本のむし子

40代主婦の読書日記ブログです。読んだ本の感想などを気ままに書いていきます。

2022年12月


映画が話題になっている湊かなえさんの
母性」について詳しくまとめます!


この本を読んだきっかけ

映画が上映されていて観てみたいと思ったのですが、とりあえず原作を先に読みたい派なので、読むことにしました。

こんな人にオススメ

  • 「母性」とは何か、気になる人
  • 「毒親」「毒母」などのテーマに興味がある人
  • 母親との関係に何か引っかかりがある人
  • 湊かなえさんのファンの人

「母性」あらすじ


女子高生が自宅の中庭で倒れているのが発見された。母親は言葉を詰まらせる。「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて」。世間は騒ぐ。これは事故か、自殺か。……遡ること十一年前の台風の日、彼女たちを包んだ幸福は、突如奪い去られていた。母の手記と娘の回想が交錯し、浮かび上がる真相。これは事故か、それとも――。圧倒的に新しい、「母と娘」を巡る物語(ミステリー)。

出版社より引用

この本の特徴やテーマ

「母性」とは

この本では「母性」について、

母性など本来は存在せず、女を家庭に縛り付けるために、男が勝手に作り出し、神聖化させたまやかしの性質を表わす言葉にすぎないのではないか。

そのため、社会の中で生きていくに当たり、体裁を取り繕おうとする人間は母性を意識して身につけようとし、取り繕おうとしない人間はそんな言葉の存在すら無視をする。

p52より引用

と書いてあります。

体裁を取り繕おうとするために母性を身につける、というのは少し言い過ぎかもしれませんが、生まれつき備わってるものとは言えないかもしれないですよね。

子供を産んでから母性がわいてくる人もいるし、子育てをする中で徐々に芽生える人もいるだろうし、人それぞれなのではないかと思いますね。

ただ、ルミ子の清佳に対する態度や考え方には、私はあまり母性は感じられませんでした。

以前に読んだ早見和真さんの「八月の母」でもそんなことが描かれていたなぁ、と思い出しました。

こちらも「母性」とは何かという問いについて触れた作品なので、よろしければ…。

母と娘、それぞれの想い

この本は、「母の手記」と「娘の回想」が交互に語られて進んで行きます。

同じことについて書いてるのに、母であるルミ子と娘の清佳とでは、全く異なる見方や捉え方をされているのです。

ルリ子は「愛能う限り、娘のことを大切に育ててきた」と語っていますが、清佳は母から愛されていない、と感じています。

人によって感じ方や捉え方が違うということは、どんな人間関係でも起こり得ることですが、それが親子となると、より一層深い溝となってしまうのではないでしょうか。

言葉に出さなくても相手はわかってくれるだろう、と考えがちですが、親子であっても言葉で伝えあうことはやはり大切なことなのだと思います。

印象に残ったフレーズ


愛されるためには、正しいことをしなければならない。喜ばれることをしなければならない。あなたがそこにいるだけでいい。そんな言葉はわたしの人生には登場しなかったのだから…。

p39 清佳の言葉

いわゆる「無償の愛」のことですね。子供が親から欲しいのは無償の愛ですよね。

子供の存在自体を認めて受け入れることが大切です。


食事はきちんと与えられていた。毎晩、風呂に入り、やわらかく温かい布団で寝ていた。給食費を期日に出せなかったこともない。(中略)これが親の愛だというのなら、わたしは満たされる方に分類される。しかし、中谷亨は、そういうのは愛とは呼ばない、とわたしに言った。体裁を整えているだけだ、と。

p114 清佳の言葉

清佳の彼氏である享の言葉ですが、スパッと言い切ってくれて、気持ちがいいですね。

親が衣食住を子供に提供するのなんて当たり前ですもんね。

体裁を整えるだけの親にならないように気を付けたいです。


母性を持ち合わせているにもかかわらず、誰かの娘でいたい、庇護される立場でありたい、と強く願うことにより、無意識のうちに内なる母性を排除してしまう女性もいるんです

p216 清佳の言葉

ルミ子がまさにそういうタイプです。母への想いが強すぎて、全然親離れできていないです。

親離れ子離れって大事なことですが、案外できてない人が多いのかも…。


感想(ネタバレあり)

うーん、これはまた感想が難しいですね(っていつも言ってますね笑)。

最近いわゆる「毒母」関連の作品をけっこう読んできたせいか、読み終わった直後は、この本はあまり響かなかったなぁーと思ったんです。

今まで読んできたものと比べて、そんなに強烈ではなかったので。

でも、気付けばこの本のことばかり考えていて、実はけっこう響いてたのかも?と思って、感想を書くことにしました。

母の立場になって読むか、娘の立場になって読むかで、けっこう感想が変わりそうです。

私は娘でもあり、娘を持つ母でもありますが、終始娘の清佳に感情移入して読みましたね。

母のルミ子には全く共感できなかったです。

私自身、あまり母といい関係ではないから、ルミ子が彼女の母に持つ異常なまでの愛を理解できなかったのかもしれませんが…。


よく友達親子みたいに仲の良い母娘っているみたいですが、ルミ子と母のような関係なのでしょうか?

自分が子供産んでからも「ママ大好き、ママに何日も会えないとか考えられない」って言ってる女性の話を聞いたことがありますが、そういう感じなのでしょうか。

そういう母娘関係の人って、自分が娘を持った時に娘ともいい関係を築けそうでいいな、と羨ましく思っていたのですが、この本を読んで、実はそんなこともないのかも?と思いました。

母親と仲良しの娘でも、いろいろ抱えていることがあるのかもしれないんですね。

自分が娘のままでいる限り、母にはなり切れないのかもしれないですね。


 

それにしてもルミ子は少し極端過ぎるのではないか、とは思います。

子供を産むのも「母親が喜んでくれるから」という考えなのが、もう全然理解できないし、何をするにも母親が喜んでくれるように、という前提なのが、ちょっと気味悪かったです。

そりゃあ母親に褒めてもらいたい、喜んでもらいたい、と思う気持ちは、どの子にでもあると思いますよ。

でも、母親のために子供を産むとか、自分の子を育てる時にも、母が喜んでくれるように育てるとか、そんな風に考えるのでしょうか?

