビシビシバシバシ伝わってくるような文章がとても印象的な作品です。

世界遺産にも登録されている「石見銀山」の風景が目に浮かぶような描写表現が、すごく味わい深いです。



印象に残ったフレーズ

印象に残ったフレーズを2つ紹介します!

女は男の庇護の許にしか無事でいられないのか。笑いがもれた。莫迦莫迦しい、好きになど生きられないではないか。

p176 ウメの言葉

男のように間歩で働き、銀掘になるのが当然だと思っていたウメですが、女として成長するうちに、それが無理なことだと理解し始めます。

男にどうしても力で劣る女は、男に守ってもらうしかないのか、葛藤します。

女だからという理由で諦めなければならないという理不尽さもわかるし、その反面、男に守ってほしいと思う狡い気持ちも、女性として共感しました。

生きる理が知りたかったからあの人についていったんでさ。どうせたった独りで死んでいくのに何故、生きるのか。

p284 ヨキの言葉

生きる理(ことわり)、という言葉が最後の方に何度か出てくるのですが、なぜだかこの言葉が頭から離れなくなりました。

独りで死んでいくとしても、人は人と関わらずには生きていけない生物ですよね。

それを教えてくれるような物語でした。



感想(ネタバレなし)

いやぁー、これは直木賞受賞も超納得の重厚で骨太な作品でした!

個人的な好みかもしれませんが、この作品と「地図と拳」が受賞したのは、めちゃくちゃ納得です!

どちらも私好みの歴史小説です。

「地図と拳」は題材が完全に好みだったのに対して、こちらの作品は時代的にそんなに興味のある時代ではなかったのですが、それでも同じくらいおもしろかったです。

歴史小説が苦手な方はちょっと抵抗があるかもしれませんが、この作品は歴史の知識は全く必要ないので、読みにくさもほぼ無く、チャレンジしやすいのではないかと思いました。

方言も出てきますが、難しいと感じた所は全くなかったです。

石見銀山に行ったことがないのですが、行ったことのある方なら、もっとこの物語を楽しめるのかな。

石見銀山、行きたいですねー。

元々島根県自体行ったことがなくて、ずっと行きたいと思っている県なんですが、さらに行ってみたくなりました。

この物語に出てくる「仙ノ山」や「温泉津」などの地名も実在しているし、地図で確認しながら読みました。

著者の千早さんは実際に現地に足を運んだそうですよ。

 

千早茜さんの作品は初めて読みましたが、文章が素敵ですね〜。

銀の眠る場所にあるという「しろがねの葉」をウメが見つけた時の描写も、「間歩」の描写も、映像を見ているかのように文章が生き生きとしていて美しいです。

文章が動き出しそうなくらい躍動感もあって、物語全体が映像として流れてくるような感じがしました。

 

また、風景の描写だけでなく、登場人物の描写も生き生きとしてて、個性が立っててよかったです。

ウメや喜兵衛、隼人といった主要メンバーはもちろんですが、ヨキや龍のような外国の血が入った人物がいたり、出雲の阿国と思われる巫女さんが出てきたり、ウメの恋敵の女郎が出てきたり…たくさん個性的な人物が登場します。

どの人物もちゃんと役割がしっかり与えられていて、読んでいて混乱しませんでした。

 

「人はなぜ生きるのか」「性と死を書きたい」という思いで、千早茜さんはこの物語を書いたそうなのですが、ウメという一人の女性の人生を通して、そういったテーマが問いかけられています。

間歩で働く男たちは鉱山病によって、30歳くらいまでには死んでしまうという過酷な環境で働いているのですが、誰一人そこで働くことをやめようとはしません。

この物語は、ウメの人生を通して見る男たちの人生の物語でもあり、欲望のまま生きる男たちの野生的な泥臭さが匂ってくるようでもありました。

早死にするとわかっている男たちを支える、ウメを始めとする女たちの生き様もまた、哀しさの中に逞しさや力強さが感じられました。

結局、女が子供を産まないと、世の中成り立っていかないっていうことは、女の方が強いってことなのかな、とか思ってもみたり。

それなのに力では男には絶対勝てないっていうのが、私も昔から感じているこの世の理不尽なところですね(笑)

 

最後の方は、悲しくて切なくて涙が出る場面もあり、読み終わった時の余韻がすごかったです…。

読み終わってから「しろがねの葉」の絵が描かれた表紙を見ると、さらに感慨深いものがありました。

歴史小説が苦手な方も、歴史小説というよりは恋愛小説のような感覚で読めるので、ぜひ読んでみてほしいですね!



著者紹介

1979(昭和54)年、北海道生れ。立命館大学卒業。幼少期をザンビアで過ごす。
2008(平成20)年、小説すばる新人賞を受賞した『魚神(いおがみ)』でデビュ一。2009年、同作にて泉鏡花文学賞、2013年、『あとかた』で島清恋愛文学賞、2021(令和3)年、『透明な夜の香り』で渡辺淳一文学賞を受賞した。
『あとかた』と2014年の『男ともだち』はそれぞれ直木賞候補となる。


出版社より引用



感想(ネタバレあり)

この舞台となった石見銀山では、「銀山の女は三人の夫を持つ」と言う言葉がありますが、実際、ウメも生涯に3人の男を愛した人生でした。

その中でも、最初に愛した喜兵衛に対する想いはものすごく深いものであり、隼人が嫉妬するほどのものでしたが、それは男性として愛したのでしょうか?

