「空にピース」あらすじ
公立小学校教諭のひかりは、都内の赴任先で衝撃を受ける。立ち歩き、暴力、通じない日本語……。強くならなければ、子どもたちは守れない。
公立小学校の教師になって五年目のひかりは、都内の赴任先で出会った人々に衝撃を受けていた。日本語が話せないベトナム国籍のグエン・ティ・ロン、授業中に教室を出て行く今田真亜紅、不登校気味で給食だけ食べに来る佐内大河、クラス分けに抗議をしにくる児童の母親…。
ひかりの前任者は鬱で休職中。さらに同僚からは「この学校ではなにもしないことです。多くのことを見ないようにしてください」と釘をさされてしまう。
持ち前の負けん気に火がついたひかりは、前向きな性格と行動力で、ひとりひとりの児童に向き合おうとするが……。
虐待、貧困、性暴力――。過酷な環境で生き延びる子らに、悩みながら寄り添うひかりが最後に見た希望とは。
出版社より引用
この本を読んだきっかけ
藤岡陽子さんは、以前に2作品読んだことがあり、それがとても好みな作品だったので、お気に入りになりつつある作家さんです。
この「空にピース」は藤岡さんの最新作なので、読みたいと思いました。
こんな人にオススメ
- 教育の仕事に携わっている人
- 小学生くらいの子供がいる人
- ひたむきな主人公が出てくる作品が好きな人
この本のテーマや特徴
子供の貧困、幼児虐待、ゲーム中毒などの問題
この本には、家庭に問題を抱えた子供が何人も出てきます。
- グエン・ティ・ロン:ベトナム国籍で日本語が話せない
- 今田真亜紅:授業中教室から出て行ってしまう
段ボールで作ったピストルで動物をいじめる
ホステスの仕事をしているアイリンという高校生の姉がいる - 佐内大河:給食を食べにだけ学校に来る
何日もお風呂にも入らず、服も洗濯していない
この3人を軸として話は進みます。
それぞれが貧困や虐待、ゲーム中毒などの問題を抱えています。
モンペ気味の母親を持つ青井文香や、いわゆる優等生タイプのスミス宙や高柳優美といった生徒も出てきます。
教師という職業の大変さ、難しさ
私には絶対務まらないだろうなと思う職業の一つが教師なのですが、この本でも教師という職業の大変さや難しさが、これでもかというほどに伝わってきます。
改めて、世の中の先生たちはすごいなぁという気持ちになりました。
もちろんやりがいのある仕事なのでしょうが、それ以上に大変なことだらけだろうな…と。
この本の主人公であるひかりも、これでもかってくらいに生徒に全力で向かっています。
ミステリー要素もあり!
藤岡陽子さんにしては珍しいみたいですが、この本はミステリー要素も含んでいます。
ミステリー好きの私は、その部分も楽しく読めました。
ひかりが勤めている小学校で以前副校長をしていた岩田洋二が殺害される、という事件が起こるのですが、犯人は誰なのかドキドキしながら読みました。
心に残ったフレーズ
子どもに限らず大人でも、心から信じられる誰かがいる人は強い。
その誰かはたくさんでなくてもいいの。たった一人でいい。
P173
ひかりのことを気にかけてくれている養護教諭の水野先生の言葉です。
この言葉、本当にその通りだな、と思います。
一番近くにいる家族であったり、親しい友達であったり、誰か一人でも自分のことを信じてくれる人がいれば、本当に心強いですよね。
神様、どうか、この世に生まれたすべての子どもたちを、幸せにしてください
P277,339
ひかりが生徒たちのことを思って、神様にお願いするこの言葉も、とても印象的でした。
感想
ひかりのような教師が世の中にたくさんいれば、本当に素晴らしいことだと思ったのですが、彼女のように全力で生徒と向き合っていたら、いつか絶対に壊れてしまうだろうな…と感じました。
実際に、厳しい現実を知り、やる気と情熱を失ってしまった先生たちもたくさんいるのだろう、と思いました。
ひかりには、いろいろと親身になってくれる養護教諭の水野先生の存在が救いになっていると思います。
教師だけにいろいろな問題を丸投げにせず、社会全体で考えていかなければいけない問題がたくさんあると思いました。
また、優美のような優等生で表明的には何の問題もないような子も、どんな問題を抱えているかわからないですよね。
彼女みたいなヤングケアラーのような子もいつか壊れてしまうかもしれない。
どんな子供でも、近くにいる誰かから愛されたり、味方でいてもらうことが大切だと実感しました。
私は、とにかくいつでも自分の子供たちの味方でいよう、と思いました。
著者紹介
1971年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業。
報知新聞社で3年半記者として勤務後退社。
タンザニア・ダルエスサラーム大に留学するが、卒業せずに帰国。
大阪文学学校に通いながら執筆投稿するが、落選が続く。
その後、結婚出産し、看護師資格を取るため慈恵看護専門学校卒業。
再び、大阪文学学校へ通い、2006年「結い言」が、宮本輝氏選考の北日本文学賞の選奨を受ける。
2009年『いつまでも白い羽根』でデビュー。
2017年現在、京都市内の脳外科に勤務する。
なかなか個性的な経歴の作家さんですよね。
きっとバイタリティーに溢れた方なのだと想像します。
まとめ
「空にピース」というタイトルの意味を最後に噛み締めて読み終わりました。
ミステリー要素もありドキドキしつつ、最後の方は涙が滲んで、読み終えた時には号泣してしまいました。
藤岡陽子さんの本を読んだことがない人にも、オススメの一冊です!