田所の実家で褒められた時も、「母から受け継いだものを認めてくれた」と感じて喜んでるんですよね。

「自分」というものが、ルミ子にはないのだろうか?と思いました。

やたら自意識過剰なところがあるので、肯定されて生きてきたのはわかりますが。

「母親に愛されている自分」しかないんですよね。

そういう意味では、ルミ子の母親も歪んだ愛情でルミ子を育てたのかな、と感じました。

たぶん、親の思うようにしていれば褒められる、という条件付きの愛情だったのではないでしょうか。

親の思う子供になるように、ルミ子は育てられたのかもしれません。

そもそも結婚相手も親が後押ししたからという理由で決めたし、ルリ子は反発できずにいたのか、そもそも反発するということすらも感じないように育てられたのか…。

「母が望むような子になろうと努力していたのに、どうして、娘は私の気持ちを汲み取ろうとしないのだろう」という文章がルミ子の手記にあるので、きっとそうなんでしょう。


 

清佳はただ母から愛されたかっただけでしょうね。

その気持ちは痛いほど伝わってきました。

することなすこと母には伝わらず、空回りになってしまうわけですが…、母ならもう少し娘の気持ちを汲み取ってあげてほしかった。

私自身がルミ子だったら汲み取れるのかって考えてしまいましたが、たぶんルミ子ほどひどくはないと思いますね…。

少なくとも自分の思うように娘を育てようとは思わないし、娘に自分の気持ちを汲み取ってもらおうとは思わずに、ちゃんと言葉で伝えようとするとは思います。


 

それから、何であまり響かなかったと感じたのか、って考えたんですが、終わり方が納得いかなかったせいもあると思うんです。

清佳が自殺してからかなりの年月が経っているのはわかるんですが、そんなにうまくいかないでしょ…と。

私が清佳なら、母のことも父のことも許せないだろうし、りっちゃんのお店になんか行かないだろうし、ましてや父が不倫してた家になんか住まないだろうし。

そういえば、この父親も最低ですね。

生い立ちに事情があるとはいえ、感想にするほどでもないくらい、最低です。

見て見ぬフリをして、不倫してるとか、もう意味わからないです。

そんな父親、母親が許したからと言って、許せないですよね。

話を戻しますが、長い年月の間に、ルミ子と清佳の間にどういう時間が流れたのかわかりませんが、そう簡単に母と娘の関係って修復できるもんでしょうか。

清佳がルミ子のことを許したのかな。

ただ、清佳が出産したら、またどうなるか…が問題になってくると思いますね。

自分が求めたものを我が子に捧げたいという想いを持って物語は終わりますが、そこからがいろいろ大変だと思います。

子供を育てる中で、きっとルミ子への想いがたくさん湧き上がってくると思います。

私もこんな風に愛されたかったとか、私もこうしてほしかったとか…恨めしく思う気持ちが出てくるのではないかと。

毒親に育てられた人はそういう悩みを抱えてる人、多いですからね。

清佳がそこを乗り越えられるか、この家族の物語はまたそこから始まると思います。

最後がハッピーエンドっぽいのが救いだという感想もけっこう見たので、私が拗らせ過ぎてるのかもしれません…。


 

それからなんと言ってもこの本で1番印象に残った言葉「愛能う限り」という言葉、皆さん知ってましたか?(笑)

私は聞いたことも使ったこともなかったですが、この本の影響で気味の悪い言葉にしか思えなくなってしまいました…。

強烈なインパクトを持つ言葉でした。


著者紹介

1973(昭和48)年、広島県生まれ。2007(平成19)年、「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。翌年、同作を収録する『告白』が「週刊文春ミステリーベスト10」で国内部門第1位に選出され、2009年には本屋大賞を受賞した。2012年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門、2016年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。2018年『贖罪』がエドガー賞候補となる。他の著書に『少女』『Nのために』『夜行観覧車』『母性』『望郷』『高校入試』『豆の上で眠る』『山女日記』『物語のおわり』『絶唱』『リバース』『ポイズンドーター・ホーリーマザー』『未来』『ブロードキャスト』、エッセイ集『山猫珈琲』などがある。


出版社より引用

たくさん気になる作品があります。


まとめ

「母性」についてや、母娘関係について、いろいろと考えさせる作品でした。

この作品がどう映像化されているのか、映画の方もすごく気になるのですが、観に行く時間もないので、いつか観る機会ができればいいなと思います。



薬丸岳さんの
刑事弁護人」について詳しくまとめます!


この本を読んだきっかけ

数年前に「天使のナイフ」を読んで以来、薬丸岳さんのファンなので、こちらも絶対読みたいと思っていました。

購入したいのですが、2000円超えなので、すみません…図書館で回ってくるの待ってました…。


こんな人にオススメ

  • 法廷ミステリーが好きな人
  • 弁護士の仕事に興味がある人
  • 社会派ミステリーが好きな人
  • 薬丸岳さんのファンの人

「刑事弁護人」あらすじ

新潮社の紹介内容はこちら

現役女刑事による残忍な殺人事件が発生。弁護士・持月凜子は同じ事務所の西と弁護にあたるが、加害者に虚偽の供述をされた挙げ句、弁護士解任を通告されてしまう。事件の背後に潜むのは、幼児への性的虐待、残忍な誘拐殺人事件、そして息子を亡くした母親の復讐心? 気鋭のミステリ作家が挑んだ現代版「罪と罰」

出版社より引用


amazon
の紹介内容はこちら

ホストを殺した女刑事。
無実を信じて奔走する若き弁護士・持月凛子。
しかし、その証言は全て嘘だった――。

凶悪事件の犯人に、果たして弁護士は必要なのか――
気鋭のミステリー作家が「弁護士の使命と苦悩」を描き切る!
構想17年。徹底的な取材の元に炙り出す、日本の司法制度の問題とは......?