父親代わりのような存在だったのかな、と思って読んでいたのですが、父親でも恋人でもない超越した存在だったのでしょうか。

 

ウメは初潮が来るまでは、男社会で生きていくことを望んでいましたが、それを理解してからの人生もまた過酷なものでした。

自分より先に夫も息子も死んでいってしまうことがわかっている生活なんて、辛くて仕方ないですよね…。

それでも誰もその生活から逃れようとはしないのでしょうか。

銀掘という職業や銀山への強い想いがそうさせるのでしょうか。

ウメと男たちのやり取りが印象的な物語ではありましたが、隼人をめぐる夕鶴とのちょっとした口喧嘩や、おくにやおとよなどの女たちとのやり取りも、また愛嬌があって好きでした。

ウメも隼人もモテていいなぁとか、龍とすぐ結ばれすぎじゃないの?とか、どうでもいい感想も持ってしまいましたが(笑)、最後は何とも余韻がすごくて、もっともっとウメやウメの周りの人たちの物語を読みたい気持ちになりました。

ウメはどのような最期を迎えたのでしょうか。



まとめ

千早茜さんの「しろがねの葉」についてまとめました。

直木賞受賞も納得の作品でした。

千早茜さんの他の作品を読んだことがないので、読んでみたくなりました!

最後までお読みいただき、ありがとうございました!





柚月裕子さんの「教誨」について詳しくまとめます!



この本を読んだきっかけ

柚月裕子さんの作品は今までにいくつか読んだことがあり、好きな作品が多いので、新刊が出たら絶対に読もうと決めていました。


こんな人にオススメ

・社会派ミステリーが好きな人

・重めのミステリーが好きな人

・「教誨」や「教誨師」について知りたい人

・柚月裕子さんのファンの人


「教誨」あらすじ

女性死刑囚の心に迫る本格的長編犯罪小説!
幼女二人を殺害した女性死刑囚が最期に遺した言葉――
「約束は守ったよ、褒めて」

 吉沢香純と母の静江は、遠縁の死刑囚三原響子から身柄引受人に指名され、刑の執行後に東京拘置所で遺骨と遺品を受け取った。
響子は十年前、我が子も含む女児二人を殺めたとされた。
香純は、響子の遺骨を三原家の墓におさめてもらうため、菩提寺がある青森県相野町を単身訪れる。
香純は、響子が最期に遺した言葉の真意を探るため、事件を知る関係者と面会を重ねてゆく。
 


出版社より引用

著書の柚月裕子さんは、この作品について、こう語っています。

「自分の作品のなかで、犯罪というものを一番掘り下げた作品です。
執筆中、辛くてなんども書けなくなりました。
こんなに苦しかった作品ははじめてです。
響子が交わした約束とはなんだったのか、香純と一緒に追いかけてください」


出版社より引用


「教誨」とは

教誨」や「教誨師」という言葉を、この作品を読んで初めて聞いた方もいるかもしれません。

「教誨」とは 、受刑者等が改善更生し、社会に復帰することを支援する仕事です。

「教誨師」とは教誨を行う者のことで、 無報酬で、多くの場合、僧侶や牧師など宗教家が、その役割を担います。

受刑者が死刑囚の場合、教誨師は、拘置所で死刑囚と面談できる唯一の民間人となります。

私が教誨師のことを知るきっかけになったのが、数年前に読んだ下記の本なのですが、実際の教誨師の方への取材をもとにしたノンフィクション作品です。

柚月裕子さんのこの作品の中でも、参考文献として記載されています。

半世紀にわたり、教誨師として生きた一人の僧侶の人生を通して、教誨師という仕事について書かれた作品です。

もし、柚月裕子さんのこの作品を読んで、教誨師についてもっと詳しく知りたいと思った方がいれば、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。



この本のテーマ

女性死刑囚の人生と遺した言葉の意味

遠縁の女性死刑囚である三原響子の身柄引受人に指名された吉沢香純は、響子が最期に遺した言葉―「約束は守ったよ、褒めて」という言葉の意味を探して、響子の人生を追うことになります。

香純は子供の頃に一度響子に会っただけなので、響子について、ほぼ何も知らないのです。

響子はなぜ我が子を含む女児二人を殺害したのか、また最期に遺した言葉の真意は何なのか、事件を知る関係者と面会を重ねていきます。

関係者と話していくうちに、響子の人生が見えてきて、最期の言葉の意味もわかってきます。

一体真実は何なのか、きっと気になって一気読みしてしまうことでしょう。

 

地方や田舎の閉塞感

地方や田舎の閉鎖的な環境について書かれた作品は、今までにもけっこう読んできましたが、この作品でも田舎特有の雰囲気がリアルに書かれています。

町の人みんなが同じ情報を共有していて連体感があると言えば聞こえはいいですが、一歩間違えるとみんなから弾き出されてしまうような環境は恐ろしいですよね。

田舎って今でもそういう閉鎖的な所が多いのでしょうか…。



印象に残ったフレーズ

印象に残ったフレーズを2つ紹介します!