あらすじ
ある事情から刑事弁護に使命感を抱く持月凛子が当番弁護士に指名されたのは、埼玉県警の現役女性警察官・垂水涼香が起こしたホスト殺人事件。凛子は同じ事務所の西と弁護にあたるが、加害者に虚偽の供述をされた挙げ句の果て、弁護士解任を通告されてしまう。一方、西は事件の真相に辿りつつあった。
そして最後に現れた究極の存在とは……。

amazonより引用

出版社のコメント

著者の薬丸岳さんは、
「デビュー作を執筆した頃から弁護士という仕事に興味があり、いつか刑事弁護人を主人公にした小説を執筆したいと考えていました。
ただ、書くためにはかなりの知識と特筆すべきアイディアが必要です。
長い年月をかけて考える中で、『元刑事の弁護士』という設定に辿りついたとき、これなら書けると手ごたえを感じました。
何より、今までにないリーガルミステリーを書きたかったんです」 と語っています。

有罪率99.9%の刑事事件に挑む若き女弁護士は真実に辿り着けるのでしょうか――。
薬丸作品の到達点にして、新たな代表作となる一冊です。 

出版社より引用


構想17年
の作品ということで、
薬丸さんのこの作品にかける想いが強いことがわかりますね!

「刑事弁護人」とは

刑事弁護人」とは、刑事手続において被疑者や被告人を支援し、保護し、代理人となる役割の人のことです。

弁護人」と「弁護士」も意味が違うんですよ。

弁護人」とは、刑事事件において被疑者や被告人の弁護(防御活動)をする人のことなので、弁護人は刑事事件でしか登場しません。

民事事件の代理人や破産申立などの代理人となった弁護士のことは「弁護人」とは呼びません

起訴前に被疑者を守ったり、刑事事件で被告人を弁護したりする人が「弁護人」であり、「刑事弁護人」と呼ばれることもあります。

この本の特徴やテーマ

「刑事弁護人」の葛藤や使命感

主人公の凜子の父は、刑事事件ばかりを扱う、いわゆる人権派の弁護士でした。

そんな父に「世間で極悪人とされる人間を擁護することにためらいはないのか」と、凛子は訊いたことがあり、父の信念や使命感を聞かされてきました。

何のために弁護士がいるのか、弁護士がどういうことを思っているのかなど、この作品を読んで考えさせられました。

この物語の中でも、凛子と西が弁護士になった理由などが物語の途中で明らかになり、2人の刑事弁護人としての姿勢や信念も理解することができました。

実際の弁護士さんたちも、様々な理由で弁護士になった方がいて、いろいろな葛藤や苦悩があるのかな…と感じました。

加害者を弁護するということの重圧は、とても想像できません…。


2人の弁護士コンビがいい!

持月凜子は被疑者や被告人の言うことを信じるのが弁護人の務めだと思っているのに対し、西は「人は嘘をつく生き物だ」と思っており、被疑者や被告人にも「真実のみを話してください」と面と向かって言うほど、真実を追求することにこだわります。

凜子は西のそんな態度にデリカシーが欠けていると感じるが、西の真実を追求する姿勢に次第に影響を受けていきます。

凜子はこの事件が初めての刑事弁護なので、先輩である西から学ぶことも多いのですね。

最初は西がもっと偏屈でキャラが濃い人なのかと思ったので、読み終わって少し物足りなく感じましたが(笑)、このコンビがなかなかよかったので、続編も期待したいです!


心に残ったフレーズ


「真実を解き明かさなければ、その者にとって正しい判決は下されない。そして真実を隠したままでは本当の意味での贖罪や更生は望めない。」

p315 細川の言葉

弁護事務所の責任者である細川が西の考えを代弁する場面です。

被疑者や被告人が真実を隠していたら、弁護人とは信頼関係が築けないのは当然なのでしょう。


「何事も隠さずにこの場で真実を話すことこそが、あなたがその人たちにしなければならない最初の償いではないかと、私は思います。その人たちをさらに不幸にしないために…」

p456 凜子の言葉

裁判の場面では何より真実を話すことが大事だということが、この物語では何度も繰り返し述べられています。


「被疑者や被告人には弁護人以外に誰も味方はいない、と。罪を犯すまでに追い詰められた人のほとんどは、信頼を寄せられる家族や知人はいない。彼ら彼女らの話を聞いてあげられるのは弁護人しかいないのだと」

p496 凜子の言葉

凛子の父親が言った言葉です。弁護人としての覚悟が伝わってくる言葉ですね。

弁護人が必死に耳を傾ければ、罪を犯してしまった人も自分の罪に向き合おうとするのかもしれません。


感想(ネタバレなし)

元々薬丸さんのファンなので、贔屓目もあるかもしれませんが、この作品もよかったですね〜。

話の展開にすごく起伏があるわけでもなく、派手などんでん返しがあるわけもないのに、500ページ以上読むのが全く退屈ではなく読めました。

最初から一気に引き込まれて、あっという間に読めてしまいました。

終盤の裁判の場面なんかは、もう圧巻でしたね。ページをめくる手が止まらない止まらない(笑)

重いテーマなので読みにくいのかな?と思いがちですが、薬丸さんの作品はとても読みやすいです。

あまり馴染みのない用語などの説明もきちんとされており、裁判になるまでの手続きについてや、裁判員制度についても描かれており、裁判についての理解を深めることができました。

500ページは長い…というような感想もチラホラ見受けられましたが、登場人物を深く描いて、裁判の過程も丁寧に描いて、となると、これくらいの長さになるのも納得かな、と私は思いました。

西の過去などはもっと深く知りたいな、と思ったくらいです。

そして、刑事が起こした殺人事件の真相を追う中で、様々な背景が絡んでいることもわかるのですが、いろいろなテーマを盛り込んでも、くどくなくスマートに描き切っているのは、さすが薬丸さんだなと感じました。

ミステリーとしても読み応えはもちろん充分でしたが、裁判を通した人間ドラマとしてもかなり楽しむことができました。

薬丸岳さんの作品が好きな方はもちろんですが、リーガルミステリーが好きな人にも自信を持っておすすめしたいです!


著者紹介

1969年兵庫県明石市生まれ。駒澤大学高等学校卒業。2005年、『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞してデビュー。2016年『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を、2017年「黄昏」で第70回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。連続ドラマ化された刑事・夏目信人シリーズ、『友罪』『ガーディアン』『告解』など多数の作品を意欲的に発表している。


出版社より引用


感想(ネタバレあり)

ここからはネタバレありの感想を書いていきますので、まだ読んでいない方は注意してください!!

 
 
 
 

涼香の判決について、少し軽いのかな…という印象もあり、他の方のレビューを見ていてもそう書いている人が多いですが、弁護士さんが監修されているので、妥当な刑なのでしょうか。

涼香が最後まで隠そうとしていた加納の母親についてのことは、正直そんなこと隠そうとしなくても…と思ってしまいました。

葉山のことを思う気持ちについては理解できますが…。

だって、加納は、自分の子供に乱暴したかもしれないし、たくさんの幼児に性虐待していたんですよ。

その加納の母親のことなんて、普通かばおうとしますか?

私だったらとにかく加納が許せないですね。

最初から加納の音楽プレーヤーを調べて、真相を調べておけばよかったのに…と思います。

涼香が警察に事情を話そうと思えなかった心情もわからなくはないですが…、最初に話していれば加納を殺してしまうことにはならなかっただろう、と思いました…。

涼香は、真実を隠せば真実を知るよりは苦しまないのでは、と考えたようですが、西は「真実を知っても知らなくても、その人は苦しみ続ける」と言います。

私も西の言葉に同意します。

どうせ苦しむならちゃんと真実を知りたい、と私なら思うだろうな、と。

私自身、あまり嘘がつけないし、嘘をつかれるのも嫌いな人間だから、そう思うのかもしれませんが。

涼香の二転三転する発言に、凛子と西は振り回されたのだし、裁判のような重要な状況で嘘をつくのはどんな事情があれ、絶対にいけないことなのではないでしょうか。

被告人が真実を話してくれなければ、弁護人との信頼関係は築けないのではないか、と想像します。

最後、西が涼香をかばって負傷してしまう場面、ちょっと要らなかったかなとも思いましたが、「たとえ身内や知り合いが犠牲になっても、被疑者や被告人の言葉に耳を傾ける」という凛子の信念を描くためには必要な場面だったのかな。

涼香が最後に「私は無罪ではあっても無実ではないんです」と言った言葉も、重かったですね。

責任感が強く、人への思いやりも強い女性だから、きっと一生自分のしたことから逃れられないんだろうと思うと、辛くなりました。


それから、感動した場面がありました。

加納から性虐待を受けた匠海が裁判で証言した場面、西も検察官の桧室も「君は弱い人間じゃない」と言ったところです。

加納にされたことが原因で8年間も外に出られなくなってしまった匠海のことを、私も心から応援したい気持ちになりました。

やっぱり加納が許せませんね。

彼も兄ばかり可愛がられたり、いじめを受けたり、辛い人生だったのかもしれないけれど…。

登場人物それぞれの人生について、色々と考えさせられる作品でした。


まとめ

薬丸岳さんの作品は、読み終わった後にいろんなことを考えさせられるものが多いですが、この作品もまたいろいろと考えさせられました。

私はそういう作品が好きなので、改めて薬丸岳さん好きだなぁ、と実感しました。




青山美智子さんの
「赤と青とエスキース」について詳しくまとめます!


この本を読んだきっかけ

青山美智子さんの作品をいくつか読んできて、どれもすごく好きだったのと、この作品は2022年の本屋大賞で第2位ということで注目されていたので、ずっと読みたいと思っていました。

図書館で予約がいっぱい過ぎて、ようやく回ってきました…。


こんな人にオススメ

  • 絵画や美術に興味のある人
  • 心温まるヒューマンドラマが好きな人
  • 小説を読んで癒されたい人
  • 連作短編集が好きな人
  • 青山美智子さんのファンの人

「赤と青とエスキース」あらすじ


2021年本屋大賞2位『お探し物は図書室まで』の著者、新境地にして勝負作!

 メルボルンの若手画家が描いた1枚の「絵画(エスキース)」。

 日本へ渡って30数年、その絵画は「ふたり」の間に奇跡を紡いでいく――。

 2度読み必至! 仕掛けに満ちた傑作連作短篇。

 
●プロローグ
●一章 金魚とカワセミ メルボルンに留学中の女子大生・レイは、現地に住む日系人・ブーと恋に落ちる。彼らは「期間限定の恋人」として付き合い始めるが……。
●二章 東京タワーとアーツ・センター 30歳の額職人・空知は、淡々と仕事をこなす毎日に迷いを感じていた。そんなとき、「エスキース」というタイトルの絵画に出会い……。
●三章 トマトジュースとバタフライピー 漫画家タカシマの、かつてのアシスタント・砂川が、「ウルトラ・マンガ大賞」を受賞した。雑誌の対談企画のため、二人は久しぶりに顔を合わせるが……。
●四章 赤鬼と青鬼 パニック障害が発症し休暇をとることになった51歳の茜。そんなとき、元恋人の蒼から連絡がきて……。
●エピローグ 水彩画の大家であるジャック・ジャクソンの元に、20代の頃に描き、手放したある絵画が戻ってきて……。


出版社より引用

「エスキース」とは

エスキース」と聞いて意味がわかる人は、きっと美術関係に詳しい人ですね(笑)