「ケンカってのは味方がいないとできないんだ。独りで挑んでいっても、返り討ちにあっちまう」

p198 釜淵の言葉

味方がいないケンカは、もはやケンカじゃないですよね。

それはいじめというのではないでしょうか。

「誰もが目に見えるものだけで決めつけて、その裏にある事情なんて考えもしない。目に見えないものにこそ、大事なことが詰まっているのにさ」

p238 スナックコスモスのママの言葉

こういう事件のことに限らず、何事も表面だけ見て決めつけてしまいがちですが、いろんなことを想像しないといけないな、とはいつも思っています。


著者紹介

1968年岩手県生まれ。
2008年、『臨床真理』が第7回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞を受賞し デビュー。
2013年、『検事の本懐』が第15回大藪春彦賞を受賞。
2016年『孤狼の血』が第69回日本推理作家協会賞を受賞(長編及び連作短編集部門 )。第154回直木賞候補。
2018年、『盤上の向日葵』が本屋大賞第2位。
2022年、『ミカエルの鼓動』が第166回直木賞候補。


紀伊國屋書店サイトより引用


感想(ネタバレあり)

響子が交わした約束が何か、誰と交わした約束だったのか、それが気になって一気読みでした。

柚月さんの作品は読みやすいので、スラスラ読めてしまいます。

この作品は「秋田児童連続殺害事件」をモチーフにしていると思われ、事件の内容も受刑者の境遇や生い立ちなどもよく似ているので、どうしてもその事件と重ねて読んでしまいました…。

でも、この作品はフィクションなので、その事件の真相とは別なのだとは思います…。

 

最後に明らかになった響子が遺した言葉の意味ですが、ちょっとこれは肩透かし的な感じがしましたが…何にしてもとてもやるせない物語ですね。

どうにかならなかったのかな…って読んでる方は簡単に言えますけど、当事者はどうにもできないから、こんな哀しい事件が起こってしまったんですよね。

全てが悪い方向に向かってしまったような話で、本当にやるせない話でした。

 

この作品も言ってしまえば「毒親」ものに分類されるのでしょうか。

最近そんなテーマの作品を読みすぎているせいか、めちゃくちゃ心が動かされることはなかったのですが、これもやっぱり少し響子に同情してしまいそうになりますね。

決して殺人を犯した人の味方をするわけではないですが、やっぱり親の呪縛とか環境の影響っていうのは大きいですよね。

この物語も響子の母親の千枝子がもう少し響子のことを考えてあげてたら違ってたかな、とは思うんですが、千枝子も嫁として夫の健一に逆らえず、響子の味方についてあげられないような状況だったわけで、簡単な話ではないですね。

そこに、田舎特有の地主と小作人の結婚という事情も加わって、いろんな面でがんじがらめな状態です。

ただ、響子も千枝子も健一のことを怖がっていたにしても、千枝子が響子のことをもっと肯定して育ててあげてほしかったです。

響子が自分のことを否定してばかりになってしまい、愛理のことを育てる上でも、健一に叱られないように育てなきゃと考え、愛理がちゃんと躾ができてないのも全部自分のせいにしてしまうところが、気の毒でした。

それでも、響子は千枝子のことを全く責めない、というのも、毒親育ちあるあるだな、と思いました。

育児ノイローゼか鬱病か、精神的に普通の状態でなかった響子は、「あの子がいなかったら、あんたもこんなに苦しまなかったのかね。可哀そうだね」という千枝子の言葉を聞いて、どこか張り詰めていた糸がプツンと切れてしまったような感じだったのかもしれないですね…。

こんなこと親が子供に言ってしまったら絶対ダメでしょう。

「可哀そう」なんて親が子供に言っていい言葉じゃないですよ。

それから、厳しく育てるということと、否定して育てるということは全く別物だし、とにかく、子供のことは否定しないように肯定して育てたい、という気持ちがまた大きくなりました。

私も親に褒められた記憶がないんですよね。否定された記憶はけっこうあるんですけど…。

親以外に褒めてくれる存在が外の世界にあったからなんとかやってこれたかな、という想いはずっと私の中にもあります。

 

スナックのママさんがかなりまともな考えの持ち主だったので、響子がこのママのもとでもっと働けていたら、支えてくれるような存在だったのかもしれないな…と思いました。

このママさんの言葉、ずっしりとくる言葉が多かったです。

 

故郷に帰りたい、という想いは、こんなに嫌な思い出がある場合でも、そんなに強いものなんでしょうか?

そんな閉塞感のある場所で育って、いい思い出なんて全然ないのに、それでも故郷に帰りたいと願うものなんでしょうか…。

母と同じお墓に入りたいと思う気持ちは分からなくもないですが…。


 

また、「教誨」というタイトルから、もう少し教誨師とのやり取りなどが記述されているのかな?と想像していましたが、そんなになかったですね…。

もう少し響子と教誨師のやり取りの部分があってもよかったかな、とは思いました。

響子が教誨師とどのような会話を交わしたのか、もう少し知りたかったですね。

 

それにしても、昨年から毒親がテーマの作品を読みすぎているので、もうそろそろ卒業しようかな、と思うようになってきました(笑)

ただ、毒親とか親ガチャとかが社会問題になっているので、そういったテーマの作品が増えてるんでしょうね。

まだまだ出会ってしまいそうな気もしますが…。

毒親や親ガチャがテーマのものをもっと読みたい!という方は、これまでの記事をぜひ参考にして下さい。

「八月の母」「レッドクローバー」「イオカステの揺籃」「母性」「光のとこにいてね」など、たくさん書いていますので…。



まとめ

柚月裕子さんの「教誨」についてまとめました。

柚月裕子さんの文章は読みやすく、自然と引き込まれてしまいます。

今後出る作品も過去の作品も、たくさん読んでいきたいと思っています。
 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!