恥ずかしながら、私は全く知りませんでした…。

「エスキース」とはフランス語で「下絵」のことだそうで、本番を描く前に、構図を取るデッサンみたいなものだそうです。

ジャック・ジャクソンという登場人物は「エスキース」のことをこう言っています。

「本番じゃないから、誰に見せるわけでもないし何度描き直したっていい。自由なところがすごくいい」

p33 ジャックの言葉

この本の特徴やテーマ

各章に主な登場人物が2人ずつ出てくる

第1章は、メルボルンが舞台となっており、留学中のレイと現地に住む日系人のブーが主人公となっています。

第2章は、「アルブル工房」という額縁工房が舞台で、そこで働く空知と、工房の経営者である村崎のやり取りがメインとなっています。

第3章は、漫画家のタカシマ剣と、アシスタントとして働いていた砂川凌がメインとなっています。

第4章は、輸入雑貨店「リリアル」で働く茜と、元恋人の蒼の物語となっています。


各章に「」と「」と「エスキース」が出てくる

各章には、赤と青のものがそれぞれ出てくるのですが、それが各章のタイトルになっています。

第1章では、「金魚」と「カワスミ

第2章では、「東京タワー」と「アーツ・センター

第3章では、「トマトジュース」と「バタフライピー

第4章では、「赤鬼」と「青鬼

といった風に、赤と青のものが、物語の中で対比されて出てきます。

また、全ての章に「エスキース」も登場します。

どんな場面でどう出てくるのか説明してしまうとつまらないので、気になる方はぜひ読んでみてください!

ちなみにバタフライピーというのは、青い色をしたハーブティーのことです。

エイジングケアが期待できるハーブティーですが、インスタ映えすることでも人気のようです。


心に残ったフレーズ

青山美智子さんの作品は、心に残るフレーズが多いです。

今作もたくさんありましたが、その中からいくつか紹介します!

「よく恋に落ちるって言い方するけど、私はあれ、来るんだと思うね(中略)来るのは彼じゃないんだよ。恋なの。不可抗力に、彼じゃなくて恋に振り回されるのよ」

p39 ユリの言葉

これ、なかなか面白い発想ですよね。

不可抗力に来るから、世の中恋愛の揉め事が耐えないのかもしれませんね(笑)


「額装は高名な画家や美術館だけのものじゃない。ごく普通の一般家庭で、もっと日常的に楽しめるはずなんだ。子どもの描いた絵でも好きな人からもらったポストカードでも、気持ちいいなと素直に思えるものがいつもそばにあるって、すごく豊かなことだよ。」

p92 村崎の言葉

確かに絵でも写真でも額に入れるだけで、なんだか高級感が出るし、特別なものっていう感じがしますよね。

私も一生懸命組み立てたジグソーパズルを、どの額に入れようかな〜って悩んだことがありますが、額にセットするだけでめちゃくちゃ嬉しかった記憶があります。

このセリフにはなんだか納得しました。


「よく、人生は一度しかないから思いっきり生きよう、って言うじゃない。私はあれ、なかなか怖いことだと思うのよね。一度しかないって考えたら、思いっきりなんてやれないわよ(中略)人生は何度でもあるって、そう思うの。どこからでも、どんなふうにでも、新しく始めることができるって。」

p197 オーナーの言葉

これも納得ですね。人生なかなか思いっきり生きるの、難しいですよねー。

新しく始めるのもなかなか難しいですけど、不可能ではないですよね。

歳をとるごとに何事も難しいと感じてしまいがちですが、新しくチャレンジすることも忘れないようにしたいです。


感想

青山美智子さんの作品は、全ての章にどこかつながりがあって、最後にどんなつながりがあるのかわかる、という特徴があるものが多いのですが、今作もまた最後のエピローグで「わぁー、そうだったの!」という驚きと喜びがありました。

ただ実は、そのつながりについてネタバレしている感想を事前に読んでしまったため、少し感動が薄れてしまいました…。

たまにネタバレフィルターかけてない方がいて、読んでしまうことがあるんですよね…。

それか、ネタバレだと思ってなくて、フィルターかけてないのか…。


 

少し感動が薄れてしまったのは事実ですが、今までに読んできた青山美智子さんの他の作品と比べても、ちょっと物足りなかったかな…という気もしました。

私は美術とか絵画とかに興味がなく、美術センスも皆無なので、そのせいもあるかもしれません。

絵画に興味があったり、美術館に行くのが好きだったりする方は、もしかしたらもっと感動できるのかな…なんて思いました。

絵画が好きな方って、一枚の絵にどんな想いが込められてるのかとか、その絵にどんな背景があるのかとか、どうやっていろんな人のところを渡り歩いてきたのかとか想像したりするのでしょうか。

この物語の「エスキース」も、時代を経て、いろんなところに飾られ、いろんな人に見られていて、一枚の絵がこんなにドラマチックな人生を歩んでいるんだなぁ…って、最後はしんみりしました。

絵もなかなか奥深いものなのですね。

赤と青の対比がまた物語を美しく彩っていて素敵でした。

 

第3章は漫画家さんの物語なんですが、青山美智子さんは漫画家になりたかったそうですよ。

師弟愛が描かれている章ですが、「漫画家あるある」も織り込まれていて、作家としての青山さんの実体験が多く反映されているそうです。

この章の主人公2人の関係、すごくいいなと思ったし、タカシマ剣のキャラがけっこう好きでした。

第4章も好きですね。

茜の気持ちに共感しました。

 

ちょっと物足りなかったかな…なんて書きましたが、それでもやっぱり安定の青山さんですよね(笑)

青山美智子さんの作品って苦手な人いないんじゃないかって思うくらい、クセがなくて、老若男女誰でも共感できて、元気付けてもらえるものだと思ってるんですが、私のただの好みでしょうか?(笑)

人生いつからでも遅くないよ、とか、みんな悩みながら生きてるんだよ、とか、そういう前向きなメッセージを今作からも受け取りました。

人生そんな簡単なもんじゃないよ、って思う人もいるかもしれないですが、そういうメッセージを受け取れる本があるってことが、私は嬉しいです。

ちょっと気分が落ちてて明るい気持ちになりたい、っていう時には、青山美智子さんの本を手に取りたいですね。


著者紹介

1970年生まれ、愛知県出身。横浜市在住。大学卒業後、シドニーの日系新聞社で記者として勤務。2年間のオーストラリア生活ののち帰国、上京。出版社で雑誌編集者を経て執筆活動に入る。デビュー作『木曜日にはココアを』が第1回宮崎本大賞を受賞。続編『月曜日の抹茶カフェ』が第1回けんご大賞、『猫のお告げは樹の下で』が第13回天竜文学賞を受賞。(いずれも宝島社)『お探し物は図書室まで』(ポプラ社)が2021年本屋大賞2位。『赤と青とエスキース』(PHP研究所)が2022年本屋大賞2位。他の著書に『鎌倉うずまき案内所』『ただいま神様当番』(ともに宝島社)、『マイ・プレゼント』(U-kuとの共著・PHP研究所)など。


出版社より引用



まとめ

青山美智子さんの「赤と青とエスキース」について、まとめました!

この作品の表紙を描いた水彩作家のU-ku(ゆーく)さんとコラボしたショートショートがあるのですが、そちらもまた素敵なんですよ。

「青」がテーマとなった「マイ・プレゼント」は私も読みましたが、詩集のような絵本のような感じで、心が落ち着く癒しの作品でした。

いつもの青山作品とはまた違った良さがあります。

また、「赤」がテーマの「ユア・プレゼント」も12/8に発売になります。

こちらもまた読みたいです!




第168回直木三十五賞候補作に選ばれた
一穂ミチさんの「光のとこにいてね
についてまとめます!


この本を読んだきっかけ

一穂ミチさんの作品は「スモールワールズ」と「砂嵐に星屑」を読んだことがあり、新刊も読みたいと思いました。

また、Twitterなどで絶賛コメントをよく目にしていたので、これは読みたい!と思いました。

「スモールワールズ」の記事はこちら↓↓

https://www.mushikoblog.com/small-worlds/

「砂嵐に星屑」の記事はこちら↓↓

https://www.mushikoblog.com/stardust-to-sandstorm/

こんな人にオススメ

・女性の人生についての物語が好きな人

・「運命」を信じている人

・一穂ミチさんのファンの人


「光のとこにいてね」あらすじ

たった1人の、運命に出会った

古びた団地の片隅で、彼女と出会った。彼女と私は、なにもかもが違った。着るものも食べるものも住む世界も。でもなぜか、彼女が笑うと、私も笑顔になれた。彼女が泣くと、私も悲しくなった。
彼女に惹かれたその日から、残酷な現実も平気だと思えた。ずっと一緒にはいられないと分かっていながら、一瞬の幸せが、永遠となることを祈った。
どうして彼女しかダメなんだろう。どうして彼女とじゃないと、私は幸せじゃないんだろう……。

運命に導かれ、運命に引き裂かれる
ひとつの愛に惑う二人の、四半世紀の物語

出版社より引用

主な登場人物

小瀧結珠(こたきゆず)…父親が医師で、いわゆるお嬢様学校に通っている裕福な家の女の子

校倉果遠(あぜくらかのん)…古びた団地に住んでいて、結珠が偶然出会った母子家庭の女の子。隣人女性の飼うインコだけが慰め。

結珠が小学2年生の時に、母親にこっそり連れてこられてきた団地で、偶然果遠と出会った。

同じ年の2人は、結珠の母親が「ボランティア」と言って、ある男性の部屋に行っている間に、週に一度30分間程の時間だけ、一緒に遊ぶ仲となる。

しかし、結珠はすぐに姿を見せなくなりー。

印象に残ったフレーズ


瀬々はわたしじゃないし、わたしの所有物でもない。生まれた瞬間から道は違っていて、今は太い一本に見えてるけど、ちゃんと枝分かれしてるんだよ。

p339 果遠の言葉

瀬々というのは、果遠の子供です。

親は自分の子供を自分の所有物として考えてしまいがちだけど、それは違う、ということですね。

私も子供を2人育てていますが、子供は自分の所有物ではない、ということをちゃんと意識しておかなければいけないな、と思います。

社会に出てみたらわかる、結婚したらわかる、人の親になったらわかる…そういう予言じみた言い回しは卑怯だし、親が子に使うのは呪いに近いと思う。子どもはいつか親の人生をなぞるミニチュアだとでも言いたいのか。

p400 結珠の言葉

これは納得の言葉です。

私も母親からこういう言葉をよく言われてた気がします。

あとは、「親になってから文句言いなさい」っていう言葉。

親になるかもわからないし、それまで何一つ文句が言えないなんて、そんな馬鹿らしいことないな、ってよく思ってました。

これは自分が子育てしてる中でも、言わないように気をつけています。

親の決定に背いたら人生終わるくらいに思ってた。(中略) でも、いま渦中にいる子どもに『大きくなったら親なんか気にならなくなる』って言ったところで希望にはならない。むしろ逆だと思う。

p433 藤野の言葉

これも納得ですね。

子供の頃って、親の言うことが本当に絶対で、できるだけ親が喜ぶようにしなきゃ、って思ってるところ、ありますよね。

子供の意見や考えを受けとめてあげられるように、気をつけていたいです。


感想(ネタバレなし)

うーん、なかなか感想を書くのが難しい物語でした。

2人の関係を何と表していいか分からないですね。

恋愛関係でもないし、親友でもないし、ソウルメイトとでも言ったらいいのか…難しい関係性です。

運命によって呼び寄せ合う関係です。

ここまで運命を感じる人って、なかなか出会えないですよね。

運命を感じたとしても、一時的なものであったり、どちらかの方が強く感じていて一方的なものであったりすることが多いと思うのですが、この2人はお互いがお互いを同じくらい強く必要としているのが、すごいと思いました。