貫井徳郎さんの「紙の梟 ハーシュソサエティ 」
について詳しくまとめます!


この本を読んだきっかけ

貫井徳郎さんの作品は「慟哭」しか読んだことがなかったのですが、もっといろんな作品を読んでみたいと思う作家さんだったので、新刊を予約していました。


こんな人にオススメ

・社会派ミステリーが好きな人

・重めのミステリーが好きな人

・「死刑制度」について考えたい人

・貫井徳郎さんのファンの人


「紙の梟」あらすじ

ここは、人を一人殺したら死刑になる世界――。

私たちは厳しい社会(harsh society)に生きているのではないか?
そんな思いに駆られたことはないだろうか。
一度道を踏み外したら、二度と普通の生活を送ることができないのではないかという緊張感。
過剰なまでの「正しさ」を要求される社会。
人間の無意識を抑圧し、心の自由を奪う社会のいびつさを拡大し、白日の下にさらすのがこの小説である。

恐ろしくて歪んだ世界に五つの物語が私たちを導く。

被害者のデザイナーは目と指と舌を失っていた。彼はなぜこんな酷い目に遭ったのか?――「見ざる、書かざる、言わざる」

孤絶した山間の別荘で起こった殺人。しかし、論理的に考えると犯人はこの中にいないことになる――「籠の中の鳥たち」

頻発するいじめ。だが、ある日いじめの首謀者の中学生が殺害される。驚くべき犯人の動機は?――「レミングの群れ」

俺はあいつを許さない。姉を殺した犯人は死をもって裁かれるべきだからだ――「猫は忘れない」

ある日恋人が殺害されたことを知る。しかし、その恋人は存在しない人間だった――「紙の梟」

出版社より引用

この本のテーマ

「死刑制度」について

この作品は第1部に短編が4編第2部に中編が1編、という構成となっています。

5つの物語全てが「人ひとりを殺したら死刑になる世界の物語」となっていますが、どれも違う視点から「死刑制度」について書かれています。

殺さなくても目や舌、手などを使えない半殺し状態にした場合は死刑になるのか、意図せずに殺してしまった場合はどうなるのか、いじめの加害者はどうなるのか、など、それぞれのシチュエーションで、加害者は死刑になるべきなのかを問うています。

第1部は死刑制度に「賛成派」側の視点から、第2部は「反対派」側の視点から描かれている、と言えるかと思います。

この作品のような「人ひとりを殺したら死刑になる世界」に、現実的に日本がなることはないとは思いますが、「死刑制度」について改めて考えてみる機会にはなると思います。

 

「死刑」は抑止力があるのか

他の先進国では、死刑の抑止力は疑われていて、海外では、死刑の犯罪予防効果は科学的に証明できないと結論づけられているようです。

この作品は「人ひとりを殺したら死刑になる世界の物語」なので、実際の日本社会とは違いますが、死刑判決を簡単に出すことによって、死刑が抑止力を失った様子が書かれています。

実際の日本では、死刑は抑止力を持っているのでしょうか。

ちなみに、詳しく知らなかったので、世界の死刑制度の状況について調べてみました。

世界的には死刑の廃止が進んでおり、国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」によると、2021年現在、死刑廃止は108カ国。

10年以上執行がないなど、事実上の廃止を加えると144カ国に上る。

一方の死刑存続・執行国は日本や中国、北朝鮮、イランなど55カ国。先進38カ国が加盟する経済協力開発機構(OECD)の中では日本と米国だけ。

その米国でもバイデン大統領が死刑廃止を公約に掲げ、21年7月には連邦レベルでの死刑執行が一時停止された。

アムネスティによると、州レベルでも同年末時点で、50州のうち23州が死刑を廃止し、13州が過去10年間に死刑を執行していなかった。
 

日本では、19年の内閣府世論調査では「死刑もやむを得ない」が80.8%で「廃止すべきだ」の9%を大きく上回った。

というデータがありました。



印象に残ったフレーズ

印象に残ったフレーズを2つ紹介します!

「他人の意思を変えさせることは不可能だと考えた方がいい。まして性格は、変えられるはずがない。」

p166 明彦の祖父の言葉

そうですね、その通りだと思います。「他人と過去は変えられない」っていう言葉もありますしね。

他人を説得はできても、意思を変えさせることは難しいですし、そんな権利もないですね。


「今はほら、不倫したり失言したりすると、インターネットで袋叩きにされるんだろ。ああいうの、お前らになんの関係があるんだと思うんだよ。なんの権利があって、他人を責めるんだって。」

p332 ヤマさんの言葉

これも本当にその通りだな、と思いました。

つい、著名人や有名人だと批判してしまいがちですが、何の関係もない人のことをとやかく言っていいわけでもないですよね。


感想

「人ひとりを殺したら死刑になる世界」というのが、ちょっと極端な設定だとは思いましたが、日本では死刑賛成派が多いことを考えると、そんなに極端な設定でもないのかもしれない…と思いました。

5つの物語全て、異なった視点から「死刑」について書かれていて、著者の貫井さんの想像力と筆力にびっくりさせられました。

実際の社会では死刑にはならないだろうというケースの物語が多かったですが、書かれている内容はすごくリアルでした。

殺さないからって、見ることも話すことも書くこともできないような状態にまで痛めつけた場合は、殺人よりも刑が重くないのか、とか、いじめの加害者は殺人と同じくらいの罰を受けるべきなのか、とか…。

一人殺しても死刑なんだから、何人殺してもいいでしょ、的な考えも出てきたり…。

ネットやSNSによる影響みたいな内容も書かれていて、ネット社会の恐ろしさについても改めて考えさせられました。


 

どれも印象に残る物語でしたが、特に印象に残ったのは、「レミングの群れ」です。

ネタバレになるといけないので詳しくは書けませんが、とにかく恐ろしかったですね…。

一人の中学生がいじめにより自殺したことから始まる物語ですが、そんな恐ろしい展開になってしまうの…と衝撃的な内容でした。

他の方のレビューを見ていても、この「レミングの群れ」が恐ろしかったと言ってる方が、めちゃくちゃ多いですね。

「籠の中の鳥たち」も、なかなか衝撃的でした。犯人の考えがすごかったですね…。

そんな考え方ある?!とびっくりしました。

表題作の「紙の梟」は第一部の4編よりも救いがあるというか、過激さはなくて、優しさを感じる物語でした。

この「紙の梟」で作品が終わるので、読後感は悪くなかったですね。

5つの物語全て、個性があって、テーマも異なっていて、読み応えのある作品でした。

どんでん返しもあって、ミステリーとしても楽しめるのではないでしょうか。


 

「死刑」についていろんなコメントを見ていると、皆さん賛成か反対か、はっきりとした意見を持っている方が多いなぁと思います。

私は賛成か反対か決められないんですよね…。決めないといけないわけではないですが…。

この作品でも語られていますが、もし被害者側が死刑を求めなかった場合はどうなるのか、とか、冤罪の可能性は確実に無いのか、とか、考えないといけないですよね。

それに、被害者側になったことがないので、被害者の方々の気持ちは想像するしかできないですし…。

この作品の中でも、被害者側の人間が、犯人が死刑にされても虚しさしか残らなかった、と語る場面もありますし、死刑になっただけで満足なんてことは決してないんだろうな…とも思います。

「死刑」の代わりに「終身刑」が導入されれば「死刑廃止」に賛成する人もけっこういるらしいのですが、それはそれでまた考えないといけない問題もあるようです。


 

ちなみに、この作品を読んで、「被害者側の人間が、加害者に対して、被害者が受けた内容と同じことをやり返して、合法的に復讐できる「復讐法」という法律が生まれた」という架空の社会について書かれた、小林由香さんの『ジャッジメント』という作品を思い出しました。

『ジャッジメント』も『紙の梟」と同じく、人が人を裁くことの難しさを説く作品なので、興味を持たれた方は読んでみて下さい。

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著者紹介

1968年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。
2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。
他の著書に『壁の男』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』などがある。


出版社より引用


まとめ

貫井徳郎さんの「紙の梟 ハーシュソサエティ」について、まとめました。

「死刑制度」について、いろいろ考えさせられる作品でした。

貫井徳郎さんの今後の作品にも注目していきたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


こんにちは!

小川哲さんの「地図と拳」についてまとめます!
第168回直木賞を受賞しました!!
小川さん、おめでとうございます!!


この本を読んだきっかけ

直木賞の候補作に選ばれたということで、読まなきゃと思いました。

また、この時代の歴史に興味があるので、読みたいと思いました。


こんな人にオススメ

  • 戦争を題材とした小説が好きな人
  • 歴史小説が好きな人
  • 「地政学」「建築学」に興味がある人
  • 小川哲さんの作品が好きな人


「地図と拳」あらすじ

【第168回直木賞候補作】
【第13回山田風太郎賞受賞作】

「君は満洲という白紙の地図に、夢を書きこむ」
日本からの密偵に帯同し、通訳として満洲に渡った細川。ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ。
叔父にだまされ不毛の土地へと移住した孫悟空。地図に描かれた存在しない島を探し、海を渡った須野……。
奉天の東にある〈李家鎮〉へと呼び寄せられた男たち。「燃える土」をめぐり、殺戮の半世紀を生きる。

ひとつの都市が現われ、そして消えた。
日露戦争前夜から第2次大戦までの半世紀、満洲の名もない都市で繰り広げられる知略と殺戮。
日本SF界の新星が放つ、歴史×空想小説。

出版社より引用


この本の特徴やテーマ

日露戦争〜第二次世界大戦時の満州の様子がわかる

この作品は、日露戦争前夜〜第二次世界大戦の頃の満州が舞台となった、歴史×SF小説です。

満州の李家鎮という架空の村が舞台となっていますが、史実に基づいて書かれている部分も多いので、その頃の満州の様子が伝わってくるようです。

日本にとって、満州がどのような土地であったか、どんな役割を担っていたか、どのような過程で満州国建国に至ったのか、架空の登場人物を通じて描かれています。


「地図」と「拳」とは何を意味するか

この本のタイトル、「地図と拳」の「地図」と「拳」とは何を意味するのか。

簡単に言ってしまうと、「地図」=「国家」を、「拳」=「戦争」を意味しています。

なぜ「拳」=「戦争」はなくならないのか。

その答えは「地図」にあると、ある登場人物は言います。

詳しく述べてしまうと面白くないので、どういう意味なのかは、読んで確かめてください!