もう本能がお互いを探し求めている、とでも言ったらいいでしょうか。



一穂ミチさんの文章は、比喩表現が多く出てくるのですが、今作も印象に残る言い回しがけっこうありました。

例えば、「スプーンやナイフにくっついたいちごジャムみたいな声」とか、「いつもの声色が鉱物だとすれば、その日の声はマシュマロ」といった風に声を例える描写があったりして、独特な言い方ですよね。

色を使った表現も印象的で、映像が頭に思い浮かぶような文章も好きです。

「自分の五感が混ざってぐにゃぐにゃのマーブル模様になったみたいに〜」とか、「夜明けのピンクと夕方のオレンジが好き」といった風に。

一穂ミチさんの書く文章、個性があって美しくて、私は好きです。


 『光のとこにいてね』という作品名にもなっているフレーズがすごく印象的に使われていて、ずっと頭に残っています。

このセリフが2人の運命を左右する時に使われるので、さらに印象に残りました。

このフレーズというか、本のタイトル、すごくいいと思います。

それにしても、この作品もまた毒親が出てきました…。

裕福な家の女の子と、いわゆる貧乏な女の子、2人に共通するのは、家庭で大切にされていないと感じていて、母親に対して複雑な気持ちを持っているところです。

毒親がメインテーマではないにしても、最近このテーマのものに引き寄せられてるのか、私が引き寄せてるのか…(笑)

著者紹介

2007年『雪よ林檎の香のごとく』でデビュー。ボーイズラブ小説を中心に作品を発表して読者の絶大な支持を集める。2021年に刊行した、初の単行本『スモールワールズ』が本屋大賞第3位、吉川英治文学新人賞を受賞したほか、直木賞、山田風太郎賞の候補になるほど大きな話題となった。

出版社より引用

感想(ネタバレあり)

ここからは、ネタバレを含む感想なので、まだ読んでいない方は気をつけてください!

最後の方の展開が少し納得できないというか…、果遠もそんな簡単に離婚して、瀬々を手離していいの?と思ったし、結珠も果遠を追いかけてどうするつもり?と思いました。

終わり方がハッキリしない描かれ方なので、2人がこの後どうなったのかはわかりませんが、2人で一緒になってほしい気持ちもあるけど、そんなに簡単に周りの人をほったらかしにしていいの?っていう気持ちもあり、複雑でした…。

水人もそんな簡単に地元に帰りたいとか思うもんなのかな?とも感じたし、何より瀬々ちゃんの気持ちはどうなっちゃうの…と思いました。

果遠の決断は少し身勝手なのではないかな…と。

果遠の母親も結珠の母親も身勝手な人たちだったけど、彼女たちとやってることは同じようなことなんじゃないの?と思ってしまいました。

何も知らずに母親が急にいなくなっちゃうなんて…、子供の心境を考えてしまうと、ちょっとこの終わり方はうーん…という感じでした。

文章自体は、すごく余韻の残る終わり方で美しいな、とは思ったんですけどね…。

まとめ

一穂ミチさんの新刊「光のとこにいてね」についてまとめました。

個性的な文章がすごく印象に残り、タイトルもまた秀逸だな、と思う作品でした。

あとは、装丁も綺麗!

今後も要注目の作家さんです。


まさきとしか さんの「レッドクローバー
についてまとめます!



この本を読んだきっかけ

まさきとしかさんは『あの日、君は何をした』と『彼女が最後に見たものは』を読んだことがあり、けっこう好みだったので、新刊も読みたいと思いました。

こんな人にオススメ

・重ためのミステリーやサスペンスが好きな人

・毒親や母娘関係について興味がある人

・まさきとしかさんのファンの人


「レッドクローバー」あらすじ

『あの日、君は何をした』『彼女が最後に見たものは』シリーズ累計40万部突破の著者、最高傑作ミステリ。 まさきとしかが……いよいよ、くる! 家族が毒殺された居間で寛ぎ ラーメンを啜っていた一人の少女。 彼女が──家族を殺したのではないか。 東京のバーベキュー場でヒ素を使った大量殺人が起こった。記者の勝木は、十数年前に北海道で起こった家族毒殺事件の、ただ一人の生き残りの少女――赤井三葉を思い出す。あの日、薄汚れたゴミ屋敷で一体何があったのか。 「ざまあみろって思ってます」 北海道灰戸町。人々の小さな怒りの炎が、やがて灰色の町を焼き尽くす――。 『あの日、君は何をした』『彼女が最後に見たものは』シリーズ累計40万部突破の著者、最高傑作ミステリ。

出版社より引用

主な登場人物

○望月ちひろ…埼玉から灰戸町に引っ越してきた少女。母方の祖母の家で2人で暮らすことになった。

○赤井三葉…ちひろが灰戸町で初めて友達になった歳上の少女。家族をヒ素で殺したと疑われていた。

その事件は彼女の名前から「レッドクローバー事件」と呼ばれている。事件から数ヶ月後、家が火事になったと同時に行方不明になる。

○丸江田逸央…「豊洲バーベキュー事件」の犯人。取り調べ中「ざまあみろって思ってます」と言って、大きく取り上げられた。

○勝木剛…「月刊東都」という硬派の総合雑誌の記者。「豊洲バーベキュー事件」と、12年前の灰戸町の「レッドクローバー事件」の関連性を追っている。

○望月久仁子…ちひろの母。

○丹沢春香…久仁子の同級生。娘の富恵を火事で失ってしまう。


 