また、「地図」がどのようにしてできたのか、「地図」が持つ役割とは何かなど、地図について様々なことを知ることができます

昔の人が地図をどう作ってきたのか、地図の作成をめぐる逸話などもたくさん出てきます。

「地図」についてこんなにいろいろと考えたことも知ることもなかったので、とても興味深かったです。


登場人物のキャラが濃い!

一部、歴史の出来事を説明する部分に、実在した人物の名前が出てきますが、それ以外は架空の人物の物語となっています。

主な登場人物の何人かの視点で話は展開していきますが、その人物たちはみな個性的でキャラが濃いです。

主人公も何人かいて、いろんな人物の視点で語られるので、「あれ、これ誰だっけ?」とならないようなキャラ作りがされてるのかな、と思いました。

孫悟空と名乗る人物の修行の場面などは、漫画を読んでいるような感じがして、とても面白かったです。

「万能計測器」と呼ばれる明男という人物も主人公の一人ですが、なかなかキャラが濃いです。


感想

まず、なぜこの作品を読もうと思ったかというと、直木賞候補に選ばれたのはもちろんですが、この時代の歴史が学生時代から好きだったんですよね。

歴史好きな人って、戦国時代とか武士の時代が好きだったり、平安時代が好きだったりすると思うのですが、私はそういう時代にはあんまり興味がなくて。

たぶん現実主義なところがあるので、昔の話は想像する部分が多すぎて興味がわかないんですよね。

1900年代からのことって、ちゃんと事実が記録として残ってることが大半だと思うので、想像しやすいですよね。

それから、どうして日本が戦争をすることになったのか、どうして世界全体で戦争なんてしてたのか、そういうことも知りたいです。

今からそんなに昔じゃない時代に、日本が戦争をしてたなんて、なんか信じられないなぁと思ってて。

今でも、海の向こうでは戦争が起こってるし、日本も戦争の影響を引きずってるところも多々ありますが…。


 

それから、浅田次郎さんの「蒼穹の昴」シリーズが大好きなんですが、それと似た感じの作品なのかな?という興味もあって、読んでみたというのもあります。

「蒼穹の昴」は実在した人物について、浅田さんの解釈で物語を書いているのに対して(架空の人物も出てきます)、この作品は実在の人物はほぼ出てこないので、似ているようで似てないのですが、どちらも史実を基にしている点では共通しています。

参考文献の多さから、かなり研究されて書かれたことがわかります。

参考文献だけで、8ページあるんですよ!すごくないですか?

本の厚さにもびっくりしましたが、それにもめちゃくちゃびっくりしました。

この作品は歴史SF小説なので、あえて実在の都市や事件を、名前を変えて登場させているようですね。

 

とにかくこの時代に興味があるので、この作品もよかったですね〜好きですね〜。

「蒼穹の昴」シリーズもまた読み返したくなりました。

それから、第二次世界大戦中のことを書いているという点で「同志少女よ、敵を撃て」も読みたくなりました。

主人が買って読んでいたのですが、私はまだ読んでいなくて…。

 

この作品、「このミステリーがすごい!2023年版」で第9位に入っているらしいのですが、ミステリーかな?という疑問がありますね…。

ロシア人が作ったとされる地図に書き込まれた「青龍島」という小さな島が実在するのか?という謎を追うというテーマはあるのですが、その謎が解けたところで、ミステリー的解決ではないのでね…。

ミステリーを期待して読むのはちょっと…と思います。

 

この作品、とにかく勉強になることが多かったですね。

歴史についてはもちろん、地政学や建築学、気象学、人類学、言葉の語源、言葉の意味、とにかく多方面の知識が詰め込まれています。

ちょっとした哲学書みたいな印象もありましたね。

「土」の使い道もこの作品のテーマの一つだと思うのですが、なかなか深かったです。

「人体の設計」についての記述も面白かったですね〜。人体はめちゃくちゃ非効率な構造をしているらしいです。

その非効率な構造をしているからこそ、「服」と「家」ができたとか、面白いですよね〜。

 

戦争については、どうこう言えるほどの知識もないし、考えがあるわけではないので、大したことは言えないのですが、この作品にはいろんな考えを持つ人物が登場するので、どれか一つの考えに傾かないように、すごく俯瞰的に戦争を視ていると感じました。

軍国主義に傾いていった人も、戦争に負けると予想して何をすべきか考えた人も、何が正しいか分からなくなってしまった人も…。

著者の小川さんもインタビューで、フラットな視点で書いたようなことをおっしゃっていますね。

小川さんの視点は、細川の視点に近いようですが。

細川というのは、この物語で最初から最後まで登場する一番の主人公と言ってもいい人物ですが、「戦争構造学」という学問を通して、日本が負けることを見通していた人物です。

私たちが読むと、戦争に負けることはわかっているので、細川の視点に近くなるのは当然かもしれないですね。

戦時中にも細川のように日本が負ける未来を見通していた人はいたのかな。

細川が立ち上げた「戦争構造学研究所」のような機関が実際にあったようなので、もしかしたら日本の将来を見通していた人もいたのかもしれないですね。

 

一番印象に残ったのは、細川が「地図と拳」という講演をした場面です。

この作品のタイトルにもなっているので、当然インパクトのある場面にはなっていると思うのですが、ちょっと感動してしまいました。

「地図と拳」の両面から日本の未来を考えた細川ですが、いくら考えても軍人の心には響かないし、戦場では無意味だと悟ることになります。

もしこの時代に生きていたら、軍国主義に傾いていくことも仕方なかったのかもしれないとか、この物語の登場人物を通して考えてしまいました。

海の向こうで戦争が起こっている今、この作品を読んで、いろいろ考えるべきかもしれません。

小川哲さんの「君のクイズ」という作品も読んだのですが、これがまためちゃくちゃ面白かったので、小川さんにも注目していきたいと思っています。


著者紹介

 

1986年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。
2015年に『ユートロニカのこちら側』で第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉を受賞しデビュー。
『ゲームの王国』(2017年)が第38回日本SF大賞、第31回山本周五郎賞を受賞。
『嘘と正典』(2019年)で第162回直木三十五賞候補となる。


出版社より引用


まとめ

小川哲さんの「地図と拳」についてまとめました。

戦争小説や歴史小説が苦手な人にはオススメできませんが、興味のある人にとってはとても面白い作品だと思います。

直木賞受賞なるか、注目です!

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

こんにちは!

皆さん、お待たせしました!
私が2022年に読んだ中で、特に好きな本を発表したいと思います!!


読んだ本の数

2022年に読んだ本の数は、163冊でした!!

本格的に読書を始めたのが、4月頃だったので、約9ヶ月間で読んだ本の数になります。

9月の途中からこのブログを始めて、そこからは読書のペースも落ち着きましたが、5〜8月頃は1日に1冊ペースで読んでいました。

世の読書家と呼ばれる人と比べるとまだまだですが、人生でこんなに本をたくさん読んだことはなかったので、自分なりには大満足です!

素敵な作品たちとたくさん出会えて、めちゃくちゃ楽しかったです!


ベストブック1位以外の発表!!

それでは、いよいよベストブックの発表をしていきたいと思います!

この中には、2022年に発売された本以外のものも含みますので、ご了承ください。

順位を決めるのはものすごーく難しいので、やめることにしました…。

1位だけ決めたので、最後に発表します!

それでは、読んだ日付の古い順から、発表していきます。


「火の粉」雫井脩介

雫井脩介さんの本で初めて読んだ本です。

この本は、とにかく怖かったですね〜。思い出しただけでも、まだ怖さが蘇ってきます…。

ホラーじゃないんですよ?なのに、めちゃくちゃ怖い、という。

ヒタヒタ襲ってくる怖さがスリル満点で、面白かったですねー。

嫁姑問題とか子育てのあれこれも共感できるところがありました。

この作品を機に、雫井脩介さんの本を読むようになりました。


「幻夏」太田愛

これは、最初Audibleのお試しで聴いてたんですけど、もう先が気になって気になって、図書館で本を借りてきてしまったという面白さでした。

太田愛さんのこのシリーズがかなり面白いという評判は知ってたのですが、この「幻夏」の前の「犯罪者」もとにかく面白くて。

「幻夏」はどうかなーって期待して読み始めたら、期待以上でしたね。

シリーズは「犯罪者」「幻夏」「天上の葦」と3作品ありますが、個人的にこの「幻夏」が1番好きです。

哀愁漂う感じが、たまらないです。表紙も切ない感じが出てますよね。

話の内容は、ただただ哀しくて切なくてやるせないです…。

読み終えて、しばらく涙が止まらなかったです。


「イノセント・デイズ」早見和真

これはなかなか最後が衝撃的で、かなり印象に残った作品です。

読み終えて、呆然としてしまった記憶があります。

こうなるだろうなーと予想した終わり方と違う終わり方だったからでしょうか。

これも「幻夏」と同じく、哀しくて切なくてやるせない物語でした。

辻村深月さんの解説がまたよかったです。


「看守の信念」城山真一

前作の「看守の流儀」がすごく面白かったので、続編は絶対読むと決めていました。

前作の最後がかなりの衝撃的な展開でめちゃくちゃ面白かったんですが、それを上回る衝撃はないだろうなと思っていたところ、またまたかなりの衝撃でした!