14年前のちひろのパート、現在の勝木のパート、という風に、時系列が過去と現在で入れ替わりながら物語は進みます。

春香や、三葉の母親や隣人の視点で語られた章もあるので、事件のことをいろいろな人物の目から俯瞰して見ることができます。

レッドクローバー事件の犯人は三葉なのかー。

豊洲バーベキュー事件に三葉は関係しているのかー。

三葉はどこに行方をくらましたのかー。


印象に残ったフレーズ


子供を愛さない親はいても、一度も親を愛さない子供はいないんじゃないかな。だから、もし長女がほんとうに親を殺したのだとしたら、その子のほうが先に心を殺されたのよ。

p221 美和子の言葉

一度も親を愛さない子供はいない、という言葉が響きました。

本当にそれは絶対にそうですよね。

言葉の攻撃力はボディブローみたいに効くよ。

p301 不破の言葉

言葉の持つ影響力って、体を使った暴力みたいに一瞬の強い痛みではないけれど、ジワジワと心に効いてくるし、持続しますよね。

言葉の暴力を軽く見てたらいけない、と思います。

体を殺すのは一度しかできないけど、心は何度でも殺せるんだよ。

p373 ちひろの言葉

親から愛されない子供は、心を何度も殺されている、ということですよね。

心を殺すのも立派な虐待です。


感想(ネタバレなし)

この直前に読んだ本(遠田潤子さんの『イオカステの揺籃』)も、毒親や母娘関係についての本で、重苦しい話だったのですが、またしても同じようなテーマの本を読んでしまいました…。

私の中で、まさきとしかさんと遠田潤子さんは、重苦しい家族の物語を書くけど、物語の展開が巧みで一気読みさせる作家さんという位置付けにあったので、この2冊が同じタイミングで図書館から回ってきて、ちょっとびっくりしました(笑)

遠田潤子さんの本を読んだ後じゃなければ、また衝撃度や感想も変わったかもしれません…(遠田さんの本がけっこう内容が濃かったので…)。

 

という前置きはいいとして、本の感想です。

はぁー、またまたこれも重苦しい物語でした。

話の内容はもちろんなんですが、舞台となっている町の雰囲気がもう半端なく重苦しいんです…。

灰戸町、暗過ぎます…。

読み始めてから読み終わるまで、終始どんよりしてます…。

田舎の閉塞感が描かれている小説って割とあると思うんですが、この小説のどんより感はけっこうすごい方だと思います。

町の中のヒエラルキーみたいなものもかなり激しくて、海側の人が山側の人を差別するとか、山側の人でも奥に行けば行くほど差別されるとか…。

そして、呪いをかけるために神社に手を合わせに行く住人たち…。

この町の雰囲気にちひろも飲まれてしまったのでしょう。

 

時系列が錯綜しているので、少し読みづらいと感じた部分もありましたが、いろいろな人の視点から事件の真相が徐々に見えてくる感じが、面白かったです。

「死ねばいいのに」とか「殺される前に殺す」とか、そんな言葉ばかりが出てくるのですが、読んでいてかなり頭も心も疲れてしまいました。

今の若い世代の子たちは、死ねとか殺すとか、けっこう気軽に使うイメージがあるのですが、やっぱり決して気軽に使っていい言葉ではないと思いますね。

言葉の影響力ってすごいです。


 

帯で桐野夏生さんが「まさかこんな展開になるとは」とコメントされていたのですが、そこは個人的にはそうでもなかったかな…と(笑)

でも、真相がわかってハイ解決、みたいな話ではなくて、真相に辿り着くまでに何層にも入り組んでる感じがして確かに衝撃はありました。

物語の終わり方も、スッキリとはいかなかったですね…。


最初から最後まで陰鬱な灰戸町の雰囲気に引っ張られて、私自身もどよーんとしてしまいましたが、物語としては面白かったです!

ただ、元気のない人にはおすすめしにくい本かな…と思います。



著者紹介

1965年生まれ。北海道札幌市在住。2007年「散る咲く巡る」で第41回北海道新聞文学賞を受賞。13年、母親の子供に対する歪んだ愛情を描いた『完璧な母親』(幻冬舎)が刊行され、話題になる。他の著書に『熊金家のひとり娘』『大人になれない』『いちばん悲しい』『祝福の子供』『屑の結晶』などがある。書き下ろし文庫『あの日、君は何をした』『彼女が最後に見たものは』が大反響。

出版社より引用

感想(ネタバレあり)

ここからは、ネタバレする感想を書きますので、まだ読んでいない方は、気をつけてくださいね!

 
 
 
 




三葉の家族を殺した真犯人は、ちひろだったわけですが、ちひろがそこまで歪んでしまったのは、母親に大切にされてないことはもちろん大きく影響したと思いますが、三葉の影響もかなり大きかったと思います。

三葉が「殺される前に殺す」みたいなことをすぐ言うせいで、そういう考えに洗脳されてしまったような感覚だったのかな…と思いました。

三葉は、殺すと簡単に口では言うものの、殺すことがいけないことだと頭では充分理解してるし、家族には大切にされていないけど、嫌いなわけではないから、本気で家族を殺そうとしてたわけではないと思うんですよね。

かなり心は荒んでいるし、かなり生意気な女の子ではあるけれど、普通に思春期の女の子っぽい部分もあるというか。

ただ、ちひろには、三葉の影響力が大き過ぎたのかな…と思います。

「殺す」「死ねばいいのに」なんて言葉をいつも聞かされて、普通の思考回路ではなくなってしまったのでしょう。

三葉と出会わなければ、ちひろは簡単に人を殺すような人にはならなかったのだろうか…、と考えてしまいました。

ちひろくらいの年頃の女の子にとって、友達の影響というのは、すごく大きいものですよね。

もちろん、三葉も家族に愛されない可哀想な子ではあったので、その辺りが救いがないですね…。


まとめ

まさきとしかさんの新刊「レッドクローバー」についてまとめました。

重苦しい家族の物語ではありましたが、一気に読ませる筆力はさすがだと思いました。

歪んだ家族関係や個性的な女性を描くのがとても上手だという印象が、さらに深くなりました。

また今後の作品にも注目していきたいと思います!


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