読み終わって「え!?」って思わず声が出ましたよ。

刑務所が舞台となっているミステリーというのも珍しいですよね。

短編集ですが感動する話もあって、大好きですねー。

横山秀夫さんが前作を絶賛していたらしいのですが、横山秀夫さんっぽさがある気がします。


「ガラスの海を渡る舟」寺地はるな

寺地はるなさん、初めて読みましたが、この作品が気に入って、それから何冊か読んでいます。

この作品はガラス工房を営むことになった兄妹の話ですが、とにかくお兄ちゃんが最高でした。

いわゆる発達障害気味なお兄ちゃんなんですが、彼の発する言葉が本当に素晴らしくて、グサグサ刺さってきました。

分かり合える家族や兄弟が近くにいることの心強さや素晴らしさを教えてくれる作品でした。


「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」町田そのこ

この本も心が揺さぶられましたね。痺れました…。

連作短編集ですが、どの章も素晴らしくて、最初から最後までかなり引き込まれました。

タイトルからしてファンタジーっぽい作品なのかなと思ったら全然違って、かなり重くていろんなテーマが詰め込まれた作品でした。

町田そのこさんの作品は初めて読みましたが、筆力がすごいというか、密度が濃いというか、頭の中で物語が鮮明に映像化されるような感覚になりました。

町田さんの本、もっとたくさん読みたいんですが、図書館の予約がどれもすごい待ち人数なんですよね。

今大注目されてる作家さんの一人ですよね。


「お探し物は図書室まで」青山美智子

この作品も私にとってはとってもとっても大切な作品です。

心に沁みる言葉がたくさん出てきて、前向きに生きていこうという気持ちにさせてくれる作品です。

この本を読んで、読書ブログを始めてみようという気持ちになったんですよね。

何か小さなことからでも、自分の好きなことや興味のあることを始めようかな、と思ったんです。

ブログを始めたことは、個人的に2022年のビッグニュースなので、この本には感謝の気持ちでいっぱいです!


「正欲」朝井リョウ

2022年は個人的に「多様性」がテーマの作品を多く読んだ気がするのですが、その中でもこの作品はガツンとくるものがありました。

いや、ガツンだけじゃ足りないな。ドカンときましたね。

簡単に感想が書けないというか、簡単に書いちゃいけないというか、とにかく考えさせられる作品でした。

自分の視野の狭さにも気付きました。

「多様性」という言葉、簡単に使ったらダメだなとか、この言葉に救われてる人と苦しめられてる人、どっちが多いのかなとか、いろいろ考えました。

朝井リョウさんはエッセイもめちゃくちゃ面白いらしいし、たくさん気になる作品があります。

「正欲」についての記事もよろしければご覧ください↓

https://www.mushikoblog.com/seiyoku/


「罪の境界」薬丸岳

薬丸岳さんは個人的に大好きな作家さんで、かなりの作品を読んできたので、新刊も予約して購入しました。

薬丸さん好きだから、贔屓目になってるかもしれないけど、安定の素晴らしさでした。

「罪の境界」というタイトルが好きです。そしてそのタイトルの持つ言葉の意味がまた重いですね。

薬丸さんのインタビューなどを見たり読んだりしますが、作品に薬丸さんの人柄が出てるというか、重いテーマであるのに、優しさが滲み出ているようなところが好きです。

この作品も重かったですが、読後はどんよりしなかったです。

社会派ミステリーを書く作家さんでは、今のところ、1番好きな作家さんです。

「罪の境界」についての記事もよろしければご覧ください↓

https://www.mushikoblog.com/tsumino-kyokai/



さあ、いよいよ1位の発表!!

いよいよ1位の発表です!!
ドキドキしますね〜(笑)

2022年に読んだ本の中で、1番よかった作品は…


八月の母」早見和真さんでした!!


1位は比較的決めるのが簡単でした。

163冊読んだ中で、とにかく1番印象に残りました

そして、たぶん人生で1番泣いた本でもあります。

それから、読み終わってすぐにまた読み返そうと思った本でもあります。

めったにすぐ読み返そうとなんて思わないんですけどね。

そして、本の内容についてもいろいろ考えました。

ただ、これは、誰にでも当てはまるわけではないと思うので、めちゃくちゃオススメできるかというと、そういうわけではありません。

実際の事件をもとにしてるので、とにかく重いし辛い話なので、合わない人もいるかもしれません。

「毒親」がテーマの作品ですが、私もあまり親と良い関係とは言えないので、かなりいろいろ考えさせられました。

そして、親との関係についての考えも自分なりに少しまとまった気がします。

このブログでも記事を書きましたので、よろしければお読みください。

https://www.mushikoblog.com/the-mother-of-august/

「イノセント・デイズ」もベスト10に入ってるので、早見和真さんが2作品ランクインしたことになります。

早見さんの文章、読みやすいんですけど、濃いというか、訴えかけてくるものがすごいというか、何て言うんでしょうね…。

とにかく引き込まれるんですよね。

まだ読んだことないんですが、「店長がバカすぎて」とかは笑える作品らしいですよね。

その振れ幅がすごいという噂なので、今年は早見さんの明るい系の作品も読もうと思っています!



2022年 まとめ

むし子の2022年ベストブック、いかがでしたでしょうか?

かなり個人的なベストブックなので、あまり参考にならないかもしれませんが、少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。

「多様性」と「毒親」がテーマの作品を多く読みました。

世間的にもこの2つのテーマはよく取り上げられているので、そのテーマについての作品も増えているのかもしれないですね。


このベストブック以外にもたくさん好きな作品に出会えたし、もっと読みたいと思った作家さんもたくさんいます。

今年はどれくらい読めるか楽しみです!

2023年も当ブログをよろしくお願いします!!


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